鈴屋さんと、パリピで水着でBBQ!(4)
天元突破!鈴屋さん!
俺がラット・シーの海上デッキに到着した時には、既にBBQ大会は始まっていた。
体育館ほどの広さがあるデッキには、南無子が用意したのであろうBBQグリルがいくつも備え付けられていて、みな思い思いに肉や魚を焼いている。
あれだけのグリル一式を用意した南無子も凄いが、それを一人で運んだ鈴屋さんも凄い。
一体どんな手を使ったのか、あとでこっそり聞いてみよう。
よく見ると棒立ち状態のリーンのフルプレートから煙が出ているのだが、もしかして燻製器にしているのだろうか。
おそらくアルフィーなのだろうが、なんて酷いことを思いつくのだ。
「おぉ、酒がきたぜ!」
金髪・海パン・小麦肌のチャラ男ことグレイが、俺を見つけるなり声を上げる。
お前はもう完璧に、この光景に溶け込んでいるな。
ファンタジーな世界にもこういうパリピ野郎はいるんだなと、感心してしまう。
「アークさみゃ!」
夏がよく似合う小麦肌の“キャットテイル”シメオネが、イカ焼きの二刀流で俺のもとに駆け寄ってくる。
「どうにゃ、シメオネの水着!」
「おっ……」
シメオネはもともと踊り子でもあり、アラビアンな際どいビキニでよく踊っていたから、今さら水着姿で驚くことも……って、うぉい!
「お前、なにそれ!」
「すくーる水着っていうらしいにゃ!」
よりにもよってスクール水着を選ぶとか、どういうセンスしてるんだ。
完全に絶滅危惧種じゃないか。
しかも名前が書いてあるんだが……『とら』ってなんだよ。
「でもこれ、焼け跡がくっきりつくにゃ……」
シメオネが無防備に水着を肩口を引っ張って、ぐいと下にズラす。
そこにはアルフィーを凌ぐギガ乳と、小麦色の肌と白い肌のコントラストが……なにこれ、どこの性癖に向けて攻撃してるの?
わざとなの?
バカなの?
「しょぅねぇん。あんまり私の可愛い妹を、そんな目で見ないでほしいものだなぁ〜」
声の主は最強の暗殺者、フェリシモの姉さんだ。
姉さんの水着は……なんというかハイレグレオタードで、極限まで布面積を削ぎ落としたような感じの、目のやり場に困るやつである。
あとついでに、ほとんどこぼれてるテラ乳が凶悪だ。
ナイ乳の鈴屋さんが、ちょっとずつ距離をとっていくのが悲しい。
「あぁ〜鈴やん、いたいた。こっちでサラマンダー呼んでぇよ。火ぃつけてほしいん」
「なんで、私が……」
「あとフェンリル呼んでぇよ。飲み物も冷やしてほしいん」
「なんで、私がっ!」
鈴屋さんが反論しつつも、俺にジト目を向けてくる。
「絶対こうなると思ってたの!」
悲しい叫びとともに、次々と精霊を召喚していく鈴屋さん。
サラマンダーで肉を焼き、フェンリルで飲み物を冷やし、ウンディーネで水打ちをし、シルフで涼やかな風を生む。
まさに、次々と奇跡を起こす女神である。
なんて便利なのだ。
「アーク殿、野菜も食べなきゃだめですよ」
鈴屋さんが連れて行かれたところを確認してから、ハチ子が現れる。
ハチ子の水着は、黄色の花柄ビキニだ。
汚れなきハチ子が、あまりに可憐で直視できない。
「ハチ子さん。なんか、けっこう焼けた?」
見れば結構な小麦色である。
色白なのに、めずらしい。
「はい、焼け跡もくっきりです」
そう言って腕を見せてくる。
なぜ腕なのかと思って見てみると、何か文字のようなものが書いてあった。
「なにそれ、文字?」
「はい、南無子殿に貼られました。クッキリ文字になりました」
「祝100万PV……どういう意味?」
「さぁ?」
首をかしげるハチ子。
なんでこんな跡を残させたのか、本人も知らされていないらしい。
「お祝いよ」
「うぉわ、南無子! いつの間に!」
「さっきからいたわよ」
両腕を組んで仁王立ちをしている南無子は、真っ赤なビキニ姿だ。
大人の女性が着そうデザインで、意外に攻めている。
南無子はパーティの様子を眺めて、満足げに頷く。
「お試しで公開した物語が結構読まれてたから、それなりの売上が見込めそうなのよね〜」
「何を言ってるのか、さっぱりわからんのだが」
「わからないように話してるんだから、当然じゃない」
だからなぜ、ドヤ顔なのだ。
けっきょく細かいことは説明しない、いつものやつか。
「あぁ、アーク。あんたも貢献してるからお祝いをあげるわ。何がほしい?」
「そんな急に言われても……」
と言いつつ、なんとなく野菜の入った籠を運ぶハチ子を見つめる。
「ふぅん。いいわ。じゃぁハッピーハプニング、かもん!」
南無子が指をパチンと鳴らして、ハチ子を指差す。
するとなぜかハチ子の水着の、背中の結び目がするりとほどけ……
「えっ……きゃ、キャー!」
「おぉぉぉ、なにそのマジック!」
「ダメです、見ないでください!」
野菜を抱きかかえてしゃがみ込むハチ子に、ジト目の鈴屋さん。
肉を食うアルフィーに、煙を出すリーンの鎧。
不敵に笑う南無子に、スクール水着で踊るシメオネ。
なんて平和な日常だ。
俺たちの夏は、いま始まったのだ!
てなわけで100万PV突破しました。
いっぱい読まれて有難いです。
 




