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【原作小説版・完結済】ネカマの鈴屋さん【コミカライズ版・販売中】  作者: Ni:
鈴屋さんとハチ子さん!

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28/510

鈴屋さんとKBFっ!〈前編〉

導入部分です。

休憩時に軽いお話をどうぞ。

「あ・あ・く・ど・の!」


 天下の往来で、わきゃっと俺の右腕にしがみついているのはハチ子である。

 彼女はセブンがいないのをいい事に、あの艶っぽい格好のまま朝からずっとこの調子だ。

 いつものクールな俺なら紳士的な対応で華麗に受け流すのだが、今の俺はすっかりハチ子に甘くなってしまっていた。

 ……あんな話の後だ……そりゃあ優しく接したくなるだろうよ。

 そんなふうに考えてしまう俺を、いったい誰が責められよう。


「あー君、あー君」


 逆側の腕では、水色の髪をさらさらと揺らすエルフ女子が俺を見上げていた。


「この状況は、どういうことなのかな?」


 俺を責められる人物が、ここにいた。


「…………」


 俺は終始無言だ。

 話したら負けだ、と本能が告げていた。

 今日のハチ子は昼間だろうが、ほろ酔いモードの口調で甘えてくる。

 あの凛とした姿はどこへやらだ。

 俺はそれを強く拒否できるわけもなく、なすがままの人形のようになっていた。

 鈴屋さんがむすーっとしてしまうのも、仕方のないことだろう。


「あー君、エロゲの主人公にでもなったのかな? それとも、ハーレム気取りなのかな?」

「…………」

「……調子に乗ってるのかな?」


 あんまりカナカナ言われると、どこかのナタを振り回す女みたいで怖いです。


「アーク殿~、両手に華ですなぁ」

「ほら、ハチ子さんは前向きだよ?」

「……ふぅん。じゃあ、私が悪いのかな?」


 ものすごい爽やかな笑顔で、それは怖いです。


「鈴屋は何が不満なのですか~。アーク殿がモテるのは、いいことじゃないですか?」

「……あんまり、よくないかな」

「自分の彼氏がモテるのって、嬉しくないのですか?」

「……嬉しいけど……」


 ……お……鈴屋さんが言い負けた。

 ほんとに、ハチ子ってすごいな。


「ハチ子は、鈴屋を想うアーク殿ごと好いておりますよ~」

「んなっ……!」


 鈴屋さんは、どう怒っていいのかわからずにいるようだ。

 滅多に見れない混乱っぷりに、俺もついつい傍観者モードに入ってしまう。


「アーク殿は鈴屋のことを、一番に想っているのでしょう?」

「うん、すごく」

「ぁ……ちょっ……あー君!」

「鈴屋は、幸せ者ですなぁ」


 そう言っていっそうしがみついてくるハチ子さんに、鈴屋さんはムグッと言葉を詰まらせる。

 やがて……


「……ぶよ」


 何かをつぶやく鈴屋さん。


「……ん?」

「勝負よ! あー君をかけて!」


 なにを言い出すの、鈴屋さん、ご乱心? 


「鈴屋さん、そういうのって男がやるもんじゃ……」

「あー君は黙ってて! これは避けては通れない道なの!」


 鈴屋さん、完全に変な方向にスイッチ入ってる。


「あらぁ~。私と、そんな勝負していいんですかぁ? そういうことなら、私……勝っちゃいますよ?」

「きれいさっぱり、あきらめさせてあげる!」


 2人は勝手に盛り上がっていて、俺の意思など露ほども気にしていないようだ。

 人形を運ぶがごとく、KBFへと引きずり始める。

 俺はと言うと、すでに「天気がいいなぁ」と現実逃避モードに入っていた。

【今回の注釈】

・かな……うたわれるもののクオンではなく、竜宮レナの方ですごめんなさい。鈴屋さんは時折かなかな口調になります

・KBF……決戦のバトルフィールドの略。「ここは人が多い、広い場所へ移動すっぞ!」的な例のアレ

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