208★最終章[9]◇救出作戦会議
こ、これは……いったい……なに?
目の前には、ある種の「コウチュウ」みたいな物体がある。
全体が半透明なスケルトンで、キラキラとした虹色の輝きに覆われてる。
カタチは……「スカラベ」に似てる。
ただし、大きさは巨大だ。軽自動車くらいは、ありそうだ。
ここは宇宙空間だ。
何なのだ、これは?
(乗ってください!)
ネタにのっかれ! って意味?
しかし、他に「手」は無い。
その言葉に従おう……としたら、「それ」に付いてる「脚」が、多関節のロボットアームみたいな動きで、俺たち(※含む『化物』3体)を捕獲した。
この「脚」。
ロマンあふれる「多脚メカ」みたいな「不整地踏破用」とかじゃなくて、作業をこなすための多用途な「腕部」なんだな。
で、どうなるんだ?
光り輝く「甲虫」は、背中の硬い「鞘翅」を広げて、その内側にしまわれていた「後翅」を広げ、羽ばたき始めたようだった。
関係ないけど、『だがし○し』の「ほたる」は、「遠○サヤ」の事を「サヤシ」と呼んでいたな。
…………。
ぜんぜん、前に進まない。
何しろ、空気の無い宇宙空間だしな。空力的な「飛翔」は無理やろ?
と思ったら、お尻の方から、大量の「空気」らしきものを噴出させた……らしい。
流れに乗って、『守護の星(普通サイズ)』らしき、小さなキラキラ星が見えたのだ。
音は伝わらないから、聞こえないけれども……さぞや、下品な音であろうな。
てか、これは……何なの?
現在『聖女』ヨハンナに化けているカオリちゃんに訊いてみた。
(それが、『ダイオウフンコロガシ』なんだそうです)
……へー、初めて見た。しかも、『宇宙』で。
ミーヨが言ってたヤツって、コレかあ。
半透明で、キラキラしてて、綺麗やん。
別に怖がる要素……イヤ、「虫」にしてはデカ過ぎるし、見かけたらビビるか。
(『守護の星』が合体した『魔法』による疑似生命体とでも言うべきもの、らしいです)
そんなものを? どうやって造ったの?
(ジンさんが宇宙を漂流しそうだったから、救難と救援を『祈願』したんです。そしたら、それが緊急派遣されたらしいです)
……さ、さすが『聖女』さま。
そんな事が可能なんだ?
(やってみたら、出来ちゃった。テヘ☆ って感じですけどね)
イヤ、でも待って!
俺は「●(固体)」じゃあない!
なんで俺のピンチに現れるのが、「フンコロガシ」なんだよう(泣)。
(ゼイタクは言わないでください!)
カオリちゃんから、ぴしゃりとしかられた。
◇◇◇
(ジン君、ジン君)
(ジンさーん? もしもーし?)
…………。
……。
ん?
(――目覚めよ。だべさ)
ここは異世界か! ……イヤ、異世界だけど。
(あなたは、そこにいますか?)
『宇宙』から降下中っス。
なので、現在位置は不詳っス。「そこ」って何処っスか?
(……もしかして、寝てました?)
ああ……寝てたかも。
なんか……変な夢……みてた。
デッカい『フンコロガシ』につかまれて、運ばれる夢。
(ジンさん、ウ○コなんですか?)
(ジン君は、え○こなんだべか?)
ちげーよ。ひでー事言うなよ。夢の中の話だよ。
(『蒼○のファフナー』に、スカラベ型の『フェス○ゥム』が出てましたけど、あんな感じですか?)
え? 『○XODUS』?
(いえ、『無印』の、かなり後半の方だったと思います)
でも、「フェ○トゥム」って、基本「金色」だしなあ。
夢の中では、半透明でキラキラした「虹色」だったよ?
(それにしても『フンコロガシ』に運ばれるとか……もしかしたら「別な世界線」で、ジンさんの身に、そんな事があったのかもしれませんね?)
いわゆる「平行世界」?
アニメでも、某・魔法少女ものとか、他にも色々とあるけど……。
(平行世界同士で戦ったり、ゲームみたいに分岐したり)
(ゲームだと思ってたら、平行世界だったのもあるべさ)
でも、本当にあるの?
『宇宙』そのものが、炭酸の泡みたいに、いっぱいポコポコと出来るんでしょ? 物理的に、あり得るの? ウリエルは熾天使なの? あるいは智天使なの? そして、チタンダエルは天使なの?
(どうなんでしょうね? それと、知っててボケてるんでしょうけど……千反田さんは、『○菓』のヒロインです。人間です。ネットでファンアート画像を探すと、かなり面白いのが出て来ます)
みんな、どうしても○太郎君とくっつけたいんだよねー。
(ところで、平行世界の話から何故『氷○』の話になるんですか?)
最終話に、世界が分岐しそうな「まぼろしの告白」があったやん。
……てか、カオリちゃん。無事なの? 『最終祈願』は?
何らかの身体的影響が、あるんじゃあないの?
(秋ですし、夜ですし、すこし肌寒かったです)
その程度?
てか、実際のところ『最終祈願』て、どんななの?
(全裸で祈願するんです)
(下着まで全部脱ぐのだべさ。あたしはよくやってるべさ)
……そ、そうなんだ?
それが『最終祈願』だったんだ? てゆーか、やっても■なないんだ?
確かに、以前『全知全能神神殿』の『伝承庫』で調べたところでは、『最終祈願』を行った『聖女』も、それが原因で亡くなるなんて事は皆無だったらしい。
一種の「都市伝説」だったのだ
俺が、いちばん最初に『最終祈願』について聞いたのはプリムローズさんからだったけど……彼女自身も信じてはなさそうな感じだったものな。俺の方は、ついつい鵜吞みにして、信じてしまっていたよ。
『アアス』の生物には、「自己犠牲的精神」や「デストルドー」が無いらしく、「我が生命を代償に奉げん」という言葉をつけると、どこかしら「人間味」のある「魔法システム」が、びっくり仰天して、かなり無茶な「お願い」でも聞いてくれちゃうらしいのだ。
でも、今年は『とても寒い冬』がやって来る。
それを阻止しないと、また様々な悲劇が起きてしまうかもしれないのだ。
にしても、「全裸」とか……まるで、俺みたい。
てことは、俺いま「丸出しのひと」と喋ってるの?
(『白銀の祭服』は着てますよ)
(ザンネン。リモネン。ゴム溶かす)
なんじゃそら? リモネンって「柑橘類」に含まれる成分だっけ?
(最終話では、ミコがめっちゃ「シコシコ」してしまうのだべさ)
ホノカだけが知る「未来のアニメ」の話らしいけど……ミコがシコシコ?
てか、君ら双子は、二人とも『巫女』やん。
こう言うと、どっかの設計局みたいだな。ちなみに、某国の戦闘機の「MiG」って、「ミコヤーン」って人と「グレーヴィチ」って人の名前の頭文字だそうだよ。
にしても、女の子が……シコシコ?
(男の子もシコシコしてたべさ。最後は「大爆発」なのだべさ)
性的欲求不満だったのか?
まるで俺……イヤ、ホントに何の話? おかしな方向に話を誘導してない?
(わたしが、いつもしてあげてるのは……)
あ、ミーヨだ。
完全に誘導されてるやん。ひっかかってるやん。
言っとくけど、余計な事は言わなくていいぞ? 手○キとか。
(自分で言っちゃってるじゃないですか)
(自爆してるべさ。さっきの「シコシコ」は「空気入れ」の事だべさ)
…………。
てか、人が寝てるとこ起こして、何の用だったの?
悪いけど、俺いま絶賛降下中なんだよ?
(わたしは『救出作戦会議』って聞いたよ?)
そのために、今回はミーヨも加わった四者での「念話リモート会議」らしい。もうじき俺は『アアス』に「大気圏突入」してしまうかもしれないのに……のん気だ。
てか、俺に残された時間は……どれくらいだろ?
(ジンさんの救助方法が決定しましたので、お知らせします)
(『きらきら☆ジャンプ』してもらうべさ)
きらきらジャンプ?
ナニソレ? 「き」が一個多くない?
(『アアス』の『大気圏』の上層部には、『有害な宇宙線』などから地上の生物を守るために、『大いなる守護の星』が連なった層があるらしいんです)
ああ、うん。『守護の星(特大サイズ)』の層ね?
『宇宙ピストン』で吊り上げられた時に、そこ通ったよ、俺。
(そこで、ぼよよよよーん、て飛び跳ねるのだべさ)
ミーヨは知らないだろうけど……トランポリンみたいにか?
(『とらんぽりん』?)
意味は理解できなくても、「音」はきちんと聞き取るなあ。
試しに、脳内で「トランポリン」のイメージを思い描いてみよう。ミーヨに伝わるかな?
(んー……その、えっちな格好のお姉さんは関係してるの?)
レオタードを着た「お姉さん」は付属しておりません(笑)。
あと、レオタードは「えっちな格好」ではありません。スポーツウェアの一種です。
てか、その下にある「布のヤツ」だよ。
上下にバインバインしてるヤツ。
(麦を脱穀した後で、籾殻を風で吹き飛ばすために、すっごく大きな布の上に乗せて、みんなで力を合わせて、上下にバインバインするみたいな感じ?)
……へー、『アアス』の農作業って、そんなことしてるんだ?
(『地球』でも、選別機で「軽いもの」を選り分けんのは「空気」だべさ)
(原理的には、一緒ってことですね)
(あと、たまーに巡業でやって来る曲芸団の軽業師とかも、大きな布で人間を放り上げるよ?)
(『地球』のサーカスにも、そんなのがあるべさ)
ミーヨとホノカだ。なんか意気投合してるし。
俺は、ついつい『神社』の「お賽銭」のことを思い出しちゃったよ。
(……ああ、天の上にいらっしゃる神様に、お賽銭を奉る『儀式』ですね?)
賽銭箱から取り出した「お金」は、そのまま神社の収入にはしないで、特別な段取りを踏むらしいのだ。
広げたシートに乗せた「お賽銭」を、一度、真上の空中に放り上げて、下に戻って来た分が神社の「取り分」って事らしいけど……『地球』には「重力」があるからな。当然の如く、全部落ちて来るんだよね。
ま、俺もいま『アアス』に向けて、絶賛降下中だけどね(泣)。
(……へー、『地球』の『神殿』では、そんなことしてるんだ?)
『地球』の「一部地域」だけどな……。
形式というか、様式というか……行うことが大事なんだよ。
で、話は逸れたけど……「き○らジャンプ」を『宇宙』で?
俺一人で? 「ドロレスちゃんに化けた『化物』」たちもいるけれど。
(『成層圏』ならぬ『星層圏』を利用して、『スキップ弾道』を描くのだべさ)
スキップう? さっき「ジャンプ」って言ったやん。
そんで、『キャロル&チュー○デイ』に、そんなキャラいなかった?
あるいは『ラブ○イブ!』2期目で、ヒロインの子(※当時生徒会長)が「らんららんららーん!」とか言ってたヤツ? 念話の相手が、ホノカだけに。
(そっちじゃなくて、何ていうか『水きり石投げ』みたいに、ピョンピョンピョン……って感じですかね)
(ジンくん。『水きり石投げ』って何?)
丸い平らな石ころを投げて、水面を何回ジャンプさせるか競う競技……イヤ、別に競技じゃねーか。「遊戯」か? でも、どっかで「大会」があった気がするな。そしてアニメの中では、石ころの代わりが「人間」である場合もあるけどな。
(それなら、わたしたちも遊んでたよ)
俺たちが育った「ボコ村」は、実は巨大な採石場の跡地に出来た「クレーター盆地」だそうで、その真ん中には「冬でも凍らない池」があって、そこで俺たちも『水きり石投げ』やって遊んでたんだそうだ。『前世の記憶』と引き換えに、その「記憶」思い出せないんだよな、俺。
(凍らない池? 水酸化ナトリウム水溶液だべか?)
北海道では、凍った路面に転倒防止対策で撒かれてたらしい。
(『融雪剤』なら『塩化カルシウム』だべさ)
俺が思った事は、間違っていたらしい。
(なげずにほったらかしにしといた『除湿剤』の水は、不凍液なのだべさ)
ちなみに「なげる」は「捨てる」って意味らしい。
(はなまる。ほしまる。うちゅうまる。だべさ)
こっちは大正解だったらしい。
モトネタは『魔○城でおやすみ』らしい。
ついでに言えば、『アアス』には『増幅円』という「魔法増幅装置」がある。
丸い円形「○」の中に、虹色のキラキラした『守護の星』が「集まりやすい」という性質を利用したものだ。
でも、色々と実験した結果、「○」の真ん中が「陸地」じゃないとダメらしくて、「ボコ村」でも、巨大な「◎」である『東の円』でも『中つ海』という「水」があるせいで、『魔法』の広域化も強大化も不可能だった。
もし、それが可能だったなら、地上にいたままで『みなみのわっか』をどうにか出来たかもしれないのにな。
(話を戻すと『スキップ弾道』については、『ロケット○ール』ってアニメでも、チラッとあったんですけど……知りません?)
……うーん、観てない。
ただ、その作品に登場する『宇宙服』が、何やらエロいという事だけは知っている。某アニメの「○ラグスーツ」を彷彿とさせる「ぴっちり感」だよね?
(ああ、『スキンタイトスーツ』のことですね)
『サン○ャイン!!』では、ダイビングショップの娘でもある「○南ちゃん」が、ウェットスーツのファスナーを下げた途端「ぶるん」てなってたけどな。ある部位が。俺の大好きな部位が。
(……また、そんな事ばっかり)
あきれてるのはカオリちゃんだ。
(『宇宙服』って言ったら、あたしの『記憶』には……)
ここで、またまた話が脱線して『未来人』ホノカが、『宇宙服』を着た謎のちびっ子『未来人』について話したけど……長くなるので、まるっと割愛(笑)。
『安達と○まむら』って作品らしいよ。
作中に出てくるのは、野暮ったい、もっさりとした「宇宙服」だったようだけど、同じ年にリアルで打ち上げられた某・宇宙船に乗り込んだ宇宙飛行士が着てた「新型宇宙服」は、めっちゃスマートになってたらしいよ。それ、『し○むら』で買えるんかな?
ま、それはそれとして……話を戻そうよ。
我々がアニメネタを挟むと、話が長引いてしょうがないよ。
で、『スキップ弾道』とやらのために、俺は何をすればいいんだ?
(お構いなく、だべさ)
(何もしなくていいそうです。そのまま降下していただければ)
…………。
(あとは『田中さん』が何とかしてくれるべさ)
『田中さん』は、「魔法システム管理運営」の代表みたいな存在だ。
この惑星『アアス』は『海洋分断線』で四等分されてるので、『太陽の大洋』と『北方海面』担当だそうだ。日本人の『前世の記憶』持ちの多い『東の円』の人たちから親しんでもらえるように、自称「田中さん」なのだ。田中なのに『美南海』担当じゃないのだ。
(なんだったら、寝てても構わないそうですよ)
(あたしも、なんだか眠くなってきたべさ)
(でも……そんな事出来るの? ジンくんの『★不可侵の被膜☆』って、触れたものから『かいねてぃっく・えねるぎー』を吸い取るみたいになってるじゃないの? 『ぼよよよーん』なんて風に弾むの?)
(…………)
(…………)
…………。
生粋の異世界人であるミーヨさんからの鋭い突っ込みで、我々は言葉を失ったよ。
しかし、カイネティック・エネルギーとか?
どこで覚えたんだ、そんな言葉を。またまた「発信源」は俺かも知れないけれども。
ちなみに、『東京○種』の「カネキ君」のバイト先は『あんていく』って喫茶店だ。敵は「C○G」だ。「ハイ○」の職場も「○CG」だ。
それはそれとして……なら、どうすればいいんだ?
ミーヨの言う通り、俺の無敵のバリアー『★不可侵の被膜☆』を展開したまま、その『星層圏』の境界に接触したら、またまた『運動エネルギー』が霧散して、「ふにゃ」って感じにその上で停止してしまう気がする……。その表面を跳び跳ねるなんて、不可能な気がする。
(答えはカンタンだよ)
ドロレスちゃんに化けた『化物』を「バリアー除けのシールド」として使う事になった。いま現在も、俺の足をつかんで連結中なのだ。
てか、「バリアー除け」ってなんだよ(泣)。
色々と間違ってる気がするよ。
(したら、大丈夫そうだべさ)
(やれやれですね。あ、そろそろ就寝の消灯時間なんで、念話切りますね? じきに『水灯』消されちゃうんです)
あれ? そんな時間なの?
まだ明るいのに……あ、そうか!
俺は「西から東」へと降下中なんだった。
『第一中継駅』からの「空気噴射」は、意外なほど初速が速かったらしいんだよな。
(それでは、おやすみな――)
(…………スヤー)
二人とも「寝落ち」?
(じゃあ、わたしもおやすみー)
うん、いい夢を。
◇
「……(ハグう)……(ハグう)……」
『化物』たち3体に、俺の周囲を取り囲むように抱きつくように、全身のゼスチャーで指示した。
イメージとしては『響け!』の○美子と○奈の「想像上の和解」だ。あのシーン好きなのだ。
むぎゅむぎゅむぎゅ……って感じで、3体が抱きついて来た。
なかなか素敵なプチ・ハーレム状態だ(笑)。
でも、まだ12歳のドロレスちゃんそっくりだし、向かい合って、顔がすぐ傍にあるのも微妙な気分なので、真正面の「半ケツちゃん」には、俺が後ろからハグする事にした。もちろん今回は「YES!おっぱい、NO!タッチ」だ。ちなみに、「ドローレス」の愛称が「ロ○ータ」だ。
そんで実は、半ケツちゃんは「金髪ツインテール」にしてるので、後頭部の頭髪が真っ二つに割れている。そう言えば……『女王国』では「ツインテール」の事を、この後頭部の見た目から「尻割れ髪」と呼ぶのだった……。
「……(パクパクパク)……」
半ケツちゃんがくるりと俺の方を向いて、何か言ってる。
ただし、宇宙空間なので、「音声」としては伝わって来ない。
骨伝導みたいな感じでも伝わらないから、『化物』は『魔法』で「発声」してるのかもしれない。
で、俺なりにアテレコしてみると、「お兄さん! お尻にナニか硬いモノが当たってます!」とか言われてる気がする。
生理現象です。
俺は、本物のドロレスちゃんみたいに、さくっと答えた。
◆
またまた、こっそりと間違いを直しました――まる。




