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鈴屋さんがいない日っ!〈1日目〉

ウルトラにライトな文量です。

気軽にさらっとお流しください。

 鈴屋さんとの生活がこのまま続けられるのか……その確証を得るためにも、この世界の真相を突き止めねばならない。

 もはや俺の中では、鈴屋さんは女なんだろうと心の何処かで決めつけていたのだが、実際のところは彼女がそのことをはっきりと明言しないので有耶無耶のままだ。

 何か言えない理由があるんだろうし、それは待っていればそのうち解決するような気がしていた。

 もし男だったら……おそるべしネカマプレイヤーとして称賛し、親友にでもなってやるさ。

 と、まぁ……俺は概ね、大雑把かつ脳天気な考えでいた。


「……で、俺はこれからこの世界の謎を明かそうと、決意も新たに燃えていたはずなのに……なぜにパンを焼いてるのか、そこんとこ説明プリーズ」

「どうせ暇してんでしょ」


 歌舞伎町にいそうな筋肉髭坊主が、パンを焼く待ち時間の間に、ガツンガツンと剣を鍛える様は、一種異様な雰囲気を醸し出している。

 もういろんな意味でファンタジーだよ、あんたの場合……と心の底から突っ込んでやる。


「なぁ、せめて南無子になってくんない? モチベが上がらないんだけど」

「……あんたの、その隠そうともしない真っ直ぐなエロってどうなの……?」


 えらいジト目を、投げかけてくる。


「裏表がないって言ってくれ、せめて」

「……鈴ちゃん、よくついていけるなぁ……」


 そんな、しみじみと言わないでほしいものだ。

 他の誰よりも、俺がそう思っているんだから。


「ねぇ、アーク……すっごい単純な疑問があるんだけど……」

「おうよ」

「……あんたさ……鈴ちゃんと最初に会った時に、“私はネカマだ”って言われたはずよね?」

「だね」

「……なのに、なんでそうなるのよ……」


 南無さんが頭を抱えてうずくまる。

 悩める15歳は見てて面白いな。


「う~ん……なんとなく? てかさ、そんなこと言い出したら、鈴屋さんにも同じこと言えんじゃん」

「鈴ちゃんはいいの。問題があるとしたら、あんたよ。まったくなんで……」

「あのさぁ~南無さん。前から、ちょくちょく思ってたんだけど……南無さんってさ、鈴屋さんを女だと知ってるかのような口ぶりだよね」

「~~~~~~~~っっ!」


 なんてわかりやすい表情を浮かべるのだ。

 この娘は本当に素直だと思う。今の皮はオッサンだけど……


「そうだ、鈴屋さんと言えば、今日見かけないんだけど……南無さん、何か聞いてない?」

「聞いてないけど……どうしたの?」

「う~ん……部屋にもいないみたいだし……何も言わずに朝からいないって初めてだからさ」


 南無さんが、少し考える素振りを見せる。


「ん~~……ちょっと思い当たるとこ探してみるけど……」

「そうか……ありがとよ~。まぁ俺も、午後には本腰入れて探してみるよ」


 と、言いつつ南無さんの「思い当たるところ」がすごく気になるが……俺も俺でいくつかあるし……ま、とりあえずまわってみるか……

 しかし俺はその日、鈴屋さんを見つけることができなかった。

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