010◇猫耳ちゃんと幻の月
「『丘』かぁ……。迷わなくていいよね、目立つもん」
ミーヨが、耳に心地いい声で言う。
彼女は見た目も可愛いけれど、声もいい声してる。ずっと聞いてたい気持ちになるよ。
ミーヨが言う通り、街の建物の背景には、バカデカい土饅頭みたいなものが、ずっと見えてるのだ。
これじゃあ、どう考えても迷う余地がない。
◇
真ん中に塔がある円形広場を後にして、街の名の由来になっている『冶金の丘』を目指している。
見上げると、『丘』の上では、ゆらゆらと大気が揺れている。
かなりの熱が、上空に逃げているっぽい。
その上昇気流を利用しているのか、鳥がいっぱい群れていた。
昨夜、おっちゃんらが言ってた『空からの恐怖』ではないらしい。
街の人たちは誰も気にしてないし。
この世界では、金属のリサイクルが徹底しているらしくて、屑鉄や廃棄・破損品を積んだ荷馬車が次々に『丘』に向かっていくのを見送った。てか、昨夜もいたしな。屑鉄屋のおっちゃんが。
さらに、何をするのか分からないけれど、大量の割れたような板材や端材と、枝や樹皮のついたままの木材までが運びこまれている。
……でも、金属の原材料となるはずの、鉱石らしいものは一切運ばれていない気がする。
ドーム状の『丘』の内部には、巨大な金属溶鉱炉と、その周辺施設があるらしい。
けれど、外側からでは、その構造も概要もまったく分からなかった。
きっと魔法的な仕組みで、何かやってるに違いないのに、部外者はその秘密を知ることは出来なさそうだ。
『丘』の近くには、そこから供給される精錬された鉄や魔法合金を材料にした金属製品の工房や鋳造所、鍛冶屋が立ち並んでいるようだった。
中でも多いのは、金属を叩いて作る「鍛造」だ。
馬の蹄につけるU字状の鉄製品「蹄鉄」とか、色んな種類の「刃物」とか「食器」とか「食品容器」みたいだ。
あとは、「鉄パイプ」みたいなもある。
水道管じゃないとは思うけど……今のところ正体不明だ。
とにかく、このあたりは暑い。
鋳込みや、鍛造のための「熱源」があちこちにあって、この街区全体の気温を、何度か押し上げているっぽい。
そして、キンコンカンカンと金属を叩く音がして、かなり騒々しい。
「ほら、『店馬車』あったよ」
忙しい職人たちのために、物売りの店馬車がたくさん出張って来ているらしい。
いわゆる「路駐」のまま商売してる。
カマボコ形の幌が90度回転した不思議な「幌馬車」だ。
この中にハンナさんの店馬車もあるはずだけど……似たような幌馬車の群れだし、どれかまでは覚えてない。
「じゃあ、わたしが行ってくるから、荷物お願いね!」
ミーヨが、とたとた駆けていく。
一人で大丈夫かな?
と一瞬思ったけど、ミーヨには『★痺れムチ☆』とかいう護身用の『魔法』があるらしいから……平気か。
「…………」
手持ちぶさたなので、近くの工房を、ぼ――っと観察する。
あんまりジロジロ見て、ヘンに刺激しないように、ぼ――っとだ。
お、やってるやってる。
火炉で熱く熱した鉄の塊らしき物を、デカいペンチ(やっとこ?)で挟んで、金属の台(金床?)に乗せて、ハンマーで引っ叩き始めた。
飛び散る火花がもの凄い。火傷しそうだ。
みんな目を保護するためか、スキーのゴーグルみたいなのを装着してる。
工房の奥の方でやってる事なのに、はっきりと視えるな。
すげーな、俺の右目の『光眼』。
カメラになったり、暗視機能があったり、広角やら望遠レンズみたくなったり……でも、これ全部「受光」なんだよな。それだけじゃなく「発光」も出来るわけだから、それを使って何が出来るか、後でもっと色々と試してみよう。
金属を切り裂く「レーザーカッター」みたいな事が出来たら、もの凄い強力な武器になるんだけどな。
◇
で、しばらく観察した感じでは、職人の間にはっきりとした年齢差があって、親方と中堅どころと新米の弟子といった人員構成のように思える。
徒弟制度らしいものがあるっぽい。めんどくさそう。
魔法合金の金属配合レシピを知るために、どこかに弟子入りとか、冗談じゃない。
必要な情報は、サクッと知りたいのに。
にしても、工房街なのに、場違いな感じでフワフワと蝶がいっぱい飛んでる。
この辺り、別に花なんてないのに……と思っていたら、建物に中から出たり入ったりしてるみたいだ。
家の中に花瓶でもあんのかな? 家の中の挿花に蝶が蜜を吸いにくるなんて、あんまり聞いた事ないけど。
「なに、ぼ――っと突っ立ってんだ、このウ○コタレ!」
突然、そう怒鳴りつけられた。
いきなりなんなんだ?
(なんだとこの野郎、俺をただのウ○コタレだと思うなよ! 黄金のウ○コタレだぞ!)
と言おうとして振り向いたら――そこに居たのは、頭に猫耳をつけた奴隷の女の子だった。
わしゃわしゃとした癖のある金髪。
そこに作り物の猫耳がピンと立ってる。
いわゆる「金髪碧眼」って珍しいらしいけど、この子はそうだった。気の強そうな青い瞳がキラキラしている。
パッと見た感じは俺たちと同じくらいの年齢。背はそれなりに高い。
今は美少女でも、将来的に美人か美女のどっちかに上位クラスチェンジするに違いない容貌だ。色白なコーカソイド系なので、元・日本人の俺からすると、完全に「外国の子」にしか見えないけど。
でも……奴隷にしては身ぎれいな恰好をしているし、そんな口の利き方をするような子には見えない。
「獣耳奴隷の子? 教えて欲しいんだけど、冶金組合ってどこにあるか知ってる?」
怒っても大人げないので、ついでに訊きたいことを教えてもらおう。
「はあ? なに寝ぼけたこと言ってんだ、このウ○コタレ!」
見た目は綺麗な子のに……なんて口の悪い子だ。
「目の前のあの『丘』がそうに決まってんだろ、このウ○コタレ!」
いちいち、最後に「このウ○コタレ!」と言わないと口がきけない子らしい。
「君、ホントに獣耳奴隷? 『奴隷の印』ってドコについてるの? ちょっと見せて」
そこまで「ウ○コタレ!」を連発されると、流石に俺も怒るよ?
「ぐうううっ、お兄さんの変態ウ○コタレ! ソレってホントはお尻にあるんですよっ!」
あ、怒ってる。てか「ホントは」って?
そこへ――
「おまたせーっ」
ミーヨが戻って来た。
なんか妙に時間食ってたけど、支払いは済んだらしい。
「あれ、どうしたの? この子は? んー……あなた懲罰組ね? なにか悪さして『一日奴隷』やらされてるんでしょ?」
ああ、なるほど。これがそうか。
ホンモノの獣耳奴隷じゃないわけか。
「ち、うるせーんだよ、この……」
女の子は何か言いかけて、頬を赤らめて黙り込んでしまった。
「…………」
「「……?」」
俺とミーヨは女の子を見守る。
「「「…………」」」
三人で黙りこむ。
けっこうな長い沈黙の後で、
「――冶金組合ですね。あたしがご案内します。どうぞ、お姉さん、お兄さん、こちらへ」
女の子は豹変してしまった。
「お兄さん?」
同い年くらいだよ、見た目は。
「あたし12歳ですよ」
猫耳の子はさくっと言った。
「「えっ?」」
驚いた。成長の早い子だ。
「ところで、さっきのなんだったの?」
歩きながら、ミーヨが訊いてくる。いろいろ納得してないようだ。
「思春期じゃないの」
俺は適当に返す。
12歳なら、思春期だろ? たしか。
道すがら、お仕事中のハンナさんと目が合って二人で手を振る。
繁盛してるらしい。口が上手いからリピーターがいるに違いない。
「その……あの子、さっき大声でウ○コタレとか言ってなかった? ジンくんの秘密かと思ってびっくりしたんだけど」
ミーヨが猫耳ちゃんに聞こえないように、俺に近寄って声で言った。
「ああ、あれね。たぶん、あの子の身内か友達に普段からああいうことを口走る人がいるんだろ、きっと」
誰かの口癖がうつってるっぽいし。
◇
「着きました。こちらになります。中もご案内しますか?」
猫耳の子が澄まして訊ねてくる。
そこは『丘』の中に入るための入り口らしかった。
カマボコ形で、大きさといい、地球にもあるトンネルの入り口に似てる。
「お願いする。金属の買い取りやってるところへ案内して」
俺が言うと、
「『冶金組合』の本部ですね? 分かりました」
女の子は俺たちを連れたまま、ためらいなくあっさりと中に入った。
途中でエアカーテンのようなものがあって、ぶしゅっと空気を浴びた。
猫耳ちゃんが、ほ――っとため息をついた。
「あー暑かった」
確かに中は、涼しかった。
ここって金属溶鉱炉があるはずなのに、なんでだ?
「涼しい――なんで?」
ミーヨも驚いてる。
「猫耳ちゃん、知ってる?」
俺が訊いてみる。
「ちっ、そんなことも知ら――ご存じないのも無理はありません。ここでは同時に極低温と極高温を作り出しているのです。炉の近くはむっちゃ高熱なのですが、それ以外の場所はとても冷えているのです」
猫耳ちゃんが、何かのカンペを読むみたいに言った。
どうやらここには、なにかを媒体とした魔法による熱交換システムがあるっぽい。
それって、もしかして「冷やす」方がメインの機能なんじゃないのか?
で、排熱が金属溶かすほどの高温になるのか?
うーむ、どうなんだろ? ぜひ見たい。見して。
「あ、ここ荷馬車も通るので、もっと端っこ歩いて欲しいのです」
俺たちは慌てて、左端に寄る。
そのタイミングでちょうど、荷馬車が出て行くところだった。交通量は多いみたいだ。
通路は材質不明だけど、感じとしてはコンクリート打ちっ放しみたいな、ざっくりした荒い作りの空間だった。
「もっと詳しく教えてくれないかな」
「『永遠の道』と同じく、すでに滅んでしまった超古代文明の遺産のひとつなのです。それ以上は知らないのです」
猫耳ちゃんの口調が雑になって来ている。
超古代文明の遺産?
「ミーヨ、知ってる?」
「4本指の神様たちが、人間として生きてた頃の話だよ」
「ナニソレ?」
……イヤ、2回言うよ。ナニソレ?
「着きました。ここです」
そこは、トンネル通路の中だけに工事現場の仮設休憩所みたいに見える建物だった。
ホントにここ『冶金組合』の本部なのか?
……ボロい。
「お爺ちゃ~ん! 客~っ!」
猫耳ちゃんが扉を開けると、中の方に向かって叫んだ。
猫耳ちゃんて、ちゃんと「おじいちゃん」いるのね?
「なんでえ、なんでえ、このク○ッタレ!」
わしゃわしゃとした癖のある金髪の爺さんが出てきた。
とても良く似てる。隔世遺伝てやつだね。
「この人の影響だったんだね」
ミーヨが、なにかを納得したようだ。
うん。間違いない。悪い大人の手本がそこにいた。
「ん~? 誰だテメエら? 誰の許しを得てここまで入ってきやがったんだ? このク○ッタレ!」
お爺ちゃん、お孫さんの情操教育には気をつけて。
◇
俺が事情を説明すると、別なひょろりとした男性が出て来て、対応してくれる事になった。
爺さんと猫耳ちゃんは、一緒に遊んでる。
どうでもいいけど、この本部。人が少ない。
この二人(猫耳ちゃんは除外)しか居ないのか?
「さっそく拝見します。金の地金というのは?」
男性に促されて、俺は『旅人のマントル』のフードから黄金ウ○コを取り出した。
「これは……」
カタチがカタチだけに、男性は絶句してしまった。
「お、なんでえ、まるでク○だな!」
爺さんがそう言うと、お孫さんも続いて、
「あーっ、ウ○コ! ウ○コ! ウ○コ!」
猫耳ちゃん、美人な子供なのに……。
でも「ク○」は下品だから「ウ○コ」って言えって、某名作スポーツ・アニメの主人公・日○君もセカンドシーズンで相棒のチームメイトに言ってたぞ。あとその先輩の○川君も「ク○野郎」と「う○こ野郎」の二択で後者を選択してたし。
だとすると、やはり猫耳ちゃんの方が上品……か?
「お静かに。ご隠居も姫も言葉遣いが酷過ぎます」
男性が爺さんと孫娘をたしなめた。
やっぱり両方NGかー……って、姫? 猫耳ちゃんが?
「まず、お訊ねしますが――なぜそんな形に?」
男性が言うと、おじいさんとそのお孫さんに割り込まれた。
「決まってら、ク○だからよ!」
「ウ○コ! ウ○コ! ウ○コ!」
修正出来てない。
真実から遠からず……というか、そのまま真実なんだけどさ。
俺様の『黄金ウ○コ』なんだけど……。
「実は火事で金貨が溶けて地中に染み込んでしまい、掘り出したらこのようなカタチだったんです」
俺は、この時のために用意しておいた作り話をする。
「はあ、なるほど。たまにそのような話を聞くことがあります」
男性の疑念は、払拭されたようだ。
大坂夏の陣で城が燃え落ちた後で、焼け跡から溶けた金銀を掘り出した――という話を思い出して、こんな話にしたのだ。
あれ?
「…………」
ミーヨの様子がちょっとおかしい。どうしたんだろう?
なにか青ざめて、黙り込んでる。
「では、失礼して」
男性は黄金ウ○コを持ち上げて、傍にあった秤に乗せた。
机の上には、秤の他に、沈めて体積を調べる水槽や、黒い『試金石』があった。
男性が計った重さを、手元の小さな黒板みたいなものにチョークで走り書きしている。
突然、横から爺さんががしっとソレを掴むと、
「ばーろー、しちめんどくさいことやってねーで、金なんざ噛めば分かるんだよ! ……(がぶっ)」
噛みついた。
「「あっ!」」
出所を知ってる俺とミーヨは、思わず小さく叫んでしまった。
そして、いたたまれなくなって目を逸らす。
ホントに噛みつきやがったよ、この爺い。俺様の黄金ウ○コに……。
「うん、間違いねー、ホンモノの金だ。かなりの純度だな。9がいくつ並ぶことやら、すげーな、このク○!」
「……ご隠居。お戯れが過ぎます」
男性がひきつった顔で注意する。
「ご隠居って? 組合の長じゃないの? つまり部外者ってこと?」
「ああ、私が組合長だ」
「あの二人は?」
「――ご指摘の通り、部外者だ」
ちょっと頭痛を堪えるような仕草で男性が言った。
追い出せよ。
◇
追い出してもらった。
静かだ。
「元々は『太陽金貨』14枚分だと言ったね?」
「そうです」
「残念ながら、元の値と同じとはいかない。金貨と金とは別のものだからね」
「……ええ」
しょうがなく頷く。
まあ、そうなるだろうなぁ、俺が知らずに『錬成』したんだから自業自得だけど……。
でもたしか……日本で「貨幣」を鋳つぶしたりすると、なんかの罪になるはずだ。でも、目の前の人からは何も言われない。まあ、先刻の作り話を信じて、故意じゃなくて過失と思ってくれてるのかもしれないけど。
「では、およそ六割分といっところで――『太陽金貨』8枚にあたる『明星金貨』32枚でどうだろう?」
組合長は、さらっと告げた。
「……減るなぁ」
口に出しちまったよ。
「こんなものさ」
なんの慰めもなかった。
◇
話のついでに、気になっていたことも訊いてみた。
「『鉱物』?」
組合長が、聞きなれない言葉を聞いたというような顔で考え込んだ。
この『丘』は巨大な金属精錬施設のはずなのに、鉱石の類がいっさい運びこまれてないので、気になっていたのだ。
「中に金属とかが入ってる石とか岩なんですけど……それが一杯あるのが『鉱山』って事になるんですが……ご存知じゃないっスか?」
いろいろめんどくさい定義があった気がするけど……覚えてない。
まあ、ざっくりした感じでいいよね。
「君が言うのは『枯木』の事かな? ……それとも『月の欠片』のことかな? 大陸の北にある?」
なんか、えらい名前が出てきた。
『月の欠片』ってたぶん、ガチな意味での、かつてこの惑星にあった衛星の断片とか破片の事だよな。空に見えてる『みなみのわっか』の一部か? そんで『枯木』って樹木の化石かなんか?
「自然の山の中にはないんスか? 火山の近くとかに」
ただし、『ケモノ』とか『空からの恐怖』とかが出るとこには、行きたくないな。
「『火山』? 聞かんなぁ――ああ、しかし昔はあったかもしれんな」
ミーヨも知らなかったんだよな、「火山」。無いのかな?
「昔はあった、と言うと?」
「むかーし、昔……さ。お伽噺みたいなものだ。大昔にあったという超古代文明のことは聞いたことがあるかな?」
ああ、知らないことばっかりだ。
「この『冶金の丘』がそうだとか」
あと『永遠の道』もそうらしいけど。
「もう、いつの時代から『丘』があるのか、我々は知らない。しかし、遺されたあまりにも高度な遺物を見るに、ひょっとしたら、その文明は何千年あるいは何万年も続いていたのかもしれない。そして、その長い時間の中で、金属の元になるような石や岩は採り尽くされて、無くなってしまっているのではないだろうか――推論だがね」
鉱物は掘りつくされて、もう存在しない?
どこかの鉱山でなら、『体内錬成』で取り込まれる金属元素も、罪悪感なしで手に入れられると思ってたのに――
『錬金術』を封じられたら、俺はどうやってお金を稼げばいいの?
…………はーあ。
◇
結局、提示された金額で売り渡すことになり、買い取りの証明書を作る段になって、ミーヨの意外な正体が判明した。
署名を求められて、ミーヨがサインしたのだけれども――
ミーヨ・デ・オ・デコ
そこには、この世界の文字でそう署名されていた。
「デ? ……ぼそぼそ(ご隠居よりも上位か?)」
記された名前を見て、組合長が驚いていた。
(で? って何?)
俺はミーヨに訊いた。
(貴族号だよ。下からダ・ヂ・ヅ・デ・ド)
ミーヨが俺の耳元で囁く。
いい声だ……じゃなくて「貴族号」だとう?
しかも、母音の並びがまるっきり日本語の「あいうえお」だ。
そんで、下から?
とすると、順序は逆で「デ」って、上から2番目になるんじゃね?
でもって「ご隠居よりも上位か?」とか言ってるし、あの爺さんも貴族だったのか――ということは猫耳ちゃんもホントに貴族のお姫様か。あれで?
二人して、ク○だの、ウ○コだの連呼してたよ?
ま、そっちは置いとくとして、
「そして……オ・デコ家のご令嬢……? そんな、まさか」
なんかめっちゃ驚かれてるよ。
オ・デコ家?
だから、ミーヨの髪型が「おでこ全開三つ編み」だったのか……? 違うだろうけど。
単なる「幼馴染の村娘」だと思っていたミーヨは……実は高位の「貴族令嬢」だったのか?
うそん。
◆
月に表と裏があるように、人にもそれがあるしい――まる。




