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鈴屋さんと熊ネズミ!〈前編〉

M1見ましたか?

自分は和牛、ミキ、トロサーモンが好きだったので今年の決勝は超嬉しかったです。

面白かったなぁ。よくあんなの考えられるなぁ。

ちなみに去年、今年と自分は和牛が一番でしたね。


そんな大笑いをした日曜深夜に、ウルトラライトなノベル鈴屋さんでほっこりしてみては?

気持ちよく眠れるかも、です。

「アーク殿、右手に!」


 俺は薄暗い下水の十字路で、ハチ子の言葉より早く愛用のダガーを投げる。

 ダガーは鋭い光の線となり、熊のように巨大なネズミの肩口に深々と刺さった。

 グアアアアアアアアアアッ!と、熊ネズミが激昂して俺めがけて突進してくる。


「タゲ取りはしたぜ、ハチ子さん!」

「了解です、アークん殿っ!」


 ハチ子が俺と熊ネズミの間に割って入ると、数度シミターを振った。

 シミターは幾筋かの青い残像を残し、斬撃の結界が完成する。

 熊ネズミが“置かれた”青い剣線に触れると、触れた箇所の肉がスッパリと裂け血しぶきが舞う。

 たまらず、熊ネズミが足を止めた。

 俺はその瞬間を見逃さず、トリガーを発動させて熊ネズミの肩口へテレポートし、すかさずニンジャ刀を抜いて喉元を斬りつけた。

 しかし生命力の強い熊ネズミは、すぐには絶命しない。

 ぐわっと牙をむき窮鼠の一撃を俺に向ける……が、今度はハチ子が熊ネズミの足を斬り崩しそれを阻む。

 熊ネズミはそのまま大きな音を立ててその場に倒れ、絶命してしまった。

 俺とハチ子の鮮やかな連携で15匹目の熊ネズミを屠り、ハイタッチで互いの健闘を称える。


「よい戦術でした、アーク殿♪」

「いやいや、ハチ子さんのサポートのおかげだよ」


 言いながら凛とした表情で小さく笑顔を見せるハチ子に視線を移し……そこで俺はあることに気づいた。

 ハチ子の後方……視線の奥で、明らかに不機嫌な表情を浮かべる鈴屋さんと南無子がいた。


 ……空気が悪い。ここが下水道だということを差し引いてもだ……


 俺たちは今、ドブ侯爵の依頼で下水道内に増えてしまった熊ネズミの討伐を行っていた。

 依頼を受けたのは南無子で、俺と鈴屋さんはその手伝い、ハチ子は俺の付属品のようについてきている。

 ちなみに汚水道にも熊ネズミ討伐依頼はあったが、それは鈴屋さんの「おねがい、行ってきて(ハート)」の一言で、グレイ達が行くことになっている。

 ……お気の毒に。


「あんた達、ほんとに息がぴったりなのねぇ」


 南無子が目を細めながら、含みを持たせて言う。


「まるで、旧知の仲みたいじゃない?」

「……いや、こんな物騒な女の子、知らないよ」

「女の子? ……女のこぅ~♪」


 なぜか喜ぶハチ子。

 尻尾でも振っていそうで、本当にだんだん犬に見えてくる。


 ……ハチ子のことは本当に知らない。でも、俺はあのシミターを知っている。


 理由は簡単、その昔ゲーム内の戦争イベで、さんざん対戦したからだ。

 あの頃の俺は、赤影のマフラーとテレポートダガーの力で、敵陣深く切り込み内部から攪乱する戦法を得意としていた。

 しかし対人イベで活躍すればするほど、敵国のエースが迎え撃つようになってくる。

 その中でもとびきり強かったのが、残像のシミターの所有者である『乱歩』だった。

 乱歩は青月の国『オーファス』に所属している、エースパーティのリーダーだった。

 これがまた、でたらめに強い。

 なにせ、イベ1位賞品を持つような廃プレイヤーだ。

 俺との対戦だって、街中で実況されるレベルだったからな。


 ……まぁ、ほとんど勝てなかったけどさ……


「それにしたって……私たち、ほとんど何もしてないわよ?」

「あー君が器用なだけだよ。うまくハチ子さんに合わせて戦ってるの……でしょ?」


 鈴屋さんの細い眉が、ハの字になっていく。

 その複雑な表情に対し、なんて答えれば正解なの?


「いやいやぁ、ただ単純にハチ子と相性がいいだけですよね♪」


 またそうやって、挑発する。

 まぁでも、ハチ子は俺のダガーの特性、戦い方をよく理解している。

 俺も、残像のシミターの戦い方を知っているし……

 おのずとお互い何ができるのか、どうすれば活きるのかも理解できたわけで。

 結果、俺とハチ子の連携はどんどんと研ぎ澄まされてきているのは事実だった。


「ハチ子さんは、守りながら攻撃するのが得意で、俺は超速攻の一撃離脱型だからかな……戦術が噛み合うんだよね」

「それを相性って言うんですよ、アーク殿♪」


 ……あ……まぁ、そうなってしまうのか……

 鈴屋さんは、ますます口を小さいへの字にしていく。


「あー君、ちょっと……」


 俺の返事を待たずにマフラーをぐいぐいと引っ張り、通路の奥へと引きづられる。

 なんだか犬になった気分だ。

 なるほど、悪くない。


「……なんでしょうか、鈴屋様……」

「なんであの人、連れてくるの?」


 おぉ……なんか女子っぽい台詞だ。

 ……なんでって言われもな……


「暇だから手伝いますって言われたからさ」

「……あー君……あの人、なんか怪しいの……わかってるんでしょ?」


 それは、プレイヤーかもって意味だよな。


「うん。機会を見て、色々聞こうと思ってるんだけど……」


 ならいいんだけど……と、鈴屋さんは考える素振りを見せる。

 しばらく待っていると、意を決したように話し始めた。


「あのね、あー君……」


 姿勢を正して、真っすぐと目を向けてくる。


「今から鈴屋は、少しつまらない……やきもちを焼きます」


 なにそのかしこまった可愛い宣言……悶えてしまいそうなんですけど……


「ハチ子さん……戦闘中に、さりげなくアークん殿って呼んだでしょ?」

「へ? ……そうだっけ?」

「呼んだの!」

「そ、そうなの? たまたまじゃない?」

「……違うもん。アレ、絶対わざとだもん」


 むぅ~と唸る。

 ハチ子さん、よくわからないところあるしなぁ。


「ああいうの、ちょっとヤなの……あー君って呼ぶのは私だけだから……もし次呼ばれたら、あー君からはっきり言ってほしいの」


 真っ赤になってうつむく。

 なんてかわいいのでしょう。

 いつもの鈴屋さんなら、自分で言ってしまいそうなんだけど……やっぱりハチ子さんのこと、苦手なんだな。


「オーライ、マイハニー。しっかり心得とくぜ!……って、いてぇ……いてぇって!」


 思った通り、頬を思い切りつねられた。

 そのほうが鈴屋さんっぽくて安心する。


「……もう。すぐそうやって、調子に乗るんだから。約束したからね!」


 真っ赤になって怒る鈴屋さんに、俺はこみ上げる嬉しさを抑えきれなかった。

余談です。

鈴屋さんはいまだに性別不明ですが、そろそろ「もうどう考えても女じゃん!」と感じている頃かと思います。

その場合、もはや「ネカマの~」のタイトルの意味がないのでは…とも、お思いになることでしょう。

大丈夫、ご安心ください。ちゃんと意味あります。言うとネタバレ直結なのでもちろん言いませんが。(笑)

あとその要素が再び活かされはじめるのは116話あたりからです。

ですので、まったりとお待ちください。(笑)

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