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さいしゅうわ まおうのしょうたい

みんなが勇ましい声を上げたときでした。


「うぎゃー! うぎゃー!」


クマくんは肩をすくめました。


「……あの声だ……」


たしかに誰も聞いたことのない叫び声です。

みんなもガタガタと震えましたがいつまでも震えてはいられません。6人は勇者なのです。

みんなで声のする方に進んでいきました。


すると、木こりの旦那さんの家が見えてきました。


「うぎゃー! うぎゃー!」


声はますます激しくなります。

なんと、旦那さんの家の中から!


ひょっとしたら、旦那さんも、奥さんも食べられてしまったかも知れません。

みんなは恐ろしくなって抱き合いました。


「どうしよう?」


お互いに顔を見合わせます。


「ボクが行く!」


そう言ったのはクマくんでした。

木こりの旦那さんや奥さんにはいつもよくして貰っていたのです。ハチミツのパイもたくさんご馳走になりました。

木こりの旦那さんの木を運ぶお手伝いをしたお礼でした。

あの二人がもういないなんて。

考えただけでも涙が溢れてしまいます。


クマくんは、旦那さんの家の窓にそっと近づいて中を覗いて見ました。


「うぎゃー! うぎゃー!」


中には赤い顔をして叫んでいる小さい見たこともない生き物がいました。

きっとそれが魔王なのでしょう!


「はいはい。坊や。ちょっと待ってね」


そう言いながら、木こりの旦那さんの奥さんが奥から出て来て、魔王におっぱいをあげ始めました。

魔王は一生懸命、おっぱいを吸っています。


いつの間にか、他の5人もクマくんの背中によじ登って中の様子を一緒に見てました。


「かーわいい」


とリスさんが言いました。


「何だぁ。人間の赤ちゃんかぁ」


とコマドリさんが言いました。


6人はしばらく中の様子を見ていました。

そしてみんなでニコニコ笑いました。


「かわいいね」

「あったかいね」

「うれしいね」

「たのしいね」

「ホカホカするね」

「笑顔になるね」


そう言うとそっと窓から離れました。

魔王なんて森にはいなかったのです。


「いいなぁ。アライグマくんばっかり!」


緊張のほぐれたリスさんはクマくんに背負われたアライグマくんをうらやましがります。クマくんはみんなの方を向いて言いました。


「みんなも乗りなよ」


みんなニコニコ笑ってクマくんの背中に乗りました。

アライグマくんの後にキツネくん。その後ろにヘビくん。頭にはコマドリさんとリスさん。


「力持ちぃ!」


みんなで口々にクマくんを褒めながら、いつもの広場に帰ることにしました。


その時、旦那さんの家の中から奥さんが出て来ました。

ちょうどクマくんのお尻がしげみに消える頃でした。


「あ、あなた」

「どうした?」


「今、そこに怪物がいたの」

「どんなのだ?」


「大きな体にヘビの尻尾。頭がたくさんあって、小さい翼もあったの!」

「なるほど、そりゃ魔王かもしれんな。今度クマくんが来たら注意するように教えてやらねば」


やれやれ。クマくんの困りごとはまだまだ終わりそうもありません。




【おしまい】

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほっこりした世界観と、魔王っていったいなんだろうというドキドキ感、そしてかわいらしいオチにそのあとに続くお話の余韻……すべてがかわいらしく、まさに幼年童話のお手本のような完成度の作品だなぁ…
[一言] 冬の童話祭の参加作品でしたね。懐かしい。 ほっこり童話集企画で再読いたしました。 確かに赤ちゃんの泣き声は、あのサイズからは想像もできない大きさで、これまた昼夜を問わずよく響くのですよね。…
[良い点] こんにちは。 「ほっこり童話集」から読ませて頂きました。 微笑ましいストーリーとラストにほっこりしました。 魔王の正体には笑ってしまいましたが、ある意味では誰より強いですから、間違いでも…
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