閑話特別編「鈴屋さんとラジオ的なナニカ ー第四十六回ー」
麻「ここは本編とは関係ないラジオみたいな何か、通称ラジナニです。ここでは本編では語られないメタ的な裏話や、本編で触れられなかった話をしています。今回も私、麻宮七夢の部屋からお届けしまぁす♪」
秋「相変わらず唐突だな」
鈴「急に呼ばれたー。みんな、なに読んでるの?」
ラフレシアとハチ子は、熱心に何かを読んでいる。
ラ「鈴やんもヨムか?」
8「随分と、むかしの話です」
鈴「むかし?」
麻「二人は閲覧禁止コードがかけられているから、読めないわよ?」
秋「つぅてぇと、俺らの物語系なのか」
麻「そうそう。こないだ“ニコニコ漫画”用に書き下ろした話ね。時間軸的には、三話と四話の間くらいのやつよ」
秋「めちゃくちゃ、初期の話だな」
麻「たまにはその頃の話とか、足してもいいんだけどね〜。ってわけでぇ〜日頃からお世話になっている“なろう”限定で、大公開するわよ。はい、ドーン!」
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「鈴屋さんと、だが男だっ!」
──とある日。
「よかったなぁ、連泊できて」
碧の月亭の一階で長期宿泊の契約をした俺は、とりあえず拠点ができたことに喜びを感じていた。
やはりホームがあるだけで、不安の八割は解消される。
「あー君が同じ部屋にしようとしたのは、びっくりだけどね」
鈴屋さんが食べ終えた食器をカウンターにいるオヤジに手渡し、二階へと向かう。
碧の月亭は冒険者の拠点となる酒場、兼、宿屋だ。
一階が酒場で、宿泊施設は二階になっている。
「男同士なんだから、いいだろうに。節約だよ」
「身の危険しか感じないんですけど」
ジト目も可愛い。
確かに俺の理性がどこまでもつのか、疑わしい。
なにせ、ひとっ風呂浴びた鈴屋さんときたら、短めのキュロットスカートにノースリーブという、リラックスしすぎな服装なのだ。
眼のやり場に困るだろう、ふつうに。
いや、まぁ、だが男なわけで、そんな目で見る俺がおかしいのだろうけど。
いやでも、ね。
「あー君、二階に上がってすぐの部屋だよね?」
階段を上がる鈴屋さんに声をかけられ、後ろをついていた俺は思わず見上げてしまう。
「おぉぅわっ」
変な声をあげた俺は、慌てて口を手で押さえた。
だってそこにあるのは、いまにもいろいろ見えそうな……いや!
待て!
だが、男だ。
これの中身は男なんだ!
「どーしたの、あー君?」
そんな俺の邪な葛藤なんぞいざ知らず、鈴屋さんが聞いてくる。
俺はそれに対し目線をそらして、なんでもないっすとしか返せなかった。
──また、とある日。
「うー、暑い。なんか今日暑い」
鈴屋さんが、ぱたぱたとスカートをあおぐ。
今日のレーナは、妙に日差しがきつい。
おかげで薄着の鈴屋さんが、スカートってそんな使い方するの?ていう妙技で、涼をえていた。
ミニスカートだから相当際どいのだが、中身が男ゆえなのか、どえらい隙だらけである。
「情報収集だけだから、俺だけでもいいんだけど」
「そうはいかないよ。動くときは、常に一緒。ちゃんとそれを守ってよね」
「かわいいこというねぇ」
「なにそれ。アホなのかな?」
辛辣でも可愛い。
あれからというもの、毎日これである。
俺はこの見た目が超絶可愛い鈴屋さんに、翻弄されっぱなしだ。
だって、見た目は可愛いエルフ娘。
なんなら触れるし、ていうか、いまは本物のエルフ娘だし。
そう考える度に、俺の理性が「だが、男だ!」と警鐘を鳴らすのだ。
「痛っ! 待って、なんか石入った」
そう言って俺の肩に手を置き、身を屈ませて片方のブーツを脱ぎ出す鈴屋さん。
その無防備な動きで、ゆるめの胸元から、控えめな何かが溢れそうに……
まて、待て、マテ!
だが、男だ!
いやでも、胸元だけじゃなく、足のラインだって……
まて、待て、マテ!
だが、男だ!!!
「きゃぁ!」
俺が顔を横に向けようと強引に体勢をかえせいで、鈴屋さんがバランスを崩してしまった。
「のわっ」
鈴屋さんが俺に向かって倒れてきたので、咄嗟に片手で抱き抱えるようにして支える。
よかった。
なんとか、転ばずに済んだようだ。
「あ、ありがと」
顔を上げる鈴屋さん。
いや、そこには俺の顔があるわけで。
艶のある唇が、俺の唇と数センチというところまで迫ってしまうわけで……
「あっ」
それに気づき、顔を赤く染め上げる鈴屋さん。
そのまま二人の動きが固まってしまう。
え、これ、きす__
まて、待て、マテ!
だが、男だ!
男だ……
男……か?
もうよくね?
エルフ娘だぜ?
ここでは女なんだし……
相手が嫌がってなければ、いいんじゃ……
思考が霧がかったかのようにぼやけ、そんな思いが俺の背を後押しする。
気がつけば、俺はさらに唇を寄せてしまい……
「だ、だ、だ、ダメー!!」
おもいっきり、ビンタされてしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ……なに考えてんの、もう!」
いや、何を考えていたのだろう、俺は。
こんなの理性で抑えられるのだろうか。
この先、俺はどうすればいいのか。
そんな帰れるかどうかよりも大きな難題が、この時の俺にはできてしまっていたのだ。
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麻「ちなみに漫画版は、ニコニコ漫画で見てね(はーと)」
8「二人とも初々しいですね」
ラ「こうしてみると、鈴やんは初期の頃から、しっかり妹感満載ダヨな」
鈴「しょうがないでしょ。私にとってあーにぃは、あーにぃなんだもん」
ラ「それが突然、女として見始めてきて、ちょくちょくエロい目を向けてくるわケダ。万年妹ポジだった鈴やんとしては、笑えるヨナ」
鈴「ちっともワロエナイよ」
秋「さーせんした……でも目の前に触れられるエルフ娘がいたらさ、ネカマネカマ言われてても、そういう目で見ちゃうって。一瞬の油断で、本能的に見てしまうんだって」
8「言い訳ですね、アーク殿。ハチ子もそんな目で見られていたのは、気づいてましたよ〜?」
ラ「オレも気づいてたゾ〜?」
秋「二人は、わざと見せてたろ。あんなものは、視線誘導の罠だ」
8「見苦しいです、アーク殿ぅ♪」
秋「くっころ!」
8「まぁでもハチ子としては、そういう目で見てもらったほうが嬉しいのです。ハチ子を、どんどん求めてくださいね♪」
秋「お……おぅ」
鈴&ラ「(やっぱり強敵だ……)」
8「ちなみにハチ子は、もっとこういう話で引っ張るのかと思ってました」
麻「あぁ〜。なんか似た展開にしかならないのと、早く他のヒロインを出すために、こういう話は割愛して、時間だけを進めたらしいわよ。そういう話は今回みたいに、外伝として書き足せるしね」
鈴「まぁ書いても、ほとんど私へのセクハラでしょ?」
秋「さーせん……」
鈴「そういえば七夢さんって、人気はあったのにあんまり出番なかったよね」
麻「仕方ないわよ。私はシステム管理の仕事もあるし、ちょくちょく現実に戻らなきゃだし」
ラ「だんだん、ロールも雑になってたヨナ?」
麻「仕方ないでしょ。中身はいい歳した大人なんだし。しかも私は全てを知ってるんだから、ボロが出ちゃうかもでしょ?」
秋「いや、出てたよな?」
麻「うっさいわね。だから私は最初から一歩引いて、彩羽を見守るポジションでいたはずよ?」
ラ「ま〜たしかにナ〜。あと二人とも、戦闘は極力避けてたヨナ?」
鈴「それは……感覚共有してなくても100%安全とは言い切れないから、避けるように言われてたの。普通に怖いし」
秋「あぁ……じゃあ、セブンもそうだったのか。全部を知っているからこそ、頻繁には出てこれなかったんだな?」
麻「そうね。しかも彼はフラジャイルだから……その気になれば、あなたを強引に連れて帰れるわ。彼の出番が増えるとね……自然と話が終わってしまうのよ」
鈴「しかも、七夢さんとは会えないしね」
麻「そう。私と彼が顔を合わる=話が終わる展開になっていく、っていう決まりが最初からあったからね。だから物語の終盤で、初めて顔を合わせたのよ」
秋「その辺を踏まえて、彩羽は妹扱いされてきた、本当のことを言えない罪悪感背負ったヒロイン。七夢さんは、中身はキャリアウーマンで、彩羽の姉さん役として見守ってた管理者。セブンは、七夢さんだけを目的にやってきた男。ハチ子は記憶喪失で、実は俺と一緒に隠密ゲーやってた女性だったってわけか」
8「わかりやすく言語化しない、結末を知ってから読み返すことにより、見えてくる伏線ってやつですね」
秋「そう言う意味でも、漫画はいい復習になるな」
ラ「おい、アホカゲ。オレを入れないの、酷すぎるダロ」
秋「お前、まだ出番ないじゃん。ていうか、こないだ友情出演してたけどな。あん時、なにしてたんだ? まだ俺を探しに来てた、ってぇわけじゃないよな?」
ラ「あれは……」
麻「はい、再生」
秋「?」
ラ「あっ!」
第97部分「鈴屋さんと白毛のアルフィーっ!〈1〉」より抜粋
「いやぁ〜〜男とディープなキスとかひっさびさぁ〜っ」
第132部分「鈴屋さんと大英雄っ!〈7〉」より抜粋
「んあぁ? お前さんは、娼婦じゃないだろう? そもそもお前さん、男との経験はまだ……」
ラ「や、ヤメロ!」
麻「あらあらあら〜、女ばっかりの部隊で、あなたは何をしてたのかしらぁ?」
秋「まぢか。まぢなのか」
ラ「ち、違うゾ! 男が怖かっただけで男に興味がないとかじゃなく……じゃなくて、女同士のが気持ち……ちがぁーぅ!」
8「わかりやすく言語化しない、結末を知ってから読み返すことにより、見えてくる伏線ってやつですね」
秋「こんな地雷みたいな伏線、怖すぎる……」




