アークとハチ子の物語っ!〈5〉
本日で連載1周年となりました。
思えば気分転換のために気軽な作品を書こうとし、それから毎週アップするぞと奮闘した1年でした。
本来、私の小説の書き方は1~2日で1万文字以上を書いて、それを2~3週間かけて何度も読み直し、加筆と修正を繰り返すというスタイルです。製作時間の8割を読み直しと修正に当てています。
この「ネカマの鈴屋」さんはその作業をほとんどせずに、とにかく毎週アップすることに集中しています。そのため誤字や表現の乏しさ、粗さが目立ちやすく、後日の修正も絶えません。
プロットを考える余裕もないので、いつも一発殴り書き、話は脳内で好き勝手に動くキャラたちがつくってくれると信じてその背中を追うようにして書いています。
そんなこの作品を(有難いことに)楽しんでくれている方がじわじわと増えていて、もうこうなったら、できるだけクオリティを上げながら頑張るしかないぞ!と自分を鼓舞している次第です。
もっとパロディが多い方がいいのか、シリアスな本編を進めたほうがいいのか、みなさんが何を望んでいるのかいつも悩んでいますし、これからも悩み続けるでしょう。
それでもリアルという日常生活の中で、毎週少しの時間で楽しめる、ニヤッとしてしまう、ふわっとしてしまう、そんな小説をこれからも書いていけたらなと思っています。
そんなわけで…ってこともないのですが、タイミングよく「みてみん」にて「管澤捻」様がイラスト募集(描く方)をされていたためイラスト製作の依頼をしました。
そして依頼をしたその日に来たのがこれです。(というより完成されてました・笑)
私よりもよっぽどキャラの特徴を掴んでいます。さすがです。(笑)
本当にありがたいです。ありがとうございます。
このイラストをこの場と、第一話冒頭の扉絵として使用させていただきます。
また扉用としていつか色付けをしたいなぁと思ってます。これは作業環境の問題でなかなか難しいのですが…(笑)
またこれを機に「管澤捻」様の他の作品もぜひ見てみてください。
https://20147.mitemin.net/
また、なろうサイトでは自身で小説も連載されております。
https://yomou.syosetu.com/search.php?word=%E7%AE%A1%E6%BE%A4%E6%8D%BB
よい1周年となりました。
それでは本編をお楽しみください。
「アーク殿っ」
こぼれる笑顔を隠し切れないままに、その名を呼ぶ。
「ハチ子、無理するなよ!」
「はいっ!」
この絶望的な状況下において、私の心中は暗雲を吹き飛ばすほどの高揚感でいっぱいだった。
今の私には彼の動きが手に取るようにわかる。
これまで……1年以上見てきたのだ。彼の一挙手一投足を、この目で追ってきたのだ。
最初は任務として、そしていつしか親愛を込めて。
彼の次の攻撃が、戦術が、歩幅の数までもが私にはわかる。
独特のリズムの中で戦う彼の動きに対し、その背中を追い、並び、そしてこれ以上にないタイミングでセッションさせていく。
そう……私には、彼の背中を守れるのは自分しかいないという自負がある。それはきっと鈴屋にもできないことだ。
「アーク殿、私たち夫婦みたいですね」
「そこはせめて恋人に……って……ったく、いよいよやばくなったら丸薬を使うからその時は離れろよ!」
2人は時に竜巻のように回転し、時に双頭の犬のように牙をむく。
青白い剣線は彼を守るための結界となり、彼はその間を縫ってテレポートダガーを投擲する。そしてリターンで手元にもどしては、再びその攻撃を繰り返す。
時折、剣線を突破してくるイーグルが現れるが、超近接戦においても一流の格闘術を見せる彼に焦りはない。呼吸を一定に保ち気を練りながら体を回転させて蹴りを放ち、直接触れた相手にはそのまま気を叩き込む。
致命傷を避けて攻撃するのは、彼が人を殺すことを嫌っている証拠だ。
「……やる……」
ゼクスが動く。
しかし私は、お前を見逃しはしない。
「アーク殿、借ります!」
残像のシミターで結界を張りながら彼の背中にある7本のダガーから1本を拝借し、ゼクスに投げつける。
それと同時に剣線がバチンッと大きな音を立てて、ゼクスのガバメントから放たれた攻撃を弾いた。
ダガーは利き腕にヒットしたようだ。
そうこうしているうちに、十数人のイーグルを戦闘不能状態に追いやっていった。
このままいければ……と考えるが、やはりそう簡単にことは進まない。
「矢を射れい!」
スケアクロウの指示が聞こえた。
視界の奥に控えていたイーグルたちが、一斉に武器を持ち替えていく。
「アーク殿、距離をっ!」
「いや、俺はこのまま暴れきる!」
……丸薬を使ってこのままイーグルの数を減らすつもり……たしかに今の勢いを殺したくはないけど……
脳裏でそれはだめですっという言葉がよぎるが、この窮地を乗り越えられる術が他に見当たらず言葉を飲み込む。
「狂戦士化している間、ゼクスを頼むっ!」
「……しかし……」
「飛べ、ハチ子!」
彼は丸薬を口に含むと、ダガーを私の胸に押し付けてくる。
「俺を信じろっ!」
その真っ直ぐで燃え上がるような熱い瞳に気圧され、無言で首を縦に振る。
そして、ゼクスに向けてダガーを投げつけた。
「トリガー!」
瞬時に空を渡るダガーのもとへと転移し、ガバメントを構えるゼクスの目の前に着地した。
ゼクスが反射的に得物をこちらに向けようとする。
「……影渡り」
さらに背後へと移ると、ゼクスの首に右腕をかけて朽ちた外壁へと投げつける。
「とどめですっ!」
追い打ちを……と、右足に体重を乗せた瞬間、思い出したかのように痛みが走り思わず体勢を崩す。
幸いゼクスも起き上がることで精一杯のようだ。
それならばと先程まで自分がいた修羅の只中に視線を移す。
「ガァァァァァッ!」
そこには何本もの矢を体に突き刺したまま、雄叫びを上げる彼がいた。
狂戦士化の象徴ともいえる赤目発光……右目に真っ赤な光を灯し、夜闇に赤い線を残しながら次々とイーグルに襲いかかる。
やはりあれは危険だ。
かろうじて野生的な回避行動をとってはいるが、防御するという理性は持ち合わせていない。
「バ……ヂゴ二……ナニヲ……シダッ!」
言葉とも鳴き声ともとれる叫びは、唯一の理性……今の彼の行動原理だ。
普通の女性なら、私のナイト様と喜ぶのだろうか。
しかしそれは騎士と呼ぶにはあまりに荒々しく、狂狼という言葉こそが相応しい。
それでも、それがすべて自分のための行動なのだから、私には気高く美しいものにしか見えなかった。
あの場に駆けて背中を守りたい、その衝動が急速に膨らむ。
しかし、あそこに行けば自分も巻き込まれる。それは足手まといと同意だ。
嵐のようにイーグルを蹴散らす様は、敵味方の判別などしていない。
ただ闇雲に、動くものを襲っているだけだ。
赤いマフラーが稲妻のようにジグザグに走り、赤い隻眼が光の線を描きながら、全身から飛び散る赤い血が花びらのように舞っていく。
「……もう……やめてください……」
たまらず呟く。
彼は死ぬ気だ……いや、死んでもいいと思っているのだ。
それはやはり……
「だめ……だめっ!」
ついに我慢しきれず、テレポートダガーを彼のもとへと投げつけた。
しかしトリガーするよりも早く、彼が驚異的な反射速度でダガーを受け止め、即座に投げ返した。
そして、わずかに笑う。
「トリガーッ!」
ザンッと私の前にダガーを握って着地し、そのまま力強く私を抱きしめた。
「あっ……く……どの?」
そこでドスンっと重い衝撃が伝わる。
一瞬、なにが起こったのか私にはわからなかった。
「ぎりぎり……間に合った……」
彼の優しい声が耳元で囁かれる。
……丸薬が……切れた?
「アーク殿?」
彼が私にもたれかかるようにして、そのまま崩れ落ちる。
力なく倒れ込んでくる彼を支えようとするが、またしても足が痛みそのまま抱きしめる形で座り込んでしまった。
そこで初めて、彼の背後にガバメントを構えたゼクスを確認できた。
「私を……守るために?」
「……かか、偶然だよ」
「無茶しすぎです……」
「かかか……だが、これで俺達の勝利だぜ」
「なにを……?」
やはり、言葉の意味がわからない。
ゼクスは健在、イーグルもまだ半分以上残っている。
この先に待つのは、数による蹂躙だ。
それでも彼は、乾いた笑い声をあげる。
「……ほらみろ……ぼさっとしてっからやられんだ……まずは一刺し……な」
「ぐあっ!」
彼の言葉の後、唐突にゼクスが声を上げて前のめりに倒れる。
その背後には妖艶な雰囲気を醸し出すキャットテイルが、不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「よぅ……絶対来ると思ってたぜ」
「しょぅねぇん〜それはどういう意味かなぁ?」
……殺意にも似た冷笑……味方ではないと直感する。
「あはぁ……ざぁんねぇん……私は手を貸さないよぅ? だって、私は“まだ”イーグルだものぅ」
「……わかってるよ。だからちゃんと、あんたの期待には応えてやるさ……」
フェリシモが少し驚きの表情を浮かべるが、やがて嬉しそうに高らかと笑い始めた。
「あはぁ〜。いいねぇ〜ほんとにわたしのことがわかってきたんだねぇ〜?」
「どういうことじゃ、1位よ!」
スケアクロウの声が飛ぶ。
そしてスケアクロウの1位という言葉にイーグルたちが騒めく。
……当然だろう……1位なんてそうそう目の当たりにできるものではない……
あれが……とか……女だったのか……とか、困惑と驚きの声が聞こえてきていた。
「あはぁぁ〜すけあくろぅぅ。なぁに、今は私のことは無視していいよぅ〜〜3位も死んじゃいないから安心してねぇ〜〜〜お前たちはさぁ……存分にしょうねぇんを殺したまえよぅ〜」
「……ふん……まったく底の知れん奴じゃ……かまわん、このまま仕留めよ!」
イーグルたちが顔を見合わせ、再び駆け出す。
しかし……
「カカカ……おせぇおせぇ……」
しかしそれでもこの窮地において、彼は勝利を確信したかのように笑っていた。
次でハチコ編は終わります…たぶん、たぶんですよ?(笑)




