144◆「ざまあ」な展開(※コメディー風味)
女の子の体に、おち○ちんが付いてる……。
昨日、ミーヨに送った「エロ画像」の「ふたなりさん」みたいに、俺自身が……なっちゃってる。
「……困った。『おトイレ』で処理して来ようかな?」
出来立てほやほやの「ち○こ」を握りしめながら、俺はそう呟いたよ。
でも、「朝△△」と違って、そんな事では処理出来ないだろうな。
「……オナ○ーすれば、無くなるってもんじゃないよ」
『身体錬成』で「生えた」んだろうし。
てか、俺はいま女の子なんだから、「オナ○ー」とか言っちゃダメだよ。
金髪ハーフの美少女クリエイター「澤村スペ(※後略)」じゃないんだから。
「んんっ……」
サレイシャ嬢かな?
あ、マズい。他にも何人か目覚めたようだ。
「えっ!?」
理解不能なモノを見て、混乱してるようだ。
理性的に落ち着いて対応して欲しい。朝から、騒ぎにはしたくない。
「おはようございます。ヨハン……ナさん?」
シンシアさんが、俺の股間の「名状しがたいち○このようなモノ」に目をとめ、言葉を失ってしまった。
「おはようございます。シンシア様」
俺は、冷静に丁寧に、朝の挨拶を返した。
「「「「ヨハンナさん、おはよおおおっ!?」」」」
他の『巫女見習い』たちも、俺の股間の「名状しがたいち○このようなモノ」に目をとめ、言葉を失ってしまった。
「「「「「「「…………」」」」」」」
みんな、「度肝を抜かれている」らしい。
――さて、思い出してみよう。
なんで、こーなった?
……イヤ、わざわざ回想するまでも無い。
昨夜、俺の話がスペンサー……じゃなくて、スベっちゃったので、それを挽回(?)するために……単なる出来心だったのだ。軽いイタズラ心なのだ。ちょっとした悪ふざけだったのだ。
(カオリちゃん、カオリちゃん。緊急事態発生! 至急応援願います!!)
俺は強く念じた。
「ま、まさか……昨夜言ってた『中身はプロペラ小僧ジン』って、ホントの事だったの?」
言語機能を回復させたアナベル嬢が、愕然としている。
「でもー、ジンさんのはー、もっとぉ」
クリムソルダ嬢が、ナイスなフォローをしてくれそうになった――その時。
「――我が生命を代償に奉げん! 暗黒邪法 ★空白の2ツンっ★」
カオリちゃんだ。きちんと『○叉の構え』をとってる。
昨夜、伝授したもんな。
……ざわざわざわざわっ★
またまた「黒い星」の群れだ……これって、正体はなんなんだろう?
「「「「「あははは。うふふふ」」」」」
……怖い。俺の股間をガン見しながら……笑ってる。
バタ……バタバタバタ……
みんな、倒れて寝ちゃったよ。
「おはようございます、ヨハンナさん」
俺の「コピー体」に、道産子の魂を宿した『神造人間』カオリちゃんだ。
『巫女選挙』のお手伝い『黒幕』姿だ。見た目は黒ずくめの「葬儀参列者」だ。
「……おっはー」
「まったくもーもー。バカなんですか、ヨハンナさんは」
「……」
否定出来ない自分がいる。
カオリちゃんに、ち○こを指差されて言われた。
「今のうちに、早くソレ、モいじゃってください」
自身ので、ある程度見慣れてしまっているのか、非常にクールな対応だ。
てか、モゲません。
朝摘みの新鮮野菜みたいなこと、言わないでください。
「と言いますか、何故わたしが呼ばれたんですか? 自分でやればいいじゃないですか」
うん、その通りなんだけど……昨夜『伝授』した時に、「試し打ち」したがってたでしょ? だから、機会を「譲ってあげた」んだよ。
コレって、何でもない時に、むやみやたらに「カラ撃ち」出来るタイプの『魔法』じゃないし。
「それは……お気遣いいただき、ありがとうございます」
◇
慌てて『おトイレ』に駆け込んだ。
俺一人で、だ。
カオリちゃんには、とある「特別任務」があるのだ。
「祈願! ★不可侵の被膜っ☆」
続いて――
(身体錬成。女体化。ち○こ除去)
目を閉じて、念じる。
…………。
待ち時間だ。
俺……と言うか『巫女見習い』ヨハンナ(中身は俺)が、自分自身にセルフでかける『★不可侵の被膜☆』は、使用期限ありの「時限タイマー式」らしいけれど……まだ、その有効時間の検証は済んでいない。
昨日も、『お披露目会』の最中のドタバタで、セルフで解除しちゃったし。
昨夜は、寝不足気味だったので、ほとんど夢の中で、無意識に「やっちゃった」ようだし、正確な時間なんてカウントしてない。
でも、今回は「局部」のみ。
そんなに時間は、かからないと思うけどね。
チン!
ポエムを読むような時間も無く、あっさりと『身体錬成』が終わった。
そう言えば、『ハイ○ュー!!』3期のOP主題歌はめっちゃ名曲だけれども……歌詞の一部に「キャプテンの澤村君って、もしかしてドMなの? 理由って、そういう事?」って、思わず誤解しちゃう箇所があるよな。……怒られるか。
それはそれとして、恐る恐る目を開けて見ると……「ち○こ」が消えていた。
そこにあるのは、俺様の俺様ではなく、ヨハンナちゃんのヨハンナちゃんだ。
状況としては喜ぶべき事なのかもしれないけれど……元々の俺は「男の子」なので、ち○こが消えたのを嬉しいとは、到底思えない。
◇
……虚しい。
朝っぱらから、から騒ぎもいいとこだ。
「……はーあ」
ため息をつきながら個室から出ると、ちんまりとした黒い『黒幕』さんと、スレンダーな白い『巫女見習い』が俺を待ち構えていた。
「「おはようございます。ヨハンナさん」」
スパイ・ユニット「Wハンナ」だ。
二人組だし、「ツキ○ゲ」みたいだ(from『RELEASE THE S○CE』)。
どっちが「師匠」だろ?
「朝の定時報告です」
元『おトイレのハンナちゃん』が言った。こっちが『黒幕』さんね。
「同じく」
元『第一王女殿下の第108侍女のハンナ嬢』だ。白い『巫女見習い』姿だ。
「……二人とも、おはよう」
イヤ、フツーに「定時報告」とか言ってるけど……今日が初回だよ?
確かに、二人に渡した『秘密指令書』には「毎日の報告は欠かさないように」って書いといたけれどもさ。
「では、私から」
「ええっ!?」
うおおおおおおっ! な、何考えてんだ、この子?
清楚な『巫女見習い』姿のハンナ嬢が、いきなりローブの裾をまくりあげて、パンツを丸出しにしたよ。
「どうしました? ヨハンナさん、女の下着が大好きな、バカな男みたいな顔になってますよ?」
「…………(凝視&撮影)」
しかし、ヨハンナの中身は、そのバカな男なのだ。
サンキュー・フォー・ユア・パンツ!
「これを」
ハンナ嬢は、平然とパンツの中から紙片を取り出した。
ミーヨに限らず、『女王国』の女性は大事なものはパンツの中に隠すのだろうか?
そんで、その紙って「くんかくんか」しても、ええのんやろか?
でも、ちらっと中身を見てみたら……必要経費の請求書みたいな、細々とした内容だった。味気も色気も無ー。
「まったくもーもー。ハンナちゃんたら」
それを見ていた親ダヌキ……イヤ、元・ウサギ耳奴隷のハンナちゃんが割り込んで来た。
「お下品ですよ。そんな風に下着が見えるまで服の裾をめくりあげるなんて」
女性としての慎みに欠ける行為について、注意してる。
ちなみに、俺はいまノーパンだ。
ノーパンが俺のデフォルトなのだ。
「可愛い」のがデフォルトなのは『リリ○パ』の「ツ○カゲ」だけど「お気に」は凛々しい「半○門雪」だ。スーパー可愛いのだ。確か2回目だな、これ。でも、大事な事だしな。
「ほら、こうして『服袋』(要はポケットだ)に穴をあけておけば、いつどんな時でも自在にパンツの中に指を入れる事が出来ますよ」
ハンナちゃんが、自慢げに自身のスカートの穴のあいたポケットを引っ張り出して見せてる。どうでもいいけど……無自覚に下品でエロいコトを言ってるよ?
「……それで、落とし物をしてれば世話がないですよ」
ハンナ嬢が、冷たい口調で言う。
「聞いて下さい、ヨハンナさん。この方ったら、プロペラ小僧様からの『秘密指令書』を、落として失くしたらしいんですよ」
「あー! 言っちゃダメですってば!!」
ハンナ嬢の告げ口に、ハンナちゃんが慌ててる。
「な、何ですって!?」
こ、このポンコツ。なんてことを……。
「それなら、わたしが拾いましたよ」
可愛い声の『黒幕』さんだ……と思ったら、ミーヨだった。
流れるような、ご都合主義的展開だ。
彼女は、封筒を手に、ゆっくりと近づいて来た。
「あ、どーも、ありがとうございます」
ハンナちゃんが礼を言って手を差し出すと、ミーヨはそれを、ぺちんと軽くはたいて、俺に向かって厳しい口調で言った。
「一体、何を企んでるの? ジンくん!?」
おおっと、それはNGワードですぜ。
◇
「祈願! ★遮音玉っ☆」
またまた個室に逆戻りですわ。
「別に、わたしの家の再興なんて、考えなくてもいいんだよ? わたしはもう成人してるから、オ・デコ家の当主の座についてるし、『冶金の丘』の代替地を受け取れる事が内定してるのに」
ミーヨ先生が「おこ」だ。
「そう……だったのか?」
ミーヨの母方の「本家」であるところの『銀の都』の太守家を乗っ取ってやろうと画策……と言うか、その前段階としての情報収集を行うようにと、ハンナちゃん宛ての『秘密指令書』に書いといたのだ。彼女は自分の事を『女王国』の元・秘密諜報部員と思ってるから、その手の情報を握っているに違いないのだ。
そのため、同じ名前の二人に指令書を渡した時、手違いがないように心配してたのだ。どうやら間違えてはいなかったらしい。良かった……のか? この状況で。
「昨夜、そのプラタナ叔母さんに聞いたの」
「プラタナ叔母さん?」
「だから『銀の都』の太守の。わたしの死んじゃったお母さんの妹さん」
「……ああ」
あの人「デカメロン」じゃなかったのか? そんな名前だったのか。
実は昨夜、とある案件で、その太守様のところにミーヨを派遣してたのだ。カオリちゃんと一緒に。
「今度の『デ会』……『四分毎の領主会議』で、その沙汰があるだろうから、わたしにも参加するように、って言われてるんだよ」
「でも、色々と……『王都大火』の火元扱いされてたり、お前の父君が『ヤムをエム』とか馬鹿にされてたり……そう言う汚名を、なんとかして返上してやりたいじゃないか?」
俺が言うと、
「うー……でもね。わたしの中で、『それ』はもう済んじゃってるから」
ミーヨが、そう言って奇妙な表情になった。
「どーゆーことだ?」
「わたし、ジンくんが姫ちゃんの『愛し人』になる時に、反対しなかったでしょ? なんでだと思う?」
「……イヤ、まったく分かんなかった。なんで?」
イヤ、反対どころか、逆に「……ぼそっ(ヤッちゃって!)」と囁かれたよ。
「わたしの中に入った事のあるジンくんのアレで、まだ経験のない処女の王女様のが貫かれて、赤い血を流すんだって思ったら、なんか、それで、もーいいや、って」
ミーヨが、肩を震わせている。
それが本心なのか……一時的な激情に駆られて、そう言っているのか……それは判らない。
俺に、女の子の……他人の気持ちなんて理解出来るワケない。
でもソレが、ミーヨにとって「ざまあ」な展開だとしたら……。
「とか思ってたけど……実際にジンくんが他の子としてるの見ちゃうと、凄いコーフンして……あ! でも、ヘンな事はしてないよ? 隣にプリちゃんとかもいたし。ただ、わたしの順番の時には、張り切ったりはしてたけど」
黒いヴェール被ってるのに、顔が赤いのが分かるのって凄いな。
「……へー」
恐怖の「黒ミーヨ」が姿を現すのかと思ったら、「エロ・ミーヨ」だったよ。
でも、その前に言った言葉の中にも、彼女の真実の感情が……含まれてるんだろうな。
「それ聞いて……ちょっと」
「コーフンした?」
「じゃなくて、安心した」
「なんで? ここはコーフンするトコじゃないの?」
「違うだろ?」
思い出してみると、ミーヨさんてば、毎回『見届け人』のお仕事が済むと、すぐに慌てて『おトイレ』に駆け込んでた気がするけれど……アレって、そういう事だったのかしら(笑)?
よし、ならばハンナちゃんが言ってた「穴あきポケット」の事を後で教えてあげようっと。
「それでね――」
話が長くなるのも困るな。
こうなったら物理的に口を塞いでしまおう。
もー、チューしたろ。
「「……(ぶっちゅうううう)」」
◇
「「……はあ」」
ミーヨと二人で、ため息をつきながら個室から出ると、ちんまりとした黒い『黒幕』さんと、スレンダーな白い『巫女見習い』が俺たちを待ち構えていた。
「「お済みですか? ヨハンナさん」」
スパイ・ユニット「Wハンナ」だ……って、君ら待ってたんかい!
「それで……そちらの女性はいったい?」
「……ライラウラ姫殿下の、第六侍女のミヨレッタ様なのでは?」
「あー……わたしは……」
「プロペラ小僧ジン君の幼なじみで……彼の『嫁』だよ」
「「「……嫁!?」」」
ミーヨまで驚いて三重唱になってるし……そう言う認識無かったのか?
てか、『俺のチョロイン』って言っても通じないだろうから、言ってみたんだけど、なんか反応が妙だな。
「もー……何言ってるの? わたしはもう『当主』なんだってば!」
そこは譲れないらしい。アルルミナ嬢みたいな「語尾」だ。
てか、そーか。
『女王国』特有の「女性家長制度」だと違うわけか?
女の子のいない家の「男当主」だと、結婚相手は「嫁」って聞いてるけどな……正式な「(女性の)当主」の配偶者の場合はなんて呼ばれるんだ? てか、「結婚」はしてないけど。
じゃあ、俺ってなんなの? 通い婚の男? セ○レ? 最悪ヒモ?
そんなワケ無いよな? 『騎士』とかか?
それとも、より優雅に『一の騎士』とかかな?
「じゃあ、プロペラ小僧様は貴女の槍騎兵なんですか?」
「それとも、無装甲槍騎兵?」
「……槍騎兵て」
それって『王宮』の女官さんたちにナニかする連中の事じゃあないの?
「この方……ちがくて、プロペラ小僧ジンくんは、わたしの『魔王』だよ」
「「「……『魔王』て!」」」
「えへへへ」
「ハイハイ。どうどう」
妙な感じで照れ笑いしてるミーヨには、後で「ジンくん」に戻った時に、『魔王』の真の恐ろしさを教えてやる事としよう。ぐへへへ。
関係ないけど、M・A・○(※ここ記号の「丸」です。2度目です)さんて、特撮戦隊シリーズとかに女優として出演してたのね。昨日の夕食時に、カオリちゃんと雑念の飛ばし合いしてて初めて知ったよ。某短編アニメでは「悶え死に」したよ。俺がそう思ったら、カオリちゃんからは「お大事に」って思念波が届いたよ。優しい心遣いだよ(※違う意味だと思います)。
それはそれとして――
「ハイ。業務業務。とりあえず、今日の日程教えて!」
俺は言った。
「はい、本日はこの後すぐに『朝食前の握手会』です。さらに朝の七打点より『一の小宮殿』前の広場で『第一次全体握手会』。お昼休みに『西の街区』に移動。昼の二打点より『第二次全体握手会』です。夕食後は『全知全能神神殿』に移動。夜の二打点より『夜の握手会』です」
ハンナちゃんが長セリフを一気に言い切った。
褒めて欲しそうにしてるけど、敢えて褒めない(笑)。
「『握手会』ばっか? 『巫女選挙』の大まかな情勢とかは?」
「いえいえ、『握手会』が終わらないと、それは判りませんよ。ですけど、去年の総投票数は判明しました」
「どれくらいでしたの?」
「約2億票だそうです」
「……マジで?」
昨夜の『お披露目会』と、今日の『握手会』。
いずれも、「参加」するためには、500票分の『銀の円盤・大人券』を購入する必要がある。
昨夜、俺様が『暗黒邪法』で薙ぎ倒してやった(笑)連中は……最低でも数万人。
その物好きな連中だけでも、なんだかんだで数千万以上の「票」が動く。
それに、一般の善良な老若男女が「喜捨」のつもりで投票する分を加えると……約2億票って、充分ありえる数字だ。
「そんなの、どーやって数えるの?」
ミーヨが訊ねた……って、フツーに参加してるし!!
「専用の『竹棒』があるそうです」
小柄で、ちんちくりんなハンナちゃんが言った。
なお、『竹棒』とは、半分に割った竹に目盛りがふってある「コイン・カウンター」だ。
それって『西の七国』のひとつ『珍竹林』からの輸入品らしい。
「他は?」
他にも、思いつくままに「指令」を「箇条書き」しといたんだけど……第一項に最優先事項として「『巫女見習い』ヨハンナの指示に従うように」と書いといたから、この状況なのだ。
そんで二人は、ヨハンナちゃんの事を「第三王女ライラウラ姫の『秘密の侍女(要するにスパイ)』」と思い込んでいる。
てか、俺がそんな風に、意識を「誘導」したのだ。
「未確認で進行中です。形になってませんので、ご報告はまた今度」
あの作品、OPは「まばたき禁止」だよね?
……じゃなくて!
だとしたら追加で、彼女の元・上司のネコジッタ婆……その正体は、300年前から歴史の影で暗躍するヘルメスさんの『亡霊』――に取り憑かれてしまったらしい『聖女』さまの、ご様子とかを探らせるべきかな?
でも、それはこっちの子にやらせよう。
『巫女見習い』だし、『神殿』の中を動きやすいだろうし。
「では、ハンナさん」
「はい、頼まれていた件ですが、『六の姫』の消息は、まったく掴めていません」
ハンナ嬢がクールに言った。
「そーですの? 何も分かりませんの?」
「名前はハンナだそうです。父親は『三の姫』と同じで、生きていれば14歳だそうです……ぼそっ(わたしと同じかあ)」
同じ? ……イヤ、違うぞ。間違ってる。
「……違いますわよ。『五の姫』は、プーニャって言って、笑顔がちょっと不気味な子ですのよ?」
「『五の姫』?」
「『五の姫』」
『軍団鳥』の騒ぎの後、不都合を隠すために『暗黒邪法』で記憶を奪って以来、まったく会って無いので、ちょっと気になっていたのだ。その調査を頼んでおいたのに。
「ですが、『秘密指令書』には『六の姫』の行方を探れ、と」
「……ああ、たぶん、それは間違いですわね。数字の書き間違い」
「……間違い?」
ハンナ嬢の目が、す――っと細まる。
ちょっと怖い。「今さら何言ってやがんだ?」と言わんばかりだ。
俺は『地球』からの転生者なので、そのへんは大目に見て欲しい。
「プーニャちゃんなら、姫ちゃんやドロレスちゃんと一緒に、女王陛下と『山影』に行ったよ」
ミーヨから、さらっと言われた。
「……一緒に『山影』?」
聞いた事無いな。
ソ○サキを守る秘密組織ツ○カゲと、何か関係……は無いだろうけど。
「『王都』の北にある『人造山脈』の、北側の陰ですね。王族の方々が好まれる避暑地になってます。人工の渓流とかあって、川下りや釣りも出来ます。もちろん泳げますよ。『王都』から『北行運河』を船で下れば、半日で行けます」
この中では最年長のハンナちゃんが言った。
『おトイレ』に籠りっぱなしだったはずなのに、色々詳しいようだ。
てか、ホントは「3×12歳」らしいしな……伊達に年食ってないわけだ。……失礼か。
『巫女選挙』のあいだ『王都』が騒がしくなるのを厭って、女王陛下が留守にしてる話は知ってるけど……プーニャ嬢までもが? まあ、無事だっていうのなら、後はもういいけど……イヤ、山の中なのに川で強引に「水着回」って展開もあったのか。ふむ。
「それって『大事な秘書』のロザリンダ様も同行してるんですの?」
「うん。そーらしいよ」
ミーヨが言うけれど、不確かな感じだ。
とすると、彼女が「水着ならいっぱい持ってる」って言ってたのは、それ用なのかな? ま、それは今はいいか。すでに全裸見せて貰ってるし(笑)。
いまのところ、他に報告もなさそうだ。
「じゃあ、解散! 今日も笑顔で健康に!」
「「「今日も笑顔で健康に!」」」
……イヤ、それは唱和しなくてもいいんです。
ただ単に、言ってみただけだから。
◇
「ええっ!? 『朝食前の握手会』?」
みんなが寝てた広間に戻ると、誰かがそんな大声を出していた。
多分、アナベル嬢だな。
応じてるのは、アルルミナ嬢らしい。
「『重い銀の円盤』って言う10万票分の投票券をお買い上げになった殿方だけの『特典』なんですって」
この「語尾」だし。
「「「「「……10万票分!?」」」」」
ああ、例のアレか?
ロザリンダ嬢(元・巫女)が忌々しそうに言ってた『特典享受者』って野郎どもの事だろうな。
「だってまだ寝起きで……全然何も」
「と、とにかく『夜の服』のままでは……早く着替えないと」
朝も早いのに、不意打ちだよね?
「祈願! ★脱衣そして着衣っ☆」
「あー、ズルい」
『魔法』で、お着換えしたのはサレイシャ嬢だった。
もちろん、いただきましたとも(ニヤリ☆)。
「もう、そこまでいらっしゃってるそうよ」
「ちょーっと待ーってーくーださーいぃ」
「並びはどういたします?」
パンツちゃんとクリムソルダ嬢とシンシアさんが、次々に言う。
ちなみに、シンシアさんの黒髪には「天使の輪」が輝いてる。
一方、パンツちゃんとクリムソルダ嬢の頭部には、「寝ぐせ」が立派な「アホ毛」みたいにおっ立ってる。
「昨夜の怪談の順で、いいんじゃないですの?」
言ってみた。
「あー、じゃあ、もー、それでいいよね」
アナベル嬢が雑に言った。
「それなら、最初にサレイシャさん。アナベルさん。アルルミナさん。クリムソルダさん。シンシアさん。ポタテさん。ヨハンナさん……う、嘘!? 一人……足りない」
「あのー、ご自分が抜けてますよ? ドロワーさんは2番目です」
ばたつく『巫女見習い』たちをよそに、『特典享受者』たちがやって来たよ。
「「「「「……(ざわざわざわ)」」」」」
意外と多いな。数十人はいる。
……てか、バカでスケベそうなおっさんばっかりだ。
ご高齢の方も多いな。すんごいお年の、お爺ちゃんもいるよ。
まあ! その中に、一人だけ、とっても素敵な若い男性も混じってらっしゃるわ!
「……これはお久しい。私からで良いので? では遠慮なく」
『特典享受者』たちも、順番で揉めてた気もするけれど……一人だけ混じってらっしゃるとっても素敵な男性が、順番を譲って最後に回ったらしい。とっても素敵なだけではなく、謙譲の美徳まで兼ね備えてらっしゃるのね? ……なんて、素敵なのかしら。
(いちいち素敵素敵って、鬱陶しいです。ヨハンナさん)
『黒い三つ編みのカツラ』を外し、『夏の旅人のマントル』を着て「プロペラ小僧ジンくん」に扮しているカオリちゃんから、『★伝心☆』で思念が届いた。
そう、「とっても素敵な若い男性」とは、「プロペラ小僧ジンくん」のコピー体であるカオリちゃんの事なのだ。
元が素敵なので、そのコピー体である「彼女」もまた、必然的に素敵なのだ。素敵で非ざる理由無きや、なのだ。
(……ああ、鬱陶しい)
「『巫女見習い』サレイシャです」
「これはご丁寧に」
まず、『巫女見習い』の側から両手を差し出して、握手か。
で、その妙な「返し」は何なんだ?
とにかく、『巫女選挙』の『握手会』って、こんな感じなんだ?
「『巫女見習い』ドロワーです」
「これはご丁寧に」
「あんたの娘よ」
「こ、これは……」
列の先頭の男性が、アナベル嬢のところで引っ掛かかって、蒼ざめた顔で脂汗を流してるよ。
てか、例の『骨董品店』店主の、脂ぎってスケベそうなおっさんだ。
『巫女選挙』に、いくらカネつぎ込んでんだ? 馬っ鹿じゃねーの?
(バカはヨハンナさんでしょう? 恥ずかしいから最後尾に回してもらいましたけど、わたしが先頭だったのは、いちばん大量に『重い銀の円盤』を購入したからだそうですよ)
……イヤ、俺は「現金」で買ったワケじゃなくて「物々交換」だから。
先日、戦って倒してしまった『ヘビアタマの翼竜』の腸から出て来た『臭い球』と呼ばれる物体が、最高級の香水の原料になるとかで、激レアな換金アイテムだった。
実は昨夜……ちょうど俺たちが『誓いの夜』の怪談話に興じてた頃合い、その裏では『臭い球』の売却交渉が行なわれていたのだ。
俺自身は見動きがとれないため、「プロペラ小僧ジン」に扮したカオリちゃんと、向こうと面識のあるミーヨの二人を派遣したのだ。『神授の真珠』による『★伝心☆』で繋がり、こそこそとテレパシーで会話しつつ。
そして、その売却益は、直接現金化しないで、某巨乳姉妹の家の借金返済と『巫女選挙』の投票券購入に充てられたのだ。
(なんで、まるまるそんなコトに使っちゃうんですか? もったいない)
そんなの、「バカだから」に決まってんだろ(※自棄)!
それはともかく、売り値は1ダモン(約1g)につき『太陽金貨』2枚半(日本円で約50万円)ってコトで、実際に正確に重さ計ってみたら、201ダモンネ。1ダモンネは10ダモン。1ダモンは約11gぐらい。
つまり、えーっと………………プスー(※脳がスロー・パンクチュア)。
(日本円で約10億円ですね。『東のエ○ン』では最初に貰えるのが100億円でしたから、その10分の1ですね……って観てないんでしたっけ?)
残念ながら観てません。
でも、カオリちゃんから聞いた話によると、キャラクターデザインは漫画家の羽○野チカさんだったらしい。そんで、男性主人公は全裸だったらしい。なんとなく親しみ持てるな。
(全裸なのは最初の登場シーンだけです。そして『黒いモジャモジャ』で隠れてました。ちなみに、わたしたちが使う『黒いモヤモヤ』って『魔法』は、ソレをイメージして膨らませてます)
股間をイメージして膨らませるなんて……カオリちゃんたら、お下品!
(あー、はいはい。それで『この世界』のおっきい金貨だと、5千と25枚だそうですよ)
債務奴隷落ち寸前だったロザリンダ嬢(元・巫女)の借金っていくらだったの?
(『太陽』燦燦でした)
ハイ?
(『太陽金貨』3千3百枚でした。日本円で約6億6千万円ですね。もっとも『女王国』って物価が安いですし、実際にはその倍くらいの価値になると思いますよ。日本円で十数億円くらいの)
ま、マジで? そんなに借金抱えてたのか?
(……正直言いまして、向こうのご親戚一同がグルになって『借金』を大きく水増ししていたような印象でした。相殺分を大きくして、こちらの受け取り分を少なくしてる感じで)
ご親戚一同って、ミーヨも向こうの味方したの?
(……はい)
まったくもーもー。
やっぱり俺が直接出向いたら……イヤ、それだともっと減ってたな。たぶん。
◇◇◇
でも、借金返済と言っても、実は「無償」ではなく、ロザリンダ嬢が持ってた所領を買い取るカタチになってるのだ。
ただ、『軍団鳥』に食い荒らされた農園の「跡地」と、元・お屋敷の「廃屋」だけなので、資産価値はそんなにないらしい。
そんで、借金っていうのは、お屋敷や農園で働いてた人たちへの「賃金」を支払うためのものだったらしい。
農園の収入がいきなりゼロになって、それでも解雇しないで、再建を目指して、借金して雇い続けてたらしい。
『軍団鳥』って、一度襲って味をしめると、何度でも同じ場所に襲来するらしくて……計3回襲われて、ついに再建を断念したそうな……。
◇
(それでですね。残りを『太陽金貨』25枚相当の『重い銀の円盤』に交換したら……69枚でした)
69って……カオリちゃんたら、イヤらしい!
でも、「横倒し」にすると「双子座」のマークみたいだよね。
てか、立ったままじゃ出来ないか(笑)。
(それを言うなら「蟹座」のシンボルですよ)
そーだっけ? 双子座ってどんなんだった?
(ちょっとローマ数字の「Ⅱ」に似た感じですね)
……へー。
あ、話戻すけど、鮭の切り身2枚同時に焼く時、「69」のカタチにしない?
(ああ、しますします……って話が進まない! つまり、今回の『巫女選挙』でヨハンナさんが動かせるのが690万票……って無茶苦茶ですね)
そう言えば、某アニメで、ミサイル発射のキーになった魔女のクローンのおでこに記された数字が「69」だったな……。
(ミサイルって、一発のお値段はいくらなんですかね? 『東の……あ、ネタバレになるのでやめときます)
話の流れから、タイトルがもうバレバレやん。
ちなみに「某アニメ」の方は、それとは別作品だよ。
それはそれとして、元『おトイレのハンナちゃん』に調査させたところ、去年の『巫女選挙』の総投票数は、だいたい2億票だったってさ。
なので、全体のパーセンテージから行くと、俺の意向で選挙の局面をどーにでも出来る……ってワケじゃないんだよな。
俺は、なんとしてでも「落選」しないとイカンのに!!
ま、色々と小細工はやるつもりでいるけどな。
「ヨハンナさん。ヨハンナさん」
シンシアさんに、小声で呼ばれた。
「……ハイ。なんでしょう?」
見ると、例のアナベル嬢の父親的なおっさんが、目の前に居た。
いつの間にやら、俺の番のようだ。
「『巫女見習い』ヨハンナです」
「これはご丁寧に」
まあ、我慢して……したよ。握手。
あ! そーいえば、目覚めてすぐに「ち○こ」握ったけど……あの後、手を洗ったっけ?
……イヤ、洗ってないな。
その手で「握手」しちゃったワケか……でも、相手がこのおっさんだしな。
ふっ……ざまあ(※一方通行)。
◆
長いこと引っ張った割には、しょーもない「ざまあ」――まる。




