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鈴屋さんと大英雄っ!〈11〉

ヴィンランドサガの出来栄えが素晴らしいです。あのシチュエーションは青年期だけですが、やはり面白いですね。

さて鈴屋さんのほうは、いよいよダライアスとの戦いが本格的なものとなってきます。

ワンドリンク片手に、お楽しみいただければ幸いです。


「でかしたぞ、小僧ども! よぅしお前ら、バリスタの準備じゃぁ!」

 ギルの一声で、野太い歓声が地響きのように起きた。

 ダライアスは導師ラナのチートじみた攻撃により、動きが鈍っている。まさに今が好機だ。

「すまね、ハチ子さん。ラナを頼む。俺は先に港に行く」

 ここから港までは距離があるため、連続トリガーを使うしかない。そうなると、ハチ子と交互にトリガーを使う技は使用できない。

 それにラナを置いていくわけにも、いかないだろう。

 ハチ子もそれをすぐに理解し、深く頷いて応えてくれる。

「ラナは少しでも精神力の回復を! ギルのおっさんは港までなるべく早く、安全にもどってくれ!」

「はん、誰に言っとるんじゃ、若造!」

 俺はカカカと笑い、懐から小さく切り取られた羊皮紙を取り出した。羊皮紙にはラナが傷を負ったことと、これからバリスタを放つことを記し、二つ折りにして空に投げる。

 すると羊皮紙は、滑るようにして空中を飛んでいった。

 これで、レビテーションリングを持つアルフィーのもとに、あの羊皮紙は届くはずだ。

 レビテーションリングは、もともとはアルフィーたち『窮鼠の傭兵団第三部隊』の副業のために手に入れたものだが、大部隊による戦場でこのメールシステムはとても役に立つ。

「頼んだぜ!」

 俺はギルたちに向けてそう叫ぶと、港へとダガーを投げつけた。

 数回の連続トリガーで港まで戻ると、そのままバリスタの方へと駆け込む。 

 そこでは、整備を終わらせた数人のドワーフが、待ちわびた表情を浮かべていた。どいつもこいつも髭の生えた酒樽にしか見えず、もはやギルと見分けがつかない。

「遅いぞぃっ、片目の!」

「これでも超特急だよ。バリスタの準備は?」

「当然できとるわいっ!」

 怒鳴るように応えるドワーフたちに、思わず苦笑する。

 ああ、そうとも。彼らの仕事はいつだって完璧だ。約束した仕事を完遂するのは、彼らドワーフの職人気質からきているのだろう。よっぽどあの『騎士英雄』様より信頼できるぜ。

 据え置き式の大型弩砲(バリスタ)は、俺の知る限り、単純物理攻撃の中で最強の武器だ。持ち運びが困難な攻城兵器ゆえに、冒険で使用されることは皆無だが、もしこれが100台もあれば、神々の戦争を戦い抜いたと謳われるエルダードラゴンですら屠れるだろう。

「作戦通り、行くぞ!」

 用意されたバリスタは6台。そのうち2台は破壊されてしまったが、もうやるしかない。

「術式…必中…」

 言葉に反応して、自分にバフがかかったことを確認する。

 そして躊躇することなく、バリスタから矢を放った。

 矢はギュルルルルルと音を鳴らしながら、鉄が編み込まれたワイヤーを猛烈な勢いで引っ張っていき、不自然な曲がり方をしながらダライアスの体に突き刺さった。

 俺はさらに次のバリスタへと移動をし、同じように矢を射出する。 

 その尽くがダライアスの胴体に命中していく。

「おおおおおおおぉぉっ」

 次々と刺さる矢に対し、港では感嘆の歓声が沸き立っていた。

 術式必中は、投擲武器の命中精度の高いニンジャにはあまり使用用途のない、いわゆる死にスキルだ。

 しかしよく考えてみたら、バリスタは投擲武器なのだ。

 つまりこの忍術を俺が使えば、どんなに適当に射っても、海上のダライアスに対して『必中』という結果が『約束』されるのである。

 術によるチートじみた効果なのだが、ニンジャスキルを知らないこの世界の住人にとっては奇跡と呼べる命中精度だろう。

 …いや、八百長すぎて、なんかごめんなさい…

「鏃にはミスリル銀を使っとるんじゃ! お前ら、なんとしても回収しろおぉぉ!」

 どこからともなくギルの怒号が轟くと、またしてもドワーフたちの野太い声が地鳴りを起こす。

 そして何十頭と繋げられた農耕馬が、一斉にワイヤーを引っ張り始めた。

「おぉ…おぉぉ…」

 思わず声を漏らしてしまう。

 海上ではダライアスが大きく体制を崩し、凍りついていた海面を砕きながら港へと引きずられ始めていた。

 いつしか手の空いたドワーフたちもワイヤーを握り、その怪力を余すことなく発揮していく。

 地上へ引きずり込める、そんな期待感が高まり誰もが声をあげていた。

「いけ……いけぇぇぇぇっ!」

 ダライアスはその巨躯を寝かせ、体制を立て直すこともできないまま、遂には港に激突してしまった。

 衝撃と轟音が鳴り響き、海水が地上へ持ち上がり、なだれ込んでくる。

「終わりじゃぁぁぁぁ!」

 その願いと期待が込められたドワーフたちの叫びは確かな力となり、ダライアスは転がるようにして海から引きずりあげられた。

 そして次の瞬間、港と海の間に大量の土が盛り上がり、巨大な堤防が瞬く間に生まれる。

 おそらくは鈴屋さんの精霊魔法だ。土の上位精霊の力を借りたのだろう。これだけでも相当な大技だ。

 これで簡易的にではあるが、退路は断たれた。

「今じゃ、ワイヤーを固定しろぉぉぉ!」

「おぉぉぉぅ!」

 ドワーフたちは堤防ができたのを見計らい、ワイヤーに楔を打ち込み始める。

 さすがは生まれたときから槌を握らせる種族だ。

 ドワーフたちの力により、みるみると巨大な楔が打ち込まれ、1分としないうちにダライアスは地上に固定されてしまった。

「作戦成功じゃぁぁぁぁぁっ!」

 再び起こる、巨大な歓声。ビリビリと体が震えるのがわかった。

 今ここに、作戦の第一段階は見事に成功したのだ。

そしていよいよ地上決戦です。

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