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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第4章 新たなる旅立ち
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第53話 ギルドデビュー

 冒険者ギルドを見つけると、割かし綺麗な造りに圧倒された。白を基調とした建物で三階建てになっており、奥行も結構ありそうな感じだ。だからだろうか、迷わずにすぐ見つけられたのは。


「ウエスタン風の建物を想像していたけど、これだと都市の役所みたいな感じだな。取り敢えず中に入ってみよう」


 中に入ると冒険者然とした人たちが、大勢いて賑わいを見せていた。


「ほぉ……当たり前だけど、大人達ばかりだな。どこで身分証を作ってもらえるんだろうか?」


 キョロキョロしながら様子を窺っていると、後ろの方から声をかけられた。


「よう、坊主。ここは遊び場じゃねえぞ。早く帰んな」


 振り返ると大柄な男がこちらを見ていた。


「いえ、遊びに来たわけではなくて、身分証を作ってもらおうと思いまして。衛兵の方からここだと作ってくれるって、教えて頂いたものですから」


「身分証? ギルドカードの事か? お前、冒険者になるつもりか?」


 訝しげな視線を向け、男が語りかける。


「身分証ってギルドカードの事だったんですか?」


「知らねえよ。ここで作れるのはギルドカードのみだ。冒険者である身分を証明するものだな。そういう意味では身分証になる」


「へぇ、もしかして冒険者の方はそれを見せて、王都の出入りをしているんですか?」


「そうだな。他の街に行った時も、入る時はギルドカードを見せてるんだ」


「ご親切にありがとうございます。ギルドカードを作って身分証代わりにしたら、どこの街でも入れるという事ですね。早速、作ってきます」


「おい、お前モンスターとか狩れないだろ? 作るだけ無駄になるぞ」


「え? どうしてですか?」


「盗賊とかが、街に出入りするためだけに作ったりするからな。そういうのを防止するために、一定期間クエストを受けなかったら、登録取り消しになるんだ。他にも色々とあったはずだが、1度取り消しになったら、再度登録する時に、身辺調査されて審査が厳しくなる上に、登録料もかなり取られちまう」


「登録を消されても、衛兵の人たちは知らないんじゃないんですか? どうやって見分けるんですか?」


「どういう仕組みかは知らないが、一定期間クエスト受けないと、ギルドカードがくすんだ色になって光らなくなるんだ」


「へぇ、凄い技術ですね。それはそうと、討伐以外でクエストってないんですか?」


「あるにはあるが、別の意味で難易度が高いぞ。この王都の中から、迷子のペットを虱潰しに探したり、ここら辺じゃ取り尽くされている、薬草の採取とかな」


「冒険者といえど結構大変なんですね」


「あぁ、悪いことは言わねえから、大人になってから登録しに来な」


 冒険者ってガラの悪いイメージだったんだけど、この人は物凄く親切だな。声をかけられた時は、『テンプレか!?』って思ったりもしたんだけど。


「とりあえず試しに登録してみます。俺でも狩れそうなモンスターも、いるかもしれませんから」


「そこまで言うなら好きにしな。登録は二階の受付で出来るぞ」


 大柄な男の人にお礼を言って2階へとあがる。1階とはまた違った雰囲気で、物々しさを感じた。


(階によって雰囲気が変わるのか? 3階に上がったらどんな雰囲気なんだろう?)


 受付に視線を向けると、ちょうど空いているところがあったので、そこへ向かって歩き出す。


「おい、坊主」


 掛けられた声に『またか』と思い視線を向けると、男たちが立っていた。先程の厳つい冒険者とは違って、これと言った特徴のない人だった。後ろにいるのは仲間だろうか?


「ガキがこんな所に来てんじゃねえよ。さっさと帰んな」


 ギルドは子供が来たら、とりあえず帰す決まりでもあるのだろうか?


「いえ、ギルドカード作りに来たので帰りませんよ」


「はぁ? お前がか? ハッハッハッ、笑わせんじゃねえよ」


「チビのくせに、冒険者でやっていけると思ってんのか? ごっこ遊びは他所でやれよ」


「冒険者舐めてんのか? アホだろお前」


「別に舐めてはいませんけど、貴方たちの許可を取る必要もないですよね? もしかして見かけによらず、ここの責任者とかですか? それならあなたの発言も一考の余地はありますが。まぁ、そんなわけないですよね? 品位の欠片もないし」


「あぁ? ガキが調子こいてんじゃねえぞ!」


 男が声を荒らげたせいで、周りの冒険者も何事かと注目し始める。


「別に調子に乗ってるわけではありませんよ。事実を言ったまでです」


(これ、このままいったら、テンプレになりそうだな……さっさとギルドカード作りたいのに、何で絡んでくるんだろ。暇なのかな?)


()()()()痛い目にあわなきゃ、わからねぇようだな」


「そうだな。()()()()痛い目にあえば、身の程がわかるだろ」


「そうそう()()()()だけな」


(あぁ……テンプレだ。ちょっとトリオと命名しよう)


「貴方たちに構ってる暇はないので、暴れたいなら他所でやって貰えますか?」


「ふざけんな!」


 正面の男がとうとう殴りかかってきた。思いの外、遅く感じる……これなら避けれそうだ。


 それとこれに当たったら、()()()()痛い目にあうどころじゃないよね?


「ほっ」


 さらりと躱すと、男たちが驚愕に目を見開く。


「てめぇ、何しやがった!」


「いや、避けただけだし何もしてないでしょ。品位と一緒に知能まで失ったんですか?」


「馬鹿にしやがってぇ!」


 2人目、3人目とちょっとトリオが殴りかかってくるが、やはり遅く感じるので難なく避けることが出来た。


 周りの冒険者も俺が避けれているせいか、止めてくれる気配すらなく、眺めているだけのギャラリーと化していた。


「もう、諦めてくれませんかね? 俺は貴方たちのように暇じゃないんですよ」


「ぜってー死なす」


「もう泣いても許さねぇ!」


「何がなんでも殴ってやる!」


 額に血管を浮かべて、必死な様子の三者三様なセリフに辟易するも、最初の“ちょっと痛い目に”って部分がもうないような気がした。


 それに避け続けている間に体も温まってきたし、この体の強さも確認したいから、トリオに習って()()()()反撃することにする。


「ちなみに聞きたいのですが、やり返してもよろしいですか?」


「やれるもんならやってみろ!」


「後で文句を言わないで下さいね」


 死なす発言をした過激な男の懐へ踏み込むと、とりあえず自分の力がわからない以上、調べる意味でも手加減のために左手でボディに1発。


(これがへなちょこパンチだったら、右手でやり直そう。少し恥ずかしい気もするけど)




 そう思っていた時期が、俺にもありました……


 ボディを受けた男は、それは見事に飛んでいった。綺麗にくの字になって……


 2階フロアから、ギルド入口側の壁へと一直線に飛んでいくと、壁に激突後、2階の高さから1階のフロアへと落下。


「「「えっ!?」」」


 残り2人は目が点になり、飛んでいった仲間の方を見ていた。斯く言う俺も目が点になり、飛んでいった男の方を見た。


 先程まで諍いを起こしていた間柄とは思えないこの一体感。こんな事が最初から出来ていたなら、争いなんて生まれなかっただろうに。


 ギルド内はシンと静寂に包み込まれた。1階はいきなり落ちてきた冒険者に呆然となり、2階は見事に飛んでいった冒険者に呆然として。


 少しすると、飛んでいった男に駆け寄る1階フロアの冒険者たち。安否確認でもしているのだろう。何やら1階が騒がしい。


 2階フロアに至っては、未だに静まり返ってる。この状況で最初に喋り出すのは何かと勇気のいることだが致し方ない。


「あの……」


 俺の呼びかけに対し残りの2人組は、『ギギギ』とゆっくりこちらに顔を向ける。


「まだ続けます?」


 その言葉に勢いよく、横に首を振る2人組。


「なら、もう行ってもいいですよね?」


 今度は縦に首を振る。見後なシンクロ率を見せる2人組に対し、最後の言葉をかける。


「お仲間の様子を見に行った方がいいですよ」


 一斉に駆け出し、階下へ降りていく2人組を確認したら、俺は目的遂行のため受付へとようやく歩き出した。


 受付の前までやって来ると、今の身長だと高さのあるカウンターのせいで、向こう側が見えないので、踏み台を用意して顔を覗かせると、お姉さんが先程の珍事がなかったかのようにニッコリと微笑む。


「ようこそ、冒険者ギルド王都支部へ。どの様な要件ですか?」


(プロだ……受付のプロがここにいる……)


「すみません。ギルドカードを作りたいのですが」


「かしこまりました。しかし、貴方の年齢で冒険者になることも出来ますが、冒険者になったら危険が付きまとうもので、自身のことは自己責任となります。予めご了承下さい。それを踏まえた上で、それでも冒険者になりますか?」


「ご親切にどうもありがとうございます。身分証代わりにギルドカードが必要なので、是非お願いします」


「それでは、こちらに必要事項を記入してください。代筆が必要な場合は申し出てください」


「わかりました」


 記入用紙を受け取ると、そこには色々な項目が書かれていた。


(名前は……ケビンだっけ? そう呼ばれていたけど、記憶がなくてよくわからないから元の名前にしよう。得意な職種? 職種って何だ?)


「すみません。職種って何ですか?」


「戦う時の形態……とでも申しましょうか。所謂、戦士だったり魔術師だったりと、多種に渡るものですね。大まかに書かれても構いません。前衛職、後衛職のように」


「ありがとうございます。少し試したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


「周りの迷惑にならないなら構いませんよ」


(さっきの絡みで前衛はいけるとして、魔法が使えるのか試しておかないとな。確か、前世だと大抵のラノベにはイメージが大事って書いてあったよな? なおかつ、周りの人に迷惑をかけない魔法……)


 集中してイメージを作り出す。思い描くのは指先に灯る光……光るだけなら誰の迷惑にもならないだろう。


 ポゥっと人差し指の先に光が灯る。


(おっ!? 思っていた通りに出来たな。イメージが大事って本当だったんだ)


 確認を終え、記入用紙に続きを書き始める。


(職種は前、中、後衛全般にしておこう。次は、得意魔法? またわからないのが出てきたな)


「あの、得意魔法がわからない場合は、どうしたらいいのですか?」


「……」


「あの、お姉さん?」


「えっ……? ……あっ、はい、何でしょうか?」


 呆けてたみたいだけど何か考え事か? さっきは受付のプロと思っていたけど、意外と抜けてるところがあるのか?


「得意魔法がわからない場合は、どうしたらいいのですか?」


「わからない場合は空欄でもいいですよ。冒険者によってはスキル等を周りに知られたくないため、隠したりもしますから」


「わかりました」


(じゃあ、わからないから空欄にしてっと、これで終わりだな)


「書き終わりました」


「はい、お預かりしますね。カード登録をしますので、少しお待ちください」


 受付の人が奥へと入っていく。待っている間、暇なのでフロア内を眺めていると、早くもお姉さんが戻ってきた。


「カードの作成が終わりました。次は本人登録をしますので、この針を指に刺して血液をカードにつけてください」


「えっ!? 刺すんですか?」


「はい、そうですよ」


(マジか……注射みたいで嫌なんだけどなぁ。予防接種の時も苦手意識から、顔を逸らして早く終わるのを祈ってたし……)


 針と自分の指を交互に見て、プルプルさせながら近づけていくが、中々上手くいかない。


「もしかして怖いのですか?」


「お恥ずかしながら。こういうのは苦手でして」


「踏ん切りがつかないなら、代わりにやりましょうか?」


「いいんですかっ!? 目を瞑っていますので、その間にお願いします。一思いにお願いします。焦らすのはなしで」


 そう言って針を渡すとすぐに目を瞑る。絶対に見てはいけない……そう考えていたら、不意に声をかけられる。


「そう言えば、好きな食べ物は何ですか?」


(ん? 好きな食べ物? こっちの世界に来て何も食べてないからわからないな。記憶が残っていれば、何か知ってただろうけど……何て答えたらいいのだろうか?)


「終わりましたよ」


「えっ?」


 唐突の終わりましたよ宣言に目を開けてみると、確かに終わっていたようだ。そこにもう針はなく、刺したあとも拭いてくれている。


「あれ? 痛くなかった……」


「ふふっ、よく我慢出来ましたね。偉いですよ」


 子供扱いされるのはむず痒いものがあるのだが、実際、子供なんだから仕方ないな。


「ありがとうございます」


「では、これがギルドカードになります。本人登録を終えたので、あなた以外には扱えません。他人が使おうとしても、何も表示されない状態になります。紛失した場合は、再発行に料金がかかりますので、注意してください」


「凄い機能ですね。なくさないように気をつけます」


「次に冒険者の説明ですが、ランクは基本的にS~Fまであります。あなたは今なったばかりなので、Fからスタートとなります。ランクを上げるためには、基本的に昇格試験を受けて、合格する必要があります。カードは、ある程度のランクがわかるようになっており、Sはプラチナ、Aはゴールド、B・Cはシルバー、D・Eはブロンズ、Fはアイアンとなり材質による色分けを施してあります」


 自分のカードを見ると、確かに鉄っぽい感じがする。


「これって、濡れたら錆びるってことはないのですか?」


「特殊なコーティングを施してありますので、劣化することはありません。ただし、強い衝撃には耐えられませんので、気をつけてください。あと、Fランクは“駆け出し”と言われます。冒険者内での暗黙の了解ですね。先ずはブロンズの下級冒険者を目指して頑張ってください」


「はい、頑張ります」


「次にクエストについてです。クエストは現在のランクの上下1ランクまで受注が可能です。パーティを組んでいる場合は、その中の1番ランクが高い人が基準になりクエストを受けれます。クエストを達成すると報酬がギルドから支払われます。支払われた報酬は、ギルドに預けることも出来ます。その際、カードに残金が表示されるようになりますが、本人が見たいと思った時にしか表示されません。あと、多額の引き出しについては、日数が掛かる場合がありますのでご了承下さい。これは、小さいギルド支部に行けば行くほど顕著に現れます」


(なんか銀行の通帳とキャッシュカードを併せた感じだな。通帳記入を一々しに行かなくて済む分、こっちの技術の方が凄いけど)


「クエストの種類についてですが、討伐・採取・探索が基本になります。その他に緊急がありますが、これは基本的に上級冒険者以上となります。例外となるのがスタンピードです。これについては、全冒険者一丸となって対処していただきます。あとは、信頼を得ると指名依頼が発生する事もあります。これは、依頼者が冒険者を指名するクエストになりますが、強制ではありませんので断る事も可能です。断ることによるペナルティはありません」


 受付の人が一息つくと、また説明が始まった。


「最後にペナルティについてです。冒険者登録をした後は、一定期間内にクエストを受けないと、冒険者登録を抹消されます。期間についてはランクごとに定められておりAランクからは除外となります。次に3回連続でクエストを失敗するとランクがダウンします。Fランクの場合は下がないのでそのまま登録抹消となります。以上で基本的な説明は終わりますが、何かご質問はありますか?」


「先程冒険者の方に聞いたのですが、この近辺の薬草は取り尽くされて難易度が高いと言っていたのですが、それだとFランクの人はすぐに登録抹消されるのではないのですか?」


「それに関しては、薬草採取の他に、簡単なものとして王都内の清掃活動もありますので、登録抹消のリスクは低いです。ゴミは毎日出ますから。他にご質問はありますか?」


「特にないです。わからない事が出来たら、その都度質問したいと思います」


「では、これにて説明を終わらせたいと思います。あなたにより良い冒険を」


 受付の人は、最後に決まり文句みたいなものを口にして、説明を終わらせた。結果的に、やはりプロの受付嬢と言えるだろう。呆ける事はあったが、針を刺す技術が素晴らしかった。そこは譲れない。


「よし、これで漸く街の外に行けるな」


 そのまま1階に下りると、ちょっとトリオがいた。目が合ったが、あからさまに逸らされた。飛んで行った人も無事だったようだ。回復魔法でもしてもらったんだろう。


 ギルドを出て再び門へ向かって歩き出す。活気のある大通りを抜けて門へ辿り着くと先程の衛兵がいた。


「衛兵さん、身分証作ったから外に出ていいですよね?」


「ん? おぉ、確かに。それなら入ってこれるから、出ても構わないぞ。あまり遠くに行って、魔物に襲われないように気をつけるんだぞ」


「ありがとう。気をつけて歩くよ」


 衛兵さんの気遣いに対するお礼を伝えて、王都外へと冒険に出た。


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