表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/504

鈴屋さんとドワーフの国!〈4〉

四話目です。

あー君は男の子ですの回。

短いですが、気分転換にさらっとどうぞ。

「解せぬ……」

 ドワーフたちが集う酒場の目の前で、俺は首を傾げながら戦いの準備をしていた。

 話はドワーリンによってすでに広がっており、薄暗い空き地には30人ほどのドワーフの輪ができている。

 武器や魔法の装備の使用は禁止。

 素手に皮手袋だけをつけて、上半身は裸、下はズボンだけというガッチガチの格闘技スタイル。

 そりゃあ見てる側は酒の肴にいいだろうが……

「解せぬ」

 俺はもう一度つぶやいた。

 なぜに俺が殴り合いをせねばならんというのだ。

「あー君、足痛い?」

「モチのロンで超痛いです」

「……ゴメンナサイ」

 一応、本当に反省はしているのだろう。

 美少女にしゅんとする姿を見せられると、責める気など1ミリも起きないのだから不思議だ。

 これで相手がグレイなら、気弾のひとつでも叩き込んでいただろう。

「まぁ、シメオネ師匠にマンツーマンのトレーニングは受けてるからね。快気功じゃ骨までは治せないけど、腫れは少し引いたし軽くやり合うくらいなら……」

「うん…………勝てそう?」

「どうだろうなぁ。そのへんのゴロツキ相手よりは、よっぽど強くなったとは思うけど……相手が格闘のプロとなるとちょっとわからないな。それこそ、この足を狙って攻撃とかされたら、ちょっとやばいかもな」

 そこまで言って、鈴屋さんの目に涙が溜まっていることにきづく。

 ……俺相手に、そこまで思いつめる必要もないだろうに……

「大丈夫だよ。海竜に比べたらなんてことないさ」

 ぽんっと鈴屋さんの頭に手を置き、軽く笑ってみせる。

 実際シメオネより強いなんてことはないだろうし、そう考えれば、なんとかなるような気はした。

「あー君……あのね」

「ん?」

「……………負けてほしく……ない」

 意外な言葉だった。

 俺はてっきり「負けてもいいから無事に帰ってきて」的な言葉をかけられると思っていたのだ。

「勝ってほしいってこと?」

「……………うん」

 その小さな返事に、俺の体の中心が熱くなる感じがした。

 何故だろう。

 心配されるよりも、100倍そっちのほうがいいと思える。

「任せろ……燃えてきた」

 上着を脱ぎ鈴屋さんに手渡すと、ドワーフたちがつくる輪の中央へと進む。

 そこには対戦相手であろう若いドワーフが、同じように上半身裸で立っていた。

 真っ赤になって隆起する筋肉は、人のそれとはまるで別物だ。

 首も腕も丸太のように太く、身長が低くともスーパーヘヴィ級といえよう。

 それでも俺の心は、一歩たりとも怯まない。

「人族と戦うのは初めてなんだが、そんなひょろい身体で大丈夫かぁ?」

 茶ひげのドワーフが、ニヤつきながら話しかけてくる。

 俺の体躯を見て、すでに勝ったと思っているのだろう。

 失礼な奴だ。

 筋肉なんてものは、あればいいってものではない。俺はマッチョな筋肉だるまよりも、必要ギリギリまで絞られた筋肉のが好きなんだ。

 破壊力抜群な鉄のハンマーより、研ぎ澄まされた日本刀に美学を感じるのだ。

「ほっとけ。それよりもルールの確認をしたいんだけど……魔法の類は駄目なんだよな?」

「もちろんじゃ」

 変わりにギルが答える。どうやら審判をするようだ。

 ……魔法の類……つまりニンジャスキルの術式系は駄目で、体術系はオーケーということか。

「じゃぁ、気闘法はいいんだよな?」

「気闘法を使えるのか? あれは体術じゃからかまわんが……おんし……あんな、よほど極めんと使い物にならん技、よう習得しおったな」

「そうかい? けっこう便利だぜ」

「所詮は素手じゃ。斧で殴ったほうが早いわい」

 たしかに、その通りだ。

 長い時間をかけて気闘法を習得したところで『剣と鎧を装備した普通の冒険者』には敵わない。

 そのせいかゲーム内でも『死にスキル』や『趣味スキル』、果ては『紙装甲』とまで揶揄されてきていた。

 だがしかし……俺は、あのスキルを愚直なまでに極めた大馬鹿者を知っている。

 そして個が極めた究極の鉄槌を、この目でしっかりと見ている。

 あれは大器晩成型の上級者向けスキルだ。

「まぁ、見せてやるさ」

「……ふむ……では、そろそろ始めようかの。“暁の拳闘士”ジェズ、“竜殺し”アーク、前へ出ぇい!」

 ウォォォォと野太い歓声が湧き上がる。

 自然と心拍数が上がり、体中に熱い血液が駆け巡っていく。

 アドレナリンが出まくっているのか、もはや足の痛みは感じていない。だからといって、軽々しくステップを踏むのは間違いだろう。

 俺は静かに左手を相手の顎の位置に向け、足を肩幅に開いて左足を少し前に出す。

「人族、秒殺してやるよ」

 ジェズが大きく股を開き、両拳を顎の前にもっていく。

 ドワーフは足が遅い。

 そのかわり力が強く、でたらめに打たれ強い。

 ゴリ押しで超接近戦のインファイトに持ち込んで、打ち合いをするつもりなんだろう。

 ……それならステップを踏みながら距離をとって、シメオネ直伝の足技で戦えば楽そうなんだが……生憎と俺の左足は骨折をしていて、ステップを踏めない。

 ……こいつは、ちょいと痛いな。

「あー君……」

 いつの間にか、鈴屋さんが輪の最前線まできていた。

 いよいよ心配のしすぎで、顔色が真っ青になっている。

 なんだか、見ているこっちが可哀想になってくる。

「勝ってほしいんだろ?」

「…………うん……だけど……」

「カカカ、麗しの我が君に“圧勝”ってのをプレゼントしてやるよ」

 不敵に笑い、ジェズに指を立てて挑発をする。

「……言ったな、人族……」

「あぁ、言ったぞ、ドワーフ。後悔したくなかったら、最初から全力でこいよ」

 さらに煽ると、ジェズの顔面がみるみると赤くなり殺気立っていく。

 いいぞ、どんどん熱くなれ。お前に格闘ゲームのいろはってのをレクチャーしてやる。

「始めぇぃ!」

 ギルが両手をクロスして開戦の狼煙を上げ、ついに試合は始まった。

あー君は格ゲーマニアです。なので、装備なしの対人戦に燃えているようです。(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 話が進むごとに進行が遅くなっているので読み甲斐がなくなっている
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ