藤枝 卜伝(8)
「はいは〜い、あとはバカに任せて解散、かいさ〜ん」
「ちっ、つまんねぇオチだゼ」
「あーにぃの助っ人って、ほんと雌ばっか」
一斉に俺を罵る三人。
俺が何をしたというのか、本気で問いたい。
「あれ、姉御ぅ。帰っちゃうんスか?」
「アタシら、忙しいんよ〜。あんたは、あーちゃんをしっかり手伝うんよ?」
手をひらひらとさせるアルフィーを見て、リーンがポンと手を打つ。
「二人きりになれるよう、気ぃきかしてくれたんスね!」
ピタリとアルフィーの手が止まる。
「ほぅ。誰がぁ、アンタなんかにぃ、気ぃきかすんよぅ?」
「だって、そういうことじゃないスか。実際、オレとアークさんは二人きりになるんだし」
「ほぅ……ほぅ〜ほぅ〜……ほっほぅ〜。アンタぁ、あーちゃんに何かしたらぁ……」
すぅと目を細めるアルフィー。
いつも笑顔のアルフィーなだけに、すげぇ怖い。
「なに言ってんスか。男は寝取ったもの勝ち、がラット・シーのルールじゃないスか」
「うっ……イヤ、そうダケド」
「オレは、このチャンスを逃さないッスよ。ぜったい・ガッツリ・朝まで抱かれてみせるッス」
「ア、朝までダカレテッテ、オマエナ……」
リーンの露骨な発言に、耳まで真赤にするアルフィー。
まぁ、中身はラフレシアだからな。
普段は大胆かつ積極的なラフレシアも、実は男性経験が乏しいようで、こういう露骨なエロ話は苦手なのである。
たぶん彩羽のほうが、大人な対応をできるだろう。
ここは俺が、紳士的に……
「あー君」
「へっ?」
あまりに懐かしい呼び名に、間抜けな返事をしてしまう。
「つい流されて〜とか、ここは現実世界とは違うから〜とか、そういうの私は許さないからね?」
「は、はぃ」
「ヌッころすよ?」
「は……はぃぃぃぃ」
あまりの怖さに、身が縮んでしまう。
なんという圧なのだ。
「まったく。あー君の相手はもう決まってるんだから、しっかりしてよね」
「あ、相手……そうですよね」
俺が申し訳無さそうに頭を下げると、鈴屋さんが頭をわしゃっと掴んでくる。
まるでグルーミングをされているようだ。
「ほんと、鈍感」
鈴屋さんは呆れた表情を浮かべると、俺の頭を掻くのをやめ、光の扉へと消えていった。
その様子を眺めていた七夢さんとアルフィーも、やはり呆れた表情のまま出ていってしまう。
「えーと……で、オレは何をすればいいんスか?」
「あ、あぁ。そうだな」
俺はぽつんと残されたリーンに対し斑鳩がどんな場所なのか、簡単に説明することにした。




