【アフターストーリー】虎・虎・虎!(6)
アホである。
本当に残念な、アホである。
弟の龍竜に「美人でスタイルもいいのに、このアホさが残念でならない」と言わしめる所以がよく分かる。
ちなみに寅虎は今、目の前で両手で顔を覆い、耳の先まで赤く染めて悶絶していた。
「まさか……上級者向けのエッチな行為だったとは……」
「上級者というか、特殊な性癖というか……」
どうやら先ほど行った自分の行動を、検索しなおしたらしい。
そして今更ながら、恥ずかしくなったようだ。
というか、あの行為自体は恥ずかしくなかったくせに、行為の意味を知った途端に恥ずかしくなるってのが理解できない。
やはり独特の羞恥心を持っているようだ。
「まだ抱かれてもいないのに、なんてことをしてしまったのだ!」
「やめい、変なこと叫ぶな、バカ!」
思わずラフレシアを相手にしている時の癖で、パシンッと頭をはたいてしまった。
しかし寅虎は、恥ずかしモジモジモードを継続している。
「そもそも、キスすらしてないだろうが」
「ちゅ……ちゅ……ちゅうは……だな」
ちゅう?
キスという単語自体が、恥ずかしいのか。
「まぁ、それは、もぅいぃというか……いや、嫌というわけではなく……アレは良いものだと理解できたというか」
「なに言ってんだ、ほんとに」
「と、と、と、とにかくだ。手を繋いで、波打ち際を歩こう!」
「そんなんでいいのか?」
「そ、そんなんっ!?」
なんというか、思春期の甘酸っぱさが漂うというか、すでにベタですらないというか。
本当に、恋愛というものをしてこなかったんだな。
「じゃぁ、はい」
手を差し出すと、寅虎が小さく息を呑む。
そして、ゆっくりと手を握ってきた。
「ふぉ……ぉぉ……」
「それは恥ずかしいのか、興奮しているのか」
「ど、どちらもだ」
「正直だな〜」
そういうところも、シメオネそっくりだ。
しばらく無言のまま、テクテクと波打ち際を歩く。
まぁ、デートっぽい……気はする。
すると寅虎が、独り言のように呟いた。
「楽しいな……」
素直に出た寅虎の言葉が、どこか少し切なげに聞こえた。




