218★最終章[19]◇月の欠片
なんで当たらなかったの?
(本人は、「サイズが足りない!」とか言ってたべさ)
イヤ、そこは勇気を出して、一歩踏み込まないと!
きちんと前に出て、すぐ傍まで近寄って、思いっきり当てないと!!
(それは不発に終わったけども、そのあと「ポロリ」があったべさ)
……オウフ!
◇
なんの話をしているかというと、「往復ちちびんた」の話だ(笑)。
2021年夏アニメ『カノ○ョも彼女』という作品に、お風呂で水着でそんな展開があったらしい。ヒロインの中の人は、実は大きいことで有名な「佐倉さん」らしい。真面目な多人数推奨アニメ(?)らしい。
ま、それはそれとして――
目の前にある「鉄の扉」を開けてみよう。
サイズ的に、明らかに「人間用」だ。
扉の四つ角には、「丸み」がついてる。
どことなく、船についてるような感じの「鉄の扉」だ。
『地球』から「コピペ」された「船」のものを、そのまま転用してるような気がしないでもない。
それと、どうして「鉄」と断定してるかと言うと……。
◆◇◆
一晩使用し、とりあえず用済みになった『トイレのサンダル』を両手で挟み、俺は「完成予想図」をイメージした。カタチは「U」だ。
目を瞑り、願う。
(掌内錬成。馬蹄形の超強力永久磁石)
『錬成』スタートだ。
(ゲートインから一斉にスタート! 『ウ○娘』のレース用の靴には、爪先部分に「蹄鉄」が付いてるのだべさ)
いらん情報くれるな。気が散るがな。
チン!
……珍事だ。
靴底に「馬蹄形磁石がついた靴」が、『錬成』されてしまった。
もののみごとに影響されてしまったぜ。ホノカの思念波に。
(『ミホノ○ルボン』だべか?)
アホな事を言われ、気が抜けて脱力した瞬間。
その靴が、吸い寄せられるように「扉」に貼り付いた。
ベコン!
それほど厚みのない、薄い「鋼板」の音だ。
なるほどな。磁石がくっつく。
やっぱ「鉄」だ。「鉄の扉」だ。
てことは、この扉の向こう側にも、「鋼板の床」があるかもしれない。
ならば、これはこれで好都合。「ナイス錬成!」だったかも。
『ガン○ム』の、「ジ○ン軍」の宇宙艦艇のブリッジ内部とかでは、無重力でも、ふわふわ浮かず、乗員がすたすたと歩いていた。それって、靴底に「磁石」がついているからなんだそうだ。
(『魔王○でおやすみ』には、壁を歩けるネコスタンプの靴があったべさ)
ナニソレ、欲しい。無重力下でも使えそう。
(『彼方のア○トラ』では、反重力シューズなんてのもあったべさ。ジャンプ力がアップするのだべさ)
だから、無重力だっつーの!
室内で跳びはねたら、天井にぶつかるだけってば!
そんで、磁石が強力なだけに、ひっぺがすの大変だったよ。
(『○コーペガサス』だべか?)
◇◇◇
で、現在。
「……失礼しまーす」
ついつい、そんな言葉が出た。
前段として「ノック」を忘れてたけど……ま、いいか。
扉は何の抵抗もなく、すんなりと開いた。
扉を開けた先には……またまた「白い空間」が広がっていた。
イヤ、案外せまいな。空間というよりも「部屋」って感じだ。
白いので、「ホワイトルーム」か?
……なんか、変な実験が行われてそうで怖いな。
中には誰もいな…………イヤ、いた。
もちろん、「綾○路と刺客たち」……ではない。
それは、『ようこそ実力至上主義の○室へ』だ。
でも、そんなとこにウエルカムされても行きたくない。俺は「ヘタレ」なのだ。
よく見ると、壁いちめんに「白いつぶつぶ」がびっちりだ。
これきっと、休眠中の宇宙適応型ヌメヌメスベスベの群体だな。
(『巫女』である、このあたしが)
イヤ、いいよ。「通訳」は遠慮する。
寝てるようだし、起こしちゃあ気の毒だ。そっとしとこう。
よし、このまま後ずさろう。
自分の足跡そのままに、そーっと後退するのだ。
熊とか一部の野生動物がやる「とめ足」とか「バックトラック(足跡もどり)」だ。
「ネズミがバックトラックとしたという記録は無いッ!」
なので、俺は「ヘタレ」ではあっても、「ネズミ」じゃない事が証明された。
でも、『ジョ○ョ』には、追いかけてくる「足跡型スタンド」から、バイクで逃げる話があったな。速度制限は時速60㎞だっけ?
某アニメの最終話では、姉に張り手を入れられた妹の顔面に「手形」がついてたな。なのに、妹さん、わりと平然としてたよな。なんかシュールだったな……。
そんで、気になってホノカに聞いてみたら、『ウ○娘』って、「手」と「足」は人間と同じらしいんだよな。
人間との大きな違いは、「馬耳」と「尻尾」らしい。
専用の「電話」は、「受話器」が異様に長いらしい。
専用の「勝負服」のバックスタイルは……どんな構造なんだろう?
そんなことを思っていたら、身体がふわふわ浮き出した。
例の「馬蹄形磁石のついた靴」を履いてるのに。
ここの床。磁石に反応しない。磁性体じゃなんだな。
「……って、えええ?」
(な、なんだべか?)
イヤ、ごめん。大したことじゃないんだけど……。
便宜的に、「天井」と仮定してた壁面に、さっきのとまったく同じ「鉄の扉」がついてたので、ちょっと驚いたのだ。
ならば、この「扉」も開けてみよう。
いい加減「無重力状態での方向転換」も慣れてきた。
向きたい方向の逆向きに腕を動かし、その反動を利用するのだ。それで、「扉」の方向に足を向けると、磁石が貼り付いた。
ただ、磁石が強力すぎて、はがれなくなった。
腹減りすぎて、力が入らない……取れないな。
已むを得ない。
(Yummy! 美味い!)
ホノカが言ってた『彼○のアストラ』には、系外惑星の動植物を食えるかどうか判定してれる便利道具が登場するのだそうだ。表示方法のセンスがポップなんだそうだ。
それはそれとして、扉に貼り付いたままの状態で、靴を脱ぎ捨てた。
素足になったよ。てか、これでまたまた全裸だよ(笑)。
「……お邪魔しまーす」
(『おジャ魔女ど○み』? 『♪パ○ャマじゃまだ』?)
そんなこと言ってません。
「なんだここ?」
扉の向こうには、たくさんの「ガラス製品」が浮かんでいた。
グラスとかボトルとか工芸品とか。ビー玉みたいなのもある。
よく壊れずに、カタチを維持してるな。
心理テストだと「ガラス」って何のイメージだっけ? 結婚? 恋愛?
下手に動き回ると、どえらい事になるだろうから、扉の取っ手に足の甲をかけて、じっくりと中を観察した。
しかし、謎だ。
何故ゆえに、こんなにも「ガラス製品」が?
……でもまあ、『グラス○ップ』も、めっちゃ謎だったしな。
個人的には、作品全体の雰囲気は嫌いじゃなかったけれども。
あ、「未来の欠片」だ!
じゃなくて、ホノカが言っていた「未来の記憶媒体」だ。
事前に説明を受けてたとおり、そんなには大きくはない。
近くに浮いてる某コーラのクラシカルなボトルと比べても、かなり小さい。
「祈願! ★マジカル・ロボットハンド☆」
『魔法』による精密作業用ロボットハンドだ。
こんなこともあろうかと、だ。
でも、俺の右手の動きをトレースしてるだけなので、もともと「ぶっきっちょ」な俺には「精密作業」なんて不可能だ。
「おおっ、めっちゃ綺麗!」
軽くつついてみたら、某ゲームの「クリスタル」さながらに、宙に浮かんだままキラキラと輝きながら回転しだしたよ。
(たしかに、それだべさ)
ホノカにも、『★イメージ転送☆』で確認してもらった。
どうやら、これで間違いはないようだ。
よしよし。意外と、ちょろかったな。
……ただ、この結晶体の内部にレーザーで三次元的に刻まれているという「データ」は、我々が求めている内容と合致するんだろうか?
てか、「アニメ」なんだけどね(笑)。
◇
頼んでた件に関して、カオリちゃんから報告があった。
(――ということでした)
やっぱ、そうだったのか。
やっぱ、「ガラス」が嫌いで、あの場所にはよりつかないワケか。
(誰が、硝子を嫌いなの?)⇒ミーヨ。
お前が、あんまし好きじゃないヤツだよ。ヌメヌメしてるやつ。
(うええっ! うん、わかった。アレね)
なんでもかんでも「炭酸カルシウム」で塗り固めてしまうヌメヌメスベスベたちの天敵は、海に棲む透明なガラスの貝殻をもつ「ガラスガイ」だそうだ。
それを利用して、「ヌメヌメスベスベ除け」のために、「ガラス」にしてあったんだな。納得したよ。
ホノカの言う「未来の記憶媒体」も「石英の結晶体」。
要は「ガラス」みたいなものだから……それは逆に、「持ち込み禁止」みたいに『宇宙』に「置きっぱなし」になってたんだろうな。彼らにとっては、「邪魔もの」でしかないだろうし。
てことは、なんだろうな?
彼らは、「珪素」が嫌いなのかな?
某アニメ観たら、トラウマになるやろな……。
(置きっぱなしって、どういうことですか?)
今度はカオリちゃんだ。
ならば説明しよう。
『アアス』は「水の惑星」。
生き物のほとんどが「海中」で暮らしてる。
俺たちが「神さま」あつかいしてる『アアス』の「集団的意識共有体」のみなさんは、『地球』に「おでかけ」した際、「海に浮かぶ構造物」である「船」が珍しくてしかたなかったらしい。
『地球』で、様々な「船」を「すきゃん」し、惑星『アアス』に戻ってから、その「船」をコピー品として再現し、海に浮かべて楽しんでたらしい。そう、完全に「趣味の領域」として。
でも、やはり『アアス』は「水の惑星」。
なので、「金属」は海水に溶け込んでるか、海底に「リッチクラスト」みたいなカタチで存在しているらしく、フツーには採取出来ないらしい。
ゆえに「木造船」はいいとして、「鉄の船」を再現するのは困難だ。
その場合、「原材料」が豊富な『宇宙』で製造し、それを『アアス』の海に「降下」させてるらしいのだ。
(ああ、言ってましたね)
めんどいから回想しないけど……『全知全能神神殿』の『大浴場(女湯)』で、『全知神』さまを「質問攻め」にしたときに、それらしいことを言ってたのだ。ただ、それは『系外調査船団』の「宇宙船」の話だったけれども。
あと、俺がちょっとだけお世話になった『西の七国』の船(木造船だ)の乗組員のおっちゃんから聞いた話によると、『アアス』の海に浮かべられた『地球』由来の「鉄の船」には、「窓ガラス」が無い場合も多いらしい。
それって、ヌメスベちゃんたちが「ガラス」が嫌いだから……って理由で、『アアス』の海に「入場禁止(?)」されてんじゃなかろうか?
(でも、『あわ』にはありましたよ?)
汎用大型護衛艦『あわ』の艦橋の「窓」は、透明なセルロースナノファイバー素材らしいよ。「透明装甲」であって、「窓ガラス」じゃないんだってさ。
(似て非なるもの……ですか。『化物』みたいですね)
そう言えば……あの合同入浴会の時に、『全知神』さまが「依代」としていた「抜け殻」も、きっと『化物』なんだろうな。生物じゃあないはずだな。
てことは、アレでタマゴに「還元」出来るハズだ。
試してみてほしいな。
あの時の「依代」は、『神殿』の某所で「眠り姫」みたいになってるから。
どうだろう、カオリちゃん。
あの「抜け殻」に、『電気あんま』をかましてみてはくれないだろうか?
(いえ、わたし一応『聖女』ですよ? 隙を突いて寝てる女性の股間に『電気あんま』とか……ヒド過ぎません?)
だって、それが『化物』かどうか確認するのに、いちばん手っ取り早いやり方やん。
(それに、わたしたち、現在は『王都』とは遠く離れた『死の廃都』に滞在してるんですよ)
聖地巡礼ツアー『七堂巡り』中の『聖女』さま御一行は、一時的に立ち寄った『王都』から『北行運河』を船で下り、いま現在はそこにいるらしいのだ。
昨日、ミーヨが言ってた「ここ」って、彼女の「オ・デコ家」の新領地『死の廃都』のことだったのだ。
◆◇◆
(今ねー、わたしたち『死の廃都』にいるんだけどー)
不吉な名前の場所からのリポートなのに、かるい調子だなー。
(その北側に、『月の欠片』っていう大きなものがあるんだけど……ジンくんが言ってた『山脈』って、こう言う事だったんだね。ビックリしたよ。高い陸地になってるね)
前々から、『アアス』が「水の惑星」だと知ってたので、「海」には然程の驚きも示さなかったミーヨだけど……「山脈」には、心底ビックリしたらしい。
俺は、『俺』として目覚めた直後は、『女王国』のある陸地の「真っ平ら感」に驚いたけどな……。
(それで、その『山脈』の上にあるのが、最後の巡礼地の『天空の神殿』なんだって)
名前からして、空中に浮いてる場所にあるのかと思ってたのに。
単に「高い所」にあるから、『天空』か。ただの「枕詞」なんだな。
(『まくらことば』って、『ぴろーとーく』?)
ううん、違うよ。
まったく、変な言葉覚えちまったねえ。誰の影響やら、困ったもんさね……と、BBA口調で言ってみたり。
で、その『天空の神殿』は、自ら進んで「貧乏くじ」をひいてくれた『七人の巫女』の一人シンシアさんの「任地」でもあるのだけれど……そこまで「登る」のに、めっちゃ大変らしい。
しかも、高地なだけあって、「空気が薄い」らしい。
さらに、年中通して「気温が低い」らしい。
……気の毒だ。ホント、申し訳ない。
そのへんの事情。
『巫女選挙』に立候補可能な『巫女見習い』たちは全員知ってるらしく、『七人の巫女』のあいだでは、不人気任地ナンバーワンだったのだ。
◇
『月の欠片』は、「巨大な岩のかたまり」だ。
『地球』のオーストラリアにある「ウルル」よりも、遥かにデカい。
その全長は、数十㎞。
もともとは、『宇宙』にあった「小惑星」だ。
その、とてつもない規模ゆえに、地表にあっては「山脈」に見えるのだ。
かつて栄華を極めていた『古都』が、『死の廃都』と呼ばれるようになったきっかけが、『月の欠片』の地表降下だ。
『月の欠片』によって、『古都』を貫流していた大きな川が堰き止められ、川筋を変えてしまった。
それがゆえに、水の確保が困難になった『古都』は、うち捨てられて『廃都』となってしまったのだ。
その『月の欠片』は、現在も『死の廃都』の北に鎮座している。
まるで、「巨大な山脈」のように。
――って、全部プリムローズさんから聞いた話だけど。
その正体は、『アアス』の「集団的意識共有体」のみなさんが系外に「おでかけ」する時の、『系外調査船団』の一部を構成していた「宇宙船」らしい。
これは、『全知全能神神殿』で『全知神』さまから聞いた話だ。
それって、「ありもの」の「小惑星」を、刳りぬいて造られたモノらしい。
某・宇宙要塞みたいな……イヤ、何らかの「推進装置」が付いてるだろうから、やっぱ「宇宙船」かな。播種船「シド○ア」も、小惑星から生えてるし。
全長が数十㎞もある細長い「小惑星宇宙船」を、どうやって地表に被害を……イヤ、被害は出てるけど……とりあえず「小惑星の衝突」みたいなカタチにならずに、「ふにゃっ」とした感じで接地出来たのだろう?
そんで、その応用として、『宇宙』で製造した「鉄の船」を『アアス』の海に何事もなく着水させてるんだろうな。
要するに、俺たち『地球』由来の人間が、勝手に『魔法』だと思い込んでる「オーバーテクノロジー」なんだろうけれども。
◇
でも、その『月の欠片』。
(その時ね、地面が揺れたんだって。ぐらぐらぐら……って)
軟着陸してから長い時間が経過し、風化して脆くなって、数百年前に「自重で崩壊」してしまっているらしい。
(だから、中がどうなってるとかは……分かんないと思うよ)
もう、その内部には入れなくなってるんだそうだ。
ゲームに出てくる「地下迷宮」みたいになってて、「ダンジョン探索」とか出来たら楽しそうだなあ、とか思ってたのに……しょんぼりだ。
……にしても、「小惑星の降下」とか。
よもや、「チャージ○ン研」と「ジュ○ル星人の魔王」が、まさかの共闘!?
ワンパンで粉々に砕いて、流星群とか?
あるいは、『劣等生』みたいに「マテリアル・バー○ト」?
イヤ、それだと、まるっと○○しちゃうか。
ホノカが言ってた「二期目」って、時系列的には「劇場版」の前に来るのね? 原作読んでないから、某・女性キャラは「謎キャラ」だったよ。やっと「つながり」が分かったよ。
あと、「三作目」にあたる妹さんが主役の『優等生』って、サービスカットが多めらしい。こんなこと言ったら、怒られるか……。
でも、○雪ちゃんが周囲を凍てつかせる冷気を出してるところを思い出すと、違う意味でゾクゾクしちゃうな。
(ジンくんて、やっぱりどエムなの?)
…………。
◇◇◇
それが、昨日のことだ。
そして、『月の欠片』の降下は、二千年くらい昔って話だ。
しかも、当時の『巫女』さんが、「北風が冷たいから、防いで欲しいです」っていうアホな理由で『祈願』したことが、そのまま通ってしまったそうなのだ。滅茶苦茶な話だ。
でも、『アアス』の『月』が『旅する惑星』の接近によって軌道がズレて、砕け散って『みなみのわっか』に成ってしまったのは、約三百年前って話だ。
明らかに、年代が合わない。
だから、『月』の「欠片」って、どういうことなんだろう?
あるいは、『アアス』には「衛星」が、何個もあったのか?
逆に、『地球』の「一個だけ」ってのも、かなり珍しいそうだけれども。
で、俺のかかえる喫緊の課題は、今年訪れる『とても寒い冬』の阻止だ。
そのためにも、新たな『月』の創造だ。
ムーン・メーキング……エスカレ……バイブレ……なんとかションだ。
(『カエルのツラにション、だ』)
何かのアニメのセリフらしい。俺には分からん。
兎に角、月を創るのだ。
(ムーンをクラフトするのだべか? 『違いの分かる男』だべか)
……それも、俺には分からん。
やり方としては……やっぱ、「南部煎餅」だろうな。
(『西部○察』?)
それアニメちゃうやろ。
てか、『ヤ○ト』に「南部さん」おるやろ、フルネーム知らんけど。
(……南部煎餅だべか?)
あれ、知らないの?
まあ、「せんべい」って言っても、生地は「お米」じゃなくて、「小麦粉」がベースなんだけど。そんで、薄めの固焼きのもあるけれど……俺は、ピーナツ入りの厚焼きのクッキーみたいなのが好きで……ああ、腹減った。
(……知ってはいるけども、何のつながりだべか?)
イヤ、『とても寒い冬』を阻止するためには、『みなみのわっか』を構成する様々な星間物質を、寄せて集めて固めて、『月』を創り出す必要があるやん?
(壮大な話だべさ……ポリポリ……)
雑多な物質を、ひとまとめにまとめて固めるために、必要なのは……。
(……ポリポリ……)
てか、何食ってやがんだ、お前は?
(接着剤だべか? 『おこし』みたく『水飴』で固めるのだべか?)
それも、「アリ」かもしれないけれど……『月』を創り出すほどの分量を用意するのは不可能だ。
(『ベビースター○ーメン』の『丸』は、どうやって固めてるんだべか)
……さあ? 俺は、素のまんまのが好きだし。
でも、「ピーナツ混ぜアレンジ」はたまにやるな。
ま、それはそれとして、正解は「熱」と「圧力」だ。
くだんの「南部煎餅」は、生地を「型」に圧しあてて、圧力を加えながら焼くのだ。ああ、腹減った。
(だども、そんなこと出来るのだべか?)
出来る出来ないじゃなくて、「やる」んだよ。
それ以外に、『とても寒い冬』を止める方法が無いんだから。
あるいは、『アアス』の「神様たち」が、人間たちの願い事を叶えてくれる『神授祭』の『最終祈願』でならば、「それ」を阻止出来るかもしれない……でも、「冬至」に行われる『神授祭』は、当の『とても寒い冬』の真っ最中なのだ。
それでは「手遅れ」なのだ。
おそらくは、太陽の光がまったく届かない真っ暗闇の中で、気温は氷点下になるであろう極寒の中で、全裸での『最終祈願』とか……過酷すぎる。
『七人の巫女』たちが、可哀そうだ。
今代の『巫女』たちは、俺と共に『巫女選挙』を戦った仲間なのだ(笑)。
……それに、12年前には、いろいろと「悲劇」もあったんだよ……。
(記憶には無いんだども、あたしらも当時は『王都』にいたらしいべさ)
ホノカと双子の妹シンシアさんは、「奴隷の証」と誤解されている「蒙古斑」が消えるまでのあいだ『東の円』に加隈……イヤ、匿われていたものの、12年前には、すでに『王都』に戻って来ていたらしい。
その時に『巫女』の一人を寒さから守るために亡くなった「母」のことを、後から聞かされて知り、俺の『とても寒い冬』阻止計画に協力する気になったらしい。
そして、12年前の『王都大火』に関連して亡くなった「ミーヨの母親」。
その『前世の記憶』を持つカオリちゃんも、他人事には思えないらしく、とても協力的なのだ。
ミーヨの「オ・デコ家」も、『大火』の失火元とされて、彼女の一族も日陰者の身に甘んじてきた。汚名返上とか名誉挽回とかじゃなく……ただ、彼女のためにも、『とても寒い冬』を止めてみせると約束したのだ。『約○タワー』は名曲なのだ。
為すべきことを為さないと!
『とても寒い冬』を止めないと!
それが、俺が「ここに居る理由」なのだから!
(あれも名曲ですよね。わたし的には、『F○cy you』のハーモニーが)
おや? カオリちゃんだ。
でも、『少女☆歌劇』だけあって、名曲ぞろいなんだよねー。
(あたしは『再生賛美○』が好きだべさ。『P○lestar』もいいのだべさ)
……曲? 歌じゃなくて?
(まぶしい)
え?
(……だから、まぶしいの)
何が?
おい、ミーヨ! 一体なにがあったんだ!?
(『全能神』さまの『ご光臨』だよ)
ああ、アレって無駄に明るくて、まぶしいんだよな。
でも、驚いたよ。謎の大爆発でもあったのかと思って、心配したよ。
てか、『ご光臨』?
(またあとでね)
――切れちゃったよ、念話。
◆
つづく、ってことだよ――まる。




