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あなたはずっと、私の英雄です。(1)

 巨大な門の前では、沢山の戦士たちが集結していた。

 侍姿の者や巫女、陰陽道や僧兵だけでなく、門の内側からから逃げ延びてきたシメオネのような格好をした武闘家もいる。

 その全員が、この門の先にいる妖魔軍と戦い、三門奪還を目指している。

 もちろん私も、その一人だ。

 ただ私の場合は妖魔軍の将軍、幻影剣の綾女を見つける事こそが最大の目的である。

 なんとしても自分の体を取り戻し、アーク殿にこれまでの話をしなければならない。

 もし彼が、ハチ子をレーナへ連れ戻すためにやって来たというのなら、尚更のことだ。

 このままでは、刀華の精神が入ったハチ子がレーナへと帰還してしまう。


「俺たち七支刀(しちしとう)は、一番槍をとれるポジションなのな」

「やはり、先陣を切れということでしょう」


 隣に並ぶアーク殿……もとい……秋景どのが、目を細めて思考の海に身を沈める。

 きっと考えられるあらゆる状況を想定し、いくつもの対応策を生み出しているのだろう。

 彼は、いつだってそうだ。

 何も考えていないような素振りを見せておいて、実に様々な策を用意する。


「スーズーや水雲凛の姿が見えませんが……何かあったのですか?」

「あぁ〜スーズーは、そのうち来るよ。凛と白露は、危ないから参加するなと言ってある」


 凛たちは戦力になりそうなのに、それをあえて呼ばないのは、何か考えがあってのことだろう。

 そして大事な戦いで鈴屋を呼ぶということは、いよいよ本気で私を探し出す気なんだろう。


「刀華の仇敵、絶対に見つけ出すぞ」

「はい」


 見つけた後は、どうするつもりなのだろうか。

 突如、知らない女の体の中に入ってしまい、敵側である妖魔軍に属してしまった本物の刀華。


 どれほど孤独で、怖い思いをしたのだろう。


 寂しい思いをしたのだろう。


 道場がどうなったのか、自分の体はどうなっているのか心配だっただろう。


 彼女に体を返すため、出来うる限りの下準備はしてきたつもりだ。

 あとは対話のチャンスを作ることなのだけど、状況によって戦闘は避けられないものとなるはずだ。

 混乱するであろう相手に、どうやってそのチャンスを作るのか。


 そういえば魔王となった秋景殿と、鈴屋はどういった結末を迎えたのだろう。

 戦ったりしたのだろうか。

 途中でこの世界に飛ばされた私は、その後のことを知らないままだ。


「んん? どした?」


 秋景どのの横顔を見上げていると、真っ直ぐな目で見つめ返された。

 私は慌てて目を逸らす。

 少し頬が熱くなっているのが、自分でもわかる。

 ……危ない、危ない。

 油断をすると、ついつい見惚れてしまう。

 心臓の音もドンドンと高鳴り、彼に聞こえてしまうのでは思ってしまうほどだ。


 ドン、ドン!


 体に響く、重い音。

 まるで胸を叩かれているような……って、これは私の心臓の音ではない。

 唐突に太鼓の音が、ドンッドンッと響いてきたのだ。


「カカカ、まさに鼓舞だな」


 確かに彼の言う通り、周囲の空気が変わっていった。

 これから始まる戦闘に向けて、皆の気持ちが高揚していくのがわかる。

 それは一種の興奮状態を生み、次第に士気を高めていった。


「先頭に行こうか、刀華」


 目立つことを嫌う彼が、珍しいこと言う。

 でも私は、すぐにそれを受け入れる。


「はい、秋景どの」


 私はいつだって、そうして彼の横に並んで戦っていたからだ。

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