【サイドストーリー】鈴屋さんとダメージ・リングっ!(5)
「アークさん……」
「待て、ばか、なんだその目は」
「だって……」
憂いに満ちた目を向けてくるリーンに対し、俺は慌てるばかりだ。
いまリーンを引き剥がせば、彼女の全てが見えてしまう。
かといって、これ以上裸で抱き合うわけにはいかない。
いったいどうすれば、と思ったその時だった。
こういったピンチに必ず現れる、俺の女神様の声が聞こえたのだ。
「あー君はさぁ〜、なぁ〜にしてるのかなぁ?」
「す、鈴屋さんっ!? どうして、ここに!」
俺の背後、ベッドの方から鈴屋さんの圧倒的なプレッシャーを感じ取る。
しかし気配は。ひとつだけではなかった。
「ハチ子も、いますよ」
「ハチ子さんまでっ!?」
「鈴屋にアーク殿からの伝言を伝えたところ、見に行こうとなりましたので」
いや……そりゃあ、行き先を言ってあるんだから、普通に来るよな。
えぇっと……ハチ子さんも、怒っているのかな?
ハチ子さんの場合、声だけだと分かりづらい。
「あぁ〜もうちょっと、だったのにねぇ」
「シェリーの姉御っ!?」
今度は、リーンが驚きの声をあげる。
やっぱり見てやがったか、あのアフロ。
「せっかく一発仕込めるチャンスだったのに、まったく意気地がない男だねぇ」
「なんだよ、一発仕込めるって!」
「その指輪は、そういう指輪なんだよ。普通に男女で戦りあえば、どっちも裸になっちまって、そういう気分になる……名前で気づかなかったのかい?」
「名前って……ダメージ・リングだろ? 幻術で、ダメージが入って見える……」
「あぁん? 違うよ」
「違う?」
俺が首を傾げて、リーンの方を見てみる。
するとリーンは半目のまま、視線を逸らした。
「だめぇ、焦らさないでぇ……略して、ダメェ・ジ・リングだよ。ワーラット族に伝わる、子作り促進のアイテムだねぇ」
「なんだ、そりゃぁぁぁぁぁっ!?」
「ちゃんと説明して貸したはずだよ、ロメオ」
ちゃんと説明して、だとぅ?
「おい、リーン」
「ッス?」
「稽古だと騙したな?」
「……ッス」
このヤロー……「ッス」しか言わねぇ。
完全に確信犯だろ、これ。
なんて恐ろしい罠を、しかけてきやがるんだ。
「はいはい、とりあえず解除!」
鈴屋さんが見覚えのある盾を取り出し、盾に宿された力を発動させる。
するとあっさり幻術が解け、さきほど脱いだ忍び装束やリーンの鎧などが可視化された。
「こんな事もあろうかと、アルフィーに魔法解除の盾を借りてきたの」
「さすがの先読み万能っぷりですね、鈴屋さん」
「解除しても、二人とも裸なのは意外だったけどね? とりあえず二人とも、服を着て正座かな?」
「この指輪、ハチ子にも貸して欲しいです」
「ほらぁ〜面白い指輪だったろ〜、ロメオ〜?」
好き勝手に盛り上がる三人に見守られながら、情けない気持ちで忍び装束を装着する。
しばらくは、この三人と……あとリーンとも、まともに顔を合わせられなさそうだ。
 




