表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
502/504

【サイドストーリー】鈴屋さんと、アニス・リット!(3)

「どうですか、アークさん」


 体のラインが分かるぴっちりとした革鎧に身を包んだアニスが、その場でくるりと一回転し、感想を求めてくる。

 なんというか……女戦士特有の『鎧なのに太ももを露出』というのは、防御力的にどうなのだろうといつも思うのだ。

 しかし彼女が俺に求めている答えは、防御力がどうとかではない。

 似合っているのか、どうかなのだろう。

 


「あのぅ、アニスさん。正直、目のやり場に困るっス」


 正直な答えである。

 装備している小剣や小盾、硬めの革鎧、それらは至って普通の品だ。

 ただ問題は、細身の体にぴったりフィットしすぎていることと、露出した太ももなのだ。

 似合っているというよりも、まず目のやり場に困るとしか言えない。


「そ、そんな男の子みたいなこと言わないでくださいよ」

「いや、健康的で煩悩しかない男の子ですよ、俺は」


 少し頬を朱に染めて、目線を逸らすアニス。

 綺麗なお姉さんのそういった反応は、いわゆるギャップ萌えを生んでしまうので、俺にとっては毒そのものだ。

 手を出していいのなら、それでもいい。

 しかし実際は、我慢を強いられるのだ。

 構図的には、鈴屋さんと同じである。

 目の前に並べられた極上のステーキを、ただひたすら眺めることしか許されないという状況なわけだ。


「せめて、丈夫めな長パンツとか履いたほうが……」

「それでは、男の子みたいになってしまいます」


 何故そこで女を出したいのか、俺には分からない。

 というか、それくらいで男の子に見えたりはしないだろう。

 それくらい、アニスは綺麗なお姉さんだ。

 

「私にとってこれは、怪我の危険よりも譲れないことなんです」


 むぅ……そこまでの決意とこだわりがあるのなら、どうしようもない。

 あとは何かあったら守るしかないと、俺が腹を括るのみだ。


「そうか。まぁ、山で素材を集めるだけだし、大丈夫か」

「はい、守っていただけると信じてます」


 なにその「あー君、守ってよね」的なやつの、おしとやか版。

 そんなことを言われたら、頑張るしかないだろうよ。


「うっし。じゃあ、ちゃちゃっと行くか」

「はい、お願いします!」


 さらりと黒髪を揺らせながら笑顔を見せるアニスを見て俺は、己の煩悩こそが最大の敵になるかもしれないと、改めて思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ