表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/492

鈴屋さんと2人ボッチ!

ネカマの鈴屋さんは、このすばのように笑える日常と、銀魂のような小ネタを混ぜつつ、たまに真面目で切ない話をぶっこんだ、そんな物語を目指したものです。


主人公のあー君。

ヒロインの鈴屋さん。

サブヒロインにして、78話では一人称の主人公にまでなったハチ子さん。

90話から正式に登場するアルフィー。


この4人が織り成すラブコメです。


序盤は日常シーンが多く、話が回り始めるのが中盤からなので、もどかしく感じるかもしれません。

壮大で切ない(?)ラストに繋げるための種蒔だと思って、気軽にニヤニヤしていただければ幸いです。

 目が覚めたら、そこは見慣れた墓地だった。

 俺の背中には、やはり見慣れた真っ白で巨大なモニュメントが、天を突き刺すかのようにそそり立っている。


 隣では、うら若きエルフの少女が俺の顔をじっと見つめていた。


 俺は顎に手を当てながら、即座に現状を理解した。

 こちとら伊達に、ラノベやアニメを嗜んではいない。


 とりあえず、まわりをぐるりと見回してみる。


 うん、やはり俺にとって馴染み深い異世界ファンタジーだ。

 そして見覚えがありすぎるこの町並み。

 こいつは異世界転生系ってやつだ。

 それもプレイしていたゲームの中に、というパターンだろう。


 ……そもそもゲーム画面を睨んでいた俺が、なぜここにいるのか……


「たしか、パーティが全滅して……」


 そうだ。

 ゲーム中にパーティが全滅したのだ。

 それから蘇生アイテムをケチって、ホームタウンの墓場に死に戻りをしたところまでは記憶がある。

 その後は……なんか、ふわっと意識が薄れて今に至るわけだ。


「武器はあるな」


 黒ずくめの装束に、愛用のダガー。

 これもゲーム内で見慣れた装備だ。

 ただし、これが俺の使っていた超レア武器『テレポートダガー』なのかどうかまでは分からない。


「ステータスウィンドウもないし、確認のしようがないな」


 さてこの場合、ラノベやアニメの主人公はどうしてた?

 まずは現場の把握と帰るための手段の考察、ここに来た目的探し。

 ……まぁ、そのあたりが定石だろう。

 いずれにしろ、ラノベで得た知識をマニュアルにすれば“何をすべきか”は、なんとなく理解できる。

 そこでやっと、俺を見つめている美しいエルフ少女の存在を思い出す。


「なぁ、鈴屋さん?」


 鈴屋と呼ばれたエルフ少女が、透き通るような水色のロングヘアーをさらさらと揺らしながら振り返る。


「なぁに、あー君」


 鈴屋さんは屈託のない、みるからに清廉潔白な、曇りひとつ無い、純粋無垢な……とにかく、一切の邪気を感じさせない、完璧な聖女の笑顔を見せていた。


 あぁ、かわいい。

 それも知っている。

 鈴屋さんは、俺のパーティメンバーだ。

 キャラクター名がSUZUYAで、プレイヤーのリアルネームも鈴屋らしい。

 ちなみに俺は、ウケ狙いで「ああああ」とつけたから「あー君」と呼ばれている。


「これってさ~」

「いいの、あー君。私も、だいたい把握したつもり」


 まじか、と驚く。


「さすが鈴屋さん、話が早いね。みんなも、どっかにいるのかな?」


 みんなとは、他のパーティメンバーのことだ。

 死に戻りは、所属国で最後に立ち寄った街の中にある“墓地”に飛ばされる。

 鈴屋さんと俺は、たまたまこの街に立ち寄ってから遺跡に向かったのだが、他のメンバーは王都から遺跡に来ていた。

 ゲームルールから鑑みれば、彼らが死に戻りをした場合、王都に飛ばされるはずだ。


 ……もちろん、この世界に来ていればの話だけど……


「まいったなぁ。とりあえず、装備と金はあるけど。まず、ここがあの世界と同じなのか、確認しなきゃいけないよな。あと、戦闘のやり方とかも…」

「あー君さぁ、順応するの早すぎだよ~。私、けっこう怖いんだからね?」


 鈴屋さんが、いかにも不安だという表情を見せてくる。

 ついでに言うと、すごく可愛らしい。

 ふつうの男なら今ので、1回は惚れているところだろう。


 ……しかし、だ。


 俺は知っている。

 いや、正確には鈴屋さん本人に聞かされたんだけど。


 鈴屋さんは、ネカマだ。


 ファンタジー系オンラインにおいて、ネカマプレイは有効な手段だ。

 ただ女性キャラってだけで、レアなアイテムを貢いでくれたり、難解で面倒なクエを手伝ってくれる男性プレイヤーは山ほどいる。

 そして、鈴屋さんの演技は完璧だ。

 実際に、その神がかった演技で数々の男を魅了し、苦もなくレアアイテムを入手していったのだから、隣で見ていた俺は何度うらやましいと思ったことか。

 ちなみに俺は「鈴屋さんは、リアルで会ったことのある女」という嘘をついて、ネカマプレイの片棒を担いでいた。

 もちろん、実際に会ったことなどない。


 まぁそのおかげで、俺もレアアイテムのオコボレをもらっていたわけだ。

 そんなこともあり、俺と鈴屋さんは仲がいい。


「あー君、とりあえず情報収集しようよ。ん~そうだね……まず、碧の月亭にでも行ってみない?」


 鈴屋さんが、至極まっとうなことを言う。


「……んだなぁ」


 顎をさすりながら、小さく頷いてみせる。

 鈴屋さんと一緒なら、手慣れたネカマプレイで、情報からアイテムまで容易く入手できるだろう。


「オーケイ、そうしようか」


 にしても……と、改めて鈴屋さんの全身をまじまじと見つめてみる。


「……なぁに、あー君。なんか身の危険を感じる視線なんですけど……」

「いや、鈴屋さん。ゲームのまんまなんだなぁ、と思ってさ」

「……やっぱり身の危険を感じるんですけど。あー君はゲームと同じで、美形じゃないよね」

「失礼な。俺は気持ちの悪い美形は嫌いなのだ」

「そっちの方が女子には受けるんだからいいじゃない。キャラメイクは大事だよ~。ゲームでも、けっきょく見た目だもん」


 そりゃぁ、こんなことになると知ってたらそうしたさ、と後悔したところで仕方がないだろう。

 とにかく今は、鈴屋さんのネカマプレイに期待するとしよう。


「ほら、早く行こうよ。あー君」


 俺は無言のまま頷き、碧の月亭に向かうことにした。

【今回の注釈】

・ネカマ……男性プレイヤーが女キャラを使うのをネカマだと言う人もいますが、私的には男性がリアルも女だと公言して女キャラを使うことをネカマだという認識でいます

・キャラメイク……キャラメイクは大事ですが、ゲームによっては兜を被るとまったく見えなくなってしまうということもあり、時間をかけた意味がなくなる場合があります。

兜非表示なんていう親切なゲームもたまにありますがね。

オブリビオンなどのベセスダ製RPGはキャラメイクで半日かかるとよく言われましたね。modを導入するという改造方法もありますが、優れたmodはゲーム会社も最初から導入してほしいものです。

ちなみに自分は段々と考えるのが面倒になってきて、自分をベースにしたものにしていく…という流れに陥りがちです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ