表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【原作小説版・完結済】ネカマの鈴屋さん【コミカライズ版・販売中】  作者: Ni:
【ネカマの鈴屋さん2〜夢現の転生編〜】
323/504

長月白露〈8〉

秋の夜長にラブコメをどうぞ

「どう? どう? 美しいでしょ?」

 やたらとはしゃぐ南無子、改め、七夢子。

 ツインテールに絶対領域で、中身は十五歳の女の子だと嘘をついていた頃が、今となっては懐かしい。

 実際は最近若い彼氏ができた二十五歳の女性なんだから、なんだか複雑な心境だ。


「この世界にメガネなんてあるのか?」

「ないわよ。だから作ったんだし」

「あぁ〜、乱歩の趣味か」

 七夢子がウッと口をへの字にし、耳の先まで赤く染め上げていく。

 わかりやすくて助かる。


「その花魁的キャラも、乱歩の趣味なわけ?」

「そっそんな……きっ、着物を見てみたいって彼が……言うから」

 消え入りそうな声で答える。

 わかりやすくて助かる。


「えっ、なに。君たち二人はVRの世界で、そういうプレイを致すわけですか?」

「しっ……ない……からぁ」

 わかりやすくて助かる。


「んで、何しに来たの? ハチ子さんを見つける方法でも思いついたの?」

「それは無理よ。紐付け出来てないドリフターを見つけることなんて、できないわ。そもそも別のアバターに入り込む可能性だってあるんだし」

「そうなの?」

「ほとんどのケースが痕跡なしでキャラごと移動(コンバート)するんだけど、理論上は“泡沫の夢”をハッキングすることも可能なはずよ」


 もしそうなったら他の探し方も考えねばならないが、今は刀華から仕入れた『幻影剣の綾女』が一番有力な情報だろう。


「なんかよ、妖魔軍の将軍とやらに『幻影剣の綾女』ってのがいるらしいんだけど」

「綾女?」

「戦い方の特徴がさ、まんま残像のシミターと魔法のワンピース(フロム・ダークネス)なんだよね」


 七夢子がキセルをトントンとし、何かを調べ始める。

 おそらく彼女の目の前には、コンソールが映し出されているのだろう。

 現実世界で言うところの、ARを起動している状態だ。

 こうして見ると、彼女はたしかにこの世界を管理する者=ゲームマスターである。


「うぅん、グランドクエストに関係するキャラなのかしら。妖魔軍とかいう勢力については、羅喉(ラーフ)のシナリオ製作者にしか触れられないようになってるみたいね。閲覧することすらできないわ」

「なんだそれ。何とかならないのか?」

「セブン・ドリームス・プロジェクトで買い取ったゲームのシナリオ製作者ってね、自分の作品が世に出る前に奪われたって考える人が多くて、クエストに複雑なロックを掛けたりするのよ。おかげで管理者権限を持っていても、弾かれたりするのよねぇ」

「なんだよ、ぜんぜん駄目じゃん。何しに来たんだよ」

「ちょ、ひどくないっ!?」


 肝心なところで役に立たないあたり、相変わらずの七夢子である。

 やはりハチ子については、自分で探すしかないのだろう。


「そもそも最果ての斑鳩(このせかい)を使う予定がなかったから、私もまったく調べてないのよ。これからここを拠点にして、色々と調べるつもりだからね♪」

「ここを拠点にって……なんで遊郭なわけ?」

「もともと遊郭は、プレイヤーが入れない区画なのよ。だから、この中の様子も記録されてないの。きっと羅喉(ラーフ)は、全年齢対象にしたかったんでしょうね」

「記録が残らないから、管理者権限を持つ七夢子が好き勝手出来るってわけだ」

「そういうこと〜ってわけでぇ、私とは各町にある遊郭で会えるわよ♪」

 現実世界との連絡手段として、ここを使えということか。

 たしかに良い案だが、そんなにチョクチョク遊郭へと足を運んでいたら、いつか刀華に白い目で見られそうだ。

 ここに来るのは、外部からの助けが必要な時だけにしたほうがいいだろう。

「この私が来たからには、もう大丈夫。これからは大船に乗ったつもりで……」

 七夢子がドヤ顔でふんぞり返った、その時だ。


『なるほど、なるほどナ〜♪』


 また唐突に、俺の背後から声が聞こえた。

 振り向くとそこには、直視できないほど眩しい『光の扉』が生まれていた。


『プレイヤー侵入制限区域とは考えたな〜』


 光の中から色白な手が、にゅっと現れる。


『たしかにここなら、記録には残らないナ。気兼ねなくコンバートできるゼ』


 今度は白い足が、にゅっと伸びてきた。


七夢(アンタ)のことだから、きっとまた管理者権限の効いたプライベートエリアを作ると思ってたんだ。オレはずっと、この時を待ってたんだゼ』


 最後に現れたのは、白い髪だ。

 俺はその顔に見覚えがあった。

 いや、忘れるはずがない。


「なによ、アンタ……不躾(ぶしつけ)な客は、ご退場願うわ」


 七夢子がキセルをぽんと叩く。

 しかし悲しいかな、何も起きない。

 白毛の女は、ニヤニヤと笑うばかりだ。


「こ、このっ、強制ログアウトしろっ!」


 今度は焦りの表情を浮かべながら、何度もキセルを振る。

 が、結果は同じだ。

 それはまるで魔法を使えなくなった魔法使いが、詠唱のポーズだけをむなしく取っているかのようだった。


『ざまぁ、ざまぁ〜ダナ♪ 管理者権限ごとハッキングさせてもらったぜ♪』


 わなわなと震える七夢子に対して、白毛の女は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


『お邪魔な管理者には、ご退場願おうか。再見(ツァイチェン)♪』


 次の瞬間、七夢子の姿がフッと消えてしまう。


「待たせたな、アキカゲ!」


 そこに現れたのは、くノ一姿のアルフィーだったのだ。


挿絵(By みてみん)

安定の七夢子さん、安定の早期退場です(笑


挿絵(By みてみん)


絵師であり執筆活動も行っている『rosine』様の立ち絵も、許可をえて編集。

自身でツイッターもされてます。気になる方はチェックを!


https://twitter.com/rosine753

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ