鈴屋さんと遺跡探索っ!〈7〉
花粉かなりキテマス。
目も鼻も喉もやられてます。
かゆい目に負担をかけないでいいよう短めにしてあります。(笑)
ワンドリンク推奨、お気軽にどうぞ。
鈴屋さんたちに未踏破エリアの説明をすると、すぐに全員をトリガーで移動させることとなった。
移動した後はアルフィーの提案で、ハイドクロースを使って穴が埋まって見えるように擬装してある。これで後続が来ることもないはずだ。
さすがはアルフィー、抜け目がない。
あの話し方に惑わされがちだが、彼女はかなり頭が切れるのだ。
その後、通路の探索はすぐに終わった。
というのも、この通路は一本道で片側に扉、もう片側には小部屋があるだけだった。
小部屋には、床に魔法陣が一つ描かれているだけで他には何もない。
その魔法陣も今は機能していないようで、上に乗ろうが念じようが何の反応もない。
いずれにしろ、このパーティには月魔法使いがいないため、魔法陣の解読をする方法もなく放置することとなった。
まぁ俺のゲーム経験から予想するに、あれは転移の魔法陣だろう。このシチュエーションは定番中の定番なのだ。
……転移した部屋から、まっすぐに伸びた通路……その先に現れる、立派な彫刻が施された石の扉……
この扉の先は、ボス部屋か宝部屋で間違いないだろう。まさに往年のRPGゲームにおいて、定石通りの造りである。
俺たちはそんな重要な通路に、たまたまできた穴からチート武器を使って、侵入してしまったわけだ。
バグを利用した裏技みたいなものだろう。
「親切なゲームなら、扉の前にセーブ地点とかあるんだけどな」
「こっちの世界は、そこまで優しくないね~あー君」
「……で、アーク。この先はボス? お宝?」
ツインテールが、鎧をガチャリとならす。
「まぁ、どっちかだろうなぁ。なんにしても開けりゃわかるさ。まさに、鬼が出るか蛇が出るか…だな」
「どちらかと言えば、ハチの巣をつつくことになりそうだけど……」
「やめてよ、鈴屋さん。まだ、宝箱部屋ってオチも捨てきれないぜ?」
自分で言いつつも、何となくそれはないだろうと考えていた。
それもゲームで培った勘ってやつだ。
「んじゃあ、開けるぜ?」
扉に肩を当てて、後ろに目をやる。
「こっちはいつでもいーよ、あーちゃん」
「私が、しっかり守ってあげるわ!」
「いつでも……アーク殿」
「ボスなら私にませて。一撃で倒しちゃうんだからね、あー君!」
……頼もしい……まったくもってこの娘たちは頼もしい。
頼もしすぎて“俺いる?”状態だ。
あまり考えすぎると泣きそうになるから、俺は扉を開けるという役目に徹するとしよう。
「せいのぅ~~」
ゴツゴツとした石の扉に全身の体重を乗せて、一気に押し開ける。
そしてすぐさま、拾っておいた鉄片を部屋の中に投げ込んだ。
鉄片は甲高い音を何度か鳴らせて、床の上を跳ねていった。
そして、一瞬の静寂。
うん、罠はない……たぶん……
罠を発動させて確認するというかなり荒っぽい手法だが、こんなでもやらないよりはマシだ。
「頼んだぞ、二人とも!」
「じゃぁ、あーちゃんの期待に応えてぇ……やぁやぁ、いざ神妙に勝負、勝負ぅ~~!」
相変わらず気の抜けたアルフィーの掛け声とともに、タンク隊が部屋の中へと進軍する。
一見バカっぽいこの行動も、実はヘイト値を自分に集中させているのだ。その後に続いて入る俺たちにとって、その安心感は大きい。
部屋に入ると、索敵を兼ねて頭を右へ左へと大きく振る。
中はかなり広く、部屋全体が薄ら明るい。壁自体に何らかの魔法が施されているのだろう。
まさに、戦うための部屋だ。
「こいつはボス部屋だ!」
未だにボスを目視で確認できていないが、ゲームで養われた俺の勘が絶対にそうだと告げていた。チートルートでこの部屋に来てしまった俺たちが、果たして敵うボスなのかという不安が一瞬頭をよぎる。
「あーちゃん!」
アルフィーがサーベルの剣先を向けてくる。
俺は確認をとることもなく『術式 不知火』を使い、指先で刀身をなぞって火炎のエンチャントをかけた。
その時、ザァァァァァァァァァァッ! と、なにか大きなものが引きずられるような音がした。
「こいつぁ……」
タンク隊を挟んで目前に現れたのは、数あるファンタジーモンスターの中でも、超メジャーな存在だった。
ゲームにうとい人でも、その名前くらいは知っているだろう。
「ラミア……か?」
確認を込めてつぶやく。
体長は五メートルくらいだろう。
下半身は蛇そのもので、見るからにおぞましく凶悪そのものだ。
しかし、それに反して上半身は美しい女性の姿をしている。
艶のある金色の髪に大人びた表情、一糸まとわぬ姿は人間のソレと同じで、その妖艶さたるや魔法を使わなくとも魅了されそうだ。
「だがしかし、うちは女パーティだ!」
「……あー君、いきなりおっきい声で何言ってるの? すごく恥ずかしいんですけど……」
「てか、アークが一番危ないでしょ。外出てれば?」
「嫌だ、断固拒否する。戦わないにしても、俺は見てる」
「あー君、サイテー」
何を言う、鈴屋嬢。
俺は決して魅了されない。
俺はただ、あの一糸まとわぬ姿を少しでも長く……違う、滅多に見れないメジャーモンスターを、少しでも生で眺めていたいのだ。
「鈴屋、駆除しましょう。あれは敵です、色んな意味で」
「おっけぃ、ハチ子さん、やっちゃおう!」
『おぅ〜〜』
思わぬところで、女性陣が一致団結していく。
女性という生き物は、共通の敵を見つけてしまえば自然とまとまるものらしい。
俺がなんとかしてまとめねばと頭を痛めていたのは、無駄なことのようだった。




