140◆お披露目会
「これより、『お披露目会』を開始いたします」
『巫女選挙運営委員会』委員長のロザリンダ嬢だ。
借金の悩みが消えたお蔭だろう、落ち着いてしっかりとした声だ。
「立候補する『巫女見習い』の方々、こちらへ」
ロザリンダ嬢が、俺たちの方を振り向いて――びっくり!
彼女の赤くて厚めのくちびるが、巨大な「タラコくちびる」と化していたのだ。
ああ、そっかー。
『★拡声☆』の『魔法』ってこうなるのか……と思い当たる。
『★聞き耳☆』は「耳がでっかく」なるし、『★遠視☆』は「目がおっきく」なるんだった。そんな仕様になってるんだよな。他人に対する一種のマナーなのかな? なんにせよ「唇が腫れてる(?)」のは、初めて見たよ。
「「「「「……ぉぉお……おぉぉ……」」」」」
姿を見せた『巫女見習い』たちに、観衆たちが騒めく。
と言っても、『お披露目』前なので、白いヴェール『虫蚋除け』と『夏の旅人のマントル』で、ほぼ全身隠してるけど。
『一の小宮殿』の『南天の星見』という名のバルコニーに出ると、薄暮の中に人の波が見えた。
野球場が二つは入る広さの『三角広場』が、人で埋め尽くされてる。
いったい何人いるんだろ?
そして、入場料代わりの『銀の円盤・大人券』は、『月面銀貨』1枚(約6千円ちょっと)だから、初日でどれくらい動いたんだ?
……とか、ゲスな考えはやめとこ。俺はいま女体化してて「清き乙女」だしね。
でも、野球場二個分で野外だから……数万人はいるだろうな。
イヤ、もっとだな。
『女王国』の総人口がどれくらいなのか知らないけれど、『王都』中の宿屋が満杯になってるらしいしな……って、この話誰から聞いたんだっけ? 誰かを完全に忘れてしまってる気がするな。そして「満杯」って言葉。考えすぎるとやらしいな(笑)。
にしても、一般観衆は立ち見だし、大変そうだ(※他人事)。
俺も、本来なら「あっち側」にいたハズなのになあ……何という運命の変転。
「『全知全能神を讃える歌』と『世界の平和を祈念する歌』!」
ロザリンダ嬢が叫ぶ。
それを合図に、『全知全能神神殿』の大階段に待機していた『神殿合唱隊』が歌い始めた。
『三角広場』とは、『永遠の道』の『大交差』をはさんだ「お向かい」とはいえ、かなり遠くに見える。
「……懐かしー、ですう」
呟いたのは、クリムソルダ嬢だった。
彼女も子供の頃に、『神殿合唱隊』に所属してたって話だったな。
少年・少女たちによる『地球』の「コラール」みたいな曲だ。
子供の声なので、荘厳と言うよりは可憐でいたいけな感じだ。
しかも、両方歌い終わったら、それを「重唱」し始めた。
『○が○びたがってるんだ。』のミュージカルのラストみたいだ。
「よく、どっちかに釣られないわねー」
ぼそぼそっと言ったのは、アナベル嬢だ。
確かに、歌詞もメロも違う歌を、隣同士で同時に歌ってる。
「真ん中をー、おっきー、硝子板でー、遮音してますう。伴奏もー、別ですう」
クリムソルダ嬢が、あっさりとネタバレした。
そんな仕掛けがあるんか?
『神聖術法』とかじゃなくて、物理的なモノなんだ?
「間違ってー、ぶつかってー、硝子にぃ、張り付いちゃった事ー、ありますう」
のんきな声で、クリムソルダ嬢が言った。
「「「「「……ぷっ」」」」」
みんなで吹いた。
その様子を見たかったな、お約束の定番だしな。
それで、みんなの緊張も和らいだみたいだ。
クリムソルダ嬢、なかなかやるな。
俺も、なんかやらかしたいな。ついつい、そう思ってしまう。この癖なんとかならないものか……。
にしても、大概長い。
もう、完全に日が暮れたぞ。
なんで『水灯』点けないんだろ?
あ、終わったようだ(※音響情報)。
「「祈願! ★一尺玉っっ☆」」
ホノカオの声だ。『花火』って、このタイミングだったのか?
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
すんごいリアルな打ち上げ花火だ。
でも、ところどころに虹色のキラキラ星(『守護の星(普通サイズ)』だ)が見える。
きっと、光学系の『魔法』のアレンジなんだろう。イヤ、オリジナルの『巫女巫女魔法』かな?
「「「「「……ぉぉぉああぁぁぁああ!」」」」」
観衆が、どよめいてる。
なんでもホノカは、12歳で『前世の記憶』を取り戻して、『この世界』では『魔法』が実在するという事を知ってからは、『魔法の花火』を打ち上げる練習ばっかりしてたそうな。
彼女の二つ名(?)の『火巫女』にも、そういう意味も込められているらしい。
どーん! パチバチバチッ。
アニメで花火のシーンって、色々あるよな。
大事な「告白」が、邪魔されて聞こえないとか。
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
でも、俺。某アニメの「果たせなかった約束」を思い出しちゃうな。
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
また上がった。
流石に、『色づく世界の○日から』の「魔法花火」みたいに、全天に連発とかは無理みたいだ。単発ずつ上がってる。
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
てか、何発上げんねん!
お祭りの景気づけみたいなもので、祝い事だから奇数だろうけど……あ、分かった。あと2発だ、
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
ひゅるるるるるるるる――どーん! パチバチバチッ。
『七人の巫女』を選ぶわけだから……やっぱり7発か。「ジンくん」には未踏の領域だな(……しみじみ)。
(……ヨハンナさん。ヨハンナさん)
小声で呼ばれたので、見るとシンシアさんが綺麗な白い手を差し出してる。
何だろう?
(会場全体の絆を高めるために、みんなで手を繋いで『協調魔法』で『水灯』を『★励光☆』させるんです)
(あ、ハイ)
そんな事するのか? と思いつつ、シンシアさんに言われたので素直に従う。
もう片方の手は、ポタテちゃんだ。
その向こうに、アナベル嬢とクリムソルダ嬢……とずーっと続いてる。
俺たちの『黒幕』さんたちや、『巫女選挙運営委員会』の面々まで参加して、ずーっと続いてる。
見渡すと、夜の薄暗闇の中で、会場全体が繋がってる。
なんかの番組で「レモン電池」を何千個も「直列」に繋いで、無理矢理電圧を上げて車だったか何かを動かそうとしてたのを、ふと思い出す。
「「「「「……祈願っっっ。★励光っっっっ☆」」」」」
キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラン☆
ぐっはー。すげー、眩しさ。
元々三角広場にあった街灯的なヤツと、『巫女選挙運営委員会』が設置した会場照明的なヤツが、とんでもない明るさで光ってるよ。
コレって、俺は参加しない方が良かったんじゃね?
『合体魔法』の最強版みたいな事になってるよ?
「「「「「…………ざわざわ。ざわざわ」」」」」
ざわついてるし。
(……コレって)
(……ああ、アレだよ)
(話に聞く『前兆』ってヤツだよ)
(この間の『荒嵐祓い』の祈願も成功したって聞いてるぜ)
(早く、脱がねーかな?)
(……って事は、今年の『巫女選挙』で誕生するのか?)
(アレが)
(……アレか)
アレって何だよ?
「皆様。お静かに!」
ロザリンダ嬢が言って、くちびるの前に小指を立てると、会場が水をうったように静かに……はならなかった。
ちなみに「しーっ」の合図が『この世界』では小指なのは、女性が男性にしつこくされた時に、ピッと右手の人差し指を立てる事で、「いい加減にしないと対暴漢用の『護身魔法』を発動させるわよ!」って警告のハンドサインになってるからだそうだ。それと混同されないように小指を立てるのだ。
俺いま女体化してて「女の子」だし、きっと『護身魔法』発動可能だろうな。
何かあったら……何も無くても、やってみたいな(ウズウズ☆)。馬鹿な男どもに、電撃とか喰らわせてやりてーな。ぐへへへ(邪悪な笑い)。
「「「「「…………ざわざわ。ざわざわ」」」」」
(……ついに誕生するのか? 幻と言われていた『伝説の巫女』が!)
『伝説の巫女』? ナニソレ?
(……俺たち、歴史の生き証人になるのか?)
今は無理だろ。よくて数十年後だよ。
(『伝説の巫女』ってなに?)
俺も何か知りてーよ。
(早く、脱げろー!)
まったく同感だよ。
あまりにも眩し過ぎたために、『巫女選挙運営委員会』の手によって、すべての『水灯』が真上に向けられた。紐を引っ張って角度を調節出来るらしい。
宵闇の中、何本もの「光の柱」が直立している。
なんか凄いスペクタクルな光景だ。
(おい! 上を見ろ!!)
誰かが叫んだ。
みんな、つられて見上げると――
「「「「「うぉぉぉおおおおおおおおおおっっ!!」」」」」
夜空に――低く垂れこめた雲に、地上の光が映っていた。
この三角広場そのものが、映像を投影するプロジェクターのように、そのカタチを雲のスクリーンに映し出していた。
三角と言っても、実は頂点に「船の銅像」があるため、先端が欠けた「台形」だ。
それはまるで――
「「「「「パンツだ!!」」」」」
女性用のアンダーウェア(下)そっくりだったのである!!
――天空のパンツ(笑)。
伝説の始まりだ……って、んなアホな。
「そ、それでは、改めまして『お披露目会』を始めます」
ロザリンダ嬢(元・巫女)だ。
みんなで空を見上げて、ひとしきり笑った後(笑)、ついに始まったよ。
◇
トップバッターは、ポタテちゃんだ。
船の船首形をしたバルコニー『南天の星見』から、後ろに『黒幕』の「元・おトイレのハンナちゃん」を引き連れて、ゆっくりと踏み板を下りて『乙女の道』に立った彼女は、『全能神の杖』の前で姿勢よく真っすぐに『全知神の瞳』を見つめた。
なお、『杖』はマイク・スタンドで、『瞳』はカメラだ。
知って驚いたけど、そんな『神授の道具』が存在していたのだ。
これも、何代か前の『巫女』が『神授祭』で「神様におねだり」して授けられたものらしい。
かつて「プロペラ小僧ジンくん」が『おっぱい宮殿』の『謁見の間』でプロペラ・ダンスを披露した際、その模様が別室で待機していた女官さんたちに中継されていたのは、この『神具』のお陰(?)だったのだ。
『瞳』の方は丸い風船にみたいに空中に浮かぶ、トボケた感じの「半目」マークだ。
あちこちで見かけてたから、『地球』でもよくある魔除けの紋様だと思って、大して気にもしてなかったけど……そのモトネタのガチなヤツは、動画撮影機能がある『神具』だったのだ。
例えて言うなら「ダミーの防犯カメラ」みたいなノリで、似たマークがあちこちに飾って在ったらしいのだ。
プロジェクターは『全知神の御心』と呼ばれる、これまた『神具』だ。
なーにが「御心」だよ、って気がしないでもないけれど。
こっちは、地球儀みたいに「ジンバル」の台座がついた球体だ。
画像投影角度の調整のために、そんな支持体が付属してるっぽい。
近くに居た『巫女選挙運営委員会』のスタッフ10人くらいが――
「「「「「祈願! ★投影☆」」」」」
『多重詠唱魔法』で起動させた。
『瞳』で撮影された動画が、微妙なタイムラグを経て、『一の小宮殿』の屋根から垂らされた帆船の帆布のスクリーンに投影されている。事前のリハは完璧らしく、ハミ出しやズレとかは無いようだ。
「「「「「…………おおおっ」」」」」
肝心の画質は……呆れるほど鮮明で綺麗だ。
ポタテちゃんが被ってる白いヴェール『虫蚋除け』の繊細なレース模様が、はっきり分かる。
「4K」通り越して、「8K」とかじゃないだろうか?
これだけ画質鮮明だと、ハ○毛は絶対にマズいよな(笑)。
でも、表示する側の処理が追いついてなくて、動画としてはコマ落ちしてるようなカクつきがある。四角いデジタルノイズみたいなのは無いけど。
それにしても……俺の『光眼』みたいな『神具』が、「受光/カメラ」と「発光/プロジェクター」と機能と役割を別にしながらも、存在していたのね?
俺、自分の事をエスペシャリーなオンリーワンだと思ってたのに……しょんぼりだ。
「み、みなさん」
まるで仙人が持ってるような木製の『杖』に向けて、ポタテちゃんが語り出す。
「こんばん、うわっ」
何かに驚いてるかのような挨拶第一声だ。
挨拶の途中で「お辞儀」したんだけど……よくマイクに頭をぶつけなかったな。こういう場合の「お約束」が分かってないのかもしれないけれども。
『杖』で集音された音声は、『全能神の薔薇の門』と言うイヤ過ぎる名前のスピーカーで、会場全体に届けられる。
真正面から見ると、薔薇って言うより「ザク○ロ」……イヤ、「柘榴」の断面みたいで、ちょっと生物っぽい。どうでもいいけど「ザ○レロ」って何だっけ?
それはそれとして、全体の見た目はずんぐりした「臼砲」みたいだ。
これも手動で角度調整するために、大砲みたいな車輪付きの台座に載ってるのだ。
同じのが、十門くらい……イヤ、大砲じゃないから十台とか十基とかで数えるべきかな。
「み、『巫女見ニャラい』ポタテ。三段です」
緊張してるなあ。一瞬「ニャルラトホテプ」みたいに聞こえたよ。
「「「「「…………ざわざわざわ」」」」」
実は「家畜のエサ」である「ポタテ」を名前にしている事で、会場が多少ざわつく。
「も、元・獣耳奴隷です!」
それを言うのか?
「わ、わたしが『七人の巫女』に選ばれた暁には……(モゴモゴ)」
慌てて駆け寄った「灰色の集団(元・七人の巫女)」に取り押さえられた。
「……ぼそぼそ(『決意表明』はするな、って言ってあったでしょ?)」
ロザリンダ嬢に怒られてる。可哀相に。
で、その声が『全能神の薔薇の門』を通じて、会場中に聞こえてしまったらしい。
「「「「「…………ざわざわ。ざわざわ」」」」」
またまたざわついてるし。
(なんだよ。今年は『決意表明』無しかよ)
(去年、おっぱい見せるとか言ってたの、どーなったんだよ?)
(そのせいで、今年から廃止されたらしいぜ)
(でも立候補8人しかいないんから、無しだと、すぐ終わっちゃうんじゃねーの?)
(脱げー)
「……ぼそぼそ(とりあえず、ひん剥いて誤魔化すのです!)」
ロザリンダ嬢の声は、『全能神の薔薇の門』を通じて、会場中に聞こえてしまってる。
「……きゃ……やだ!」
せくしーぼいす(笑)だ。
ポタテちゃんが、白い『虫蚋除け』を剥ぎ取られて、素顔を晒された。
混血の進んだ浅黒い肌の子だけど、恥ずかしそうに頬を染めてるのが、はっきり分かる。ポイント高い。てか、何のポイントだよ? でも、やっぱり恥じらいは大事だ。その方が燃え……イヤ、萌える。
「ダメですっ! ……いやっ」
首から下を覆っていた『夏の旅人のマントル』まで、剥ぎ取られてしまった。
浅黒い肌に、白い三角形が三つ。
マイクロビキニ的な低隠蔽率だ。
これがッ、これが『全知神の三角』だッッッ!!
「「「「「……うっ、おおぉぉぉぉぉおおおおお!!」」」」」
盛り上がってるし。
男ってホントにバカだなあ。女体化してる今、しみじみとそう思うよ。
ちなみに、世の男性に『魔法娼婦(元・巫女見習いだそうだ)』の商売道具との誤解を受けているらしい『神授の真珠』は、黒いカバーで隠して、背中の方に回してる。ポタテちゃんはそれなりに長い黒髪なので、上手に隠れてる。
「それでは、お披露目です!」
ポタテちゃんが、くるんと反転して、ほぼ剥き出しのお尻を客席(立ち見だけどね)の方に向けた。
「「「「「……(凝視)」」」」」
なぜ、無言? ガン見やん。
スクリーンには、お尻が「どアップ」で映し出されてる。
恐怖なのか緊張なのか、お尻がずっと、ぷるぷると震えてるし。
しかも、本人こっち向きなので、それを見ちゃってるし……すんごい羞恥プレイな気が……。
「……(ちらり)」
なんか目が合ったよ。
助けを求めるみたいに見つめられたよ。
頑張れ、ポタテちゃん。
ポタテちゃんは『乙女の道』を歩き出した。
ファッションショーのランウェイみたいに、端から端まで歩くのだ。
そう言えば、『風の中のプリ○ローズ』を歌ったC○iさんの曲に、『今、○き出す君へ』って隠れた名曲があるな。
(ああ……あれ、いい曲ですよね)
カオリちゃんも知ってるらしい……って、あれ? 気付いたら後ろに居た。ちょっとびっくり。
ポタテちゃんが、中央に戻って来た。
ちなみにスクリーンには、ウォーキングの様子が、前から後ろから横から上から足元から並走視点から……色んな角度で、ずっと映し出されてたよ。オリ○ピックの100m走か! カメラ何台あんねん!
「結論を! この者は奴隷ではないと?」
ロザリンダ嬢の呼びかけに、
「「「「「承認!」」」」」
人々は、重々しく頷いた。
みんなして、そんな風な小芝居だけどね。
忘れかけてたけど……そうだった。
『奴隷の印』と誤解されてる「蒙古斑」が付いてないのを、大衆の前で公開するのが『お披露目会』の本義なのだ。
『水着審査』つっても、Tバック水着で「美尻コンテスト」とかじゃなかったのだ。
ポタテちゃんは生まれた時には、「蒙古斑」がついていて、一度は獣耳奴隷となっていたけれど、その「奴隷期間」中に『癒し手』として覚醒して、豚耳奴隷から『神殿』の『巫女見習い』に取り立てられたのだそうだ。
こっちを向いた、その表情は……複雑そうだ。
この『お披露目会』そのものが、過酷だ。
元々の『巫女』を選ぶ儀式には、こんなの無かったらしいのに。
時代を経て、肥大化した巨大組織『神殿』の「大人の事情」のために、10代の少女たちが、こんな目に遭わされて……と言うか「晒されてる」んだもんな……。
(『蒙古斑は奴隷の印である』って言う『大前提』そのものが誤謬なのに)
カオリちゃんの思念だ。
(『大前提』って、確か『三本』で締めるやつ?)
(大前提。小前提。結論です。『三段論法』です。『三本締め』じゃないですよ)
俺、昇格して『巫女見習い』の『五段』だけどね(※密かにちょっとあったのだ)。
あ、次。パンツちゃんだ。
(ドロワー・ヅ・ロースさんですよ)
なんなの? その名前。「パンツ・パンツ」やん。
そして、なんで家名と貴族位まで含めた真名知ってるの?
パン……イヤ、『巫女見習い』ドロワー嬢は、後ろに『黒幕』(その正体は、プリムローズさんこと、プリマ・ハンナ・ヂ・ロース嬢だ)を引き連れて、ゆっくりと踏み板のスロープを下り、『乙女の道』に立つ。
あの斜路、足元気をつけないと転びそうだな……イヤ、予告とか予言じゃないよ?
カオリちゃんも躓いて「屈斜路湖」とかしないように気をつけてね!
そんな「阿寒湖」じゃないよね?
(はいはい)
俺も気を引き締めてないと「網走湖」が「朱鞠内湖」だと思われてしまうな。
そんで「塘路湖」が「支笏湖」してしまうな。「能取湖」になって「サロマ湖」。「洞爺湖」のTMAF。
てか、もう「大喜利」ですらないな。強引過ぎるよ。意味不明だ。
最後の「ウヤコ」って何を宣ったんだよ?
でも、探せばいそうだな、「ウヤコさん」ってレイヤー。
コスプレで有名だもんね。『洞爺湖マンガ・アニメフェスタ』。
(なぜに北海道の湖めぐりなんですか? と言うか、斜路なら『シャ○』で、『ご○うさ』に行く道もありましたよ?)
残念だけど、その「ご注文」には応えてあげられない。
俺、観てないんだよ。よく知らないんだよ。「青山ブルー○ウンテ○」てなんなんだよ? 「チ○メ隊」ってなんなんだよ?
まるまんま、分かんないべさ。
深い霧の「摩周湖」だべさ。
(白々しく観てないとか、よく言いますよね? 知ってますよね? シ○ロ)
その子の名字は西園寺? イヤイヤ、ちゃいますやろ? 桐間でっしゃろ?
(思いっきり、名字まで知ってるじゃないですか? その様子だと、お誕生日まで知ってそうですよね?)
ちなみに、西○寺の方は、名前が「うさぎ」だよ。
あと、今日って『地球』の感覚だと「7月12日」だよ。もうちょっと先だよ。
(やっぱり、知ってるんだ!)
◇
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』ドロワー。三段です」
言って、外した白いヴェールを、後ろに控えていた『黒幕』に手渡した。
続けて、あっさりと『夏の旅人のマントル』も脱ぎ、それも『黒幕』に手渡した。
なるほど、そのために『黒幕』が付き添ってたのか。
ポタテちゃんは有耶無耶に終わったけれど、これが正しい段取りらしい。
ドロワー嬢は、ウォーキングも堂々とそつなくこなして、無事『お披露目』が終わった。
なかなか可愛かったな。
(お尻が?)
仕方ないでしょ、デカデカと映ってんだから! そこ見るしかないでしょ?
……その後は、わりと淡々と進む。
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』アルルミナ。三段です」
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』サレイシャ。三段です」
「みなさん、こんばんは。『巫女見習い』アナベル。三段です」
まるで、コピペみたいだ。
事前に色々あったアナベル嬢も、事前に豪語していただけに、公衆の面前でお尻丸出しでも堂々としていた。
マジカルメイド・ミーヨちゃんの『★お尻洗浄☆』で、茹でたて剥きたての玉子みたいにツルッツルになったお尻が実に綺麗だ。実は、それに気付いたみんなにねだられて、控え室で、みんなにしてあげる羽目になったよ。
勿論、ミーヨ単独では不可能なので、俺との『合体魔法』で、だ。
なので、今回の『巫女選挙』に立候補した『巫女見習い』は全員、女神級の美尻だ(笑)。
うん、俺様のお陰だな。
でもな、『★お尻洗浄☆』って名前が、やっぱりアレだな。
水の玉が連続して飛んで来そうな名前だ。
……でも、アナベル嬢、結局『黒幕』見つからなかったのね?
なんか一人だけ一人きりで、それはちょっと可哀相だったよ。
代わりに『聖女』さまが、アナベル嬢が脱いだ『虫蚋除け』なんかを拾ってたよ。こん時、ちょっとあったけど……後で「回想」するかもだよ。
(♪ふーんふふん)
カオリちゃんが、小声でなんか歌ってるのが気になるな。何の歌だろ?
カメラが左向きの並走視点に切り替わった時だけ、「ピンチの時」とか「諦めない」とか。
熱く燃える、少年誌系のアニメかな?
(『乙○のポリシー』って曲です。場所が『乙女の道』ですから、繋がりでなんとなく)
(……へー、なんの曲?)
(『美少女戦士セー○ームーン』のエンディング曲です。ヒロインの、うさぎちゃんが、サイドビューで歩くんです。あ、最後は走り出すんだったかな? とにかく、2期目の……いえ、2年目の『R』のエンディングですね)
(2年目? 新しいやつじゃなくて、古い方の話? 俺、どっちも観てないけど)
(古い方です。わたしとホノカが観てたのは、再放送でしたけどね)
(へー、そうなんだ)
(昔は1年通しでやるのがフツーだったそうですから。今だって『プリ○ュア』とか1年やるじゃないですか?)
(流石に『プリ○ュア』は観てない。てか、最近は長いヤツだと分割するやん?)
そのせいで、「つづき」を観れなかったアニメが、何作もあるよね(泣)。
◇
「みーなーさーん、こーんばーんわぁ。『巫女見習い』のぉ、クリムソルダですう。四段ですう」
出ーたー。
コピペ不可な、のんびりぽわわーん娘の登場だ。
ちなみに、この子も色々あって、こっそり昇格したのだ。
見ると、姉のロザリンダ嬢が、血の気のなくなった顔で呼吸を停止させてる。大丈夫か?
「じゃあぁ、さっそくぅ、脱ーぎまーすねぇー」
イヤ、『お披露目』だよ? 『水着審査』だよ?
「「「「「うっ、おおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」」」」」
盛り上がってるし。
「「「「「でっ、けぇぇぇぇぇえええええええええええっっ!!」」」」」
みんな素直で正直だし。
それにしても、流石は「メロンおっぱい」……って、カメラどこ映してんだよ?
そこ、お尻じゃないよ。そこに「蒙古斑」は出来ないよ?
ねえ、バカなの? 俺と同レべルなの?
「じゃあぁ、歩きぃ、ますねぇ」
ズシン!
「「「「「歩いた!!」」」」」
クリムソルダ嬢は「生まれたての何か」か?
てか、例のオモリ(※イリジウム。1立方㎝あたり22・42g)入りの木靴履いてないせいか、ホントに巨大ロボみたいな歩き方になってるし……何か『ヱヴァン○リヲン』の「最初の一歩」を思い出すよ……って、まさか転ば……あ、転んだ。
「はううう」
両手両膝をついたorzだ。俺揉みたい……俺みたいだ。
そして「その時」の動画が、何故かスクリーンにスロー再生された。
カメラは「並走視点」だ。ほぼ真横からだ。
まったく何も無い所を爪先で蹴って、足を挫いたみたいに倒れ込む。
反射的な動作なのか、前に突き出した腕の陰から「メロンおっぱい」が出現。
大き目サイズを買ったのに、収まりきれずに「下乳」がハミ出てる。ワオ(笑)!
手をついて、「四つん這い」になった次の瞬間。
クリムソルダ嬢のまん丸い「メロンおっぱい」が、前後にぶるんっ、ぶるんっ、と激しく揺れた!!
「「「「「すっ、げぇぇぇぇぇえええええええええええ!!」」」」」
みんなバカだ。おっぱいバカだ。俺の仲間だ。
(バカばっか)
カオリちゃんの思念が、南極のブリザードのようだ。
ここは「あんた、バカァ?」が正解な気もするけど……対象人数は数万人以上いるしね。
◇
当の本人を含む会場全員でスロー再生を観終わった後で、
「わたしったらぁ、まったくもーもー」
クリムソルダ嬢が、恥ずかしそうに呟いた。
その声は、マジカル・スピーカー『全能神の薔薇の門』を通じて、会場中に聞こえてしまっていた。
「「「「「まったくもーもー!!」」」」」
会場は、ひとつになった。
やっぱ『王都』で流行りそうだな。コレ。
にしても、流石はクリムソルダ嬢……物凄いインパクトだった。
この後に、出て行かなきゃならない俺とシンシアさんは、どーすりゃいいんだ?
これ以上のセカンド・インパクトを引き起こすためには……もはや、アレしかあるまい。
◆
ま、まさか――まる。




