アウトサイダーズ(4)
次の日の朝。
私の幸せな時間は、やはりそう長く続かないものなのだと知らされてしまう。
どうしてこう私だけ不幸なのだろう。
もしかして私を作ったアウトサイダーの創造主は、ダイスの期待値を下げるような設定でもしているのだろうか。
とにかく、邪魔者が多いのだ。
アーク殿のまわりは、いつもそうなのだけど。
いわばこれは、レーナの時から続いている平常運転というやつではあるのだけど。
「なんで、妾を置いていったのじゃ!」
アーク殿に馴れ馴れしく抱きつく、水雲凛という小さな女。
あなたはどんな理由で、そこまで懐いてしまったのですか?
「旦那ぁ、いくらなんでもそれはないだろう?」
白露殿までいる。
この二人で、追いかけてきたのですか?
どんな共闘作戦?
「白露殿との契約は、もう終わったはずですが?」
「嬢ちゃん、なんか口調が変わっちまった?」
「私は遠巻きに、ついて来ないでくださいと言ってるのです」
「旦那ぁ、ちょっとこれ酷くないかい?」
俺に言われてもな、とアーク殿。
見るからに、面倒くさそう。
やっぱり二人だけの方が良いですよね〜♪
あぁでも刀華と二人だけで、となると問題です。
「とにかく、私と秋景殿は先を急いでいるので」
「なんじゃ。どうせ門に向かうのじゃろ?」
むぐっと言葉を飲み込む。
この娘は頭の回転が早く、手強い。
「ほれ、妾と行き先は同じじゃないか」
「だからと言って、共に行動する必要はないでしょう?」
凛が目を細める。
なぜ避ける、と言いたげだ。
「じゃあ妾と白露は、偶然後ろをついていくということになるじゃろうな」
「またそんな、子供のような屁理屈を……」
「どんな屁理屈も通るところが、妾の特権じゃ♪」
ダメ、この娘には口で勝てない気がする。
アーク殿は……もう諦めている顔だ。
「それよりも、お主ら。昨夜はどこにおったんじゃ?」
「んあ? 俺は……風呂でのぼせて、刀華に介抱されてたぜ?」
「それは風呂に入り、その後はずっと部屋におったということか?」
凛の問いに、アーク殿が頷いて返す。
「入ったのは入込湯か? 時間は夕方か?」
やはり、こくりと頭を縦にふるアーク殿。
凛は白露殿と目を合わせると、互いに頷きあう。
二人して、なにを探っているのだろう。
「なんですか?」
「おかしいのぅ。その時間は誰もおらなんだし、主らの部屋にも誰もいなかったんじゃがなぁ」
凛が含みを持たせた笑みを浮かべる。
いない?
そんなわけが……
もしかして鈴屋たちが何かをしたの?
「あぁ……まぁ、俺と刀華は、ちょっと飲みに出たんだよ。それで入れ違いにでもなったんだろうよ」
アーク殿が適当な嘘をつく。
この適当さは、真面目に答える気はないという意思表示だ。
凛と白露殿も、それ以上は追及しない。
心理戦、いや探り合いをしているようにも見える。
しかし……と、私は深く熟考する。
凛と白露殿は何かおかしい。
このとき私は、初めてそう感じ取っていた。




