表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
500/504

【サイドストーリー】鈴屋さんと、アニス・リット!(1)

時期としては「鈴屋さんとドサマギッ!〈後編〉」の後になります。

「あー君、あー君」


 レーナでの昼下がり、隣を歩く鈴屋さんが俺の腕をチョイチョイと引っ張ってきた。

 どうしたのかと顔を向けると、鈴屋さんがあれを見てと言わんばかりにアゴをくいと上げる。

 見ればそこには、ゴロツキに絡まれている女性の姿があった。

 レーナは他の街に比べれば、治安がいい方ではある。

 しかしながら、港町らしく雑多で多種多様な種族が集まっているせいか、しばしばこういった状況に出くわすのだ。


「助けろと?」

「当然でしょ?」


 もちろんここで、自分が行けばいいのに……なんてことは言わない。

 鈴屋さんが本気を出せば楽勝なのだが、地形が変わってしまうほど被害が大きくなってしまうからな。

 これも大きすぎる力を持つ鈴屋さんの隣を歩く者として、当然の義務なのである。

 そもそも、こういった荒事は男の仕事だ。

 そんなわけで俺は、今日も今日とて彼女の手となり足となり戦うのだ。


 俺はさくっとゴロツキを倒し、絡まれていた女性を助け……ええっと、たしか……軽く挨拶をしてお別れをした。


 ことの発端は、そんなことも忘れてしまった数週間後のことだった。


「あの、アークさん」


 碧の月亭のいつのも円卓に、ひとりの女性が様子を伺うようにしてやってきた。

 えらく色気のある、ハスキーヴォイスだった。

 年齢は、二十歳くらいだろう。

 さらさらとした黒髪は、首にかかるくらいの長さで切り揃えられ、少し大人びた雰囲気の彼女にはよく似合っていた。

 ハチ子さんとは違ったタイプの、綺麗でクールな大人の女性といった感じだ。


「えぇっと、誰だっけ」

「あー君、ほら、こないだ助けた……」


 助けた……で、思い出す。

 あぁたしかに、あの時の女性だ。


「先日は有難うございました。私、アニス・リットと申します」


 見た目通りに落ち着いていて、礼儀正しい。

 どこぞの御令嬢なのだろうと、勝手に予想する。

 着ている服も、上品で清楚なお嬢様ワンピースである。

 ところで、この流れは……


「先日のお礼がしたく……よろしければ、お時間をいただけませんでしょうか?」


 うん、やはりお礼の流れだ。

 これも毎度のことで、だいたいは鈴屋さんが「そんなことしないでも、いーですよー」と断っておしまいである。

 ちらりと横目で鈴屋さんの方を見てみると、マグカップに口をつけながらアニスのことを凝視していた。

 なにか、深く考えているよう見える。


「あぁ〜、いーですよー」


 ほらね、俺の代わりに答えてくれた。


「ありがとうございます。では少しの間、アークさんを、お借りしますね」

「どーぞー」


 うん、いつもの流れ……って……へ?

 俺が目を丸くして鈴屋さんを見ていると、グイッとアニスに腕を組まれて強引に引っ張られた。

 意外に力が強い……じゃなくて!


「え、鈴屋さん?」

「いってらー」


 何故か鈴屋さんは、ニッコリと笑って手を振るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ