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【サイドストーリー】鈴屋さんとダメージ・リングっ!(1)

「鈴屋さんと月白の騎士団っ!」から「鈴屋さんとバレンタインでぃっ!」の間の話です

 本日もレーナは晴天なり。

 朝から日差しが暖かく、実に過ごしやすい一日なりそうだ。

 なんとなく早く目が覚めたので、屋根の上でまったりしていたのだが、そろそろ鈴屋さんも起きる頃だろう。

 俺はその場で立ち上がり、腰に手を当てて軽く背中を伸ばす。

 すると後ろから、音もなく気配が近寄ってきた。


「あ・あ・く・ど・の」


 わきゃっと俺の腕に絡みついてきたのは、ハチ子だ。


「おはようございます、アーク殿」

「おはよう、ハチ子さん。いつから居たの? まったく気づかなかったんだけど」

「ハチ子はアーク殿の犬なので、いつも近くに居ますよ?」

「ありがたいし、怖いんだけど」


 と言いつつ、満更でもなさそうに笑って返す。

 ここまで素直に感情を向けられて、嫌な思いをするわけがない。


「そう言えば、先ほど鎧の人がアーク殿を訪ねて来ましたよ」

「鎧の?」

「ほら、あの……ラット・シーの……」

「あぁ、リーンか」

「いつものところで待ってるんで、オレが来たことを伝えてほしいッス……だ、そうです」

「いつもって、どこだ。前に稽古をつけた『黒猫の長靴亭』の近くの空き地か?」


 相変わらず、一方的な奴だ。

 少し面倒くさいが、リーンの頼みじゃ行くしかないか。

 頭をボリボリと掻きながら、テレポートダガーを取り出す。


「ちょっと行ってくるよ。鈴屋さんが起きたら、伝えておいてくれる?」

「了解しました、アーク殿」


 甲斐甲斐しく頭を下げるハチ子に手を振り、おもむろにダガーを投げる。

 屋根から屋根へと何度か転移を繰り返し、やがて目的地の空き地が見えてきた。

 この近くには亜種族がたむろする酒場『黒猫の長靴亭』があり、シメオネ達の拠点もそこだ。


「ねぇさんには、見つかりたくないな」


 思わず妖艶な黒髪のアサシンが、脳裏をよぎる。

 あのおっかない姉さんのことだ。

 いつかまた、命をかけた戦闘を楽しみたいっていう理由だけで、襲ってくるんじゃないかと考えてしまうのだ。

 まぁシメオネが近くにいれば襲われないだろうから、ここにくる時は予めシメオネを捕まえておくというのも手ではある。

 さて、お目当てのリーンはというと……


「お、いたいた」


 空き地の真ん中でフルプレートメイルが、電池切れのように棒立ちしている。

 何も知らない人からすれば、すっげぇ怪しいし普通に怖いだろう。


「トリガー」


 とりあえず、リーンの目の前に転移してみる。

 声をかけたいところだが、これで中身が空っぽだと、あまりに俺が間抜けで恥ずかしい。


「あぁ、アークさん。来たッスね」

「中身入ってるのか分かんねぇんだから、もうちょい動くとかしてくれよ」

「動くと、ガシャガシャうるさいじゃないスか」

「自覚はあるのか。で、稽古か?」

「そうッス。さっそく、この指輪をはめるッス」


 リーンがガシャリと音を鳴らしながら、古めかしい指輪を摘んで見せる。

 俺はそれを受け取ると、額に眉を寄せて注視した。


「新手のプロポーズか?」

「違うッス。アホなんスか?」

「冗談だよ。魔法の指輪か、これ?」

「そうッス。シェリーの姉御から模擬戦用に借りてきた、対の指輪『ダメージ・リング』ッス」

「ダメージ・リング? なんだそりゃ」

「この指輪をはめて相手に攻撃を当てると、当たった部分がダメージを負ったかのように見える、魔法の指輪ッス。ちなみに武器は、何でもいいんス」


 ふむ。

 攻撃を当てた箇所に、ダメージ処理のエフェクトがかかって見える感じか。

 付与されているのは、幻術魔法の類なのだろう。


「怪我もしないし、一目でダメージ加減が分かるんで、模擬戦にはピッタリなんッス!」

「おぉ、なんか楽しそうだな」


 たしかにこれなら、気兼ねなく攻撃ができる。

 なんだ、あのアフロ。

 こういう便利な物を持ってたのなら、リーンの騎士試験の時に貸してほしかったぜ。


「オレはハルバードの代わりに、この棒でいいッス」


 リーンが、自分の身長よりも長い木の棒を持ち上げる。

 よく見ると、フルフルと震えている。

 少し硬めの、スポンジのような材質のようだ。


「これなら、当たっても痛くないッス」

「なるほどね」

「アークさんには、これと同じ木で作った短いのを用意してるッス」


 そう言って手渡されたのは、ダガーサイズの木の棒だ。

 しかもご丁寧なことに、二本用意してある。

 かるく構えて振ってみるが、感覚的にもダガーのソレとあまり変わらない。


「いいね、やりやすい」

「じゃあ、早速やるッスか?」

「おう」


 少し楽しくなってきた俺は、不敵に笑いながら構えに入った。

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