鈴屋さんとキャプテン・オブ・ザ・シップ〈6〉
すっかり夏バテです。すみません、今回もかなり短いです。
炭酸片手に1缶分のお話を、気軽にどうぞ。
食堂に戻る途中、ふと疑問が思い浮かんだ。
「鈴屋さんさ。なんで、服も一緒に小さくなってるんだろ?」
「どういうこと〜?」
「いや……アニメじゃないんだし。普通さ、服がブカブカになるとかあんじゃん?」
「ん〜〜わかんなぁい!」
「クッソきゃわいいな、ちきしょう!」
ロリ屋しゃんの破壊力たるや、凄まじいものがある。
実際、彼女が話すたびに俺とハチ子は、にへらぁと、だらしなく笑みをこぼしていた。
「たしか、鈴屋は全身魔法装備なんですよね?」
「そうだよ、下着も含めて余すことなく魔法装備だよ。もはや、紛うことなき魔法少女だよ」
「……魔法少女というものがよくわかりませんが……防具系の魔法装備には、装備者の体型に合わせてくれるものがあると聞きます。といっても、相当なレア物ですが」
……なるほど、たしかにそれなら納得がいく。
せっかく手に入れた魔法の鎧が、サイズ違いで着れないとか、RPGとしては切なすぎるからな。
「そっか。ハチ子さんのその服は魔法装備?」
「私のは、このコートとシミターだけです……ので、この革のワンピースは危ないかもしれませんね……って、まさか……アーク殿?」
「ちっ、違うからな、そういう意味で言ったわけじゃないからなっ!」
やめろ、伏し目がちにして顔を赤らめるんじゃない。
そして必要以上に、体を押し付けてくるんじゃない。
「アーク殿、いいんですよ。ハチ子は、そういう目で見てもらえて嬉しいのですから(はーと)」
「や、やめろ、ロリ屋しゃんが見てる」
「おにいちゃん、ろりってなぁに〜?」
「うわぁ……つい。そういうのは知らなくていいから」
ロリ屋しゃんが面白くなさそうに、左のマフラーの端をグイグイと引っ張りながら、ぷぅと頬を膨らませる。
子供になったところでその魅力は変わらないのだから、感服するばかりだ。
「あのぅ……あーくどのぅ……」
ハチ子が右のマフラーをくぃくぃと引っ張りながら、小走りをして横に並んでくる。
今度はどうしたのかと視線を向けると、ハチ子はなぜか顔を真っ赤にして、ガラス玉のような黒い瞳にうるうると涙をためながらこちらを見上げてきていた。
「どうした……?」
「あーくどのぅ……鈴屋がこの状態だからって、大胆すぎますよぅ」
「……なにが?」
しかしハチ子は、もじもじとしながら視線をそらすだけで、それ以上答えようとはしない。
もう幽霊が怖いとか、そういった感情はどこかへ行ってしまったらしい。
「あの……ハチ子さん。まったく話が見えてこないんだけど」
「あーくどのぅ……ハチ子は、まったくかまわないのですが……その……先程からずっと、触っておられるじゃないですか」
「……触る?」
「その……ハチ子の……お尻を……」
「はぁっ!?」
断っておくが、俺はこれまでの人生で、そんな行為に及んだことは一度たりともない。
もっとも、俺の右手が悪魔にでも乗っ取られて、勝手に動いたとしたら別だが。
……って……右手!?
そこで、はっとしてハチ子のコートをめくり上げ、おしりを覗き込む。
「あっ!? あぁくさまぁぁぁっ!?」
「バカ、変な声出すな! あいつだよ!」
そこには予想通り、ハチ子のお尻を革のワンピース越しで撫で回す、不届きなライトハンドがいた。
「このやろう、二度までもっ! ハチ子に触んじゃねぇっ!」
気を練りながら左手を弓なりに引き、強力なフックを叩き込む。
これならば、霊体や魔族にも有効打になるはずだ。
ライトハンドは、またしても派手に吹っ飛び、そのまま暗闇に消えてしまう。
標的が軽すぎて斬撃系の攻撃じゃないと駄目か……
「アークどのぉ。今のは、かなり嬉しいです。しかも呼び捨て……」
「バカなこと言ってないで……大丈夫か?」
「えぇ、特になにも……」
ハチ子は、なにか異常がないか確認するために、自分の体へと視線を配らせる。
「大丈夫……みたいですね、アークどの」
綺麗な黒い瞳を大きく見開き、俺を見上げて笑顔をつくる。
それは、いつもの凛とした美しい女性のものではなく、すでに可愛らしい幼女のものだった。
そう……ハチ子は気づかなかったのだろう。
彼女は俺の目の前で、みるみると小さくなってしまったのだ。
【今回の注釈】
・みるみると小さくなってしまった………どう変わっていったかというと、干物妹!うまるちゃんみたいな感じです。




