138◆親子
「あっ! う○このおねーさん!」
子供の声だ。
見ると、昨日の『お肉の日』の『御振舞』の時に、ヨハンナ(中身は俺)が『おトイレ』まで同行した女の子だった。
即興で自作した「♪おねーさんは、う○こ ♪おねーさんは、う○こ」という歌を歌いながら立ち去った子だった。
またアウト……イヤ、会うとは思ってなかったよ。
しかも、ホントに「う○こ」を手にして『おトイレ』に向かう途中で……。
「ぷっ」
『黒幕』として、付いて来てくれたカオリちゃんが、吹いてるし。
「これ、シャシャンナ」
今日は、母親と一緒らしい。
なんとなく見覚えのある『神官女』さんだ。
お声はまだ若い。20歳代後半くらいだ。Dさんあたりかな?
女の子と手をつないで……てか、このふたり、完全に親子のようだな。
『神官女』は、「正式な結婚」をした元『巫女見習い』なので、子供を『神殿学舎(幼年部)』に預けて『神殿』で働いてる人が多い……のはいいけど、ここは『全知全能神神殿』じゃないのに、なんで親子でいるんだろう?
「……ごきげんよう」
とりあえず、挨拶してみた。
「ああ、『巫女見習い』ヨハンナ。貴女でしたか? この子を『おトイレ』にまで案内してくれた『う○……いえ『●物のおねーさん』とは」
言い直した挙句、さらにヒドく……。
「ぷっ」
またカオリちゃんが吹いてる。
「『神官女』様のお子様だったのですね?」
「ええ、わたくしは『神官女』ダイナ。こちらは娘のシャシャンナです」
「う○このおねーさん、こんにちは!」
元気よく挨拶された。
「ハイ。こんにちは!」
俺も、元気よく挨拶した。
いま現在、俺が「う○このおねーさん」なのは、紛れもない事実だからだ(笑)。
「これ、ダメですよ」
女の子は母親に窘められてる。でも、母親のあんたもどーなんだ?
「こちらには、どんなご用件で?」
歩きつつ、『神官女』ダイナさんに訊いてみた。
この方『巫女選挙運営本部』には参画してないハズなのだ。
「個人的な用向きです。わたくしたち家族の恩人にあたる方の娘さんが、この度の『巫女選挙』に出るので、ご挨拶に」
個人的な用と言う割には、あっさりと教えてくれた。
「恩人にあたる方の娘さん……?」
誰の事だろう?
「もし、差し支えなければ……どなたですの?」
「『巫女見習い』シンシアです。彼女の母君は、12年前の『神授祭』の折に、当時『巫女』だったわたくしを、寒さから庇い守って……亡くなられたのです」
淡々と告げるその表情は、白いヴェールでよく判らなかった。
「「……」」
ああ、そうか……。
『とても寒い冬』の犠牲になった二人の『神官女』のうちの一人が……シンシアさんのお母さんだったのか……。
「そのお陰で……今のわたくしとこの子がいるのです。とても感謝しています。もし『この世界』に生まれ変わっているのであれば……直接お会いして、礼を言いたい。そう思います」
そうなのだ。
『この世界』では、『魂』の「輪廻転生」が信じられてるから、「それ」は救いのない事ではないのだ。
(……その方は、ホノカの『この世界』での『産みの母親』でもあるわけですよね……)
カオリちゃんから、しんみりした思念が届く。
(ついこの間『地球』から来たばかり……みたいな感覚しか抱けない転生者としては、何も出来ないですし、ただ見守るだけですけど)
(……だよね)
俺も思念で同意する。
その話を聞いて、シンシアさんはどんな風になるかな?
泣いちゃうかな? 気丈に堪えるかな?
でも、彼女の事だから、自分の母のした事を、誇りに思うかもしれない。傍にはミーヨがついてるし、きっと彼女を支えるハズだ。
そう言えば、ミーヨの母親が亡くなったのも、12年前だったはずだ。
……詳しくは聞いてないし、訊けないけれども。
◇
『おトイレ』の前で、
「それでは」
「う○このおねーさん、さよおなら」
「ハイ。さよおなら」
●(気体)みたいな挨拶を交わし、二人と別れた。
親娘は、このままシンシアさんのところに向かうらしい。
「シャシャンナちゃん、可愛いかったですね。5歳くらいかな?」
カオリちゃんが、そんな感想を漏らす。
「…………」
俺はずっと「う○こ」呼ばわりされてたので、特にそうは思わない。
にしても、「ダイナ」の子なのに「スノードロップ」じゃないのか?
……これ、モトネタなんだっけ? アニメじゃない、よな?
(『鏡の国のアリス』です。ダイナは猫の名前ですよ。あと、もう一匹キティって名前の仔猫もいます)
カオリちゃんが、すかさず教えてくれた。
(そうだっけ? 『進撃の○人』に出てなかったっけ?)
でも、途切れてる『前世の記憶』では、そのあたりまでは観れてないんだよな、俺たち。原作の方で読んだんだったか?
どっちにしろ、俺にしては珍しく、アニメじゃない……のか?
ちなみに、『ZZ』は観たな。
あと、劇場版で『ファースト』と『Z』と『逆襲』と『91』も。
でないと、俺がいちばん最初に観た『G』である『UC』が理解出来ないのだ。
12番目とか16番目とか。……16番目は違うか。
個室の扉を開けて中に入ると、中には、またまた女の子が――
――って、鏡か。
いま現在の『俺』であるところの『巫女見習い』ヨハンナちゃんだったよ。
ここって『おトイレ』の個室なのに、珍しく鏡があるな。
元々は『宮殿』だしな、その名残なのか……?
ミーヨに言わせると、いまの俺って、まだ会ったことのない『この世界』での母親にそっくりらしいんだよな。こんな顔してんのか? 俺のママンは。
あ、そう言えば『鏡の国のアリス』にも出てるよね、ユニコーン。
あと、『ZZ』の、お父さんがバケモノみたいな子のニセモノの子って、最終的にどうなったんだろ? そう言えば俺、『THE ○RIGIN』も観てるな。校長先生、生徒に手を出したのか? プロポーズは卒業後だっけ?
(……? どうして『アリス』から、『ガ○ダム』の話になるんですか?)
繋がりが読めなかったらしい。
俺ら、全然喋らないで思念だけで会話して……まるで『ニュータ○プ』みたいじゃね?
(『サイ○ントヴォイス』ですね? ……あ、ああ、そう言う流れですか?)
繋がりが読めたらしい。
『ZZ』の、OP繋がりなのだ。
ちなみに、作詞したのは、48とか46のプロデューサーのひとだ。
(ところで『Z』は劇場版しか観てないんですか? TV版と劇場版ではラストがぜんぜん違いますよ?)
カオリちゃんから業深い思念が届いた。
うん、どうしても『ZZ』と繋がらないから、『Z』はTV版も全部観てるよ。てか、ガン○ム好きな知り合いがいて、アム○……じゃなくてブルーレイでもないな……当時はDVDか。全部貸してもらったんだよ。その人は『布教活動』って言ってた。
(……ふうん)
そんな会話を思念でしつつ、俺は『おトイレ』の個室に入って、うすうすの被膜に包まれて、プルブル震えてる「猫のウ○コ」を●器に投棄した。
●(固体)は、水で流されて、最終的にはダイオウフンコロガシが食べるらしい。
残飯の類は、ヤザン・ゲー○ル……イヤ、ゴロゴロダンゴムシが食べるらしい。
ダイオウフンコロガシは、『地球』の昆虫みたいな「完全変態」する生き物で、卵から孵ってすぐの幼虫時代から、成虫の最終飛行形態になるまで、その一生を通してずっと●(固体)食してるらしい。
食した●(固体)の中に、他の生物や卵が含まれている場合、それを完全に消化・吸収してしまい、競合する生物を駆逐してしまっているらしい。具体的には『地球』由来の「ハエ」とか。病原菌の類まで。
……だとすると、カオリちゃんが警告してくれた『トキソプラズマ』って、どうなんだろう?
そんな『地球』由来の病原菌が、『この世界』にも存在してのかな?
それに、『女王国』には、衛生意識が高い潔癖な人が多くて、色んな場面で『★滅菌☆』を使ってる。
なので、菌類とかウイルスっているのかな? 『この世界』に。
でも、『地球』じゃ、どんな生物でも体内に膨大な数の微生物が寄生やら共生してるはずなんだけどな……。その代わりみたいに『この世界』の生物には『守護の星(極小)』が常駐してるのかな? カオリちゃんが言ってた『目には見えない恐怖』って本当のところはなんなんだろ?
気にし過ぎるとアレだし……正直、よく分からなくなってきた。
ま、気にせず、ついでだし、放●(液体)しようっと。
しかし、自分のを見ても、全然おもろくもなんともないな。
……慣れつつあるのか? それはそれで、怖いな。
とにかく、ダイオウフンコロガシの排●物は「畑の肥料」になるらしいので、もの凄い「益虫」だ。
万が一にもダイオウフンコロガシが絶滅したら、『この世界』は●(固体)で溢れかえって滅亡してしまうに違いない。
でも、俺はその姿を一度も見た事が無い。
(『スナーク狩り』のスナークみたいに、最後まで見れずに終わるかもしれませんね)
どわっ!?
個室に一人きりだったので、カオリちゃんからそんな思念が届いて、びっくりした。ちょっと油断してましたよ。
てか、スナック菓子?
ポテチと『かっ○えびせん』『○ール』と『キャラ○ルコーン』食いたい。
カオリちゃん、パシリに使って悪いけど、ちょっと『地球』に行って買って来て!
(スナック菓子じゃなくて『スナーク狩り』です。『アリス』を書いたルイス・キャロルの短編です。Bさんばっかり出るお話です)
……へー? Bさんばっか? バカ? 俺? 意味不明だ。
「ま、いいか。祈願! ★後始末っ☆」
俺は「発動句」を口にした。
『この世界』の『魔法』は、音声認識で音声入力なのだ。
しかも何故か「後始末」の発音が「アトシマツ」なのだ。日本語みたいなのだ。
(ジン……ヨハンナさん)
何?
(考えたら、今のヨハンナさんが『魔法』使えるのって、おかしくないですか?)
なんで?
(だって、『★不可侵の被膜☆』とか言うバリアーを張ると、それと干渉してフツーの『魔法』が使えなくなるんだ、って言ってませんでした?)
…………。
カオリちゃんの指摘は正しかった。その通りだ。
なーんも考えずに、『魔法』使ってた俺の方が、バカでアホだ。
「つ、つまり……どういう事?」
ちょっと動揺してます。
(『魔法』って、3時間くらいで効果が勝手に切れるんじゃないんですか? ホノカがそう言ってましたよ?)
口に出して呟いたのに、カオリちゃんには届いていたらしい。『★伝心☆』の『神聖術法(その正体は魔法)』で返事が来たよ。
イヤ、その……。
(思い出してみてください。ヨハンナさんは何時その『★不可侵の被膜☆』という『魔法』をかけたんですか?)
冷静だ。
確か……あの双子の小僧どもが、潜水中にトラブったかもしれないと思って。
水中で呼吸するために、『口内錬成』で二酸化炭素と酸素を置換しようと……。
(あの時ちょうど、ゴーン。ゴーンって鐘がいっぱい鳴ってましたよ。あれって?)
『朝の八打点』だった。午前11時くらいだ。
(さっき鳴ってた『昼の三打点』って?)
午後3時半くらい……ああ、ホントだ。二打点(約3時間)どころか三打点(約4時間半)以上経ってる。時間切れの、効果切れだ……。
女神である『全知神』さまにかけて貰った「ジンくん」と違って、『巫女見習い』ヨハンナが、自分自身にかけた場合には、「常時発動」じゃなくなるのか……。
(3時間で勝手に止まるとか、石油ファンヒーターみたいですよね?)
俺も、前にまったく同じ感想を抱いたよ。
(発動を阻害していたバリアーが消えたから『魔法』を使える……これでいいんじゃないんですか?)
カオリちゃんから、事情を納得したような思念が届いたけれど……それではダメなのだ……。
(どうしてです? 必要な時に張り直せばいいんじゃないんですか? それとも無敵のバリアーが無いと、途端にビビり出すチキン・ハートなんですか? 常時発動型のバフが無いと、怖くて怖くて仕方がないと?)
ちょっとトゲがある。
(ジンさんって、『軍団鳥』との戦いの時、ぜんぜん怯えもしないで飄飄としてましたけど、自分だけは無敵のバリアーで、絶対に大丈夫だって思って平然としてたんですね?)
ジンさん言うな。ヨハンナちゃんだ。
イヤ、自分で望んでそうなってるワケじゃないから……。
『★不可侵の被膜☆』は、「ミーヨの願い」なのだ。彼女の優しさで出来てるのだ。
そんで、それを利用して「俺TUEEE」とか「無双」とか……した事ないし。
たしかに、ご指摘の通り「舐めプ」気味だったのは認めるけれども……。
(……ふうん)
ひんやりする冷気を帯びた思念が届いた。
クール便だ。首筋がゾクッとしたよ。
カオリちゃんは、「ジンくん」の「コピー体」として『この世界』に転生したワケだけれど……俺の『賢者の玉』みたいな「チート」無しで、色々と苦労したんだろうな……申し訳ない。
(まあ、それはそれとして……何がダメなんですか?)
俺たちの『性転換』だよ。ヘタすると……出来なくなるかも。
(どういう事です? ……そのバリアーが有効でないと『錬成』とやらが出来ないと?)
真剣に問われた。
肉体を改造する『身体錬成』って、夜セットしておくと翌朝出来上がるんだ。
(まるで炊飯器みたいですね)
俺も前にまったく同じ感想を抱いたよ。
で、それって炊き上がり……イヤ、出来上がりまで二打点……3時間以上かかるって事なんだけど……。
『身体錬成』は、数時間かかるのだ。「時短調理」とか「急速炊飯」とかは無理なのだ。
(『身体錬成』の最中にバリアーが切れちゃうと、どーなるんですか?)
…………。
どーなるんだろ?
なんかが、ニョロッ、とハミ出るのかな……。
俺が「プロペラ小僧ジンくん」だった時には、ミーヨ関連で停止する以外『★不可侵の被膜☆』は情事発情だったから……考えもしなかった事だ。
(常時発動ですよ? 間違えてますよ)
突っ込まれた。
(A○フィールドが消失した時みたいに『個』を保てなくなって液体化するとか?)
それって、古い方の劇場版じゃなかった?
ならば、俺も負けずにアニメネタだ。
赤くて丸いツブツブになって泡状分解するとか。
(自重を支えられなくなってパージするとか)
『器』を壊されて霧散しちゃうとか。
(青い液体まき散らして飛散とか)
アンデッドになるとか。
(吸血鬼になるとか)
魔女になるとか。
(塵に帰るとか)
「「……怖っ」」
そんな破局的な事には、ならないと……いいな。
(でもそしたら、やっぱり変ですね?)
何が?
(あのフザけた『パイ・パーン』とか言うのは……『魔法』ですか?)
……イヤ、『錬成』だと思う。
音声認識ではなく、俺の脳内での「思念」で発動するからだ。
(『昼の二打点』が鳴った後も、ずっとしてたじゃないですか?)
ああ、だよね? つまり……。
(ヨハンナさんがセルフでかける『★不可侵の被膜☆』は、時限タイマー式の自動停止タイプで、有効時間は3時間以上で4時間半以内……ひょっとして『二打点』の1.5倍の『三打点』なんじゃないんですか?)
……また1.5倍かよ。
その三打点――4時間半以内で『性転換』が完了しないと……どーなるんだろ?
◇
ミーヨに接触を図る事にした。
俺が「女体化」した時にずっと付き添ってくれていたミーヨなら、「それ」にどれくらいの時間がかかるか知っているハズだ。
カオリちゃんの案内で第1控室に着くと、そこには膝を抱いて泣き崩れているらしいシンシアさんと、その肩を抱いて慰めてるミーヨがいた。後ろにはセシリアが困り果てたように呆然としてる。
どうやら、あの『神官女』の母娘が訊ねて来て、12年前の出来事を伝えていったらしい。
このタイミングで、切り出すのは無理だ。
というか、シンシアさんは大丈夫なのか?
気丈で芯の強い彼女が、こんな風になるなんて……。
「大丈夫? シンシアちゃん」
「……はい。『虫蚋除け』で足元がよく……見えなくて、足の小指を……そこのカドに」
シンシアさんが、半泣きのような声だ。
(ううっ……)
(……痛たた)
俺とカオリちゃんは、その痛みを感じた。『キ○ナイーバー』の如く……って違うか、連動してないから、ただのシンパシーだ。
シンシアさんは今、白いヴェールの「九段」重ね折りで、見た目は真っ白なのだ。
見えないよ……足元なんて。俺の「三段折り」も大概視界不良だけど……。
てか、状況が思ってたんと違ったみたい。
まだ来てないのか? あの母娘。
「シンシア様、大丈夫ですの?」
俺は近寄ってしゃがみ込み、シンシアさんのおみ足をくんかくんか……した後で、試してみた。
「☆癒しの手っ☆」
あ、発動できちゃった。
「「「「「……えっ?」」」」」
右手が白く光り出したよ。みんな驚いてるよ。俺も驚いたよ。
でも……シンシアさんから聞いてたような『脳内選択肢』は出ない。「白い光」の正体であるナノマシン的な『守護の星(極小サイズ)』が、俺の体内に有り余ってるからか?
ま、そんなんはいいから、早く彼女の痛みを取り除いてあげよう。足の小指だな?
「きゃっ」
可愛い声だ。
「あっ……ああ、いい……すごく、いいです」
違うシチュエーションで言われたいセリフだ(笑)。
とにかく、「白い光」が、彼女の足に吸い込まれるようにして消えていく。これって、「毛穴」とかから体内に「侵入」してくんだろうな。
「お陰で痛みがひきました。ありがとうございました、ヨハンナさん」
シンシアさんから、丁寧にお礼を言われた。
いえ、こちらこそ、色々とご馳走さまでした。
しかし、コレって「鎮痛」なのか?
それともきちんとした「治癒」なのか……どっちだろ?
くるっ、と他の子たちの方に振り返ると、
「「「「「ヨハンナさん! 『癒し手』だったのですか!?」」」」」
みんなに訊かれた。あれ?
『巫女見習い』と『癒し手』がイコールじゃないって知ってはいるけど……そんなに驚かれるほど、珍しいことなのか?
「『巫女見習い』ヨハンナ! 『四段』昇格!!」
『神官女長』は言った。てか、居たの?
◇
なんでも、『癒し手』って、ただそれだけで「段位」が上がるらしいよ。
まだ11歳のヒサヤが、『巫女見習い』に成り立てで、すぐに「二段」だったのは、そのせいらしいよ。
◇
「祈願! ★音無秘めっ☆」
シンシアさんの『黒幕』におさまっているミーヨと二人で、『おトイレ』の同じ個室に入り、『合体魔法』を発動して貰った。女体化してても『合体魔法』は可能らしい。
『★音無秘め☆』は究極無敵の『おトイレ魔法』であると同時に、最強レベルの「遮音魔法」でもある。他人に聞かれると、色々と都合の悪い話をするので、わざわざこうしてるのだ。断じて俺の性癖とかではないのだ。
「は……早く、話して」
切なそうな声だ。妙に色っぽい。
生まれたての仔鹿のように、内股で両足をプルプルさせている。
『★音無秘め☆』は、ガチな排●時でないと発動出来ない。しかも排●後、自動的に『★後始末☆』が発動されて、その遮音効果は消滅する。
なのでミーヨはいま、必死に放●(液体)を我慢しているのだ(笑)。
「早く……漏れ……ちゃう」
「……(愉悦)」
楽しい。
なんだ、この楽しさは?
「頑張るんだ。でないと音が、外に……漏れ……ちゃう」
後半部分真似てみた。
「……うん……はあ」
ミーヨさん、色っぽいです!
「俺が女の子になった時、付き添ってくれてただろ、アレどのくらいの時間だった? そん時イタズラしたって言ってたけどナニしたんだ? お前もしかして妊娠してないか? シンシアさんの亡くなられた母君に恩義を感じてる母娘が来なかったか? 『宝石』売った時のお金どれくらい残ってる? ダイオウフンコロガシってどんななの?」
俺はミーヨの反応を見て楽しむために、長めに多めに、ゆっくりめに質問した。
「もう……ダメっ」
ミーヨの気配が消えた。
そして――
1ツンなのか数ツンなのかも判然としない、奇妙な意識の空白が途切れると、
「……ふう」
ミーヨの安堵のため息が聞こえた。
終わっちゃったらしい。ちぇっ。
(ちぇっ、じゃないでしょう?)
「どわっ!?」
「な、なに?」
突然脳内に響いたカオリちゃんの思念にビビった俺に、ミーヨがびっくりしてる。
(女の子に、お○っこ我慢させるなんて! 膀胱炎にでもなったらどーするんですかっ?)
カオリちゃんが「おこ」だ。
「そ、そっかー……お○っこ我慢させて、ごめんな、ミーヨ」
「ううん、平気。我慢したあとでするのって、凄く気持ちいいし」
「「「……」」」
「それで……さっき訊いたこと全部覚えてるか? 時間ないから、一つでも二つでも質問にだけ答えてくれないか?」
俺は訊ねた。
「……う……うん」
なんか、余韻に浸ってない(笑)?
「あ、そーだ。祈願! ★遮音玉っ☆」
俺はふと思い出して、『とある魔術の禁……じゃなくて、とある『魔法』を発動させた。
虹色に輝くキラキラ星が、丸く広がって、球体の遮音空間を作った。
「え? ナニソレ?」
「ほら、前にプリムローズさんが使ってた『音を漏らさない魔法』だよ」
「うー……そんなのが使えるんなら、ソレで良かったじゃない?」
ミーヨに突っ込まれた。
まあ、そうだよね。
でも、俺が楽しかったし、いいじゃないか。
◇◇◇
色々と試してみた結果。
俺は「誰かが発動させたところを見た事がある『魔法』」じゃないと、発動出来ない事が判明した。
『錬金術』の方も「見たり、触ったりした事があるモノ」しか『錬成』出来ないという制約があったけど……女体化して『★不可侵の被膜☆』の干渉を受けずに『魔法』を使えるようになっても、似たような制限が残っていたのだった。
色々とイメージを膨らませて、俺様独自の『オリジナル魔法』を次々と編み出してやろうと、密かに目論んでいたのに……しょんぼりだ。
でも逆に、「誰かが発動させたところを見た事」があれば、かなり高度で複雑な『魔法』でも、ただ「発動句」を口にするだけで発動出来るようなのだ。
細かい「レシピ」やら手順の組立てなんかを完全に無視して、なーんも考えずに『魔法』を使えるのだ。
バカで、アホな、この俺に、ぴったりな仕様だ(泣笑い)。
◇
「で、質問に答えてくれるか?」
俺はミーヨに訊ねた。
「うー……うん。まず、最初の質問は……だいたい三打点(約4時間半)くらいだったと思うよ。次の質問は……ヒ・ミ・ツ。その次の質問も……ヒ・ミ・ツ。あと、ダイナさんって『神官女』さんが、シャシャンナちゃんって言うお子さんと一緒に来て、シンシアちゃんにご挨拶してったよ。シンシアちゃん、毅然としてたけど……内心では動揺があったらしくて、その直後に足の小指ぶつけちゃって……痛そうだった。でも、ジンくん、あっさり治しちゃったね。凄いね。あと、その次の質問は……持ち歩くのも大変だし、『両替商組合本部』の『預け金庫』に全部預けちゃったから……よく分かんない」
「……なんだそれ? 質問全部覚えてたのか? すげーな、お前」
尊敬のまなざしで見ちゃうよ。
「てか、『預け金庫』?」
「うん、アナベルちゃんとこの『骨董品店』で、ジンくんが『窯炉霊峰』のお皿とか食器を壊しちゃった事があったじゃない?」
「……ああ、あれね」
高級食器とかで弁償金がエラい事になったっけ。
「その時に出て来た『薬莢』の中を見るために、ウチの『ハンコ』使ったでしょう? それって、オ・デコ家の『預け金庫』に出したり入れたりするために持って来てたんだよ」
「……へー」
出したり入れたり……お金とか、有価証券とか、貴重品の話だな?
いま俺女体化してるし……じゃなくて、とにかく俺が女体化した後に、ミーヨはミーヨで、いろいろやってたんだな。
にしても、『預け金庫』とか……なんとなく『ハリー・○ッター』思い出すな。
ゴブリンの魔法銀行だっけ? ホブゴブリンだっけ?
関係ないけど……プリムローズさんが何かの雑談の時に冗談で「日本のハ○ー・ポッターは陶晴賢だ」って言ってたよ。「ポッター」って日本語だと「陶工」って意味らしいんだよな。で、陶晴賢って何やった人だっけ? 『五等分の○嫁』の俺の一推しの三女が知ってたから、戦国武将だよね? 陶芸家じゃないよね?
(毛利氏隆盛のきっかけになった厳島の戦いで毛利元就に討たれた人ですよ)
カオリちゃんだ。
やっぱ、俺の思考がダダ漏れなのね?
それは俺も知ってるけど、その前になんかやったから討たれたんでしょ?
(ごく大雑把に言うと主君に対するクーデターですね。明智光秀みたいな)
おお、分かりやすい。君ら、ふたり凄いな。
そう言えば、あの『薬莢』って……12年前の『王都大火』の後で起きたクーデター騒ぎの時に、各地にばらまかれた『反乱の指令書』が入ってた可能性があったハズなんだよな。
「あと最後にね」
ミーヨだ。
「最後に?」
他になんか訊いたっけ?
「ダイオウフンコロガシってね。飛び立つ時に自分の体重を軽くするために、大量のお○っこを撒き散らして行くの」
「それかよ!? セミかよ!」
「わたし、それが凄くイヤで……でも、それも畑の栄養になるんだって」
「そうかよ!」
でも、俺も心の栄養になったよ。
◇
長々と『おトイレ』に籠ってるワケにも行かないので、みんなのトコに戻る事にした。
ただ、いちばん大事な事に答えてもらえなかったな。
あの「ヒ・ミ・ツ」って何なんだ? どう解釈すればいいんだ?
「ところで、カオリちゃん」
隣を歩く『黒幕』さんに声をかける。
「何でしょう?」
……でも、声に出してしまうのもアレか。思念に切り換えよう。
君はなんで、ミーヨが妊娠してるかもしれないって思ったの?
そう思ったからこそ、「猫のウ○コ」に触っちゃダメだ、って警告を発してくれたんでしょ?
(わたしたちが抱える『最重要案件』について調査してる時に、『王立産院』ってところで、お見かけしたんです。だから、もしかしたら……と思って)
『王立産院』か。
そこって、つまりは「産婦人科医院」なワケか。
ところで「妊娠」って……どーやって正確に調べるんだ?
(『地球』だと、『●(液体)検査』で判るんですけどね)
『●(液体)検査』……か?
(昔の検査では、アフリカツメガエルというカエルのメスに、妊婦さんの●(液体)を注射すると、何かのホルモンが刺激されて産卵するのを利用して検査してたんだそうです。そんなこと誰がどうやって調べたんでしょうね? ……聞いてます?)
俺、ミーヨのお○っこ飲んだ事ないから、味の変化なんて分かんないしな……。
(退場!)
どこにだよ!? 飲んでないってば!
◆
それ、「検査」じゃないよ――まる。




