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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第5章 交易都市ソレイユ
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第82話 暴かれる強さ

 旅の準備が終わった翌日、ケンたちは朝食を済ませると宿を引き払い、ソレイユに向けて出発した。


 タミアからソレイユに向けて辿る道筋には、村や街が幾つかあるが今回はケンの旅の目的のために、街道から外れるコースを取った。村や街だけでなく自然も鑑賞出来るように、ガルフたちが図らったのだ。


 街道から大きく外れることもないが、確実に遠回りになるコースである。ケンが野営未経験者ということで、経験を積ませるためにあえて村や街から外れたコースとなっていることも理由の1つである。


「それにしても、今日はどこまで進むか悩みどころだな」


「適度に休憩を挟みつつでいいんじゃないかな?」


「やっぱり水源近くとかがいいんじゃないかしら?」


「行ける所まで行く」


 旅の話になると未経験のケンとしては、会話に混ざることも出来ずに、後ろからとぼとぼとついて行くだけであった。


 あまりにも暇で、狩りをしながら進みたいのだが、経験者からみれば浅はかな考えなんだろうと思い、言い出せずにいた。


(暇だなぁ……)


 そんなことを思いながら、青空を眺めつつも遅れないように歩き、何か暇つぶしが出来ないものかと頭を悩ませていた。


 タミアを出てからはガルフとロイドが先頭を歩き、その2人の間の後方をニーナが歩き、その右側をティナが歩いている状態だ。ケンは位置的なバランスを考え、ニーナの左後方を歩いている。


 よってさっきのような会話があると、ケンの前側4人で話がまとまり、ケンは手持ち無沙汰になるのだった。


 タミアまで来るときの馬車での旅は、子供の一人旅が珍しかったのか、同乗者に声をかけられたりして暇をつぶせていたが、冒険者の旅がここまで暇になるとは露ほどにも思わなかった。


 ケンとしては魔物を狩りつつ、次の目的地まで進むという予想を立てていたのだが、実際は安全面を考慮し、魔物とはあまり出会わないような道のりを歩いている。


 クエストを受けていた時は、明確な目的と魔物を狩っていたこともあり、歩き続けていても苦にはならなかったのだが、こうも何もないと、冒険者の旅というのも考えものだなと感じるのであった。


 時おりマップに表示される魔物のマーカーも、位置が遠すぎるせいで狩りにも行けなかった。


 恐らく平原を歩いて景色が変わらないことも、暇に思う要因の1つとなっている。


 ボケーッと歩いていたら、ふとティナから声をかけられた。


「ケン君どうしたの? 浮かない顔をして」


「そんな顔をしてました?」


「してたわよ。どうしたの? 何か心配事?」


「いえ、心配事はないです」


「だったらどうしたの?」


 ケンは言ってもいいのかどうか悩んでいたら、ニーナからも声をかけられた。


「いつもの元気がない」


「そうね」


 そこでガルフからも声をかけられる。


「どうした?」


「ケン君が浮かないのよ」


「旅は始まったばかりだぞ? 何が気になるんだ?」


「ケン、僕たちはパーティーなんだから、遠慮しちゃいけないよ。遠慮してたら、パーティーとは言えないからね」


「まぁ、遠慮の無さすぎるやつは願い下げだがな。ケンは、逆に遠慮し過ぎだ」


 笑いながら言うガルフとロイドからの後押しもあって、ようやくケンは思っていたことを口にした。


「あの……魔物が出ないからあまりにも暇で。皆さんが未経験である、俺の安全面を考慮して頂いているのはわかるのですが、こうも何もすることがないと、どうしたものかと考えまして」


「そうかぁ? これが普通じゃないか?」


「そうだね。今までもこういう感じだったよね?」


「ケン君って私たちに会うまでは、今までどれくらいの頻度で魔物を狩っていたの?」


「えぇーと、記憶をなくして冒険者になった時、2日間しかクエストを受けてません」


「2日間? それならタミアにいた時の方が、いっぱい狩ってたよな?」


「矛盾?」


「ニーナ、矛盾ってどうしたの?」


「ケンは王都にいた。そこで冒険者になった」


 そこでガルフたちは考え込んだ。どこに矛盾があるのかと……


「ケンは今Cランク」


 そこで気づいたのか、真っ先にガルフが声を上げた。


「そうか! 王都で冒険者登録をして、お金を稼がなきゃいけないのに、クエストを受けたのが2日間だから、矛盾しているのか!」


「そうなるとその2日間で、FランクからCランクまで上がったことになるよね?」


「ありえない」


「ねぇ、ケン君。その2日間でいったい何をしたの?」


 ティナに質問され、思い出しながらケンは答えた。


「えぇーと、初日はゴブリン20体、ホーンラビット30体、フォレストウルフ10体を2時間弱で倒しましたね。それで、その日のうちにDランクに上がりました」


「「「「……」」」」


 ケンの初日に達成した成果に、ガルフたちは呆気に取られて立ち止まった。今までは、何年もかけてFランクからCランクまで、頑張って上がったのだろうと思っていたからだ。


 ケンもガルフたちが立ち止まったので、歩くのをやめて同じように立ち止まり、続きを話し始めた。


「それで、2日目はDランクになっていたので、クエストの幅が広がって、オークとゴブリンキングの集落とキラーアントのクエストを受けて、序でに見つけたキラーアントの巣の駆除をやりました」


「「「「……」」」」


「そしたら、思いのほか討伐数が嵩んでしまって、解体場の責任者のライアットさんが大変そうだったんで、その日以降はクエストを受けなかったんです。ゴブリンキングの集落が、クエスト内容と違い大規模だったのと、キラーアントの巣の駆除は予定外だったので、どれだけ討伐したか数えてないですね」


 あまりにも突拍子もない話に、ティナは慌てて質問をした。


「ちょ、ちょっと待って、ケン君。それを全部ソロでしたの?」


「はい。さすがに2日目は数が多かったので、1日がかりでしたけど。前も言ったと思いますが、子供と組んでくれる大人の冒険者はいませんので、1人でクエストを受けていました。それで、その報酬を受け取りに行った時にCランクに上がったんです」


「ケン、ゴブリンキングの集落は、パーティー推奨クエストだ。それがクエストと違って大規模だったんだよな?」


「はい。ギルドマスターにも謝られちゃいました」


「いったいどんだけ居たんだ?」


「ゴブリン、ゴブリンメイジ、ゴブリンナイト、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングで、王国を築いていましたね。ゴブリンキングは玉座に座っていたんですよ。人語も話していたし、数は把握してないですね。全部討伐して買い取ってもらったので」


「……」


 ゴブリンキングの集落の規模を聞いたガルフは、片手を額に当て天を仰いだ。


「僕からも質問いいかな? 確か、キラーアントの巣の駆除はBランククエストで、複数パーティー推奨だったはずだけど」


「そうらしいですね。その時は巣の調査が終わってなくて、クエストが発行されていなかったんですよ。だから複数パーティーが、どのくらい必要かもわからなかったんですけど」


「だいたいどのくらいの巣だったんだい?」


「洞窟に巣を作るって聞いていたんですけど、実際見てみたら土の中に巣を作ってて、凄い広さだったと思いますよ? 討伐したものを解体場に出したら山のようになりましたから」


「クイーンアントは、どのくらいのサイズだったんだい?」


「十数メートルはあったんじゃないんですかね? ゴブリンキングが小さく見えましたので」


「……」


 巣の駆除の詳細を聞いたロイドは、遠くの方を見つめて現実逃避した。


「ケン君、どんだけありえないことしたかわかってる?」


「サーシャさんにも、怒られちゃいましたしね」


「サーシャ?」


 聞き慣れない人の名前に、ニーナがピクっと反応した。


「ギルドの受付嬢です。冒険者登録の時から、お世話になってるんですよ」


「他には?」


「他とは?」


「他にも受付嬢はいるはず」


「他の受付嬢は知りませんよ。ギルドで知っているのは、ギルドマスターのカーバインさんと、解体場の責任者のライアットさんと、受付嬢のサーシャさんだけですから」


「専属?」


「専属ではないですけど、その人たちとしか、日常的な会話をしてないんです」


「ライバル1人確定」


 タミアの前に王都で、年上の女性と知り合っていたことに、ニーナはブツブツと深い思考に潜り込んだ。


「ケン君、もしかして、私たちが思っている以上に強いんじゃないの?」


「どうなんでしょうか? よくわかりません」


 そこで天を仰いでいたガルフが復活した。


「そういえば、マジックポーチを持ってないのに、どうやってそれだけの数を運んだんだ?」


「あぁ、それはアイテムボックスを使って。ライアットさんが珍しいものだと言うから、他の人には隠していたんですよ。それで、代わりになるような、大容量のマジックポーチが欲しかったんです」


「それでか……でもアイテムボックスなら、割と使ってるやつはいるぞ」


「はい。ティナさんにバレた時に教わりましたので」


「あぁ、ティナと一緒の部屋だったしな。隠し通せるわけないか。それにしても、魔力量が凄いんだろうな。それだけの討伐数を収納出来るなら」


「そうですね。まだ一杯になった事がないですから」


 それに反応したのは、ニーナだった。


「ケン、魔法はどれだけ扱える?」


「どれだけの意味がわかりません」


「……属性は?」


「属性?」


 言葉足らずなニーナの問いに、ケンが困っているのを見かねて、ティナが代わりに質問する。


「ニーナが言いたいのはね、ケン君はどの属性を使えるのかってことよ。クエストの時は、ニーナの真似で土属性を使っていたでしょ?」


「そういうことですか……属性って何種類あるんですか?」


「基本的なものだと、【火】【水】【雷】【土】【風】の5属性に、【光】【闇】の2属性があるわ。ちなみに私は【風】と【光】の2属性持ちよ。ケン君は【土】が確定しているでしょ? 他には何かあるの?」


「全部ですね」


「えっ!?」


「今言った属性全部です」


「えぇーと、本当に?」


「はい。昨日一緒に行った教会で、ステータスを確認しているから、間違いないですよ」


 ケンの使用出来る魔法系統を知ったニーナは、お返しに自分の系統を教えた。


「私は【火】と【水】と【土】の3属性。ケンはズルい」


「ズルいと言われましても、使えるから仕方ないとしか……」


 ここで現実逃避していたロイドが、現実に復帰して助け舟を出した。


「とりあえずケンは、稀に見るオールラウンダーってことでいいんじゃないかな?」


「ケン君の秘密がどんどん明るみに出てくるね。ケン君ばっかり答えても不公平だし、今度教会に寄ったら、私のステータスを見せてあげるね」


「私も見せる」


「いえいえ、ステータスは人に見せるものじゃないですから」


「ケン君は私に興味ないの?」


「それとこれとは話が別と言いますか、ステータスを見たら、全てわかってしまいますので」


「私はケン君になら、全て見られても構わないわよ?」


「私も」


 2人の猛攻にタジタジとなるケンであったが、ガルフが要らぬお節介を焼いてしまう。


「まぁ、2人が見せてくれるって言うんだから、見せてもらえばいいじゃねえか。人のステータスなんか見る機会は滅多にねえぞ。冒険者夫婦とかなら見せたりもするだろうがな」


 ガルフの言葉に、すかさず反応したのはティナだった。


「私は、ケン君のお嫁さんになるって決めてるから、見てもいいよ」


「私もなる」


「はぁぁ……ガルフさん余計に焚き付けてどうするんですか……」


「ハッハッハッ! まぁ、いいじゃねえか。将来、俺みたいに嫁探しで苦労しなくて済むんだし」


「ケンはモテモテだね」


「ロイドさんまで……」


「よし、立ち話はこのくらいにして、先に進むとするか」


 ガルフが締めくくり、スタスタと歩き出したのに釣られ、他のメンバーも歩き出した。


 ケンは1人、魔物を狩る話はどこにいったのだろうかと、天を仰ぎながら思った。


「ケンくーん! 遅れてるよー!」


 ティナからの呼び掛けに天を仰ぐことをやめ、とりあえず先へと行くメンバーへ追いつくために、急いで歩き出したのだった。


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