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鈴屋さんと遺跡探索っ!〈5〉

花粉、きてますねぇ。

今回は、あまり描き貯められなくて短めです。

ワンドリンク片手に、気軽にどうぞ。

 俺たちは無事ゼラチナス・キューブを倒したあと、精神力を消耗した鈴屋さん、南無子、アルフィーの三人を休息させるために簡易的な拠点を確保していた。

 ハチ子が通路の前後で安全かどうかを確認している間に、俺は火口箱から火打石を取り出すと慣れた手つきで火をおこす。今なら元の世界に戻っても、達人ソロキャンパーを自称できるだろう。

 光の届かないダンジョン内では体温も奪われやすく、こうした休息は意識してとらねばならない。

 ほどなくして、やわらかな灯りが辺りを照らし出す。揺れる炎から伝わってくる熱はとても心地よく、どこか安心感もくれる。

 案の定というべきか、数分としないうちに南無子と鈴屋さんが座ったまま体を前後に揺らして舟をこぎ始めていた。

 アルフィーは……さすがは傭兵といったところか。

 休息を取りながらも油断はしていない。俺が周りを見回ろうと立ち上がると、笑顔で見送る余裕を見せる程だ。

 俺はそれに軽く片手を上げて答えると、そのまま腰に差すダガーを抜いて逆手に持つ。


 ……さて、この先どこまで進むかだが……この遺跡自体、すでに冒険者にとってメジャースポット化しているし……相当深く潜らないと、お宝なんぞ残されていないだろう……


「アーク殿」

 すっと隣にハチ子が並ぶ。

「この先の通路の奥に、妙な亀裂……と言うか、怪しげな穴があるのですが……」

「……穴?」

 ハチ子がこくんと頷くと、俺の黒装束の袖を控えめに、二本の指でつまんで引っ張る。

 そしてそのまま通路の奥に引っ張って行き、視線で天井の方を見るように促してきた。

 そこには確かに、小さな割れ目があった。

「あれ、なにか変じゃないですか? ……奥も空洞っぽいですし……」

 ハチ子の言う通り穴の奥に空間があるように見える。


 ……亀裂は真新しい………おそらく何らかの衝撃で繋がったのだろう……


 隠し部屋の類か……それとも他の通路につながっているのだろうか……いずれにしろけっこうな奥行きだ。

 何よりも、あの穴の大きさだと人は通れない。

 つまり、あの先は未踏のエリア……手付かずのお宝があるのかもしれない。そう考えると、冒険者魂をくすぐられるってものだ。

 ……っとそこで先程のゼラチナス・キューブのことを思いだす。


「あぁ……なるほど……」

 一人で頷き納得していると、ハチ子が首をかしげながら見上げてきた。

 目をそらすことなく無言で説明を求めてくるその凛とした表情に、思わずごくんと唾を飲み込んでしまう。そしてそれを誤魔化す様に、視線を斜め下に泳がせてしまう。

 どうして、そんなに真っ直ぐ目を見つめてこれるのかと、たまに思う。

 俺はあまり目を合わせるのが得意じゃないんだが……って、まんま社会不適合者だな。


「いや……あんなでかいの、いきなりどっから現れたんだと思ってたけど……あそこから出てきてたんだなって……」

「あんな、小さな割れ目からですか?」

「不定形モンスターだからな。あそこから出て、通路の曲がり角で待ち伏せ……とかな」

「なるほど……おそろしいですね」

 そう、スライム系はだから恐ろしいのだ。

 割れ目からの奇襲ってのはかなり厄介で、強力な酸でも持っていようものなら、取り返しのつかないことになりかねない。

 某有名ゲームのせいで、スライムは最初に倒せる雑魚モンスターという認識が根付いてしまっているが、物理無効ってだけでそれがどれほど厄介なのか、この世界では身に染みて理解できる。

 しかしそれにしても、あの穴の先はやはり気になる。


「ちょっと行ってみるか」

「……行く?」

 きょとんとするハチ子の腰に手を回し、テレポートダガーを割れ目に投げ込む。

「ちょ……あ、あぁくどの!」

 ハチ子が顔を真赤にして驚く様があまりにおかしくて、俺の悪戯心が猛烈にくすぐられる思いがした。

 嫌がる女子をお化け屋敷に……ってぇのは、男にとって鉄板ネタだ。


 ……許せよ、ハチ子……俺は今、猛烈に意地悪をしたくなったぞ……


「トリガーっ」

 次の瞬間、視界が真っ黒に染まり何も見えなくなった。

 薪の炎の光が、ここまでは届かないからだ。

 俺は冷静にニンジャ刀を抜くと、指先で刀身をなぞり属性付与の術式を唱える。

「不知火……」

 力ある言葉に反応し、指先が通った跡に炎が宿っていく。

 火炎バフは、明かりにもなるから便利なものだ。

「カカカ、驚いた?」

 笑いながらハチ子に視線を移すと、涙目で睨みつけてる美女がそこにいた。


「……腰……」

 放つ言葉は一言で、端的かつ明瞭だ。

 これがゲームならGMが飛んできて、アカウントごと停止されかねない。

 言い逃れのできないハラスメント行為だと、即座に理解する。

「あ……いや、そんなつもりは……」

 慌てて腰から手を放すが、ハチ子は口を小さくすぼめていく。

「じゃあ、どんなつもりだったんですか?」

 そして、珍しく噛み付いてくる。

 いつものハチ子なら、これくらい自分からしてきそうな……いやいや、この考えは危険だ。今のは全面的に俺が悪い。


「ごめんなさい……」

 うなだれるようにして謝るとハチ子がため息を一つし、背を向けるようにして座る。

「気をつけてくださいね」

「……はい……」

「すごくドキドキするんですから……」

「デスヨネー」

 いきなり暗闇に飛ぶのだから、そりゃあドキドキもするのだろう。

 俺は反省しつつ、ドッキリお化け屋敷作戦はもうしないと心に強く誓った。

【今回の注釈】

・某有名ゲームのせいで、スライムは最初に倒せる雑魚モンスター………ドラクエですね。スライムは対処法を知らないと強敵です。ゼラチナス・キューブにいたっては、曲がり角を曲がったら腹の中にる…となりかねなく超危険

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