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【原作小説版・完結済】ネカマの鈴屋さん【コミカライズ版・販売中】  作者: Ni:
鈴屋さんと幽霊船!

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鈴屋さんとキャプテン・オブ・ザ・シップ〈4〉

今回はかなり短いエピソードです。

とてもワンドリンクもちません。(笑)

気楽な感じで休憩の時にでもどうぞ。

「のわぁあぁっぁあぁぁあああああっ!」


 ついに俺までもが、情けない悲鳴を上げて廊下を駆け出していた。


「アーク殿、アークどのうぅぅぅぅぅっ(嬉)」

「ちょちょ……ちょっと、最後のその(嬉)は何かなぁあぁ! きゃぁぁぁ、あー君なんとかしてぇぇ!」

「だめ、もう限界! 俺だって怖いっ!」


 なりふり構わず2人の手を握って、暗がりに沈む角を右へと曲がる。

 ウィル・オ・ウィスプ君は置いてけぼりだ。

 いくつかの扉をスルーし、ライトハンドが先程の角に到達していないことを確認すると、扉が半分ほど開いている部屋に飛び込んだ。


「隠れられる場所は……」


 首を左右に振りながら部屋を見渡す。

 しかし暗すぎて、ほとんど見えない。


「あー君、ここ、さっきの部屋と同じつくり!」


 この暗さで見えるってことは、“インフラビジョン”か。

 インフラビジョンはシャーマンスキルを習得すると、もれなくついてくる特殊技能だ。

 たしか精霊の働きを感知して、暗闇の中でも多少は物が見えるっていうものだったと思う。

 実際は、ドワーフの“暗視能力”ほどはっきりと見えないらしいけど、サーモグラフィーのように温度分布の可視化ができたりと便利な特技だ。

 俺もそれだけを目当てで、シャーマンスキルの習得を本気で悩んだものだ。


「どうしよう、あー君!」


 鈴屋さんが緊迫した声で急かしてくる。

 そうだ、考えている時間はない。

 脳内で先程の部屋のマップを展開し、ドレッサーに向けて駆け込む。

 そしてそのまま2人を強引に押し込むと、入り口をちらりと確認して中に続いた。


「あーくっんっ……む〜〜」


 俺は慌てて2人の口を手で押さえつけ、息を殺せと目で訴えた。

 これはまさに、かくれんぼ系ホラーゲームの定番パターンだ。

 そして、これでも見つかるホラーゲーはいくつもある。

 大事なことは息を殺すこと、これにつきる。


「あっ……」


 言ってるそばから、間抜けな声をあげたのは俺だった。

 今更ながら2人の唇に、思い切り手を押し当てていることに気づいたのだ。

 直接感じるその柔らかな感触に、女性免疫力のない俺が動揺しないはずもない。


 ……さらに、ドレッサーの中での密着状態……


 満員電車ばりに隙間なく2人の体が触れていて、その柔らかくも暖かな感触に、荒ぶる情動を押さえつけねばならない。

 これもまた、どこかで見たことのあるド定番の展開だが、ヒロインがこの場に2人いるというのは新しい。

 いやむしろ修羅場に発展しないかと、違った汗が出てしまいそうだ。


「~~むぅ~~~~っ!」


 そんな危機感を感じたそばから、鈴屋さんが不機嫌そうな表情を浮かべて俺の左手の甲を強くつねりだす。

 思わず声を上げそうになるが、ここは死んでも我慢だ。

 ちなみにハチ子は、顔全体が真っ赤なリンゴのように熟れている。

 えっと、そんなキャラでしたっけ………?


 ……トコトコトコ……


 すぐ外で、ライトハンドが走る音が聞こえた。

 緊張のあまり、思わずごくりと唾をのむ。


 ……トコトコ……


 探している……な。

 目がどこにあるのか、よくわからないけど。

 黙ったまま、鈴屋さんのほうに視線をおくる。


「~~~~っ」


 鈴屋さんは眉に力をこめつつ、真っ赤になって睨みつけてきていた。

 いやまぁ、これほど隙間のない密着っぷりは過去例がないですし、怒るのも無理ないんですが。

 しかし、こればっかりは仕方あるまいよ。


 ……トコトコトコトコトコトコッ……


 少しづつ音が遠のいていく。

 それでも、しばらくはそのまま息を殺し、完全に気配が消えるのを待つ。

 そして小さくため息をついて、2人の口元から手を下ろした。


「……あー君の変態……」

「えぇ~っ!? どうしろとっ!」


 鈴屋さんは、だってと小声で抗議を続けてくるが、他にいい案が浮かばなかったのか、ゴニョゴニョと口ごもる。


「俺だってね、大変なんだから……」


 隙間なく密着というのは……今ここで俺の何かが、何らかの反応でもしようものなら、ハラスメント確定なわけで。

 実はけっこうな拷問なんですよ、わからないだろうけど。


「あぁく……どの」


 こっちはこっちで、まともに直視できない。

 容姿端麗でスタイル抜群、しかも絶賛デレ中にして照れ中でもある。

 何この試練……俺はいま、何を試されているの?


「出るから、もうちょい待ってくれ」


 俺は、ばつが悪そうにしながら、背中でドレッサーを少し開ける。

 やはり、もういないようだ。


「静かに……」


 言いながらゆっくりと、少しづつ扉を押し開けた。

 そして、とりあえず部屋の中央へと音を立てずに足を運ぶ。


「廊下も確認するから、後ろ……ついてきてね」


 再び俺のマフラーの両端が握られる。

 2人がついてきているとわかって、これはこれでいいな。

 一呼吸後、壁に肩をあずけて薄暗い廊下を覗きこむ。

 どうやら、警戒モードはとけたようだ。


「よし、進もう」


 そこで、くいっとマフラーの左側が引っ張られた。

 鈴屋さんのささやかな抗議だろう。

 もはや、手綱だ。


「あー君。あとで、いっぱい言いたいことがあるからね。ユー、コピー?」

「あ……あい、こぴー」


 握られた手綱が、少し弱まる。

 これは早く終わらせないと、どんどん俺への説教が増えていくぞ。

 俺は気合いを入れ直し、暗がりの廊下へと足を踏み出した。

【今回の注釈】

・かくれんぼ系ホラーゲーム………クロックタワー系ですね。最近だとRemotheredかな

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