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【原作小説版・完結済】ネカマの鈴屋さん【コミカライズ版・販売中】  作者: Ni:
鈴屋さんと白毛のアルフィーっ!

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鈴屋さんと白毛のアルフィーっ!〈2〉

アルフィーさん、二話目です。

ラット・シーの住人は曲者ぞろいって感じです。

珈琲のお供にどうぞ。

「あーちゃん~ごめんね~」


 アルフィーが、俺の背中をバンバンと叩く。


「まさか初めてだとは思わんかったんよ~~~……ぷっ……くくくぅぅ……あははっ超うけるぅぅ~」


 そして、腹を抱えて笑い始める。

 目が覚めるなり鈴屋さんもハチ子も不機嫌で、アルフィーは俺の繊細なハートをヒールで踏みつけながら笑い転げているような状態だ。

 正直、もう少し眠っていたい気分である。


「んで~どんな味なんよぅ~初めてのちゅうは~?」

「……んぁ?……あぁ……」


 わざと気のない返事をし、彼女が右手に持つ鳥肉を指さす。


「……肉ぅ? あぁ~そっかそっかぁ~それはまた重ね重ね、ごめんね~」


 やはり、笑い転げている。

 こりゃ朝から恰好の酒の肴だな……どこか、あのアフロに似てる気がする……


「あのですね、アーク殿……」

「……はぃ」


 ハチ子が、すうっと目を細めて俺を正視する。


「ハチ子はですね、一応ですね、鈴屋の手前……これでも頑張って我慢してるんです」

「私の手前って、私は別に……」

「鈴屋はちょっと、黙っててください」


 珍しくハチ子が、怒っていらっしゃる。

 あの鈴屋さんですら、その迫力に押されてごくんと唾をのむほどだ。


「あの夜もあんなにですね、我慢してですね、大人しく帰ってきたのです。それを、それを……そんなに簡単に奪われて……」

「……ハチ子さん?」

「こんなことなら、あの時ハチ子が奪っておけばよかったですっ!」

「ハチ子さん、それ、“私の手前”で言うことかな?」


 笑顔で首をわずかにかしげる鈴屋さんに、ハチ子はやはり怯まない。


「しかしですよ、鈴屋。これでは、私の我慢はなんだったのですかって話ですっ!」

「……はぃ、なんかいろいろごめんなさい……」

「あははははっ……ひぃ……もぅ笑わせないでよ~~」


 今度はテーブルをバンバンと叩き、足をばたつかせて爆笑していやがる。

 あ……しかも、笑い過ぎて泣いる……ひでぇ……


「あは……あは……もぅ…………んでぇ、なんか浮かんだん?」

「浮かぶかよっ!」

「あっ、おっちゃん、ステーキ2人前追加ねっ!」

「まだ食うのかよっ!」


 ダメだ、この人のペースにやられてる。

 俺は少し頭を冷やすため席を離れ、カウンターで水を頼むとクエストボードを眺め始める。

 ゲームでよく見た大きな掲示板には、いくつもの依頼が貼られていた。


「仕事つってもなぁ。冒険すればいいってもんじゃないし……」

「あぁ~、うちん部隊50人はいるかんねぇ~」

「それもう、冒険って規模の数じゃねぇな」


 ……となると、やっぱりなんか商売を考えるしかないか。クエストで何かヒントがないかと思ったんだが。


「ん~、アルフィーの部隊はなんか特徴ある?」

「全員、若い女なん~」

「それは、さっき聞いたよ。もっとこう……特技というか」

「あぁ~~足は、みんな速いんよ。他の部隊より全然速いかんね~」

「足か……」


 たしかに重量級の装備ではないし、身軽そうには見える。


「あーちゃんさぁ……そんな露骨に足見られたら、いくらあたしでも、ちぃとばかし恥ずかしいんよ?」

「み、見てないからな、考え事をしてただけだからなっ!」

「……あー君……」

「み、見てないしっ……目線は行ってたけど、別のこと考えてたからね!」

「アーク殿、それは結局見てるのでは……」

「いや、意識は違う所に行ってたからねっ!? それ言ったら、今日のハチ子さんの方が露出度高いワンピースだからねっ!」

「あ……あーくどのっ?」

「私、今日のあー君にはドン引きなんだけど……」


 駄目だ、説明するほどに墓穴を掘ってしまう。


「あのですね、俺だってちゃんと考えてますよ?」

「お~、あーちゃん、なんか思いついたん?」

「……まぁな。ただ、その前に、ひとつクエスト受けたいんだけど」


 べりっと音を立てて、クエスト用紙を一枚剥がす。


「クエスト? なんのクエスト受けるん?」


 俺はにやりと笑みを返し、クエスト内容が記された羊皮紙をひらひらとして見せた。


「川辺のリザードキング、“ニクス”の討伐さ」




 その日の昼過ぎ、俺たちはレーナから少し離れた小川沿いの村まで足を運んでいた。

 ここは昔懐かしい、鈴屋さんとゴブリン退治をした村だ。あれからゴブリンは一掃されたらしいのだが、どうやら今度はリザードマンが出没しているらしい。

 今のところ大きな被害は出ていないのだが、リザードマンの中に一際大きい『リザードキング』が混じっているらしく、今のうちに討伐してほしいというのが今回の依頼だった。


 リザードマンってのは、実は結構強い。

 実際、冒険に慣れてきた剣士と同等レベルには剣を使いこなす。さらにキングともなるとその強さは騎士団長クラスと言われている。

 まぁ、それでも俺達の敵ではないはずだ。

 何せここには、我らが最終決戦兵器である鈴屋さんに、アサシン教団で1位にまで上り詰めたハチ子がいる。さらには猛者揃いの窮鼠の傭兵団で、部隊長を務めるアルフィーまでいるのだ。

 どう考えても、楽勝だろう。

 相変わらず南無子という回復役が不在なのは痛いが、リザードマンくらいは軽く殲滅できるよというアルフィーの進言で、まぁいいかとなってしまっている。


 そんなこんなで俺達が川沿いを上流に向けて歩いていると、わずかに物音が聞こえてきた。

 明らかに生物が、川辺で水浴びでもしている音だ。


「うん、いるみたい。全部で7匹かな。おっきいのはいないみたいだけど……」


 鈴屋さんが、偵察に出していたシルフにお礼を言って精霊界へ送還する。


「んじゃぁ、とりあえずぅそのリザードマンをやっちゃうん〜」


 アルフィーがサーベルをスッと抜く。無意識で音を鳴らさずに抜刀するんだから、相当な使い手だろうことは読み取れる。


「あーちゃん、後衛ってその娘だけなんよね?」


 なにか思うところがあるのか、アルフィーがサーベルをくるくると回しながら鈴屋さんに視線をおくって言った。


「隊列は、どうするん?」

「私は大丈夫かな。いざとなったらヴァルキリー呼ぶし」


 しかし、アルフィーは首を横に振る。


「いやぁ〜、挟撃なんて野生の狼でも仕掛けてくる、基本中の基本戦術なんよ。一人は近接できる人を、置いといたほうがいいん」

「たしかに……ゴブリンやリザードマンは知性も普通にあるしな。じゃぁハチ子さん、頼める?」

「……承知しました」


 ハチ子が少し残念そうに頷く。自分も一緒に戦いたかったのだろう。


 たしかに、俺とハチ子の連携は大きな武器だ。

 特にアサシン教団戦でのハチ子のサポートは、目を見張るものがあった。正直、俺もあの窮地の中で楽しいと感じていたほどだ。

 しかし鈴屋さんを守る役目は俺自身か、最も信頼できる人物に任せるべきだ。

 それに俺は興味があったのだ。窮鼠の傭兵団第三部隊長の実力というものに。


「あー君、私はどうする?」

「とりあえずヴァルキリーで守りを万全にして様子を見て。ハチ子さんは索敵しながら、近寄るリザードマンをよろしく。俺とアルフィーは奇襲、殲滅かな」

「は〜い」


 鈴屋さんが良い返事をしたところで、俺は音もなくニンジャ刀を抜いた。

 敵陣ど真ん中にテレポートダガーで突入してもいいのだが、ここは正攻法でアルフィーの動きを見てみたい。


「リザードマンって、水かな?」

「ん〜〜水生生物だしそうじゃない?」


 なんていうゲーム的な弱点属性の話に、ハチ子とアルフィーはキョトンとしているが、とりあえずそれはスルーだ。

 俺は刀身を二本の指でなぞりながら、術式を唱える。


「絶界雷……」


 すると刀身からパリッと音が鳴り、青白い稲妻が生まれ始める。


「へぇぇ〜。あーちゃん、月魔法使えるん? それ、属性付与の魔法なん?」

「まぁね。月魔法とはちょっと違うんだけど、まぁ似たようなものかな」

「じゃぁ、私んにも付与してほしいん?」


 言いながら、サーベルの刀身を俺に向ける。


「いいぜ。雷属性でいいか?」

「え? 選べるん?」

「あぁ、四大属性はとりあえずいけるよ?」


 すると、アルフィーがすすぅっと目を細めてにやりと笑う。


「四大属性と来たかぁ……たしかに、それは月魔法じゃないんね」


 あぁ……そういや月魔法の属性付与は炎しかできないんだっけな。

 ……ってことは、ニンジャがいないこの世界で属性付与って、かなり貴重なスキルなのか……


「あーちゃんさぁ、何者なん?」


 ぎくりとし、思わず唾を飲み込む。

 そして鈴屋さんたちに視線を送るが、さすがと言うべきか、2人はすまし顔だ。


「さっき鈴やんも精霊を召喚しちゃってたよね? 精霊そのものを召喚して命令するなんて芸当、初めて見たんよ?」


 これは……どう答えるべきだ?

 脳内クロック周波数を上げて答えを探すが、アルフィーの考えが読み切れない。


「この2人は、東方から来た冒険者なんです」


 ハチ子が、さらりと答える。

 これは、機転を利かせた助け舟だろう。


「東方ぅ〜〜?」


 ややあってアルフィーが、なるほどと手を打つ。


「あぁ〜〜東方って、国交がない超異文化国家があるとこだよねぇ。なるほど、そこかぁ〜」


 ……いや、レーナの東方って……たしかゲーム内だと国なんてなかったような……


「そうなんです〜。ハチ子さんが私たちの国に来た時に意気投合しちゃって〜。一緒に冒険者をしようってなって〜、それで私たちレーナに移ってきたんです〜」


 これまた、サラリと鈴屋さんが笑顔で答える。

 ……いや、瞬時に嘘をついたと言うべきだろう。さすがはロールの神だ。

 俺はしゃべらないほうがいいかもしれない。すぐにぼろが出そうな気がする。


「それはまたわすごいね〜。そうかそうか〜いやぁ、東方の戦い方を見れるなんてさぁ……ちょっと…」


 アルフィーが歴戦の兵らしく、目を鈍く光らせる。


「たぎるねぇ〜」


 それは味方でありながら、背筋が凍りそうな迫力だった。

次回も面白怖いアルフィーさんをご期待ください。

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