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214★最終章[15]◇宇宙シコシコ作戦[後]



 回想といっても、つい半日前の話だ。

 そんな、何十日も前のことじゃあない(半笑い)。


(その、半笑い、ってなんなんですか?)


 新発見された『軌道エレベータ』に命名した時のことだ。


 その際、『前世の記憶』を持つホノカの側近集団『御伽衆(オトギシュウ)』のあいだで、「『東京タワー』が登場するアニメと言えば?」というお題で、盛り上がったそうなのだ。


      ◆◇◆


(『○』だそうです)


 『○』? バンド? JAPAN?


(ただの『○』らしいですよ)


 その作品の劇場版には、東京タワーが雲から「逆さ吊り」になってるシーンがあるらしい。


 他にも、某・国民的アニメも当然のように名前が挙がっていたそうだけど……少数派の意見が、その作品だったらしい。


 でもまあ、最多票数獲得の作品も、バンドみたいな名前だしなあ。

 その某バンドの楽曲の中に、『木○の涙』って神曲があるのだけれど……俺の「先輩」は、その曲と『ぼくの地○を守って』という作品とのあいだに、なにか関連があるのかどうか知りたがってたよ。「ウィキ○ディア先生は何も教えてくれない」って嘆いてたよ。ちなみに、その作品でも「東京タワー」が物語のキーになってるらしいよ。カオリちゃん、知ってる?


(……わかりません)


 そう言えば、『少女☆歌劇 レヴュー○タァライト』にも、東京タワーが逆さ吊りにされて、おっことされるシーンがあったよ。


(ジンさん、観てたんですね?)


 観たよ。

 あまりのクオリティの高さに、思わず三周しちゃいましたよ。


 みんなは、何周したのかな?


(みんな?)


 ……イヤ、この場合の「みんな」は、今回『ス○ァライト』に投票した『御伽衆』の面々のことだよ。


(でも、意外でした。前に木登りしながら、お猿さんみたいにバナナ食べてた時には何も言わなかったから、てっきり観てないと思ってましたよ、『スタァ○イト』)


 …………。


(あ、ごめんなさい。言いすぎましたか?)


 イヤ、ちがくて……。

 『ス○ァライト』に、バナナ食べてるシーンなんて……無いよ?


(え? そうでした? でも……)


 たしかに、作中には「ばなな」の愛称で呼ばれる「○()なな」というキャラクターがいるので、全体的に「ほんのりバナナ風味」だ。


 でも、バナナそのものを食べてるシーンは皆無なのだ。


 俺は男の子なので、女子がバナナの皮むいたり、ぱくっと(くわ)えたりするシーンは、とてもセンシティブに感じてしまうのだ。強く印象に残るのだ。


(…………)


 無言だ。「わかります」って言ってよ!

 ここ、「使いどころ」だよ?


(わたしは女子ですから。わかりませんよ)


 それと、「縁日」で「チョコバナナ」食べるアニメはいろいろあるよねー。でも、「リンゴ飴」の方が多いかも。誰か統計とってないかな?


 あと、「未来人」ホノカによれば、『虚構○理』ってアニメでは、女子が男子の口にバナナを突っ込んだ後で、なんか下品なセリフを言ってたそうだけど……。


(でも、確かにそうでしたね。いえ、『スタァラ○ト』の話ですが)


 バナナの加工品ばっかりなんだよ。「ランチ」とか「プリン」とか「マフィン」とか「味噌汁」とか「蒸しパン」とか「ンシェ」とか……ところで「ンシェ」って何?


(画面に出てた四角いお菓子ですよ、もとは『フィナンシェ』って名前)


 そう、それとか。

 あとは「バナナチップ」とか「ホットバナナ」とか「バナナサンド」とか。

 ただし、バナナチップの袋開けてたのは、○恋ちゃんだったけれども。そして、「味噌汁」はネタだけれども。それと「ホット」は本人だったけれども。


(こまか――い!)


 三周したのは伊達じゃないよ。


 そんなこんなで、この世界『アアス』に「転生」したと思い込みつつ、『俺』として覚醒したあとも、あちこちでバナナを探したけど……見つからなかったよ。


(「バナナ、無いっス(泣)」って感じっスか?)


 変なアレンジくわえるのはやめれ。怒られるから。


 そんで、結局無くて……最後は近縁の「プランテン」から『錬金術』で「錬成」したからな。


 もしも、見つかってたら、言いたいセリフがあったのにな。


(「そんなバナナ!?」とかですか?)


 昭和か!


 ……でも、個人的な思い出話をさせてもらえば、俺、実はリアルタイムでは観てないんだよ、『少女☆歌劇 レ○ュースタァライト』。


 アニメ放送終了後、しばらくしてから、某・歌番組に『()(ぐみ)』が出てたんだけど……それが「最初のきっかけ」だったよ。


(ああ、はいはい。なるほど、そうでしたか)


 最初何も知らなくて、「なんだ、このコスプレ集団は?」って思ったよ。


(……本物なのに。コスプレ集団て)


 まったく関係ないけれど、『○ちゃんの仮装大賞』の最初期に、『ガン○ム』のコスプレ集団が登場して、会場全体をポカ――ンとさせた、って話は本当なんだろうか?


(……わかりません)


 それはそれとして、俺は「その後」で「まとめ観」したのだ。


(それで、スタァラ○トされちゃったワケですね? わかります)


 あの番組で共演してたのは……『ふらいんぐ○ぃっち』の主題歌うたった「mi○」さんとか、もう説明不要な「水○奈々」さんとか……あとは「小林○子」? てか、舞台少女たちが全員束になっても勝てそうにないよね、小林○子。ラスボスだもんね(笑)。


(違いますよ、変な妄想やめましょうよ。「由紀さ○り」さんでしたよ)


 うーん、よく知らない。


(『夜○けのスキャット』は有名ですよ? 絶対に聞いたことがあるはずです)


 夜更(よふ)けに「スズダルキャット」と遭遇したら怖いだろうな。


(目が赤く光りそうですよね? わかります)


      ◇◇◇


 とまあ、こんな感じに、またまたグダグダやってたのだけれども。


 このことは、のちに発動される『宇宙スタァライト作戦』や『アタシら再生産計画』に反映されるのだけれども……。


 にしても、「東京タワー」から、なんで「バナナ」の話になったんだろう?


 でも、『東京ばな○』っていう有名な「棒状のお菓子」があるもんな。


 それと、これもホノカが言ってたことだけど、「パパ棒」ってなんなんだろう?

 そんな「棒状のお菓子」あったっけ?


      ◇


 ま、話を『宇宙シコシコ作戦』に戻そう。


 いまだに、『宇宙ピストン』が上がって来ないよ。

 もう、どれくらい時間が経ったかな? アレって、時速どれくらいなんだろうな。


 にしても、背中が重い。

 そして、肌寒い。


 実は、いま俺が装備している『★マジカル・スペーススーツ☆』には、背中に大きな「水タンク」が付属しているのだ。


 それも、宇宙放射線を減衰させるため……とかじゃなく、かなり「しょーもない理由」で、だ。


 ホノカの『★召喚☆』によって、無理やり連れて来られた『東の(つぶら)』で、いろいろな『魔法』を「新規開発」していた時の話だ。


 『とても寒い冬』とはまったく関係ない――と当時は思っていた――ホノカオの二人が、全面協力してくれてたのだ。


      ◆◇◆


 『東の円』の『中つ海』の波打ち際は、灰色がかった「砂浜」だった。


 その当時は、ヘンな風に浮かれてて、異世界『アアス』の水辺なのに、「石灰岩」じゃないのを不自然には思わなかった。そして、のちに聞いたら、それは正確な意味での「砂」ではなかった。こまかく砕けた「岩石」じゃなかったのだ。


 とにかく、夏なので砂浜は暑かった。


 気を遣った『御伽衆』の人たちが、大きさな「日傘」を立ててくれた。

 ただ、万事が「和風」な『東の円』での事なので、ビーチパラソルとかじゃなくて、野外で茶会をたのしむ時に使う「野点(のだて)傘」だった。和風旅館とかで、たまに見かけるようなやつだ。番傘のデカいやつだ。


 その日陰で、「魔法の宇宙服」について話し合った。


「まずは呼吸だよね? そんで気密性。あとは動きやすさとかなあ?」


 『宇宙』で「酸欠」とか……どうしても、「ア○ロのお父さん」が思い浮かんでしまふ。

 『ZZ』で、残飯(あさ)ってたヤ○ンも、「酸素欠乏症説」があるんだっけか? てか、正確には「二酸化炭素」の影響だそうだけど……とにかく、あんな風になるのは避けたいな。


 あとから聞いた話だと、『プラ○テス』や『宇宙○弟』でも、いろいろあったらしいけれど……そっちはネタバレ禁止だ。


「デザインとか形状とかは、どうでもいいんですか?」

「そんなことより、いちばん重要なのは安全性だべさ」


 カオリちゃんとホノカだ。

 二人とも、涼しげな「浴衣(ゆかた)」姿だった。


 残念ながら、帯は短めで「お約束」は出来そうにない。「あーれー!」とか言わせながら、帯を引っ張ってコマみたいにグルグル回すアレのことだ。


 でも、日本人顔の美少女であるホノカはともかく、「俺のコピー体」がベースになってるカオリちゃんの方は、『地球』の全人種の特徴が入り混じったような、独特な「アアス(じん)」の風貌なので、どことなくコスプレっぽかったよ。ま、俺も同じだけどね。


「宇宙には、危険がミチミチ言ってるべさ」

「それを言うなら、満ち満ちてる、だろ?」


 どことなく下品な言い回しに、即座に突っ込んだよ。

 でも、「F9」で変換すると「NANA」になるよ。


「確かに、安全はいちばん大事じゃないですか」

「最初に『魔法』を『魔法』として発動させるのは、カオリちゃんだもんね」


 それを、俺の「魔法コピー能力」で、まるっとおいしくいただくのだ。


「やっぱ『安全第一』だよね。『Classr○○m☆Crisis』でも、そんな標語が出てたよ」


 『Classr○○m☆Crisis』は、『火星』に進出した人類の話だ。

 新型ロケット搭載の宇宙機のレースとかやってたな。あと恋とか選挙とか。会社経営的な事とか。入れ替わりとか。いろいろな要素を詰め込まれてた気がする。


 それはそれとして、この惑星『アアス』の生きものたちは、『宇宙』に進出するのに『地球』とは違ったアプローチをしているので、「ロケットや人工衛星の破片」とかいった宇宙ゴミ「スペースデブリ」にぶつかる心配はいらないはずだ。


 でも、俺たちのような『地球』由来の生物にとって、過酷な環境には変わりがない。

 ホノカによれば、『宇宙』には、目には見えない危険な領域の電磁波やら宇宙放射線とかが、ミチミチ言ってるそうなのだ。


 『太陽』のような「恒星」からは、日常的に水素やヘリウムの「原子核」が飛んできてるらしい。それって、原子を構成する「電子」を失っていて、電気的に「ラブ」……じゃなくて「プラス」なので、「磁場」があれば防げるらしい。


 でも――


「ガンマ線やニュートリノは、磁場では曲がらないべさ」


 って事らしいのよ。


 それでも、「魔法の宇宙服」の「素材」として使うのは、『アアス』の陸上生物を「危険な宇宙線」から守ってくれてる『守護の星(特大サイズ)』だから、そのあたりは「丸投げ」でも何とかしてくれる気がする。


「ふー……ごちそうさま。『麦茶』って、美味しいね」


 黙って俺たちの話を聞いていたミーヨが、「麦茶」を飲み干して、空のコップを砂浜に置いた。

 このコップ。実は『アアス』固有の生物「マルタマガラスガイ」の「貝殻」そのまんまだ。


 そんで、これこそが「砂」の正体だ。ガラスの「細粒」なのだ。

 ある理由があって、代用の「砂」として、わざわざ細かく砕いて「砂つぶ状」にして、数十年がかりで『中つ海』全域に敷き詰めたらしい。すんごい時間と労力が要っただろうな。白い珊瑚砂で知られてる某・観光地のビーチみたいな話だ。


「飲みすぎると、『おトイレ』近くなるけど」


 ミーヨも、いつもの三つ編みに「浴衣」だった。

 服の襟が「前合わせ」の場合、『女王国』ではナイトガウン的な「夜の服」となるので、微妙な違和感を感じていたらしいのは、あとになってから聞いた。


「『おトイレ』か……盲点だったな」


 その点も、考慮すべきだったかも?

 でも、『宇宙』での「活動時間」は、せいぜい数時間だろうから、事前の水分摂取を我慢すれば、なんとかなりそうな気もする。イヤ、その前に『アアス』の『魔法』は、「二打点(約3時間)」で自動停止してしまうのだ。『おトイレ』は気にしなくてもいいかもだ。


「いろいろ確認するために、『海』に潜るんでしょう?」

「うん、やるよ。『潜水実験』」


      ◇


「……どうしても、浮くな。潜水出来ない」


 『★マジカル・スペーススーツ☆』の頭部は、巨大なバブルキャノピーになってる。その部分が「浮き」みたいに作用して、潜水出来なかった。想定外だ。『宇宙』でなら、問題ないはずなのに。


「おねーさんたち、お尻だけ海面に突き出して何してたの?」

「ぶりぶり~! なの? ケ○だけ星人なの?」


 『前世の記憶』持ちの子供たちも、いらんことを教えられて、すくすく元気に育ってるらしい。


 そんで俺、『クレヨン○んちゃん』は一度も観たことないのに、ちゃんと分かる。すごいな、国民的アニメって。どこかしらで目にしてるもんな。


「潜ろうとしても、うまく潜れないんですの」


 当時はまだヨハンナちゃんだったので、こんな口調だ。


「貴女がたは、どーやって潜ってるんですの?」


 『中つ海』は、『地球』由来の魚介類が豊富で、その海底にはエビやらウニやらもいるし、その他の貝類もいっぱいいるらしい。


 なので、それを採る『海女(あま)』さんたちの仕事場になっていて、その「見習い」の子供たちに、もの珍しそうに見られてたのだ。


 そんで、「海女さん」って、独特な「磯シャツ」とか着てるはずなのに、『東の円』では「セーラー服の上着と白いスクール水着」だった(笑)。海に潜るってよりも、空を飛びそうな装いだ。白スクなのが、よりメニアックだ。


「おもし付けてるよ」


 見ると、「魔除け」だという「☆」のカタチをした「ドーマンセーマン」の縫い取りが付いたベルトを腰に巻いてる。そこに、何か重たい金属がウエイトとして入ってるらしい。


「おもし……ね」


 でも、より単純に、「潜水艦方式」でいくことにした。


 利用したのは、「水」だ。


 カオリちゃんに頼み、『魔法』を新規登録するための「仕様書」とか「特許出願状」にあたる『魔馬(ママ)』に、そのことを書き加えてもらい、『火巫女』であるホノカに『祈願』してもらった。


『なんか、いっぱい書いてあって、ややこしすぎるぞい』


 まばゆいばかりの光輝に包まれた「普通のおじさん」があらわれ、そう言った。


 それが、俺たちと「田中さん」との出会いだった。


 彼は、『太陽の大洋』を管轄下に置く『魔法』システムの「管理人」だ。

 『女王国』で言う『世界の理の司』に相当する存在だ。


 でも、特段重要な事でもないので、以後のやりとりは「まるっとカット」だ(笑)。


 とにかく、その後は、自在に潜水深度を操れるようになった。

 ついには、『中つ海』中央の最深部にまで到達出来て、『東の円』の大規模な「◎」形のドーナツ構造の謎まで解けたよ。


 どうやら、超超巨大な「塔」を建造中に、真上の宇宙空間から落ちてきた「何か」によって出来た「クレーター」だったらしいよ。その「何か」に含まれていた成分が融けて、黒いガラス状の「海底盆地」になってたよ。


 とりあえず、めっちゃ楽しかったよ。潜水実験。


      ◇◇◇


 で、その「設定」が残っていて、『★マジカル・スペースーツ☆』の背中には、「水」を任意に出し入れ可能な「バラストタンク」がついてるのだ。


 それを忘れてて、初期設定の「水」が入った状態で『宇宙』に出てきちゃったのだ。

 高度的には『宇宙』とは言え、惑星『アアス』の大地とつながった『軌道エレベータ』にいるがために重力はある。なので、背負ってるタンクがそこそこ重たい。そして、そのせいか少し肌寒いのだ。


 と言って、その「水」を「排出(タンクブロー)」したら、それが「推進機(スラスター)」となって、またまた『宇宙』を漂流してしまうハメに陥るかもしれない。そんな「お約束」は、いい加減止めときたい。


 でも、この「水」からは、呼吸用の「酸素」も作ってるはずだ。『魔法』で。


 人間の「酸素消費量」って、1分間で0.5グラムくらい……とかだった気がする。

 つまりは、酸素1グラムで2分間生きてられるってことか?


 いわゆる「一酸化二水素」であるところの「水」1リットルに、酸素は何グラム含まれてるんだろう?

 ……よく分からん。


 舞台少女の「キラめき」は、何グラムなんだろう?

 ま、それは知ってるけど。


 いつまで経っても上がって来ない『宇宙ピストン』を待ちながら、そんなことを考えてると、突然「それ」が鳴り出した。



      ピコン……ピコン……ピコン……。



 なに? このカラータイマー?

 ウルトラ的な何か? アニメじゃないやん……イヤ、アニメ化もされてるか。


 どこかで聞き覚えのある音とともに、胸元が赤く明滅し出したよ?


(『魔法』の時間切れ3分前の警告音です!)


 あ、カオリちゃんだ。

 そう言えば、なんか細々と『魔馬』に書き込んでたけど……そんな機能も盛り込んでたのね?


(呑気な事言ってないで、早く空気のあるところに退避してください! そのままだと、真空の宇宙空間に、全裸で放り出されてしまいます!)


 そりゃあ、タイヘンだ。


 でも、いざとなったら、俺様無敵のバリアー『★不可侵の被膜☆』……を外してるんだった!



      ピコン、ピコン、ピコン。



 なにやら警告音の間隔が、早まってきてるんですけど?


(はやく、『シュワッチ』してください!)


 出来ねーよ、んなこと。


 急いで『駅』の内部に入ろうとしたけれど、ハッチが開かなかった。

 内部との「気圧差」を利用して密閉してあるので、本気で力をこめないと開かないのだ。



      ピコンピコンピコン!



 せっつくような速度で、鳴りまくってる。


 これ、もうダメなヤツなのでは……。


 目の前に、「魔法の宇宙服」から、ヒラヒラと剥がれて離れていく『魔法』のキラキラ星が見えてる。虹色の揺らめきが、とても綺麗だ……。


 ……ああ、俺から「キラめき」が失われていく……。


 何か……全身が、煮立つような……そんな……奇妙な……痛み。

 身体の、あちこちが……痛い。特に……ちん……。


(ジンくん! 絶対に、死んじゃヤだ!!)


 ミーヨの……思い……だ……。


      ◇◇◇


 そして――


(おっぱいだ)


 見覚えがある。

 これって……「あのひと」のだ。


 俺が『銀の都』で、間違って『★ぷりんとあうと☆』してしまった、ある女性の……てか、このひと服着てないぞ。いろいろ見えてるぞ(笑)。


「…………」


 どことも知れない「白い空間」で目覚めると、目の前には全裸の女性がいた。


 第4555代『聖女』であった女性……つまりは「ミーヨの母親」の若いころに「生き写し」だ。『全知全能神神殿』の『大浴場(女湯)』で、『全知神』さまが「仮の姿」として現れた際の「依代(よりしろ)」だ。


「……あなたは?」

「…………」


 異様な感じの無反応だ。「中身」が入ってない感じだ。


 これって、「人間のコピー体」とかじゃなくて、『化物(ケモノ)』なのかもしれない。

 最初に見たものの、姿かたちをそっくりとコピーしてしまう謎生物……イヤ、生物じゃなくて「装置」なのかも。


 『東の円』に行くきっかけになったドタバタで、コピーされてしまった「六本指の猫」茶トラ君。そしてラウラ姫とドロレスちゃん。それらの経験を踏まえた上で、改めて見てみると、これってやっぱり『化物(ケモノ)』だと思える。


 そっくりはそっくりだけど、微妙な違和感があるのだ。

 それって、「鏡面反転」のせいだ。


 例えば、ダ○ヤさんと、その中の人のように、口元にある黒子(ほくろ)が逆の位置……イヤ、これは違うか。


 それはいいとして、俺は、このひとの「オリジナル」の「おっぱい」を見たことがあるのだ。


 それは『この世界』で最初に目覚めた……と「勘違い」した時のことだ。

 ミーヨによれば、それは『全知全能神神殿』の「授乳室」でのことだったらしい。


 そのひとの「おっぱい」は、左右の「大きさ」がかなり違っていたのだ(笑)。


(赤ちゃんだったはずなのに、そんなことを覚えてるなんて……ジンさんの変態!)


 これは……カオリちゃん?


(それ、実はわたしだったんですよ?)


 彼女に宿る「黒い星」……『アアス』の魔法システムに関連する情報収集端末は、今までに幾人もの人間に宿り、その「記憶」を収集して「記録」している――と思われる。


 だから、彼女が「わたし」と感じているのは、それも実は「思い込み」による「勘違い」なんだけどな。


 そういう『前世の記憶』があるから、自分は「その人の生まれ変わり」に違いない……っていう「勘違い」。


 俺も、それについては人のことをどうこう言えないけれども。


      ◇


 にしても、またまた「気絶」して、別な場所で目覚めるとか……。


 『夏○友人帳』でも、何度も何度も夏○君が「気絶」して、別な場所で目覚めてたけれども……。


 で、ここはいったいどこなんだ?


 そんで、『夏○友人帳』の舞台って、どこなんだ?


(熊本県の人吉(ひとよし)市。球磨(くま)地方らしいですよ)


 熊本と聞くと、「ハウスみかん」とか「トマト」食いたくなるな。

 そこで作ってるかどうかは知らんけど……イヤ、「球磨」って言ったら、もう「焼酎」だよな。作中では、「先生」が酒好きで甘いもの好きだったけど。あとエビフライもか? ところで、猫ってエビ食ってもいいんだっけ?


 ま、それはそれとして、いま現在の俺自身が居る場所を知りたいよ。


 またまた「白い空間」だよ。

 これきっと「炭酸カルシウム」がメイン成分だろうなあ。「石灰岩」か……それが変成した大理石的な。


(そこは、『軌道リング』に付属してる『白玉(しらたま)』のひとつらしいです)


 用語の不統一だな。

 俺が『駅』と呼んでる「白いカプセル状の物体」の内部らしい。


 ちなみに、某・舞台少女のアイコンになってる「白いクマの頭部みたいな物体」は「ミスターホワイト」って名前らしい。あと、完全に別作品だけど『恋するシロ○マ』は「BLもの」って「(くく)り」でいいんだろうか? ……知らんけど。


 それはそれとして……知らない人がいるよ?

 全裸の女性が(笑)。色白で、栗毛の女性だよ。


(わたしにもイメージが伝わって来てますけど……それも「わたし」なんですかね?)


 だから、それは「勘違い」だってば!


 てか、俺って、どうやって助かったの?


(ミーヨさんの『ラブ☆パゥワ~』なんじゃないんですか? 愛ゆえに)


 『魔法少女 ○』か! 小馬鹿にした言い方はやめてよ!


 どうでもいいけど、腹減ったな。

 ところで、『宇宙シコシコ作戦』はどーなったんだ?


(もう終わったよ)


 …………ハア?


(そこは目的地にしていた『軌道リング』の中だべさ)


 ……ハア!?


(ジンさん。自分がどれくらい眠っていたのか、わかってないんですか?)


 ……わかりません。


 ど、どれくらい寝てたの?


      ◆


 ……三か月くらい?

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