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146◆第二次全体握手会および夜の握手会


 行先は、『西の街区』らしい。

 まるで「囚人護送車」みたいな馬車に押し込められて、移動中だ。


「……ぼそぼそ(せめて、マイクロバスとかに例えてください)」

 隣に座ってるカオリちゃんから、小声で注意された。


 マイクロバス?

 そんな良いもんじゃないよ。


 窓もない、真っ暗な車内だ。

 でも、右目に「暗視機能」がある俺には見えてる。

 真ん中に通路があって、そこを挟んだ向かい合わせに素っ気ない、長い座席が配置されてる。その椅子が、まためっちゃカタい。ただの板だよ。「兵員輸送車」みたいな車内だ。


 『女王国』にも「ワタリガニ」って呼ばれてる兵員輸送用の装甲馬車があるけれど、これよりも、ずっと快適だったよ。少なくとも窓はあった。「銃眼」だけど。


「……ぼそ(ああ、そうでしたよねー)」


 この馬車、ホントに窮屈だよね?

 せめて、囲いが無くて、もっと開放的だったらいいのに。


「……ぼそぼそ(完全に箱型に覆われてますもんね)」


 問題。(ほろ)が無くても「ホロ馬車」って、なーんだ?


「……ぼそぼそ(だから『狼と香○料』って、2000年代のアニメなのに。なんで知ってるんですか?)」


 だって、あの二人(の中の人)。

 俺が、密かに敬愛するル○ーシュ様と、カレ○なんだもん。


「……ぼそっ(……ああ)」


 リアルタイムでは観てなかったゼロ年代の作品を、まとめて観てた時期があったんだよ。男には、人生において、そんな時期があるんだよ。


「……ぼそぼそ(お仕事が無くて、ヒマだったとか?)」

「…………」


 それはそれとして――


 馬車の中には、『神殿』でよく使われてる「匂い消しのお香」の香りがしてる。

 これって、何の「匂い」を誤魔化してるんだろう? 毛皮? 林檎?


「……ぼそぼそ(何かの動物の匂いじゃないですか)」


 カオリちゃんは、そう言うけれど、何の動物だろう? 狼? 羊?


 競馬用の競走馬とかかな? でも、馬車でか?

 自動車運搬自動車みたいなコトになるな。でも、それはアリか。実在するし。


 関係無い……ようであるけど、「ロッ〇ーチャック」って何なの?


「……ぼそぼそ(『山ねずみ』ですね。相当、昔のアニメで『山ねずみロッキー〇ャック』という作品があったそうです)」


 それをモデルにした架空の作品が、『SHIR○BAK○』にあるよねー。


 アンデスでもロッキーでもなく、日本にいる「ヤマネ」って可愛いよねー。


「……ぼそぼそ(ですねー。わたしは『シマエナガ』も好きです)」


 白くて、まん丸い鳥だな? さすがは道民!


 ……てか、よく考えたら、カオリちゃんてば、ずっと「肉声」だ。


 ON/OFFを繰り返しながら、『★伝心☆』で雑念の飛ばし合いをしてたけれども……二打点(約3時間)の「通話可能時間」が「満了」してしまったらしい。


 だったら、繋ぎ直さない?


「いえ。……アレって、繋がる時の違和感が凄いんです。止めときます」


 俺からの思念は、ダダ漏れで伝わってるのに……不便じゃね?


 ところで、その「違和感」て、どんな……。


 と、馬車が停止した。


 なお、補足しておくと、『狼と香〇料』のED曲『リ〇ゴ日和』という名曲を歌ったのが、「R〇CKY CHACK」というグループだったのだ。


「……ぼそぼそ(誰に説明してるんですか?)」


      ◇


「はーい、下りた。下りた!」


 引率の先生みたくなってるロザリンダ嬢が、雑に言う。


 馬車から下りると、ひんやりと涼しい日陰だった。


 すぐ目の前には「壁」と……その壁の上までジグザグに続く階段があった。


 なんてゆーんだっけ、こーゆーの?


 つづれ織り? ……違うな。

 『徒然(つれづれ)チル○レン』? なんだっけ? 曖昧模糊(あいまいもこ)だ。


「『つづら折り』ですよ」

 カオリちゃんが、一部日本語で言った。


 てか、「つづら」って何? 今の俺は『ア○ガール』? 『あっくんのカ○ジョ』って、完全に別作品だったよねー。


「じゃあ、登りまーす」


 まさか、この階段登って上まで行くの? 「壁」の上に行くのに、「昇降機(エレベータ)」じゃないんだ? そんなに高くはない……つっても、建物4階分くらいはあるよ?


      ◇


 みんな、徒歩で登ってる。

 そんで、階段かと思ってたら、またまた「斜路(スロープ)」だったよ。段無いよ。「だんないよ」って富山弁のはずだけど……どんな意味だっけ?


 (うえ)麗奈(れいな)さん(※富山県出身)なら、ご存知のはずだな。

 同じアニメ制作会社(※富山県)の別作品だけど……あの金髪の女の子、名前は何だっけ? セバスチャン? ……絶対に違うな。


「……一人で何を妄想してるんですか? ヨハンナさん」

 俺の思念を読んだカオリちゃんから、突っ込まれた。


 そう言われても、精神的に疲弊すると現実逃避気味にアニメネタに走ってしまうのは、俺の「仕様」なのだ。変更不可なスタンピードなのだ。


「スタンピードって『暴走』って意味ですよ?」


 にしても、『王都』の人って、なんでこーも「斜路」好きなのかな?


 俺も、シャ〇好……じゃなくて、また「坂道」だよ。

 『選挙』の『握手会』なのに。


「『アポロン』は、観てなかったんですか?」

 唐突にカオリちゃんから、そんな事を訊かれた。


 あ、ポロン?

 なんかの転生? なんのアニメ?


「……観てなさそうですね」


 だから、全部の作品観るのは無理だってば!


「この壁って……何なのですか?」

 ドロワー嬢が質問してる。


「昔の『防壁』よ。『西の街区』って、昔はここまでしかなかったらしいわよ」

「今では、ずっと西へと拡大してますもんね」

「じゃあ、ここはもう要らないんじゃないの?」

「現在では、歴史的な観光名所になってるんですって」


 発言順はアナベル嬢。ポタテちゃん。サレイシャ嬢。アルルミナ嬢だ。

 みんな「説明」ありがとう(笑)。


 ちなみに、『この世界』には、「巨人」とかの巨大な陸上生物はいないらしい。

 その手の話は全然聞かない。なので、この「壁」は、この辺りにまだ『ケモノ』が居た頃の遺物らしい。


 とすると、この坂道というか斜路は、城壁の上まで『魔法式空気機関砲』を、台車ごと引っ張り上げるためのものなのかもしれない。


「あちらの城塞と、向こうの城塞は、『宿屋』になってるそうですよ」

 シンシアさんだ。


 彼女の言う通り、『防壁』の両端には、『城塞』としか表現しようのない、鋭い尖塔を複数備えた建築物群があるのだ。


「……ぼそぼそ(ポーニャさんの実家の『宿屋』って、あっちの『お城』なんだって)」

 シンシアさんの『黒幕』の人(大)が近づいて来て、小声で教えてくれた。


「……へー、そうなんだ?」

 よく知ってるな、ミーヨ(※匿名にしろ)。


 ラウラ姫の第二侍女ポーニャ嬢の実家って「古城ホテル」みたいなもんか?

 でも、「お城」ってほどの華麗さはない。古びた、厳めしい城塞だ。


「えっち、なほん。えっち、なほん」


 セシリ……シンシアさんの『黒幕』の人(小)だ。

 多分、「えっちらほ、えっちらほ」って言いたいんだと思います。

 坂道って、リズムをとりながら、登るとラクだし。


「……ひー、ひー、はー」

 ラウラ姫の筆頭侍女だけど、現在はドロワー嬢の『黒幕』についてる某女性がキツそうだ。どっちかと言えば、頭脳労働担当だもんな。運動不足なのでは?


「……ひー、ひー、はー」

 パンツちゃんことドロワー嬢も、朝のやり取り以来、今ひとつ精彩がない気がするな。てか、二人して出産時の呼吸法か?


「もー、ダメですじゃ。もー、死にますじゃ」

 クリムソルダ嬢の『黒幕』の人も、坂道登りがキツいらしい。ご高齢だもんな。


「がーんばーってくーだーさーいぃ」

 クリムソルダ嬢の方は、まだまだ元気だ。

 メロンのようなお胸が、ゆっさゆっさと重そうに揺れてる。大変そうだから、俺が持っててあげたいな。


「……(じーっ)」

 何か視線を感じちゃう。


      ◇


「……ふう」


 ようやっと、城壁のてっぺんに出た。


 (くぼみ)がずらっと並んだ「狭間胸壁」になってる。

 歩廊からは……めっちゃ見晴らしがいい。ここが観光地になるわけだ。


 こんな場所で、行列つくって『握手会』やろうってんだから、無茶するなー。


 ただ、今は「お昼休み」の時間帯なのか、壁の上の通路部分には、一般客は一人もいないな。

 

 見ると、『西の街区』の真ん中を貫く『西行(せいこう)運河』が、ずーっと西に向かって続いてる。遠くの方は、かすんでる。


 『運河』の市街地を通る部分は、「板木の道」で覆い隠されてたけれど、水面が丸出しだ。


 小船が行きかってる。

 西からの「(のぼ)り」の船は帆を広げてる。

 逆に、西に向かう「下り」の船は帆をたたんでる。


 『防壁』の西側には、新興の工房街やら新市街が広がってるようだ。

 屋根に統一感があって、小綺麗な感じだ。


 プリムローズさんから聞いた話では、「貧民街」があるハズなのにな……と思って、凹の傍まで行って真下を見ると、『防壁』に沿ったところに、ごちゃごちゃとした粗末な建物が無秩序に建っているのが見えた。アレがそうか。なんか「壁」のせいで日当たり悪そうだ。


 ハンナちゃんから聞いた話によると、そこには『将棋愛好会』があるそうだ。


 その正体は、「蒙古斑」がついて『この世界』に生まれてしまった人たちの「互助団体」だそうだ。

 プリムローズさんは、そんな事はまったく知らずに、ただ将棋を指したくて、そこを訪れて、実態を知って驚いたそうだ。

 そして、そこで、元・ウサギ耳奴隷のハンナちゃんと知り合いになったそうだ。


 ただ……こんな上から屋根だけ見てても、どれがその建物かなんて、全然分かんないな。


「あんた、よく怖くないわね?」

「別に怖くはないですわ。平気ですわよ」


 アナベル嬢に言われて、ちょっと不自然だったかな? と反省。

 俺は高所恐怖症じゃない上に、落ちたら落ちたで『魔法』でなんとかなると思って、崖っぷちみたいな場所で、平然としていたのだった。


 その高さは……だいたい1万2千なの(約12m)くらい……あ、そう言えば『アクエリ○ンEV○L』にも、男女を分かつ「ベルリン」って壁があったな。

 前後の作品は観てないけど、『EV○L』だけは観てたっけ。


 あと、プリムローズさんは「ベルリンの壁」と聞くと、おっさん同士のキスシーンを思い出すそうだ。


 ……どっちも、いま、不意に思い出したよ。


「……ぼそぼそ(今のわたしの姿って、サザ○カ・ビアンカみたいですよね?)」

 カオリちゃんだ。俺の思念を読んだらしい。


 てか、「サザンカ・ビア○カ」って誰だっけ?


「……ぼそぼそ(浅黒い肌で、黒髪の三つ編みの子です)」


 ごめん……あんまり印象に残ってないっス。


「……(ふーんだ)」


 ああ、カオリちゃん、そんなに腐……イヤ、そんなにくさらないで。


「……ぼそぼそ(そう言えば、アレのジ○君は……)」


 縁起でもない事言わないで!


 てか、俺的には「紙袋かぶってた子」の謎が知りたい。

 異世界にいるし、あれも「永遠の謎」になってしまうのか?


「……ぼそぼそ(あれは、誰にとっても『永遠の謎』ですから)」


 それはそれとして、ここで「お昼ご飯」って聞いてたのに……特に何の用意もされてないな。


 食事そのものは、『城塞』を転用した『宿屋』の食堂から提供されるって話だ。


 ――お、来たみたいだ。


 『城塞』の扉が開いて、『宿屋』の従業員の人たちが……って、見たらポーニャ嬢もいた。実家の、お手伝いをやらされてるらしい。


「『山茶花(さざんか)の宿屋』でーす。お昼お持ちしましたー!」


 出前か!


「……ぼそっ(演歌か)」

 ドロワー嬢の『黒幕』の人(昭和)が、力なく突っ込んでる。


「『白い花嫁の宿』でーす。お昼お持ちしましたー!」


 意味深か!


 でも、天空に近い、高くて眺望のひらけた場所で青空ランチとか、爽快な気分だった。


 聞いたら、フツーの日は、ここで「展望レストラン」みたいな事やってるらしい。


 今日は『巫女選挙』の関係者だけで、貸し切り状態だけどね。


      ◇


「『巫女見習い』ヨハンナです」

「これはご丁寧に」


「『巫女見習い』ヨハンナです」

「これはご丁寧に」


「『巫女見習い』ヨハンナです」

「これはご丁寧に」


 …………。

 ……。




      ◇


「……ひぐっ……えぐっ……いぐっ」

「どうして泣いてるんですか? ヨハンナさん」


 カオリちゃんが、優しく声をかけてくれた。


「自分でも……分からない。でも、勝手に……涙があふれてくるんだよ」

「……そうなんですか」


 『第二次全体握手会』も終わったよ。


 お仕事終了の合図である「昼の四打点」の鐘と同時に、情け容赦なく強制終了したよ。握手出来なかった連中も、かなりの数いたよ。


「ううっ……手が……手が……」


「「「「「……痛いよお(泣)」」」」」


 みんな大変そうだ。

 俺自身は、カオリちゃんからのアドバイスで、『★不可侵の被膜☆』を張って、野郎どもの握手の圧力を完全にキャンセルしていたので、全然ラク○ンだったよ。あ、伏せ字の必要なかった。


 で、「ヨハンナちゃんはヌケる」って、噂になってるのが聞こえてたよ(笑)。


「……ぼそぼそ(握手すると『力が抜ける』って事ですよね?)」


 ハイ。その通りです。「脱力」の方です。

 ヨハンナちゃんの中身は男だけど、ヘンな意味はありません。


 例のジグザグの坂道を「参加者」たちが列をつくって登って来て、てっぺんにいる『巫女見習い』たちと握手するとか……なんか富士登山とか聖地巡礼とかを連想させられたよ。


 なんか、人と会い過ぎて、「酔う」と言うか、もう誰が誰だか分かんなくなる。

 なんか、朝の握手会で見かけた顔もあった気がするな。


 ずっと「にこやかな笑顔」をキープしてなきゃならないので、いい加減顔面がこわばってる。ほっぺが痛い。表情筋に違和感がある。怒ると眼輪筋がピグピグするのは「山岸由〇子」だっけ?


()(へだ)てのない笑顔で、好評でしたよ、ヨハンナさん」

「……まあ、そうでしたの? って、んんん?」


 イヤ、待って!


 俺って「落選」しないとイケナイから、高評価じゃダメなんだよ!

 なんてこった。失敗したな……。


「相手が誰であっても、普通に接してたじゃないですか?」

「……」


 イヤ、もう記憶にない。


 でも……待てよ。

 握手した相手の中に、手の甲に同じような「刺青(タトゥー)」をしてた一団がいたな……。


 アレは……「文字」だったような気がするな。

 あの連中は、一体何だったんだろう?


 スパイ・ユニット「Wハンナ」に、調査を依頼しておくか……。


      ◇


「「「「「……痛ったーい。でも……やっぱり、気持ちいい」」」」」


 俺の『癒し手』の力で、またまたみんなの疲労を取り除き、元気付けてやったよ。


 また、刻み付けてやったよ(笑)。


 みんなから「今年の『巫女選挙』に、ヨハンナさんがいて良かった」って本気で感謝されたよ。


 にしても、俺の体内にあるはずの『賢者の玉(仮)』って……やっぱり『守護の星(極小サイズ)』の製造装置なんだろうか?


 『魔法』や『癒し手』の力を濫発しても……とくに何ともないんだよな。


      ◇


 陽は、西に傾いてる。


 『防壁』のつくる影で、坂道のある側はほとんど真っ暗闇だ。

 迎えに来た「護送車」に乗って、今度は『全知全能神神殿』に移動だ。


 ところで、夕食後に行われるという『夜の握手会』って何なんだ?


 なにやら怪し気なニホイが、プンプンだ。


「……ぼそぼそ(わたし、また出なきゃいけないです)」

 隣に座るカオリちゃんに小声で言われた。


 どゆこと?


「『夜の握手会』は、投票券の『重い銀の円盤』を10枚以上購入した人の『特典』なんだそうです」


 そんなシステムか……。

 それって、キャンセルと言うか「辞退」出来ない?


「どういう意味です?」


 つまり、100万票も購入してるバカって、俺くらいしかいないんじゃない?

 だったら、カオリちゃんが『握手会』の参加を辞退すれば、それ自体開催されなくなって……つまりは、みんなをゆっくり休ませる事が出来ると思うけど?


「なるほど。申し出てみます」

「うん、そうして」


 『巫女見習い』のみんなの疲労や負担の緩和になるし……何よりも、それを言いだす事によって「プロペラ小僧ジンくん」への好感度が、大幅に上昇するんじゃね? ぐへへへ。


「……また、そんな事を企んで……でも、その好感度って、ジンさんには向かわないと思いますけど?」


 なんで?

 カオリちゃんって、俺の「コピー体」で、そっくりな「替え玉」なんだから、カオリちゃんに対する好感度は俺のもの……って風にならない?


「わたしとジンさん。『神様が造った双子』って言ったって、中身は完全に別人なんですから、気付く人には気付かれますよ」

 カオリちゃんは、ハッキリと断言した。


「ジンさんって女性に対して、ちょっとえっちな視線になるじゃないですか……特に胸の大きな女性に対しては」


 そ、そんな事はない……とは言い切れないけれども……。


 た、確かにパンツちゃんとかサレイシャ嬢あたりは「中性的」とか「爽やか」とか言ってたけれども……てか、無いな。その要素。元々の俺には。


「でしょう?」


 ぐぬぬぬ……。


      ◇


 『全知全能神神殿』に到着して、そのまま「大食堂兼集会場」に直行だ。


 つっても『神殿』は広いので、裏手の馬車道を抜けて『神前町』あたりの大参道に出て、そこを北上して南の正門をくぐって、『伝説のデカい樹』がある中庭を進み、馬車寄せで下車。南側入り口から中央部の『まん丸い間』に沿って湾曲してる廊下をしばらく進んで、やっと『夜に立つ塔』側の「そこ」に辿り着く。


 夕食は、いつもの質素な「神殿フルコース」だった。

 朝とお昼は、いいもの食べれたから、夕食も豪華かと期待してたのに……。

 

 またまた酸っぱくて真っ黒い神殿黒パンと、緑色の豆のスープと、野菜の酢漬け。

 あと、『全知全能神神殿』名物という『ねばねば漬け』もあったな。


 ……ネバリの「正体」知ってるから、俺は食べなかったけれども。


      ◇


 食後、廊下で待っていたカオリちゃんと合流した。


「どうだった?」

「ダメでした」


 主語を(はぶ)いて訊いてみたら、否定的な返事だ。


「なんで?」

「わたし……じゃなくて、ジンさん以外にも10枚以上購入した人がいたんです」


「……マジで?」


 それって、日本円で1千万円以上つぎ込んでるってコトだよ?

 そんなバカいるの?


「……(じーっ)」


 イヤ、俺は「たなばた」で手に入れた「換金アイテム」と交換しただけだから。


「『七夕(たなばた)』じゃなくて『じゃがバタ』でしょう?」


 北海道か!

 『じゃがバタ』じゃなくて『たなぼた』だよ。


「『(たな)から牡丹餅(ぼたもち)』って……きっと、使用されてる小豆(あずき)十勝(とかち)産」


 北海道か!!

 そして、おっぱいなのか?

 「トカ」って、アイヌ語で「おっぱい」だそうだよ(※出典『ゴール○ンカムイ』)。


 十勝平野の小豆とか。まるで……でも、大丈夫。

 俺は「おっぱい博愛主義者」だから(笑)。


「……(じーっ)」


 ハイ。真面目にやります。

 てか、最初のフリはカオリちゃんだったよ。


「で、誰なの? その人。どっかの太守? 代官?」


 『銀の都』の太守のメルォン家は、分家の次女のクリムソルダ嬢に、どれくらい突っ込むんだろ?


 あとは……パンツちゃんことドロワー嬢が、『万緑(みどり)(あか)』の代官の家柄だって、ハッキリ言ってたしたな。


「その人たちも、そうらしいですけど……あとは『灰狼(はいろう)』さんです。ホノカの『この世界』での父親。シンシアさんの御父上ですね」


「マジで??」


 そう言えば……会って、きちんとご挨拶するつもりが、なんだかんだのドタバタで、それどころじゃなかったもんな。まだ、お会いした事ないよ。


 どんな人なんだ?

 ……シンシアさんとホノカの父君って?


「朝からずっと、『握手会』に来てらしたじゃないですか」

 あっさりと言われた。


「そーなの? イヤ、もう数が多過ぎて……誰が誰やら……最後の方は、みんな『●(くろまる)』3つの『カオ○シ』……じゃないか。『も○○け姫』の『コ○マ』みたいに見えてたんだよ」


 もう、人間の顔が識別出来なくなってたのだ。


「怖いですよ……それ」


      ◇


 『夜の握手会』……って、こういう意味だったのか……。


 またまた遊泳に不向きな室内用ビキニ『全知神の三角』を着用させられたよ。


 そんな格好で『握手会』とか……もう完全に「大人の握手会」って感じだったよ。


 そして――


「……『巫女見習い』ヨハンナです」

「これはご丁寧に」


 『灰狼(はいろう)』さん……って、こういう意味だったのか?


 目の前には、白髪頭に白い狼の耳をつけた「おじいちゃん」がいるよ。


 この方、元々は「戦闘用の獣耳奴隷」って話だけど……解放されて、家庭を持ったのが遅かったんだろうな。


 シンシアさんとホノカは、この人が何歳の時にできた子供なんだろ?


 もしかして……元『賢者』?


      ◆


 「ヤマネ」も「シマエナガ」も、めっさキュート――(まんまる)

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