アウトサイダーズ(3)
「うぅん……」
アーク殿が小さく呻く。
「秋影どの、ようやくお目覚めですか?」
まだ意識が混濁しているのだろう。
額に手を当てながら、目を開けようとしている。
「あまりに目を覚さないので、心配してしまいましたよ?」
「えっと……たしか風呂で潜って、あと何か柔らくて……」
「柔らか?」
「あぁ、いや……俺、もしかして気を失ったのか?」
はい、と返事をしてみる。
まだ気づかないとか、さすがはアーク殿。
鈍感なところが可愛いのも、あなたの特徴ですよ。
「…………」
ようやく状況を把握したみたいですね。
真っ直ぐ見つめてくれるの……いいですね、ドキドキします。
「あのぅ、刀華どの〜」
「なんですか、秋影どの〜」
「これはいったい、どういう状況で?」
アーク殿が、唇をヒクヒクとさせて聞いてくる。
ふふふ、驚いてますねー。
ハチ子は、その反応を見たかったのですよ。
「ひとつのお布団で、向かい合って寝ているのですが?」
「この状況を、そんなに平然と“ですが何か?”みたいに言うんじゃありませんっ」
「でもお布団がひとつしかないんですから、二人で寝ようとしたら、こうなるじゃないですか?」
「いや、そうですけど……俺は別に外で寝ても……」
それはダメです、と首を横に振る。
「何もしなければ、いいだけですよ?」
「まぁ、そうなんだろうけども」
「何かするつもりなんですか?」
「しないしない、刀華には絶対しない」
絶対と言い切れる理由を聞きたいところだけど、なんとなく信じられる。
だってあの時……雪山に氷茸を取りに行った時……私とアーク殿は、ジャイアントマンタ型の寝袋で一夜を過ごしたのだ。
あの時、私は何もされ……
され……あれ?
されてなくも……ない。
「秋景どの」
「はい?」
「抱きつき癖は健在ですか?」
「な、なぜそれを!」
アーク殿が、目を丸くして驚いている。
ふふっ……まだ、あるようですね。
「俺、やっぱり外で……」
アーク殿がお布団から出ようとする。
私は慌てて、アーク殿の肩を掴んでそれを制した。
「背中を向け合って寝ましょう。それなら問題ありませんよね」
私はそう言うと、背中を向けて目をつむった。
アーク殿は少し躊躇をしていたが、やがて諦めたのか、ゴソゴソと背中を向けて横になった。




