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MagicTheWord  作者: コモリ
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「ここだよね・・・?」

あたし達は大きな、まるでお化け屋敷みたいな見た目の建物の前にいた。

「どこから入ればいいんだろ・・・?」

「ここだろ?」

カイが目の前の大きな扉に手をかけた。

「ちょっ!カイ!!危ないよ!?結界が張ってあるかもだしっ、ほかの入り口探そうよっ!!」

「なにがあぶないんだよ?もういないんだろ?その黒猫っつーのは。」

カイがゆっくりと手に力を加え、重い扉を開く。

「ほら。全然平気じゃねぇかよ。」

「うん・・・。」

中に入ると、赤い絨毯の敷き詰められた床が広がり、壁際に何個か扉があった。

「なんか中までお化け屋敷・・・。ってかどの扉から入ろう・・・?」

「手っ取り早く端っこから順に開けてくぞ。」

カイが一番端の扉をあける。

「すご・・・!図書館みたい・・・!!」

5・6メートルほどの高さの巨大な本棚がたくさん置いてあり、そこにはぎっしりと分厚い本が入っていた。

「・・・なんだ・・・?」

「へ?どうしたの?カイ?」

カイが呆然と呟いた。

「なんか俺・・・ここ・・・いや、やっぱなんでも無い。」

「?変なの。」

とりあえずいろいろな本を眺めて行く。

「お母さん達が利用された魔法が載ってる本って・・・どれだろ・・?」

「・・・これじゃねぇか?」

カイが一冊の革表紙の本を取り出した。

ペラペラとページをめくり、カイの手が止まった。

「何だ・・・?何なんだ・・・?さっきから・・・」

この本を自分は、前に見ている。

―本当は、この屋敷を見た時から、何かおかしかった。

見た事のあるはずの無い風景、来た事のあるはずの無い場所。

―それなのに、何故だか懐かしく感じた。―

そして、頭の中を過ぎる自分以外の誰かの・・・記憶。

―自分?

 そういえば、自分とは誰だ?俺はいったい・・・誰なんだ?

その瞬間、カイの頭の中にいくつもの記憶が舞い戻って来た。

―そう、天才魔術師。黒猫としての、―記憶。

「あぁっ・・・!!!」

カイが突然頭を抱え込み悲鳴とも言えない声を上げた。

「えっ、なに!?」

カイの様子に、驚くルーナ。

「・・そうだ・・・俺だったんだよ・・・黒猫・・・。」

「えっ・・・・?」

ルーナは一瞬、カイが何を言っているのかわからなかった。

カイが黒猫?

「なに・・言ってるの・・・?」

「・・俺が黒猫だ。」

「そんな嘘・・・!」

「嘘じゃない。記憶が戻ったんだ。」

「そんな・・・!じゃあ、あたしの両親を閉じ込めたのは・・・カイ・・?」

「それは違う!!」

自分は確かに『黒猫』だ。だが、ルーナの両親を閉じ込めたのは俺じゃない。閉じ込めたのは・・・

「あいつだ!!」

「えっ!?」

「お前の両親を閉じ込めていたのは・・・・・ドゥーベル。俺の・・・師匠だ・・・・!」

その瞬間、目の前に・・・ドゥーベル。あの魔女が現れた。

「・・・おやまぁ。やっと思い出したのかい・・・?」

魔女が薄っすらと微笑を浮かべた。

「思い出したのなら話が早い・・・早く滅びの呪文が書いてあるあの禁断の書をお渡し・・・?」

「・・何の事だ?」

「しらばっくれるんじゃないよ・・・っ!!お前が・・・あの本を異世界に隠したっていうのはわかってるんだよっ!!」

ルーナは混乱していた。

カイが黒猫?ドゥーベルさんがあたしの両親を閉じ込めてる?

意味わかんない。

もう、何がなんだかわからないよ・・・・

「俺はそんな本、知らないっ!」

「嘘をつくなっ!!」

その瞬間、魔女の手から青白い閃光が迸り、二人の足元に叩きつけられた。

「わっ!!」

その光を避けた時にバランスを崩し、ルーナはその場に倒れこんだ。

「おぉ・・・まさしくその本は・・・・禁断の書!!」

倒れこんだと同時にバックが開き、ルーナの荷物と一緒に図書館に置いてあったあの本が飛び出した。

「こっ・・・この本がなんだって言うんですか・・・?」

ルーナは起き上がり、その本を手に取って見た。

「文字は書き換えられているようだが・・・確かにそれは、禁断の書・・・!」

「違う!!」

カイが叫んだ。

「だから嘘をつくんじゃないと言ってるだろう??・・・お嬢ちゃん。その本を私に渡しなさい・・・?そうすればお嬢ちゃんの願いを一つだけ叶えてあげよう・・・・」

願いを?

その言葉に、一瞬心が揺らいだ。

願いを叶えてくれるというなら・・・・

・・・あたしのお父さん・お母さん達を返してくれるの・・・?

「ルーナ!だめだ!!願いを叶えてくれるなんて嘘だ!!そいつに本を渡したらっ、この世界が滅びる!お前の両親達も返って来ないぞ・・・・!?」

そんな・・・・

―あたしは、どうしたらいいの?―

その時、ルーナは足元に転がっているあの飴玉を見つけた。

真実を教えてくれる・・・飴玉・・・・?

ルーナはその薄いビニールで包装された飴玉を広い上げ、口に含んだ。

―・・・お願い!教えて・・・!あたしは・・・どうしたらいいの・・・?―

瞬間、ルーナの頭の中に一気にある映像が駆け抜けた。



薄暗い部屋・・・ここは・・・・この家・・・・?

「・・・カイ・・・異世界の人間は・・・?」

声を聞いてはっとする。いつのまにか、その暗い部屋に、魔女が座っていたのだ。

「地下に閉じ込めてあります・・・・でも、いったい異世界の者なんて何の為に・・・?」

「・・・ふふ。お前がこの間盗んで来たあの禁断の書、あれに滅びの呪文が書いてあるんだよ・・・。私が滅びの呪文を唱えれば、この世界は滅びる・・・そして私がこの世界を手に入れる事が出来るのよ・・・!!・・・・だが、それを見るためには、異世界人の血が必要。だからあの二人を捕らえたのさ・・。」

次の瞬間、場面が変り、今度は地下牢のような場所が見えた。

あれは・・・・お母さんとお父さん!?

「・・だから、俺が今からあんた達を元の世界に戻す。」

カイが『禁断の書』を片手に、呪文を唱えた。

「・・この世界における全ての神々よ、我に力を貸したまえ、この者達を、あるべき場所に・・・」

「カイっ!!何をしている!!」

魔女が叫んで飛び込んできた。

「くそっ・・・!後少しだったのにっ・・・!!うわぁっ・・・!!」

カイの体が青白い火で包まれた。

「・・やはりこれだけ大きな術に失敗した代償か・・・!」

魔女がお母さん達に向かって青白い炎を叩きつけた。

それを咄嗟にカイが呪文で跳ね飛ばす。

「カイっ・・・!!よくも裏切ったなっ・・!!わかってるんだろうなっ!?私を裏切れば、お前の両親は二度と生き返らないぞっ!?」

魔女がカイを怒鳴りつけた。

「わかってるっそれぐらい!!でもなっ??いくら生き返ってほしいからって、自分のために人を殺めるなんてっ、俺には出来ないんだよっ・・・・!!」

その瞬間、カイの体は完全に炎に包まれ、声だけが聞えた。

「この地に宿る精霊よ!この者達を守りたまえ・・・!!」

炎が消え、カイは跡形も無く消えてしまった・・・・



一瞬にして駆け抜けたこの映像に、ルーナは驚きを隠せなかった。

「カイは・・・助けてくれようとしていたの・・・?」

言葉にしてみて、よけい実感が沸いた。

―そうだ。カイはお母さん達を助けてくれようとしたんだ。そして、ドゥーベルさん・・・魔女は、禁断の書とお母さん達を使って、この世界を滅ぼそうとしているんだっ!!

「・・この本はあなたには渡さないっ!お母さん達はどこっ!?」

ルーナはキッ、と魔女を睨んだ。

「・・・お前の両親??もしや私が捕らえた異世界人の事かっ?だったら遅かったなっ!!そんなものとっくに私が始末しておるわっ!!」

「そんなっ・・・!」

ルーナは一瞬頭の中が真っ白になった。お母さん達を始末した?

そんな・・・じゃあもうお母さん達は・・・!

「生憎だったな!!俺は禁断の魔法の失敗によって異世界に飛ばされる前っ、ルーナの両親に術をかけたんだっ!どんな事があっても絶対に殺されない魔法をっ!!それにお前が使おうとしていた滅びの魔法にはっ、異世界人の死んですぐの血を使わなければならないはずっ、禁断の書を持たないお前にはっ、ルーナの両親は殺せないはずだっ!!」

カイの言った事に胸を撫で下ろす。

よかった・・・お母さん達は生きてるんだっ・・・!!

「ちっ・・・術をかけただけで無く滅びの術の内容まで知っておったとは・・・まぁいいっ、小娘っ!確かにお前の両親は生きているっ!地下室で石にされてなっ!!」

「石っ!?」

「・・石にされたのを解くには、私が術を解くか、私が死ぬかのどちらかだっ!!残念だったなっ!両親もろともお前達も殺してやるっ!!お前が両親に会うのは死んでからだっ!!」

魔女はそう言うと、大きな大蛇に変化した。

「きゃぁっ!!」

突然襲い掛かって来た大蛇に悲鳴を上げる。

咄嗟にルーナを庇ってカイが前に出た。

「いでよドラゴンっ!!」

その瞬間、炎で出来たドラゴンが現れ、大蛇の体を締め上げた。

「うぁっぁぁぁぁっ!!」

苦しみのた打ち回る大蛇。だが、炎の力が明らかに弱まっているように感じた。炎が無くなるのも時間の問題だろう。

「こんなところで・・・こんなところで死ぬものか・・・・!!」

大蛇が懇親の力を振り絞り、カイに向かって八重歯を向け突進した。

「カイっ!!!」

「痛っ・・・!」

辛うじて避けたが、カイの背中に八重歯がかすり、血がにじみ出て来た。

「・・ルーナっ!!その本の一番最後のページを開けっ・・!!」

カイに言われた通り『禁断の書』の最後のページを開く。


「これって・・・呪文?」


「禁断の魔法の中で最大攻撃魔法だっ!それを唱えろっ!!」


「あたしじゃ無理だよっ!カイが唱えて・・・!!」


「無理だっ!二つの魔術を同時に使う事はできないっ!!」


「そんなっ・・・!だってあたしが唱えたからって術が使えるかわかんないし・・・!それにもし失敗したら・・・!!」

―きっとあたし達、殺される。

「大丈夫。」

カイが自身に満ち溢れた声で言った。

「ルーナなら出来る。」

ドラゴンの炎が今にも消えかかり、もう時間が無い事を知らせた。

ルーナは本をギュっと握り締め、震える声で呪文を唱えた。

「おっ、・・・愚かなる反逆者に、終焉をっ。神の命に逆らえし者にっ、死の刻印をっ。あまたの神々よっ!我に力をっ・・・・・!!」

精一杯声を張り上げた。

どうか・・・・効きますように・・・!!

何も起こらないまま、カイが放ったドラゴンが消え、大蛇が自由になる。

やっぱりだめだった・・・・・??

次の瞬間、大きな音と共に大蛇が青い稲妻に包まれた。

「やった・・・!!」

大蛇が大きな悲鳴を上げて朽ち果てて行く。

「あぁっ・・・・・・・!うぁぁぁぁぁっ・・・・!!!」

最後の悲鳴と共に大蛇と魔女は跡形も無く消えていった。

「やったな!!」

「うんっ!・・・・あっ、お母さん達・・・・!!」

急いで地下に降りて行く。

「お母さんっ・・・・!!お父さん・・・・!!」

地下牢の中で二人は仰向けに倒れこんでいた。

「生きてる!?ねぇカイっ!お母さん達生きてる!?」

「生きてるよ。死んでるわけねぇっつったろ??俺が術かけたんだからっ。」

そう言ってカイは背中の傷を負ったところに手をあてて、傷を治し始めた。

「・・・魔法使えるなんて・・・本当にカイ、この世界の人なんだね・・・。」

「何を今さら。」

自分でも今さらとは思った。さっき目の前で術を使っているところを見てるのに。

「・・確かに俺はこの世界の住人だけど、魔法を使えるからってわけでも無いだろ。実際お前だって魔法、使ったんだし。」

「まぁそれはそうだけど・・・。」

「魔法なんて要するに、その世界の性質によるんだよ。」

「性質?」

ルーナは首を傾げた。

「そっ、性質。こっちの世界では魔法を使うための神々や精霊は満ち溢れてるけど、向こうの世界ではそういうのが少ないんだよ。

だから別に特には『こっちの世界』と『向こうの世界』に住んでる奴じゃ変りはねぇんだよ。」

「ふぅん・・・。じゃああたし達が最初に来たあの洞窟も、精霊とかがいっぱいいたってわけか。」

何か精霊だとか神様だとか。いろいろややこしいな・・・。

「・・・じゃあそろそろ行くぞ。」

「どこに?」

カイの言葉に目を丸くするルーナ。

「決まってんだろっ。元の世界へだよっ!」

「あぁっ。」

すっかり忘れていた。

そこでルーナはあの飴を舐めた時の事を思い出し、カイに尋ねた。

「・・・ねぇ。あたしね、『真実の飴』を舐めた時に、魔女がカイに『お前の両親は二度と生き返らないぞ』って言ってたの聞いたんだけど・・・どういう意味・・?」

「あぁ・・・。俺の両親な、俺が4歳の時に家が火事になって死んじまったんだよ。それで、あの魔女が自分に仕えたら両親を生き返らせてくれるっていうから、あの魔女に仕えてたんだけど。」

「そうだったんだ・・・・」

あたし達を助けたせいで、カイは両親を生き返らせる術を失っちゃったんだ・・・

「まぁどっちにしろあの魔女には出来なかっただろうけどなっ!禁断の書にも載って無かったしっ!!」

ルーナの気持ちを知ってか知らずか、カイが明るくそう答えた。

「じゃあ始めにここへ来たあの洞窟へテレポートするぞ。」

一瞬にして、景色が変り、あたし達はあの洞窟の中にいた。

「あれっ?お母さんとお父さんはっ??」

さっきまで一緒にいたはずの二人がどこにも見当たらない。

「向こうでの記憶を消して先に帰ってもらった。いろいろと面倒だからな。」

「えー?だからってこの洞窟に降りる事無いじゃん!!こっからふもとまで一時間近くかかるのに・・・」

「大丈夫だよ。ちゃんとふもとに降ろしてやるから。ここに降ろしたのは・・・・ちゃんと別れ言っとこうと思ったから。」

カイの言葉にハっとするルーナ。

「別れって・・・カイもこっちに戻って来るんじゃないの!?」

「俺は向こうの世界の人間だ。こっちでずっと暮らすわけにはいかないんだよ。」

「そんな・・・だって、おばさん達はっ!?突然カイがいなくなったら心配するよ・・・!!」

「お前以外の人の、俺に関しての記憶は全て消してある。」

「そんな・・・」

ルーナは泣きそうになった。

カイがいなくなるなんて、思ってもみなかったから。

「俺は向こうの世界で両親を生き返らせる方法を探すよ。だから・・・元気で。」

「・・・また、会えるっ?」

「必ず。・・・・『さよなら』。」

カイの声が遠くなる。

次の瞬間、ルーナは自分の部屋のベットの上にいた。

誰かがノックして、部屋の戸を開ける。

「ルーナ〜。もうそろそろ起きなきゃ・・・どうしたのその涙!?それにその服っ!!」

お母さんだ。

無事にこっちに帰って来れたんだ。

「なんでも無いっ!!今着替えるから!!」



『・・また会える?』カイはこの問いに、迷う事なく『必ず』と答えた。

涙は出てくるけど、不思議と悲しくは無かった。

   ―ねぇ、カイ・・・また、会えるよね・・・―

空に向かって、ルーナはにっこりと笑った。

                 

                      ――END――





最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。からり下手で読みにくい部分もあったと思いますが、楽しんで読んでくださっていたとしたらうれしいです。

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