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【サイドストーリー】鈴屋さんと、ときめき☆南無子(4)

 南無子と八兵衛は露天通りに立ち寄った後、食事をするために港沿いのお店へと移動していた。

 ちなみに露天巡り中の南無子は、八兵衛の細やかな気配りと会話術で、終始に楽しげだった。

 まぁ中身はハチ子さんなわけだし、そうなると女の子同士の買い物なわけだから、当然と言えば当然だ。


「南無子ってさ、こっちの世界だと、鈴屋さんとしか親しく付き合っていないじゃん。ハチ子さんとも、仲良くすればいいのにな」

「……あんまり仲良くなっても、いつかお別れが来るかもしれないんだし……そういうの辛いから、レーナの人とは一定の距離をおいているんじゃないかな」

「えぇ〜? そんなのリアルでも別れはあるんだし、いちいち気にする方が変じゃね?」

「あー君は、その辺の考え方が、てきとーすぎるんだよ」


 ムスッとする鈴屋さん。

 怒っても可愛いとか、もはやチートである。

 まぁ鈴屋さんも、この世界の住人とは必要最低限の交友関係を保っているといった感じで、基本的に俺か南無子と一緒にいるしな。

 もしかしたら鈴屋さんの言う通り、俺がてきとーすぎるのかもしれない。

 ラット・シーに入り浸っている時点で、レーナの中でも変わっている部類に入るらしいし。

 まぁでもそのおかげで、この間はハチ子を助けられたわけだし、無駄ではないはずだ。

 そんなことを考えながら、ぼんやりと八兵衛たちに視線を向けると、ちょうど南無子がパスタをフォークでクルクルと巻いているところだった。


「南無子殿は、どのようなタイプの殿方がお好みか?」


 パスタを口の中で頬張りつつ、そのまま固まる南無子。

 好みの男の話題とか、意外な質問だったのだろう。

 そういえば南無子のそういう話、聞いた事ないな。

 やがてゴックンと、大きな音を立ててパスタを飲み込む。


「こ、好み?」

「うむ、知りたいではないか。まさか男嫌いなのか?」

「いや、普通に好きだけど」

「男好きなのか?」

「それはなんか語弊が……普通よ、普通!」


 よかった、普通に好きらしい。

 そういや鈴屋さんとは恋バナしてるとか、前に言ってたような気もする。


「ただ今は、そういうの考える時間がないと言うか……色々と立て込んでて……」

「ふむ、多忙なのだな。で、どういった殿方がお好みなのだ?」

「好みとかあまり決まってないけど……そうねぇ、あえて言うなら……」


 南無子が顎に手を当てて、大きく首を捻る。

 本気で考え込んでいるので、真面目な答えが聞けそうだ。


「思慮深くて、クールで冷静な男性がいいわね。私だけを見てくれて、私だけを追いかけてくれるような……」


 ほうほう。

 南無子は、知的で一途な男性がお好みか。


「あと、言葉で真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる人! それから声が低くて、髪は短くて爽やかで、でも精悍な感じのイケメンがいいわね。メガネとかかけてたらサイコー!」


 南無子がノリノリで、メチャクチャしっかりとした好みを語り始めて、思わず笑ってしまう。

 鈴屋さんに至っては、空中でゴロンゴロンと転がって悶えている。

 というか、この世界に眼鏡とかあったっけか?

 興奮して余計なことまで話しすぎじゃないか、南無子さん。


「なるほど、南無子殿は、実直な殿方がお好みなのだな」

「そうね。そういう意味では、八兵衛さんはいい線いってると思うわ」

「そうなのだろうか?」


 うんうんと、何度も頷く南無子。


「真面目そうだし、控えめで落ち着いているし、でも時折積極的になってくれて。それに、一途な感じがするもの」


 うんそれ、まんまハチ子。

 付け加えるなら、たまにとんでもないドジっ娘を発動するから、たまらんのだぞ。


「そう思っていただけるのは、光栄だな。とりあえず、嫌われてはいないようだ」

「そりゃぁ嫌いはしないけど……私、しばらくは恋愛とかしている暇がなくてね。しなくちゃいけないことが、あって……だから」


 南無子が深々と頭を下げる。


「ごめんなさい、アークに頼まれて、わざわざ来てくれたのに。でも、本当に今日は楽しいわ。ちょっと、ドキッとできたし」

「いや、某も楽しかった。互いによい息抜きが、できたようだ」

「ふふ、そうね。まさか息抜きで、知らない人とデートをするなんてね」

「うむ。また息抜きが必要になれば、アーク殿に伝えてくれ。某でよければ、お相手しよう」


 南無子は「ありがとう」と、俺には見せたことのない笑顔で応えるのだった。

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