【アフターストーリー】虎・虎・虎!(1)
「アーク殿、アーク殿」
夢の中にいた俺の体が、優しく揺すられる。
薄目を開けると、ルームウェア姿のハチ子が俺にまたがって起こそうとしていた。
ちなみに大きめのシャツの下は黒いレギンスを履いているため、下着が見えたりしない。
しかし、これはこれで……である。
「これはこれで?」
言葉にしていたらしい。
寝起きは色々と危ないな、ほんと。
「いや、朝から可愛くて、理性を御するのが難しいのですよ、ハチ子殿」
ボッと火がついたかのように、顔を真っ赤にするハチ子。
「もう、冗談はよしてください。お客様が来てますよ、アーク殿」
「客? こんな朝っぱらから? 誰?」
「ハチ子の知らない女性です。モデルのように長身で、スタイルも良くて、とても綺麗な女性ですよ」
ハチ子が首を傾げながら聞いてくるが、俺にも見当がつかない。
特にヤキモチを妬いたりしないのは、正妻ゆえの余裕らしい。
これは、本人談だ。
「そもそもリアルで知り合いの女なんて、彩羽とラフレシア以外だと七夢さんくらいしか……」
面倒くさそうに頭を掻きながら、扉を開けてみる。
そこには、確かに俺の知り合いが立っていた。
「やぁ、秋景君。結婚式以来だな!」
「お、お前は……」
天色の髪をした前髪パッツンのクールな女性が、腰に手を当て胸を逸らす。
スリムなシルエットのジャケットと、深いスリットの入ったタイトなロングスカートが、彼女のスタイルの良さを際立たせていた。
「第一夫人の方も、元気そうで何よりだ」
「お前は、シメオネ・ユイガドクソン!」
「その名で呼ぶなー!」
寅虎の叫び声と共に、鋭い正拳突きが俺のみぞおちに入ったのだ。




