舞踏会
あの日から止まった時間が、動き出す。
輪舞曲の響く舞台には、ヒロインの姿は見られない。
ホントの時間は、永遠に流れることなく朽ちてゆく。
嗚呼、ああ、あぁ、なんて凄惨なんだろう。
舞台に響く音色には、形容し難い悲しみが溶け込んでいた。
窓には大粒の雨が激しく打ち付けられ、雷鳴が蝋燭の炎を揺らす。
薄ら暗い大広間は、かつての面影が見えぬほど空虚。各所にある闇に溶け込みそうなほどに暗い衣裳を纏った幾人が、悲壮の滲み出るステップで重い足音を響かせる。
あまりにも冷たい仮面舞踏会は、明けることのない嵐と共に、夜の世界に融けてゆく。