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【原作小説版・完結済】ネカマの鈴屋さん【コミカライズ版・販売中】  作者: Ni:
外伝 or 後日談

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【サイドストーリー】鈴屋さんと、アニス・リット!(8)

「なるほど、間違いないみたいだね」


 アニスが右手を、俺の胸に押し当てる。

 同時に自分の心臓が、高鳴っていることを自覚する。

 緊張か……いや、警戒に近い感情だ。


「ひとつ質問が、あるんだけど」

「う、うん?」


 なぜかアニスの表情が、先ほどまでよりも艶やかに見えた。

 それが丸薬のせいなのか、それとも俺の意識によるもなのかはまでは分からない。

 ただ、明らかに雰囲気が変わったことだけは確かだ。


「アークさん。今のボクを、女性として見ることができる?」

「女性として……って?」

「あぁ、うん。じゃあ、もっと単純な質問にしよう。ぶっちゃけ、抱ける?」

「抱け……へ?」


 アニスが何を言っているのか、何を聞きたいのかが理解できず、一瞬思考が停止してしまう。


「アークさんは、ボクが丸薬を飲む前までは、少なからず女性として見ていたんだよね?」

「それは……まぁ……女性だと思っていたわけだし」

「じゃあ、ボクが男だと知っていたら、そう言う目で見ていなかった?」

「あぁ〜そうだなぁ。ふとした時に、思わず目がいってしまうとかはあると思うけど……」

「ふぅん。じゃあ、今は? 見た目だけじゃなく、実際に女性の体だよ?」


 アニスが、両手を広げてみせる。

 あぁ……なるほど。

 中身が男だと知っていて尚、体が女性なら抱けるのかって話か。

 なんというか……それは、鈴屋さんと似ているな。


「アニスが……というのは置いといて、そういう対象に見てしまうことはあると思うよ」


 アニスが、大きく息を飲み込む。

 しかしまだ、この問答の真意は掴めない。

 アニスはいったい、何を聞こうとしているのだろう。


「ちなみにアニスは、心は男なのか?」

「ボクの心は、女だよ」


 心は女で、体は男、でも今は丸薬の効果で女の体になっている。

 複雑すぎて、想像が追いつかないが……


「だとしたら……好きになる可能性は、ゼロではないかなぁ」

「でも、本当は男なんだよ?」

「今は女なわけだし……」

「じゃあ丸薬の効果が切れて男の体に戻ったら、その好きは醒めるの?」


 それはまた……今の俺に対して、葛藤ど真ん中な話だ。


「恋愛対象ではなくなるかもしれないけど、人としては好きなままだと思うよ」

「ふぅん、なんかズルい答えだね」


 それは本当に、その通りなのだろう。

 今の俺が鈴屋さんに対してはっきりとした結論を出せていないのだから、納得のいく答えなんて出るわけがないのだ。


「でもまぁ体がちゃんと女なら、好きになっちゃうってことだね?」

「かも……な? かも。可能性の話だ」

「じゃあ、今のボクには身の危険があって、丸薬の効果が切れたボクには身の危険はないってことだね?」

「間違っちゃいないが、アニスに手を出したりしないぞ。それにさっきから、例え話が酷いと思うんだ」

「ボクは意地悪だからね〜」


 ウインクをするアニスが、悪魔的に可愛い。

 全くもって「ちきしょう!」である。

 なんだこれ、鈴屋さんと同じじゃないか。


「オッケー、分かった、理解した。じゃあ、帰ろう♪」

「ん〜〜? 結局、この依頼の目的はなんだったんだよ」

「それはもちろん、ボクがキミという男の子を知るための冒険だよ」


 アニスが首を傾げるようにしながら、わずかに微笑む。

 俺にはそれが、ひどく大人びた表情に見えたのだった。

まだ少し、続きます。

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