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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第6章 これからの活動に向けて
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第112話 これからの活動

 翌日、リビングで寛いでいたケビンたちに、サラから声をかけられる。


「ケビン、これからどうするのかしら?」


「これから?」


「前の生活に戻るの? それとも冒険者を続けるの?」


 サラからの言葉に、ケビンよりもティナたちが反応を示したが、ケビンの決めることなので口を挟むのは憚れた。


「前の生活って、何してたの?」


「学校に行ってたわね」


「学校?……学校……」


(……ズキッ……)


 学校という単語に、ケビンは頭痛を起こしたが、平然を装いサラにバレないように取り繕う。


「サラ様、学校って言えば、ここから近い王都にある学院の方ですか?」


「そうよ」


「さすがにブランクがあるから、復帰しても大変ではないですか?」


「それは大丈夫よ。ケビンは入試で満点を取ったから、成績でいえば首席なのよ。ケビンが嫌がったから、首席入学ではなくFクラスでの入学だったけれど」


「ま、満点の首席ですか!?」


 ティナは、名の知れた王都の学院で満点を取り首席になるのが、どれほど難しいことなのかよく理解していた。


「それに、授業がつまらなくて、魔法学以外はサボってたみたいだし。それでも、定期的に行われるテストは満点なのよ?」


「それだと、学校で有名人になりませんか?」


「成績は一切口外しないように、学院長に話をつけたそうよ。だから、事情を知らない者からしたら、Fクラスの出来の悪い生徒として一般的に知られているわね。まぁ、それも闘技大会で、ある程度実力がバレてしまったみたいだけど」


「闘技大会って、聞いての通り戦うやつですよね?」


「そうよ。それの個人の部でメンバーに選ばれて、仕方なしに戦ったみたい。当然、簡単に勝ってしまったのだけれど」


「ケビン君って、昔から強かったんですか?」


「私と模擬戦とかしてたから、同年代の子供たちからしたら圧倒的強さでしょうね」


「サラ様と模擬戦……」


「まぁ、ケビンからしたら、魔法学が学びたいだけで通っていたようなものだし、私としては復学しなくてもいいのよ」


 ケビンは、サラとティナが会話している中で、学校に関する記憶が抜け落ちていることに気づく。


 思い出そうとするが、頭痛が邪魔をして集中できずに、上手く思い出すことができないでいた。


「ケビン君、どうするの? 学校に戻る?」


 ティナから声を掛けられたことにより、ケビンはハッとなり、思い出せない記憶に関する思考を棚上げしてやめることにした。


「いや、サボってたなら行く必要もないけど、魔法学は学びたいから専門的な学校の方がいいような気がするかな。通ってた理由は、恐らく母さんに迷惑をかけないために、自立する手段を探すためだし」


「もう、ケビンったら。お母さんは迷惑だなんて思わないわよ? ケビンがここに住みたいのなら、ずっとお母さんと一緒に住んでていいのよ?」


「多分、そう言うのがわかってたから、学校に通ったんだと思うよ。今となっては、冒険者として生計が立てられているから、何とかやっていけると思うけど、惜しむらくは魔法学が学べないことかな。ケンの時に魔導具作成に興味が湧いてて、俺もそっち方面は全然知識がないから、後学のためにも学びたかったんだけどね」


「ケビンは、その歳でもう自立まであと一歩なのね。持ち家を買ったら完全に自立しちゃうわね。お母さん、ケビンと会えなくなるなんて寂しいわ」


 そんな会話をしているところに、ニーナから思いもよらぬ話が浮上する。


「ケビン君、魔法学が学びたいなら、ミナーヴァ魔導王国に行くのが1番だよ。あの国は、魔法に関する最先端技術の研究がされているから、ケビン君の知りたい知識も沢山学べるよ」


「へぇーそんな国があるんだ」


「あそこには、王立ミナーヴァ魔導学院があって、王都の学院みたいに小さい時から入る学校じゃないから、ケビン君のつまらないと思う授業もないと思うよ。大体は、一般教養が終わっている人たちが目指す学院だから」


「やけに詳しいね」


「元学院生なの。私は、魔法使いとして大成したかったから通っていたの。体力はないし、近接職は無理だと思ってたから」


「ということは、ニーナさんは魔導王国出身なの?」


「そうだよ。あの国だと魔法使いで溢れているから、冒険者になってもパーティーが見つからず孤立してしまうの。だから、この国に来て冒険者としてやっていくことにしたの」


「でも、俺の歳じゃ入学できないでしょ?」


「才能があれば年齢は問われないよ。魔導王国は、魔法バカと言ってもいいくらい魔法研究に重きを置いているから、魔法が優れていれば年齢は加味されないし、平民だって偉くなれるんだよ。だから、平民で魔法が優れている人は、魔導王国を目指したりもするの。普通の国みたいな貴族はいないし、貴族になるのも魔法が全てだから」


「それだと、貴族で溢れかえったりしない?」


「貴族になる為には、ちゃんと研究成果をあげて、認められないといけないの。だから、誰もが認める凄いことしないと、平民も貴族までは上がれないよ。それでも、他の国よりかはチャンスがあるから、それなりに高度な魔法を使える平民には人気なんだけどね」


「色々と勉強になるよ」


 思わぬ情報を手に入れたケビンにとって、冒険者としてそのまま生きるか、魔導具作成のためにノウハウを学びに行くかで、悩みどころだった。


「ねぇ、ニーナ。魔導学院に行くにしろ、もう時期的に無理よね?」


 ティナの言葉に、ケビンも何が言いたいのか理解する。現時点で4月に入っており、新規の生徒は決まっているのだ。


「そうなると、冒険者でやっていくしかないね」


「うん。もし行くにしても、今年の入学受付まで待つしかない。薦めておいてごめんね」


「別に気にしてないよ。たとえ行くにしても、いくらかかるかわからないけど、入学金とか学費とかいるだろうし。それまでに、稼ぎまくって貯金を増やしておかないと。行かなかったら贅沢して、どこかに遊びに行こうかな?」


「お金ならお母さんが出すわよ?」


「それはダメだよ。もう冒険者として、自立してるから自分で出すよ」


「そ、そんな……ケビンは、お母さんに手伝わせてくれないの?」


 サラはケビンに否定されたことで、絶望して瞳に涙を浮かべていた。その様子を見てしまったケビンはタジタジである。


「い、いや、だってほら、冒険者として結構稼いでいるから、親に甘えるのもどうかと思ってね」


「でも、ケビンはまだ成人していないのよ? 親が面倒を見るのは当たり前じゃないかしら? そう思うわよね、ティナさんとニーナさんも」


「確かに。自立し過ぎているから忘れてしまいますが、ケビン君はまだ成人前の子供ですからね」


「私もそう思います。普通ならまだ親の庇護下にある年齢ですし」


「ほら、2人もこう言っているわ」


 思わぬ裏切りによって、ケビンは1対1の状態から、3対1の状態へと陥ってしまうのであった。


「はぁ……わかりました。お言葉に甘えさせて頂きます」


「よかったわ。ケビンは幾つになっても、お母さんの子供なんだから甘えていいのよ」


 サラの“幾つになっても”宣言により、ケビンは、今後もこういう場面が訪れるのではないかと、未来に思いを馳せて戦慄するのであった。


「それで、ケビン君は冒険者を続けるとして、次の行き先は決めてあるの?」


「はっきり言って見通しゼロだよ。記憶が戻ったばかりだからね」


「それなら世界旅行の続きでもする? ここに帰ってくる前までは、西の街のウシュウキュに行く予定だったのよ」


「そこって何があるの?」


「1番の目玉はダンジョンね。食べ物で言ったらスープに入ったルドーヌが有名よ。あとは、隣の領地にタミアと同じように温泉があるわ」


「ダ、ダンジョン!?」


「ケビン君は、ダンジョンに興味があるの?」


 ニーナからの質問にケビンはすぐさま答える。


「だってダンジョンだよ!? ダンジョン! お宝とかがいっぱいあるんだよね!?」


「私はまだ行ったことがないからわからないけど、聞いた話によると一攫千金も夢じゃないってことだったよ。ティナは行ったことある?」


「私もないわ」


「それなら是非行こう! 初ダンジョンに!」


「サラ様は、現役時代に行ったことがありますか?」


「私は、西の街のダンジョンなら行ったかしら。でも、階層を降りるのが面倒くさくて、飽きちゃってすぐやめたわ。他の場所も似たようなものだし」


「えっ!? そんなにダンジョンがあるの?」


「あるわよ。他の国にもあるから、全部回ろうとしたら、結構な数になるんじゃないかしら」


「よし、決めた! 次の目的地はダンジョンにする!」


「それなら、目的地はダンジョンのあるウシュウキュね」


「私もダンジョンでサポート頑張る」


 次の旅の目的地が決まったところで、サラから突拍子もないことを告げられる。


「ケビン、旅に出る前に王城へ1度行くわよ」


「へ? 何で!?」


「マリーが前から会いたがっていたのと、魔導学院に推薦状を書いてもらうのよ。そしたら、向こうも無碍には出来ないでしょ? 王妃からの推薦状なんだし」


 何処までもケビンに甘く過保護なサラは、魔導学院入学のために王妃を使うようであった。


「いやいや、王妃様相手に簡単に頼んじゃダメでしょ」


「別にいいわよ。マリーなんだし。ティナさんたちも一緒にどう?」


「いえいえ、王妃様とか滅相もないですよ! 私、ただの冒険者ですよ!?」


「構わないわ。マリーなんだし」


「なんか母さん、“マリーなんだし”で全部片付けようとしてない?」


「だって実際、マリーなんだし。昔、面倒を見てあげたのだから、これくらいどうってことはないわ。逆に会いに行かないと怒るのよ?」


「あの、サラ様と王妃様のご関係って……」


「冒険者仲間よ」


「「っ!?」」


 サラの爆弾発言により、マリアンヌ王妃の秘密が、本人の知らぬところで暴露されてしまった。


「あっ、でも他の人には内緒よ? まだ誰にもバレていないから」


「「……」」


 ティナとニーナはそんな重要な秘密を、ポロッとこぼさないで欲しいと切実に願った。


「母さん、よかったの? そんなことバラしてしまって」


「マリーなら許してくれるわよ。私たちしか知らないんだし」


「ち、ちなみに、冒険者ランクはどのくらいだったのでしょうか?」


 恐る恐るティナが尋ねると、更に衝撃の事実を知らされる。


「マリーはAランク冒険者で、二つ名が【インビジブル】よ」


「「っ!?」」


 マリアンヌ王妃が、二つ名持ちのAランク冒険者だったことに、2人は驚愕した。しかも、その二つ名が【インビジブル】だったのだ。


「イ、インビジブルって……詳細が一切不明だった、あの【インビジブル】ですか!?」


「そうよ。当時はまだ貴族令嬢だったから、屋敷から抜け出すのに大変だったし、家にバレないように苦労していたわね」


「ソロ専門だった【瞬光のサラ】と、唯一長い間ペアを組んでいた、あの【インビジブル】が王妃様だったなんて……」


「世間は狭いわよねぇ」


「母さん、世間は狭いで済ませないでよ。衝撃の新事実って感じで、2人が愕然としてるよ」


「大丈夫よ。将来はケビンと結婚するんだし、このくらい慣れておかないと、もっと驚くことがあるかも知れないのよ?」


「その時になって、振り回されている2人には同情するよ」


 なんやかんやでこの日は、雑談して過ごすことになって、明日になったら王城へ向かい王妃と面会することになり、ティナとニーナは思いもよらぬ出来事を体験することとなったのである。


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