【アフターストーリー】しゃんぐりらっ!(3)
「見てください、アーク殿!」
ハチ子が窓を大きく開けて、俺を手招きする。
見てほら、可愛い。
これが、ウチの嫁。
「海が一望できます!」
俺もハチ子の隣にならび、おぉと声をあげる。
郊外にある平屋の別荘は、二人で暮らすには丁度いい広さだった。
真っ白な壁に、あざやな青色の屋根。
室内も真っ白な塗り壁で、家具も可愛らしく、まさに素敵な海沿いの別荘である。
「隣に空いてる土地も、別荘用なのでしょうか?」
「そうだな。拠点の購入は、もともとこのゲームにあった機能だし、きっと専用の区画で分けられてるんだろう。まぁでもプレイヤーのための機能だから、まず誰も来ないぜ」
「そうでした。いまこの世界にいるアウトサイダーは、私とアーク殿だけですものね!」
正確には他のサルベージャーや、未確認のドリフターもいるかもなのだが……まず拠点の購入なんてしないので大丈夫だろう。
それにどうせ買うなら、もっと街の中心部の拠点を買うだろう。
こんな辺鄙な場所にある拠点、冒険するには不便なだけだからな。
「綺麗ですね〜」
「ハチ子さんほどじゃないよ」
「ふふ……アーク殿は、下手くそですね〜」
くすくすと笑われる。
見てこれ、可愛い。
「でも、嬉しいです」
ハチ子がゆっくりとした動きで、俺に腕を絡ませてきた。
「イチャつきますか? アーク殿」
「聞くの? それ」
しばらく見つめ合い、どちらからともなく唇を近づける。
ゆっくりと長いまつ毛を下げるハチ子に、ドキドキしながら俺は……
「こんにちはー!」
突然の挨拶に、二人して飛び上がるほど驚き、思わず距離をあけてしまう。
声は扉の外からだ。
「来訪者? プレイヤーの拠点にか?」
「アーク殿……武装しますか?」
「いや。まさかいきなり戦闘になんて、ならないだろ。最悪レーナでなら、素手でもそれなりやれるしな」
「アーク殿のそういうとこ、かっこよくて好きです」
嫁っ!
よめーっ!
頬を染めて、そんなこと言う俺のよめーっ!
秒で俺の語彙力を、完全デリートさせる俺のよめーっ!
「こ・ん・に・ち・わー!」
「のわぁ、はいはい!」
来訪者の声で正気に返った俺は、慌てて扉を開けた。
そこに立っていたのは……
「どぅもぅ〜お隣に引っ越してきましたぁ〜」
海から駆け上がってき風に水色のロングヘアーをなびかせる、うら若きエルフ娘……
「鈴屋でぇす♪」
鈴屋さんだった!




