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143◆『誓いの夜』の怪談



「『誓いの夜』って、本当でしたら『お披露目会』の前日の夜に、するのですって」


 『巫女見習い』アルルミナ嬢が言った。

 鮮やかな赤い髪と明るい青い瞳をした、おっとり目の「お嬢様然」とした綺麗な子だ。


「今年から廃止されましたけど、『決意表明』の練習会を目的としてたらしいです」


 『巫女見習い』ドロワー嬢だ。

 栗毛と茶色い瞳の、しっかりとした勝ち気な感じの子だ。


「昨夜は、ヨハンナさんが居ませんでしたものね」


 『巫女見習い』サレイシャ嬢だ。

 『この世界』でいちばん多い黒髪で浅黒い肌。いちばん大人びた子だ……ボディラインが。


「……」


 『巫女見習い』ポタテ嬢が、遠慮がちに無言だ。

 この子も『この世界』でいちばん多い黒髪で浅黒い肌をしてる。俺もだけど。


「お風呂はどーすんの?」


 『巫女見習い』アナベル嬢だ。

 色白で黒髪で黒い瞳……よく見たら、モンゴロイドの……日本人の血が入ってそうだな、この子。姉のシャー・リイ嬢もそうだけど。


「昨夜はー、楽しかったー、ですよねー、お風呂でー、洗いっこぉ」


 『巫女見習い』クリムソルダ嬢だ。

 色白で、カスタードクリームみたいなねっとりした金髪と、メロンみたいなとろんとした緑色の瞳の子だ。二つのおっぱいもメロンみたいだ。おいしそうだ。


 てか、いま聞き捨てならない事を言いやがったぞ。

 俺が『巫女選挙』出馬を、脅迫気味に強要されてたあいだに、みんなでそんな事してたのか……いいなあ。

 

「では、是非今宵(こよい)も!」


 『巫女見習い』ヨハンナ(中身は俺)は言ったよ。


「そんなわけにはいきませんよ。ここは『全知全能神神殿』ではありませんから」


 『巫女見習い』シンシア嬢が言った。


 てか、「シンシア嬢」ってなんか新鮮。

 黒髪に天使の輪が輝く日本人顔の美少女だ。でも、今は天使の輪は見えない。彼女は夜寝る時には、長い髪をまとめて『髪袋』に入れて眠るらしいのだ。またまた白いキノコみたいだ。でも、それはそれで可愛いのだ。


 ついに「選挙期間」に突入したため、全員白いヴェール『虫蚋(むしぶよ)除け』は外してる。


 みんな素顔丸出しだ。


 てか、寝る前だしな。


 ちなみに、ここは『北の街区』の『(いち)の小宮殿』内『巫女選挙運営本部』が置かれていた大広間的な空間だ。


 今夜はここで、みんなでお泊りだ。

 『巫女選挙』立候補者同士の親睦を深めるために、『お披露目会』前日にみんなで雑魚寝(ざこね)するのが、『誓いの夜』ってイベントだそうだ……ってもう、終わっちゃったけどね。『お披露目会』。


 昨夜は、俺こと『巫女見習い』ヨハンナが、『選挙』に立候補するかどうか不確定で不鮮明だったために、執り行われなかったそうな。


 なので、今夜にヅラされたのだ。

 とか言ったら、どっかの教頭先生の心証が悪くなるだろうな。ヘタすると合宿に行けなくなるかもだ。


 あと、まだきちんと会った事の無い俺の母親の旧名は「スピンナ・ヅ・ラ・トビ」だそうな。「ヅ」って貴族の身分を表すD音だそうだけど、「ラ」ってなんなんだろ? 「()」?


      ◇


 みんな、もう『夜の服』に着替え終わった。


 昼間活動するための『昼の服』は、「後ろ合わせ」で、背中を紐で閉じる。

 一方、『夜の服』は「前合わせ」で、ウエストで簡単な帯でとめる。


 ちょうど、『地球』のバスローブみたいな感じだ。

 その「前合わせ」の隙間から、手を差し込んで、なにやら出来そうな感じだ……って言うか、きっとそう言う目的で、こんなデザインになってるに違いない。


 みんな若い女性なうえに、白いバスローブみたいな『夜の服』姿なので、ふと『宝○の国』の「冬眠」の話を思い出したよ。でも、アレはすんごいミニで、みんなの「あんよ」が思いっきり出てたよ。


 それはそれとして、そう言う「大人のナニか」に「段位」は無いだろうから、みんな「白帯」だ……って、ホントに「茶帯」だの「黒帯」だのは無いよな? なんか有りそうで怖いな。


 てか、みんな『巫女見習い』で「清き乙女」だしな。


 ちなみに『昼の服』の方は、逆に禁欲的な感じで、手軽にエロい事は出来無さそうな構造だ。「明るいうちは真面目にやれ」って、服に言われてるような感じだ。


 もっとも俺は、女体化する以前は、全裸の上に『旅人のマントル』だけだったから、関係ないけどな(笑)。


「でも、要するに『誓いの夜』って『お泊り会』みたいなものでしょう?」

「ああ、子供の頃にやったわねー」

「それとは違いますでしょう? 私たち成人しているのですから」


「……ぼそぼそ(そんなのがあるんですか?)」


 元・獣耳奴隷のポタテちゃんが話に加われずに、しょんぼりしてる。


 そんなに気にしなくて、平気だよ。

 俺も、そんなのぜんぜん知らないし。


「もー寝る?」

「じゃあぁ、わたしはー、ここでぇ」

「ならば、あたくしはクリちゃんとシンシア様の間に!」

「ヨハンナさんたら」


 否定はされない――という事はOKなんですね? シンシアさん。ぐへへへ。


「いいですか? 『水灯(すいとう)』消しますよ」


「「「「「……はーい」」」」」


 室内は真っ暗になった。

 窓の外には、『お披露目会』の様子を『全知神の瞳(※カメラだ)』で撮影し、その映像を『全知神の御心(※こっちはプロジェクターだ)』で投影していた「大きな帆布のスクリーン」がそのままだ。なので、暗幕で覆ってあるみたいになってて、室内は本気で真っ暗だ。


「じゃあ、誰から話す?」


 言ったのはドロワー嬢だ。

 俺には『光眼(コウガン)』の「暗視機能」があるから、真っ暗でも見えるのだ。


 で、「話す」って何を?


 合宿か修学旅行……イヤ、違うか。

 女子のパジャマパーティーみたいなものだしな。


 みんなで「恋バナ」とかするのかな?

 でも、『巫女見習い』って「恋愛禁止」だよ?


「では、最年長の私から」


 サレイシャ嬢だ。

 落ち着いて大人びてるけど、ホントに年上だったのか?


「またあ、誕生日が早いだけでしょう?」


 突っ込まれてる。違うみたい。


「私が今までで、いちばん怖かった話は――」


「「「「「……(ごくり)」」」」」


 ……怪談かよ?


      ◇


「「「「「……怖っ」」」」」


 サレイシャ嬢の話は「子供の頃に井戸にハマって脱け出せなくなった時の話」だった。


 心霊話とかじゃなくて、ガチな恐怖体験だった。

 描写がリアルで、胸苦しいような話だったよ……。


「次はあたしね」


 ドロワー嬢の話は「スカートがめくれてパンツが丸出しだったのを気付かずに半日過ごした話」だった。


 ただの笑い話だ。さすが、パンツちゃん。


「私は……そーねぇ」


 アナベル嬢の話は「森の中で『ケモノ』に襲われた時に年上の女性に助けられた話」だった。

 彼女って子供の頃は『冶金の丘』に住んでたらしいので、どうもその年上の女性って「パン工房のスウさん」な気がしてならない。なんでも「カミナリグマ」って名前の『ケモノ』の横っ面に、拳をブチ込んだらしいのだ。そんで、どっちかと言うと、その女性の方が怖かったらしい。ちょっとチビったらしい(笑)。


 そう言えば……『お披露目会』の最中、彼女の父親絡みで、こんな事があったよ。


 ――で、回想。


      ◆◇◆


 アナベル嬢の父親とは、『冶金の丘』の骨董品店の店主で、「会頭」と呼ばれていた「脂ぎってスケベそうなおっさん」の事だ。


 最初に会ったのは『代官屋敷』での「夜会」だった。

 で、その時はドロレスちゃんのお尻を追いかけて、逆にケツを蹴られて「シューター(火災時の緊急脱出装置だ)」から外にポイされてた。


 その後も、旅の資金を工面するために錬成したダイヤモンドを買い叩かれた上に、帰りを尾行されたりもした。さらに『王都』までの旅の途中、俺が拉致(らち)されそうになった。


 そんで、彼の妻と二人の娘(姉のシャー・リイ嬢と妹のアナベル嬢だ)は、骨董品店の支店を『王都』に出す際に移り住んで以来、ずっと別居生活だったそうな。


 それでも、毎年夏には家族に会いに来ていたそうだけど……実はそれは口実で、『女王国』最大の男性向けチョイエロ・イベントである『巫女選挙』の『お披露目会』の『水着審査』を目当てに、はるばる長距離馬車でやって来ていたらしいのだ。


 何年か前に、それを知ったアナベル嬢は、実の父親に本気で幻滅したらしい。


 説明が長くなったけど……そんな下劣なおっさんに、みんなのヒップを(おが)ませるワケにはいかないのだ!


 とか思っていたけど、実の娘アナベル嬢の『巫女選挙』出馬を知り、娘の尻を見るのはどうかと思ったらしく、今回だけは流石に『お披露目会』を見に来てはいないらしい。


 と思ってたら――


「……ぼそぼそ(うわあ……オヤジ。また来てる)」


 そう呟いたのは……『巫女見習い』アナベル嬢だった。


 やっぱり来てたのね(笑)。


「どなたか、お知り合いでも?」

「私の親父が来てんのよ。若い女の子のお尻が大好きなのよ」


 俺がまるでコピペのように訊ねると、アナベル嬢もまるでコピペのように、前とまったく同じセリフを、うんざりとした様子で言った。ちなみに「コピペ」って「コピー用紙」のことじゃなくて「コピー&ペースト」の事だ。「コピーと貼り付け」だ。てか、こんな事を堂々と説明してどーする?


「モゲればいいのに」


 実の娘、怖っ!


 見ると、確かに『乙女の道』近くの最前列に陣取ってる。

 相撲で言うなら「がぶりより」だ……違うか「砂被(すなかぶ)り席」だ。


 先着順で並んでるのか、座席指定なのかは知らないけれど……マトモな手段ではないような気もするな。何というスケベ根性だ。


「でも、流石にアナちゃんのお尻見たりはしないんじゃないんですの?」

「甘いわっ! もー、誰でもいいのよ、お尻なら」

「そ、そーですの?」


 お尻愛好家は業が深いなあ(※偏見)。


 だがしかし、俺は「おっぱいバカ」だ。

 戦えば、俺の方が断然強いだろう(※確信)。


 そーだ! いいコト思いついた!


 アナベル嬢の「お披露目」のタイミングに合わせて、この俺様が「天罰」を喰らわせてやろう!


 そーすれば、もう若い女の子のお尻を追いかけたりはしなくなるだろう。

 ……たぶん。


 そして――


「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』アナベル。三段です」


 『黒幕』のいないアナベル嬢は、白いヴェール『虫蚋(むしぶよ)除け』と全身を覆っていた『夏の旅人のマントル』を足元に脱ぎ捨てると、お尻を「お披露目」すべく、後ろを向いた。


 居間(いま)だ(※誤字)!


(『光眼(コウガン)』。レーザー(ガン)魔針眼(マシンガン)モード。発射っ!)


「痛ったーい! なになに、何なの? この痛みはぁああっ!」


 白い祭服姿の『聖女』さまが「うなじ」を押さえて、涙目だ。


 アナベル嬢が脱いだ一式を拾おうとして、たまたま射線上に入ってしまったらしい。

 思ってもない人に、「チクッとな!」をかましてしまったよ。ごめんあそばせ。


 で、それ以上に騒ぎを大きくするワケにもいかないので、おっさんは放置してしまった。


 後で、きっと仕返し(?)したるもんね!


 覚えてらっしゃい(※一方通行)。


      ◇


「私は良いですってば!」


 アルルミナ嬢の話は「『王都大火』で逃げ惑った時の記憶」だった。


 当時5歳だった彼女は、『王都』の空に、流星か隕石みたいな現象を見たらしい。

 コレって、固定しておかないと、固体燃料ロケットみたいに空を飛ぶという『蝋化枯木(ろうかこぼく)』の事だろう。プリムローズさんが言ってた話だ。


 それと、空に『真っ赤な太陽』を見て、その火が地上に燃え移ったように感じたそうだ。


 いまのところ、「それ」が何を意味しているのか不明だ。


 『とても寒い冬』に、深く関係してるらしい。


 その原因を、ミーヨは知っていると言ってたけれども……。


 とにかく大人も子供も、恐怖に怯えながら、真冬の『王都』を逃げ回ったらしいよ。


 こんな話の時に、ミーヨがいなくて良かった。


 『黒幕』さんたちは別室だしな。てか、実を言うと、ミーヨはカオリちゃんと一緒に「別件」で出張ってるのだ。


「わーたーしーはぁ」


 クリムソルダ嬢の話は「『荒嵐(あらあらし)』の最中に船に乗って転覆しかけた話」だった。

 その時、彼女は履いていた靴の片方を湖に落としてしまったらしい……てか、それ俺が拾ったよ。アレは今どこにあんのかな? 返すの忘れてたよ。


「そーれーでーですねぇ」


 彼女の話には続きがあって「男の人のち○こをガン見した話」をしそうになったところを、シンシアさんに止められた。どうでもいいけど、その男の人って完全に俺やん。


 そして、

「私を庇ってくれた双子の姉が……爪で切り裂かれて……大変な……うP」

 大変なのは彼女自身だ。


 大の苦手にしてる「流血」を思い浮かべてしまったんだろう。

 お顔を苦痛に歪ませて、口元を手で押さえちゃってる。


 シンシアさんのは「『空からの恐怖』に襲われかけた話」――と思ったら、違う流れに入った。


「背中に瀕死の傷を負った姉は……一命をとりとめたのですが……目覚めると、『他人』になっていたのです」


 『前世の記憶』を取り戻して、「稲田日向(いなだ・ひなた)」から「油火(ユヒ)火ノ火(ホノカ)」になってしまったホノカの事だった。


 いきなり、双子の姉が「他人」になっちゃうんだもんな。

 当の本人もそうだろうけど、周りの人たちも驚くだろうし、堪えるだろうな。


 てか、まるで『俺』のコトを言われてるみたいだよ。


 ミーヨは、すんなり『俺』のコトを受け入れてくれたけど……。

 シンシアさんは「それ」を受け入れ……違うな。耐えられなかったのは、ホノカの方だったんだろうな。「家出」までしてるんだし。


「なので、私は……『癒し手』として、瀕死の状態にある人に向き合う時に、ほんの少し……躊躇(ためら)いと恐怖を感じてしまいます」


 シンシアさんは、そう言って話を終えた。


「「「「「……」」」」」


 みんな、神妙な雰囲気で黙り込んでる。


 その「一度死んで生き返る」事で『前世の記憶』を取り戻す――ってシステムと言うかメカニズムは、一体何がどーなってんだろう?


 『お披露目会』で見た、ヘルメスさんの『亡霊』とか……「憑依(ひょうい)」ってよりも「他人の記憶」の移植とか転写……だったような気もするし。


 そして『俺』って、ミーヨに言わせると、元々の「ジンくん」の時から大して変化が無いらしいんだよな。

 『俺』に、ホントに『前世』なんてものがあって、ホントに『地球』で暮らしてたのかな? その『記憶』は、あるのだけれど……疑わしくも思えるんだよな。


 ま、俺は俺で、もう割り切って「自分は自分」でいいや、って思ってるしな。


「あのー、そんなに深刻に受け取らないで下さい。実は、先刻の『お披露目会』の最後に現れて、ヘンな風に悪目立ちしていたのが……その姉なんです。その事を謝りたくて今の話をしたんです。改めてまして、みなさんには、本当にご迷惑をおかけしました」


 シンシアさんは、そう言って生真面目に謝罪した。


「「「「「……ああ」」」」」


 みんな、微妙な反応だ。

 ホノカのやつ、間違いなくホントのホントに「悪目立ち」だったもんな。


 だが、シンシアさんは悪くない!

 もう、この場の空気を強引にでも転換だ!!


「そー言えば、シンシア様! 改めてまして、お誕生日おめでとうございますなのですわ!」


「「「「「……ですわよね!」」」」」


「ありがとうございます。みなさん」

 にっこりといい笑顔だった。


「忘れられない、素敵な一日になりました」


 ホントーに、色々とドタバタあったしね……。

 申し訳ないことに、ほとんど俺絡みで。


 それと……実は後で、ミーヨ経由で「プロペラ小僧ジンくん」からのバースデイ・プレゼントの『宝石』を贈る手筈になってる。


 『冶金の丘』での宝探しで見つけた宝箱に入ってた宝石は、一個も俺たちの物にならなかったけれど、あの時シンシアさんが気に入って手にしていたのは、明るい緑色の「翠玉」……「エメラルド」だった。


 なので、急遽『口内錬成』したのだ。彼女のために。


 エメラルドの『錬成』に必要な元素の大半は、『緑柱石(ベリル)』に含まれていて、それに微量な別元素が混じると、赤やピンクや水色に発色するらしい。


 緑色のエメラルドにするためには、某漫画の妖術……じゃなくて「クロム」か、天然水で有名な「バナジウム」が結晶構造に混ざるといいらしい。


 『緑柱石(ベリル)』は、『地球』ではマグマ由来の「火成岩」に含まれてるらしい。

 しかし、『この世界(アアス)』の表面は海ばかりで、「火山」は深い深い海の底にしかないらしい。なので、無いのかと思ってたら、とんでもないところで見つかった。


 『全知全能神神殿』の、「土産物(みやげもの)売り場」だ(笑)。


 枯れると、その幹の内容物が根っこ付近にある別の物質に置換されると言われている『星葉樹』の中で、「貴石」に変化したのが『宝化枯木(ほうかこぼく)』だそうだ。


 『全知全能神神殿』にある『伝説のデカい樹』のある中庭を見渡せる回廊には、色とりどりの「列柱」があって、その中に「それ」が含まれていたのだ。


 で、どこかで入手出来ないかと探してみたら、神殿内にある「お土産物コーナー」に、『宝化枯木』の「輪切り」みたいなのが「おみやげ品」として売られていた。


 ……がっかりするような事実だ。


 それをハンナ嬢に頼んで買って来てもらい、『口内錬成』したのだ。

 目的の物質に、組成が近い物質が近くにあると、成功率がほぼ100%になるのだ。


 でも、夕食の最中、頬っぺたを、ぷくーっと膨らませたまま、ずーっと口を開けられずにいたので……みんなに不審がられたよ。


 不貞腐(ふてくさ)れてたワケじゃないのに、傍目(はため)には「ぶーたれてた」と思われてたらしいよ。


「17歳の……お誕生日ですかぁ……」


 どことなく、うらやましそうに「パンツちゃん」ことドロワー嬢が呟いてる。


 そう言えば、シンシアさんの双子の姉のホノカは、今日を「誕生日」と認識してるのかな?

 『前世』では、真冬の寒い時期に生まれたから「火ノ火(ほのか)」なんて名前付けられたそうだけど。


「わーたーしーはぁ、クリームのふたつの果実ですう」


 クリムソルダ嬢が、唐突に言った。


「真夏生まれだ」


 アナベル嬢が応じてる。


 『虹色豆・クリーム色』に由来する「クリームの日々」は『地球』の8月に相当する。そんで「ふたつの果実」って彼女自身のメロンおっぱいの事じゃなくて「ふた巡り目の果実の日」だろうから「クリームの日々の14日」だ。真夏なのか? 日本で言うと「お盆」の頃だな。


 そん時、お誕生日のプレゼントしようかな?

 彼女の「陥没◎頭」を治す「吸引器」としての「俺」とか(笑)。


 そんな、バカで素敵な事を考えてると――


(ヨハンナさん。ヨハンナさん)


 カオリちゃんから、『★伝心☆』による長距離念話が届いた。


 何、カオリちゃん?


(計量の結果は……201ダモンネ? でした。これって『地球』だと何グラムなんですか?)


 だいたい2㎏ちょいだね。

 ……へー、そんなにあったのか?


(1ダモン? が2枚半だそうですけど……進めて構いませんか?)


 ああ、聞いてた通りの買値かー。

 うん、いいよ。後は打ち合わせ通りに、お願い。


(わかりました。それと余談ですが、『緑柱石(ベリル)』つながりで、ク○ンベリルさまの名言に『この腐り果てた世の中に、信じられるものなど無いわ!』ってセリフがあります。声は、めぐみさんのお母さんです)


 何のアニメ?

 ……てか、それって『名言』なのか?


(あ、知らないんでしたら、別に気にしないでください)


 ……釈然としないけど……とにかく、よろしくねー!


(はい。では、また後ほど)


 うーん、「めぐみ」さんて何人かいらっしゃるしなあ……。

 母子(おやこ)で声優さんというと……。


「じゃあ、次はヨハンナさんね」


 不意打ち的に、サレイシャ嬢からそう言われた。


「う?」


 ……イカン。

 いきなり振られても、ネタが無い。


 それなりに「怖っ!」って思った事はあっても、それって全部「プロペラ小僧ジン」の体験談だし。「彼」を知ってる子たちが、ここに3人いるし……どーしよう?


「あたくしは最後に。なので次は、ポタテちゃん! 張り切ってどうぞ」


 投げました。


      ◇


「……私は……みなさんもご存知の通り『獣耳奴隷』でした」


 ポタテちゃんは語り出した。


「「「「「……」」」」」


 みんな、リアクションに困ってる。


「それで……数年前に……働かされていた農園が『ケモノ』の群れの襲撃を受けて……」


 ポタテちゃんは、横臥(おうが)したまま、天井を見上げている。


「……家畜小屋に、ブタやダメドリたちと一緒に寝かされていた私たち『獣耳奴隷』も、『ケモノ』に襲われて、食べられそうになったんです」


「「「「「……」」」」」


「……ぼそぼそ(はううう)」


 待ち受ける悲劇を想像してしまったのか、クリムソルダ嬢が俺にしがみついて来た。

 具体的な描写は省略するけれど、素直な感想として「やたらと気持ちいい」とだけ伝えておこう(笑)。


「私は……屋根裏みたいな所に寝かされていたので……それをずっと」


 見てるしか……なかったんだろうな。


「しばらくして、飢えを満たした『ケモノ』たちは、去っていきました」


 淡々とした口調だ。


「……私には、仲の良かった奴隷の子がいたんですけど……下に降りて見ると」


 ポタテちゃんが、言葉を切ってしまった。


「……辺りは一面、血の海でした」

「……ぼそ(ううっぷ)」


 きゃー! 

 シ、シンシアさんが……あ、セーフ?


「「「「「……(ごくり)……」」」」」


 みんな、固唾(かたず)を飲んで、続きを待つ。


 ……シンシアさんだけは、ちょっと違うものを飲み込んでた気もするけれども。


「血まみれで倒れていたその子を助けたい、と必死に願って……『癒し手』の力に目覚めました」


 ポタテちゃんが、天井に向けて、右手を伸ばす。

 かすかに白く発光してる。『守護の星(極小サイズ)』が、衝突し合うような現象らしい。


「でも……そこで初めて知りました。その子……人間じゃなかったんです」


 え? 助かって、「めでたしめでたし」じゃあないの?


「人間に()けた『化物(ケモノ)』だったんです」


 ああ、俺も見た事あるけど……「タマゴから孵化(ふか)して最初に見た物の姿カタチを真似して生きていくモノ」ってヤツだ。その正体は、ヌルッとした銀色の、細いハリガネみたいなヒトガタだった……。


「切り裂かれた肌に、銀色のヌメリが見えて……『化物(ケモノ)』って死ぬと、溶けて地面に浸み込むみたいに消えて無くなるんです。残ったのは『()けの皮』だけでした」


 『化けの皮』は、慣用句的な表現じゃなくて、実体がある。

 ()けてたもともとの生物をかたどった、シリコンゴムみたいなペナペナの表皮だ。


「「「「「……」」」」」


 みんな、かける言葉が無い。


 親友が人間じゃなかった……って。

 でも……その致命傷を負うまでは、ポタテちゃんにも他の人間にも『化物(ケモノ)』と気付かれずに暮らしてたのか? そんなに「人間そのまんま」に()けれるものなのか?


 そんで、その『化物(ケモノ)』は、『獣耳奴隷』として「ご主人様」に唯々諾々(いいだくだく)と従ってたのか?


 なんか、前に聞いてた話とちょっと違うな。

 イヤ、『化物(ケモノ)』はいちばん最初に見たモノをずーっと真似て生きてくらしいから、ソイツが最初に見たのが「獣耳奴隷の女の子」だったんだろうな。その生態というか行動まで真似してた?


 て事はなんだ?

 『化物(ケモノ)』を上手いコト「飼育(?)」して「調教(?)」出来れば、『獣耳奴隷』に代替(だいたい)可能な「労働力」に出来るんじゃあないの?


 まあ、すんごい手間かかりそうだけれども……。

 でも、「蒙古斑」を理由に、でっち上げの『前世の罪人』にされてる人たちを救うには………………プッシュー(※蒸気噴出音)。


 イカン、頭がオーバーフローを起こしてる。


「みんなで一緒に、お風呂入りたい。みんなと洗いっこしたい」


 俺は、今の正直な気持ちを口にしてみた。


「「「「「……ヨハンナさんったら、まったくもーもー」」」」」


 やはり流行(はや)りそうだな。まったくもーもー。


 てか、それって「拒否」と受け取って間違ってませんよね? ……しょんぼり。


      ◇


「でもさ。それって、その女の子はどこかで生きてるかもしれないんじゃないの?」

 アナベル嬢がそんな事を言うと、

「ああ、そうかもしれませんね」

 シンシアさんまで同意した。


「それって?」

 アルルミナ嬢だ。


「つまり、自分の身代わりになるように、『化物(ケモノ)』を育てて、自分はどこかに逃げ出したってコト?」

 ドロワー嬢だ。


「実は……それ、私なの」


「「「「「……ええええっ!?」」」」」


 みんな、びっくり仰天だ。


 言ったのは、サレイシャ嬢だった。

 なんとゆー、ご都合……イヤ、なんとゆー「運命の巡り合わせ」なんだ!


先刻(さっき)話した井戸の中で、たまたま『化物(ケモノ)』のタマゴを見つけたので、育ててみたんです」


 井戸の中ねえ……。


 もしも、井戸の底に「エルフ」がいたら……助けるかな?

 めっちゃ面倒くさい事になりそうだな。これって『G○TE』の話だけど……某・自衛官も、めっちゃ苦労してたよ?


「「「「「……(呆然)……」」」」」


 他のみんなが呆然としている横で、二人は細かい部分の「話のすり合わせ」を始めた。


「はい、近くに『月の欠片』が見えて、『北行(ほっこう)運河』の第八支線のそばで……そこの『農園』です。ああ、道理で面影と言うか……見覚えが」

「貴女が売られてきたのが5年前ね? 間違いないわ。そうか……あの『化物(ケモノ)』。4年も『私』に化けたまま農奴として生き続けてたんだ……」


 にしても……二人とも獣耳奴隷出身のわりには、言葉が明瞭だ。

 セシリアみたいな、「たどたどしさ」が無い。


「ところで『化物(ケモノ)』のタマゴって石ころそっくりじゃありませんの? よく見分けられましたわね」


 俺とミーヨが見たのは、そうだったけどな。


「……では、あれは、サレイシャさん本人じゃなかったわけですよね」

「そうなるわね。なんだか心苦しいわ。私のニセモノとそんなに仲良くしていただいて」


 二人には聞こえてないみたいだ。完全にスルーされた。


「孵化する時にぃ、『目』になるう、割れ目のー、筋がー、付いてるんですう」


 代わりに、クリムソルダ嬢が、ぽよよよーんと言った。

 ちなみに、まだ抱きつかれたままだ。いい気持ちだ(笑)。


 でも――


「……割れ目の筋?」


 ナニソレ? いやらしい。


孵化(ふか)するとー、開いて『目』になるんですう」


 ……こ、怖いな、それ。

 そんな「一つ目」のモンスター。色々といるよ、ゲームとかで。


「あとー、『化物(ケモノ)』のータマゴはー、『女体樹(にょたいじゅ)』のー、モトですからー、売れるんですう」

「……へー」


 あの「地味な石」が、「お金」に()けるのか?


      ◇


「「「「「じゃあ、最後はヨハンナさん」」」」」


 こんな流れで、最後は俺かよ?


「実は『全知全能神神殿』には七不思議が……」


「「「「「やーねぇ! みんな知ってますよ、そんなの」」」」」


 みんなから言い返された。

 てか、そーなのか? 俺は一個しか知らないけど……みんなは知ってるのね? 全部。


 なので、仕方なく、

「……実は、あたくしは中身は男。最近『王都』をにぎやかし……イヤ、にぎわせている『プロペラ小僧』なんでございますのよ!」

 言ってみた。


「「「「「……へー」」」」」


 そんな●(気体)みたいな反応かよ。

 てか、真実なのに。紛れもない事実なのに。


 誰にも信じてもらえてない。

 なんか……スベってる感じになってる。俺にはむしろ、それが怖い。


「ぜーんぜーん、怖くないですう」


 クリムソルダ嬢が、にこやかに言いやがったよ。


 まあ、お題は「怖いお話」だったもんね?

 でも、女の子の中に男が混じってるのって怖くない?

 イヤ、俺いま女体化してるけれどもさ。


「じゃあ、もー寝ようか」

 アナベル嬢が言った。


 放置かよ!


「「「「「……おやすみなさーい」」」」」


「……(ぐぬぬぬ)」


 もう、こうなったらセルフで『★不可侵の被膜☆』かけて、朝までの間に『身体錬成』で「性転換」したろかな?


      ◇


 そして――


(ち○こだ)


 寝乱れた「前合わせ」の『夜の服』の間から、見慣れてはいるけど、「お久しぶりです」って言いたくなるようなモノが、元気よく突き出ている。


 それに、そーっと手を伸ばして握ろうとしている子がいる――その子とは、俺だ(笑)。

 イヤ、あくまでも確認のためにね?


    がしっ。


 おお、気持ちいい。

 確かに俺のだ(笑)。お久しぶりっこ。


 でも、おっぱいもそのままあるんですけど……あ、こっちも気持ちいい。


      ◆


 ク○ンベリルさまの名言、合ってるかどうか自信がない――(さんかく)

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