表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
403/504

七支刀選抜試験(20)

「これより蟷螂流と十月紅影流の、三対三による団体戦を行います」


 前回と同じ袴姿の女性が、試合場の中央で開始の口上を続ける。

 俺たちと対峙するは、蟷螂流。

 三人横一列で並んでいる。


 当主は斬鉄。

 身長百九十を超える筋骨隆々の大男だ。

 年齢は二十代後半で、自信に満ちた表情を浮かべている。

 腰には打刀を一本、落し差ししている。


 となりに立っているのは、これまたガラの悪そうな女剣士……というより山賊のお頭って感じのお姉さんだ。

 年齢は二十前後、着物を着崩したパンクな姿をしている。

 野性味溢れるざんばら髪を、雑な感じに頭頂部で束ねている。

 やはり刀は、打刀一本だ。

 見た目だけで判断すれば、どことなく卜伝と同じ匂いがするのだが、まぁあの化け物ほど強いわけがない。


 最後に寡黙そうな男が一人。

 長髪で糸目の剣士、こちらも二十前後か。

 他の二人と違って汚れのない着物に身を包み、少し長めの打刀を持っている。

 この男は少し雰囲気が違うな。

 もしかしたら俺や白露と同じように、雇われた剣士かもしれない。


「対戦相手に致命傷や部位欠損等のダメージを負わせる、または、対戦相手を死亡させた場合は失格になります。その条件下で、相手を屈服させた者が勝者となります。それでは、ご武運を……」


 袴姿の女性が目を閉じ、ゆっくりと頭を下げる。

 そして廊下の奥へと消えていった。


「じゃぁ始めようかい。ていうかよぅ〜お前ら、ほんとにやんのかぁ〜? 怪我する前に降参した方が、いいんじゃねぇか?」


 斬鉄が抜いた刀を肩に乗せ、トントンとさせる。

 こちらの状況を、明らかに知っている態度だ。


「親びん、とっとと終わらせましょうよ〜?」


 小物感あふれる女剣士。

 こんなでも流派剣術を使うとなると、侮らない方がいいだろう。


「貴公らのような卑怯者、某一人で十分だ」


 刀華が深呼吸をひとつし、前に一歩、すぅと足を滑らせて構えに入る。

 本当に一人でやる気のようだ。

 それは、当主としての意地か?

 そういえば刀華は、戦闘において頑固なところがある。

 自信過剰というわけではないのだが、強い自尊心を持っているのだ。

 ここは刀華の考えを尊重しておいたほうが、いいのだろうか。


「白露殿は休んでいていくれ。秋景殿は後ろで、某の真の強さを見ているがいい」

「おぅおぅ、随分勇ましいねぇ。まぁ当主であるならば、その責を負うは当然か〜?」


 そう言ってゲラゲラと笑う、斬鉄と女剣士。

 今の台詞は、毒を盛ったことを認めているようなものだ。

 少し……いや、かなり腹立たしい。

 しかしこれが“妖魔軍と戦う”ための試験であるならば、毒を盛られて負けたなんて、言い訳にもならないだろう。

 この先、俺たちの戦う相手が清廉潔白で、正々堂々と戦うタイプだとは限らないからだ。

 白露はともかく、刀華はこの困難に立ち向かう覚悟があるのかもしれない。

 刀華がやれると言うならば、俺はそれを信じたい。

 駄目そうなら、無理矢理にでも介入するだけのことである。


「ここは、あぁしにやらせてくださいよぅ、親びん〜」

「あぁ〜? せっかくの集団戦だがぁ……まぁ、ちょっとだけならいいか」

「ありやと、親びん♪」


 おぉ……なんか弱そうなのを釣れたぞ。

 ここで一対一とか、超チャンス!

 ここは確実に俺が行きたいところだが……


「先に抜くといい。瞬きより迅く終わらせてあげよう」


 イケメンな台詞で、足を開き重心を落としていく刀華。

 前回の試合でどうやって勝ったのかも聞けていないのだが、本当に抜けるのか?


「うるせぇぇ、ぶすぅ!」

「……ぶ……ぶ?」

「くらぇぇっ、蟷螂流・初撃の……」


 何らかのスキルを繰り出そうとする女剣士に、刀華が前屈みになって突進をかける。

 その鋭いスピードは、ゲーム的なエフェクトやスキルなどではなく、鍛えられた走術に見えた。

 そしてそのまま刀を……鞘ごと抜いたっ⁉︎


「ひとつ……」


 呟きながら鞘がついたままの刀を、女剣士の腹部に叩きつける。


「ふたつ」


 閃くような動きは止まらず、今度は左太ももに鞘を落とす。


「みっつ、よっつ……」


 数を数えながら攻撃を打ちつけて……って、この技は……


「いつつ」


 五連撃めが、女剣士の顎をかすめる。


「数え五斬!」


 刀華はそう言って、そのまま動きを止めて残心させる。

 次の瞬間、女剣士は白目を剥いて倒れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はやく気付いてくれアーク殿!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ