142◆いちばん最後のおいしいところ
「「「「「……ええっ!?」」」」」
会場いっぱいの大観衆に驚かれてる。そりゃ、そうだよな。
仕方ないから、『夏の旅人のマントル』また着たよ。
俺のは、どさくさ紛れでどこかに失せてしまったから、『聖女』さまが預かってたアナベル嬢のを「借りて」るよ。
「「「「「……あの子。いつの間に、また着たんだ?」」」」」
おおっと。「また着た」とか言われてる。
度重なる「やり直し」で、もう「つなぎ目」が判らん。
「「「「「……しかも、なんだよ、あの膨らみ!!」」」」」
ちょっと事情があって、マントのお腹のあたりがポッコリしてるのだ。
「「「「「……妊婦さん?」」」」」
違いますう。マタニティーじゃあないですう。
(セシリアちゃん? 付けられました?)
『夏の旅人のマントル』の中に潜り込んで、謎のポッコリと化しているのは、猫耳奴隷のセシリアだ。
外れたブラを、俺の「魔法コピー能力」による『★お取り寄せ☆』(ヘルメスさんの亡霊が使ってたやつだ)で、引き寄せ、再装着……が間に合わなかったので、中に潜り込んだセシリアに手伝ってもらい、装着してもらってる真っ最中なのだ。
(かた、ひも、とれ、とる)
えええっ?
(これ、かわ)
なんか、モフモフしたあったかいモノを寄こされた。重たい。
もう、他に選択の余地は無い。「これ」をブラの代わりにしよう。
「……早くなさい!」
司会進行役のロザリンダ嬢に急かされる。
その横では、『聖女』さまが痛そうに、お尻を押さえてる(笑)。
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』ヨハンナ。五段です」
最初からやり直す事にしよう。
二度も『ポロリ』の記憶を消してるし、とっとと終わらせたい。
(セシリアちゃん。マント脱ぐから、それに隠れて上手いコト離れてね)
(あい)
セシリアが、ごそごそと俺の後ろに回り込んだ。
「お披露目いたします」
俺は『夏の旅人のマントル』を脱いだ。
「なぁぁぁぁおおおお゛お゛」
モフモフしたあったかくて重いモノは、「六本指の猫」茶トラ君だった。
前に、某下着メーカーが「世相ブラ」とかやってたよなー。
俺のは、「猫ブラ」かあ。ああ、重たい。
「「「「「…………」」」」」
うん、みんな仰天してる。
顔面が驚愕のカタチに固まってるけど、それ以外のリアクションは無いようだから、ノーブラの胸は隠れてるらしい。
ただ、いくつかの視線が、横の方に注がれるので、気になって見てみると、そこには小型の「シーツおばけ」がいた。『のん○んびより』の「肝試し」の時の、○鞠みたいな、古典的なやつだ。
『夏の旅人のマントル』を頭から被って、完全に視界がふさがれてるらしい。シーツおばけと化したセシリアが、フラついてる。
あらぬ方向に向かってる。彷徨ってる。
救いを求めるように、手を伸ばしてる。
「「「「「……あ、危なっ!」」」」」
セシリアが『乙女の道』から外れて落ちそう……な寸前、カオリちゃんが受け止めてくれた。あぶねー。サンキュー!!
(後で、きちんと説明してくださいね!)
あー、ハイハイ。
「「「「「…………ざわざわ。ざわざわ」」」」」
しかし、ざわついてるなあ。
ま、「猫ブラ」だしな(泣)。
(おい。あの子だろ? 二日で五段まで昇格したのって)
(なんか『神官女長』に逆さ吊りされたとか言う)
(いや、両足持って振り回されたって話だ)
(下着無しで半裸だったそうだぜ)
(じゃあ、丸見えかよ)
いろいろ拡散してるし!
「「「「「……そして、なんで猫?」」」」」
『全知神の三角』のトップの代わりだよ。
『全知神』さまの「お気に入り」なんだよ。茶トラ君は。
『王都』への旅の途中、『全能神』さまに頼んで、わざわざ「スキャン」していったよ。
あのデータを元に、どこかに茶トラ君の「コピー体」が生み出されてるかもだよ……って、んんん?
それでいくと……俺たちって……。
ま、考えるのは、後にしよう。
今度こそ、やり直しの無いように、しっかりとウォーキングはキメよう。
そして、みんな見るがいい。
俺様のプリケツを!
客に尻を向ける(笑)ために、くるっ、とターンすると、ロザリンダ嬢と目が合った。
「あなあなあなあなあなあなあなあな貴女!」
あれ? 怒っていらっしゃる。やっぱ「猫ブラ」は「ナシ」かー。
……仕方ない。もう一度か……。
◇
またまた「やり直し」ましたよ。
なので、もう俺の事は端折るよ。
とりあえず、終わったよ。
◇
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』シンシア。十一段です」
シンシアさんが、ご挨拶した。
「「「「「…………ざわざわ。ざわざわ」」」」」
またまた大観衆がざわついてる。
(マジかよ? 十一段って何だよ)
(段位って最高何段だっけ?)
(十段のハズだぜ)
(超えてるぞ)
(すげー)
では、シンシアさんが二段も昇格した理由を、ここで振り返ってみたいと思います。
◆◇◆
「どなたか『癒し手』は? 『癒し手』はいらっしゃいませんか?」
まるで航空機の機内で、「急患」が発生した時のような調子だった。
俺たちが「お着替え」を済ませて待機していた第2控室に、その人は飛び込んで来て、そんな事を言ったのだ。
「「「「「……!」」」」」
みんなで顔を見合わせる。
このメンバーの中で、『癒し手』と言うと、俺とシンシアさんとポタテちゃんと……あと誰がいるんだ? 動物専門のクリムソルダ嬢でもいいのか?
「何があったのですか?」
代表して、シンシアさんが訊ねた。
「せ、『聖女』さまが頭をぶつけて……意識が戻らないのです!」
余程慌ててるのか、叫ぶように言った。
「私が行きます!」
シンシアさんが宣言する……は良いけど、なんか怪しい。
「あたくしも!」
俺も行くぜ。
「こちらです! お早く!」
言って、早足で駈け出した。
それを追いかけるしかない。
でも、この女性は誰なんだろう?
見覚えが無いのだ。『神殿』の関係者ではなさそうだった。
案内される途中で、
「元『七人の巫女』の中にも『癒し手』はいらっしゃるはずですが」
シンシアさんが訊ねる。
「う、え? ええ、はい。あいにく皆様出払っておりまして」
受け答えが不自然だ。
「この部屋です」
俺が、女体化して目覚めた時に居たような部屋だった。
『一の小宮殿』の一部はホテルみたいになってるそうで、その中の客室のひとつだ。素っ気ない寝台と調度品があるだけだ。元々は宮殿で働く使用人部屋だったそうだ。
俺とシンシアさんは中に入った。
ガチャリ
扉を、閉ざされてしまった。
「「……え?」」
薄暗い部屋の中に取り残された。
念のため室内を改めて見たけど、『聖女』さまも誰も居なかった。
「どういう事でしょう?」
シンシアさんが言った。
何らかの意図で、俺たちはハメられたようだけど……意味が判らない。
扉を閉ざされたと言っても、鍵は掛かって無かったのだ。何かの時間稼ぎでしか無い。
「控室に戻りましょう」
「ハイ、シンシア様」
そして、第2控室に戻ると、その意図が判明した。
みんなが、笑顔で待ち構えていた。
「「「「「シンシアさん、お誕生日おめでとう!!」」」」」
お誕生日のサプライズだったのだ……って、『お披露目会』終わってからやりなよ!!
「お誕生日、おめでとう。シンシアちゃん。」
ちょっと不吉な『黒幕』姿のままだけど、ミーヨが言って、お菓子を満載した大きな容器の乗った手押し台車を押してきた。『女王国』ではこうやって祝うのか? 初めて見た。でも、例によっていつもの「船盛り」だよ。お菓子の。
てか、シンシアさんの17歳のお誕生日って今日だったのか……知らんかった。
『深緑の日々』のふた巡り目の『お野菜の日』か。
よし、もう永久に忘れない。
そんで、ミーヨも知ってたんなら、教えろよ。なんも用意して無かったよ。
女体化なんてしてる場合じゃなかったよ。こんな重要イベントを「プロペラ小僧ジンくん」が欠席なんて……イヤ、まあ、この場には加われなかっただろうけれども。
「……みなさん、ありがとうございます」
シンシアさんが、感動に打ち震えてる。
「『巫女見習い』シンシア。十段昇格!」
『神官女長』が言った。
……って居たの? そして何で?
話を聞いたら、『巫女見習い』は16歳で成人後は、お誕生日のたびに自動的に昇格するのだそうだ。
何としてでも『巫女選挙』の立候補者(※立候補資格は『三段』以上だ)を確保しようとする、『神殿』関係者の悪辣な罠のような気がしないでもない……。
ちなみに「『聖女』さまが頭をぶつけた」云々は、ただの嘘で、そんな事実は無かった。
そんで、俺たちを控室から誘い出したのは、『巫女見習い』アルルミナ嬢の、数人いた『黒幕』さんのうちの一人だった。普段着で素顔だったのだ。見覚え無いハズだよ。知らんがな。
で、まず一段。
……あと、コレがあったのは時系列的には「ごち、USA」の後だ。
◇
シンシアさんが優美な仕草で、元は白くて薄いレース地の「塊」を外して、素顔を晒した。『黒幕』のミーヨが十一段折りの『虫蚋除け』を受け取ってる。
シンシアさんは、少し緊張気味だ。
『夏の旅人のマントル』の喉元の留め具を外し、すとんと脱ぐ……と見せてかけて、一旦止め、細い肩を出して胸元を隠したまま、恥じらうように溜息をついた……色っぽい。
「「「「「……(ごくり)」」」」」
みんなして生唾飲んだよ。
はらり
しばらく躊躇った後、ついにシンシアさんは『夏の旅人のマントル』を脱いだ……って下にはちゃんと『全知神の三角』を身に着けてるけど。
「「「「「……おおおおっ!」」」」」
大きな喚声が上がった。一段と盛り上がってる。
会場の野郎共も、何かを刺激されたらしい。
(……スケベ心でしょう?)
カオリちゃん。大正解。
で、もう一段昇格したのには、こんな理由があった。
◆◇◆
みんなでお菓子を食べて、和気あいあいとしていた時だった。
「大変です! 『聖女』さまが頭をぶつけて……意識が戻らないのです!」
『巫女選挙運営本部』のスタッフらしい『巫女見習い(初段)』が室内に飛び込んで来て、そんな事を叫んだ。
「「「「「……またまたあ」」」」」
誰も本気にしなかった。そりゃそうだよね?
「信じてください! 本当です!」
……でも、どーだろう? 疑わしい。
実はこの子。俺が教育係を言いつけられて、押し付けられたハンナ嬢なのだ。
第一王女殿下の元・第108侍女だった子だ。ニセパイ巨乳だった子だ。正体不明な「多重スパイ」っぽい子だ。
「本当なんです! 第一王女殿下が、ご自身の『お見合い会』が急に取りやめになったのは、日程が被った『お披露目会』のせいだ! と怒鳴り込んで来て、『聖女』さまと押し問答になり、ついには頭突きを……」
「「「「「……えええっ!?」」」」」
また、あの◎首の■……イヤ、俺も今は人のことをどうこう言えないか。
トラブルメーカーもいいとこだな。第一王女殿下。
「行きましょう!」
「ヤー(※肯定の意)ですわ。シンシア様!」
「シンシアさーん。わーたーしもー、ですかぁ?」
『癒し隊』出動だ。
こんな事言ったら「なんでも部隊名にしたがるんですね」と、誰かに突っ込まれそうだけれども……今回は珍獣じみた第一王女殿下のために、動物専門の『癒し手』クリムソルダ嬢も加わった。
『巫女選挙運営本部』がある大広間に駆けつけると――
「……『聖女』さま! 『聖女』さま!」
「ああ、殿下……ぼそぼそ(このまま目を覚まさなければいいのに)」
「『癒し手』は? まだなの?」
「ああ、殿下……また……ぼそぼそ(祈願! ★消臭っ☆)」
「……ぼそぼそ(おおっ、パンツ見えてる)」
「……ぼそぼそ(おええ、パンツ見えてる)」
大騒ぎになっていた。
てか、パンツって……イヤ、苟も『癒し手』がイヤラしい事を考えてる場合じゃあない。
「『聖女』さま!」
「クリちゃんは、そっちのカバみたいなのを」
「カバってー、なーんなーんでーすかぁ?」
『この世界』には居ないのか? 河馬。
「――腕に宿れ、白き光。我が手に集いて、愛し子へ。☆癒しの手☆」
そう言ってシンシアさんは、「赤○でこ」……はシナリオライターさんだ。
じゃなくて! 『聖女』さまの、赤くなったおでこに、白い光を纏った右手をかざした。
実はその左手を、俺の右手が握ってる。こっそりと『合体』してるのだ。
「悪いのー、悪いのー、飛ーんでっちゃえぇ! ☆救いの手ぇ☆」
クリムソルダ嬢が白い光に包まれた右手を、カバっぽい第一王女殿下の紫色に変色したおでこにあてがった。
その左手を、俺の左手が不自然な曲がり方で握ってる。こっそりと『合体』してるのだ。
……てか、こっちの方がダメージ大きそう。紫色に腫れてるし。
もしかして、『聖女』さまって、すんごい「石頭」なのでは?
「「「「「……おおおっ、す、凄い」」」」」
床に寝かされていた『聖女』さまと、第一王女殿下の全身が、白く眩い光に包まれた。
またまた効果が大き過ぎた気もするけど……非常時だしな。
白い光――その正体は生物の体内に常駐するナノマシン的な……あるいは「微小生物」的な『守護の星(極小サイズ)』だ――が収まると、二人の意識が戻ったようだった。
「「「「「……おおおっ、お二人とも気が付かれた!」」」」」
「……う、ううん」
俺は『聖女』さまの方しか見てなかったけれども。
「『巫女見習い』シンシア。十一段昇格!」
『神官女長』が言った。
……って、また居たの?
「『巫女見習い』クリムソルダ。四段昇格! そして『巫女見習い』ヨハンナ。オマケで五段昇格!」
俺はオマケかよ?
それはともかく……この時、気になる事があった。
第一王女殿下の身体から、何やら小さな黒い「星」が飛び出したように見えたのだ。
それは『暗黒邪法』を発動させた時に現れる、ざわざわした「黒い星」に似ていた。
その「黒い星」の行方は……不明だ。
俺は、『聖女』さまのご様子を『光眼』の「カメラ機能」で撮影する事で、手一杯だったのである(いつものやつですわ)。
◇
ああ……シンシアさんの美麗なお尻が……大スクリーンに……。
ついに、この時がやって来たよ。
なんとも……言えない複雑な気分だ。
俺的には、なんとしてでも阻止したかったのに……彼女の意思を尊重するなら、コレを邪魔しちゃいけないのだ。
「「「「「……(ごくり)」」」」」
みんなして生唾飲むなよ。
彼女は長い黒髪なので、自分で髪の束を持ち上げてる。
その仕草がまたセクシーなのだ。背中も、白くて綺麗だ。
シンシアさんが歩き出した。
姿勢よく、凛々しい感じの歩き方だ。
その様子を見守りながら、頭の中では別な事を考える。
あの「黒い星」は何だったんだろう?
『聖女』さまに取り憑いたネコジッタ婆の亡霊(?)の正体は、あの「黒い星」だったんだろうか?
そんで「俺のお陰」って言ってたのは、どういう意味だったんだろう?
俺、別に何もしてないんだよな。ただ『癒し手』の力をブーストしただけで……。
シンシアさんが『乙女の道』の東端まで歩き、そこから向きを変えて引き返して来た。今度は西端に向かうのだ。
今夜の『お披露目会』の、最後の一人だ。会場全員で、静かに見守る。
妙に、神聖な雰囲気だ。
そして、シンシアさんが俺たちが待つ中央部に戻って来た。
「この者は奴隷ではないと?」
ロザリンダ嬢の呼びかけに、
「「「「「承認!」」」」」
人々は重々しく頷いた――と思ったら、
「異議あり!」
――そんな声が飛んだ。
「……!」
シンシアさんが動揺してる。長い黒髪が揺れた。
「その子は双子じゃないのか? 右膝に『双子星』があったぞ!!」
なんとなく、聞き覚えがあるような声だった。男の声だ。
誰が言ってるのかまでは判然としないけど……ツインテールの黒子……じゃなくて、右膝に双子の個体識別用の『魔法の黒子』である『双子星』があるのならば、それはシンシアさん本人で間違いないのだ。某・武術の大会での「チャ○ンコ?」みたいに入れ替わりとかしてないし、文句のつけようが無いハズなのに。
「あと一人! 双子の子の方も確認させろ!!」
そんな事を言い出した。それって、ホノカの事だよ?
「あと一人! あと一人!」
投じられた小石の波紋は、やがて大きなうねりとなって、会場全体に広がっていく。
「「「「「あと一人! あと一人!」」」」」
ついには、そんな大合唱になった。群集心理って怖ーい。
「「「「「あと一人! あと一人! あと一人!」」」」」
九回二死的な状況なのに、『お披露目会』はまさかの延長戦に突入か?
みんなのスケベ心が、暴走しそうになってるぞ。
「祈願! ★着地っ☆」
『一の小宮殿』の屋根から、一人の少女が舞い降りた。
「わかったべさ!」
ホノカだった。
「プロペラ小僧ジン君に言われて……覚悟も準備も出来てるのだべさ!」
『神具』のマイク『全能神の杖』の前に立ち、そんな事を言いやがったよ。
そう言えば、シンシアさんの身代わりになってくれ、って頼んだ事あったわ。
……それ自体は、もう完全に手遅れになってるけどね。
「「「「「おおおっ!」」」」」
(プロペラ小僧だとう?)
(プロペラ小僧って……あのグルグル?)
(第三王女ライラウラ殿下の『愛し人』らしいぜ)
(全裸で、ち○こをグルグル振り回してたやつだろう!)
(俺も『ヘビアタマの翼竜』との戦いで見たよ。『★遠視☆』でばっちりと)
そっちも、いろいろ拡散してるし!
でも、イカツい男の人たちに見られても、ぜんぜん嬉しくないですう!
「あたしはそこにいる『巫女見習い』シンシアの双子の姉! そして先日独立ほやほやの『東の円十二単王国』の初代女王『火巫女』なのだべさ!!」
今回は噛まなかったな、ホノカ。
「「「「「おおおおおっ!」」」」」
(脱ぐのか?)
(女王? この子が?)
(女王『火巫女』だとう?)
(『東の円十二単王国』って何だ?)
(双子ってんなら、二人並んだお尻見たいぞ!)
宣伝効果バツグンだな。コレを狙ってやがったな。そして最後のやつ……。
(…………)
カオリちゃんが呆然としてるけど……何、そんな予定はなかったの?
「奴隷の印が無いのか、証明してみせろ!」
「「「「「そうだ! そうだ!」」」」」
「したら、先日独立ほやほやの『東の円十二単王国』の初代女王『火巫女』さまが脱いで見せるべさ!」
ホノカが宣言する。
思いっきり『東の円』の事を喧伝してるよ?
なんか先刻の声の男と結託してるかのような流れだよ?
あ、判った!
これって次郎氏の声だ。
シンシアさんとホノカの従兄・稲田次郎時定氏だよ。
イケメンなのに……恋人(アナベル嬢の姉のシャー・リイ嬢だ)もいるのに……なにやってんだか……。
ホノカは、『乙女の道』の中央に立ち――
「バサッとな!」
まるで俺みたいに『夏の旅人のマントル』を、最高にカッコ良く脱ぎ捨てやがったよ。
「「「「「おお……おおっ!?」」」」」
会場全体が驚愕した。
ホノカが着ていたのは『全知神の三角』ではなく、『地球』……イヤ、日本の『スクール水着(旧型/紺色)』だったのである!
「「「「「……ナニソレ?」」」」」
「先日独立ほやほやの『東の円十二単王国』の初代女王『火巫女』さまの、旧スクだべさ!」
イヤ、『この世界』の人たちは、そんなん知らんがな。
して、そんなん着てたら、肝心のお尻が見えないのだべさ。
「先日独立ほやほやの『東の円十二単王国』の初代女王『火巫女』さまが、脱ぐべさ」
ホノカが、旧スクの肩をズラす。
「「「「「うっ……おおっ?」」」」」
まさかの二段階脱衣か? どこのどんなラスボスだよ?
「……んとこしょ」
ちょっと可愛いな。
ああ、なるほど下に『全知神の三角』着てたのか……って、待て!
(ああ、ホノカのバカ!)
カオリちゃんも「それ」を見つけたようだ。
まだ会場側からは見えないけれど……ホノカのお尻に、「青アザ」があった。
急ごしらえの「旧スク」着て、どこかに座ってた「跡」だろうな……お尻にピーナッツみたいな「青アザ」があったよ。コレ、きっと色移りだよ。ひょっとして『ミドリ汁』で染めたのか?
ホノカ。お前、それでそのままカメラの方に向いたら……こうなったらヤムをエム。
そう言えば「ヤムをエム」って、「已むを得ぬ」って意味じゃなくて、ミーヨの父「ヤム・オ・デコ」氏が『王都大火』で精神的に追い詰められて「ドM」になっちゃったのを揶揄していたらしいよ。俺もコレ使っちゃダメだな。お義父さんだしな。
「祈願! ★お尻洗浄っっっ☆」
俺は、そのヤム氏の娘の、マジカルメイド・ミーヨちゃんが使ってた『魔法』を発動させた。
キラキラキラキラン☆
「ひゃうううううっ!」
虹色のキラキラ星の連打連撃を受けて、ホノカが喘ぎ声みたいな悲鳴を上げた。
その「いい顔」が、スクリーンにアップで映ってたらしい。
「「「「「うっほー!!」」」」」
会場のみんなが大喜びだ(笑)。
◇
「……♪」
ホノカが上機嫌でウォーキングしてる。
なんとなく鼻歌を歌ってそうな感じだ。
俺は彼女の『魂の双子』に語りかけた。
(ホノカって……羞恥心無いの?)
まあ、俺も「それ」を『地球』に置いてきてるけれども。
(わたしたち、『前世』の姿と大きくかけ離れてるんで……なんか他人事みたいで、わりと平気らしいんです)
(……へー)
俺たちって、『前世』で会ってるらしいけど……まったく覚えてないしな。
剥きたてのゆで玉子みたいな美尻を、左右にテンポよく揺らしてる。
長い黒髪も、リズミカルに揺れてる。
ホノカの中身は「道産子」だけに、北海道を舞台にした『天体の○ソッド』のEDを思い出したよ。「ED」って言っても男の人の……イヤ、俺いま女体化してて『巫女見習い』なんだから、やめとこ。
とにかく、あの作品のEDって、ヘッドフォン付けた髪の長い子が歩いてた印象が残ってる。うろ覚えだけど。
時々、立ち止まって「ピース」までしてる。
『この世界』じゃ通じないハズだけどな。
無駄にアピールし過ぎだ。
そもそも、ホノカは『巫女選挙』とは無関係なのに。
最後の最後にちょろっと出て来て、美味しいところを全部かっさらっていくとか……まるで、どっかの眼鏡ちゃんみたいだ。
そんな事されたら、ただでさえ印象薄いヒロインが、ますます薄味になるよ。
ネタバレ防止でタイトル秘密だけど……分かる人には分かるだろう。
ちなみに、今回カオリちゃんに支払う5日分の報酬は、日本円で、しゃくまんえんだ。
(実労働時間よりも貰い過ぎですよね?)
(いいってコトよ。俺『この世界』で目覚めてからずっと、日本のアニメの話出来る相手がいなくて、淋しかったんだよ)
(……お役に立てて光栄です。……にしても目立ってますね。ホノカ)
(だよねー)
てか、今回の場合、その最大の被害を受けてるのはシンシアさんだよ。まったくもーもー。
それと「どっかの眼鏡ちゃん」って言っても、『○○の○○』の○○○○(※非常に重大なネタバレ防止)じゃないよ? 『アイディー○ー』のクレア・○ウジョウでもないから。あと男の子だけど『魔○使いの嫁』のお友達の弟さんでもないから……中の人が全部同じだけれども。
「「「「「……ヒミコさまあああっ!」」」」」
観衆に大人気だ。
ホントのホントに目立ち過ぎだ。
一応、女王陛下の『大事な秘書』ロザリンダ嬢と「おトイレの会談」を経ているから、もう「捕縛命令」とかは出ないだろうけど。
正式な立候補者である『巫女見習い』の子たちが、忘れ去られそうで怖いな。
『暗黒邪法』で、また「やり直し」したろかな?
(ヨハンナさん。気になってたんですけど『暗黒邪法』って?)
(2ツン……だいたい2分間くらいの記憶を消しちゃう『魔法』だよ)
(そ、そんなのがあるんですか? そしたら)
(心配しなくても『悪事』には使えないらしいよ。『この世界』のルールに従って)
(そうなんですか? それにしても……記憶が消えるって)
(カオリちゃんだって毎週日曜日に記憶がリセットされちゃうでしょ?)
(それって『一週間○レンズ。』の藤宮さんでしょう?)
(……なんで、そんなにすんなり通じるんだ? 観てたの?)
(ジンさんは友達じゃないから、記憶は残ると思いますけど?)
淋しいコト言うなよ(泣)!
(その『暗黒邪法』とやら。ホノカが何かやらかしたら使えそうなので、後で詳しく教えてくださいね)
(……ハイ。よろこんで)
「では、結論を! この二人は奴隷ではないと?」
ロザリンダ嬢の呼びかけに、
「「「「「承認!」」」」」
人々は満足げに、重々しく頷いた。
てか、ホントに二人並んで、お尻晒されてるし……。
◇
「これにて『巫女選挙』初日の『お披露目会』を終了いたします」
司会のロザリンダ嬢が、閉幕を宣言する。
やっぱり、みんなで「歌ったり踊ったり」は無かったよ。
意外にさっくりと終わったよ。
にしても……長い一日だった。
◆
まだ終わらないけどね――まる。




