5
変った宿屋から出て、森を抜けたところに、ハウベルという街は存在した。
「前の街もすごかったけど、こっちはそれ以上だね・・・」
何軒も高い建物がそびえ建ち、空を飛ぶのは魔女だけでは無く、恐竜みたいなのもいた。
「えっと確か・・・魔女のドゥーナさんって人に会えばいいんだよね?」
「あぁ。その人ならもしかしたらお前の両親と接触してるかもしれないんだろ?えっとドゥーナさんの家は・・・あっちだ!!」
街の人ごみを掻き分けて進んで行く。途中、壁に何か張り紙がしてあった。遠目でよくわからないが、黒い髪の男の子が書いてある。
何か・・・カイに似てる・・・?
何故だかわからないけどそう思い、カイに聞こうとしたけど、カイがそんなものに載るわけないと、口を閉じた。
「ここだ・・・。」
カイとたどりついた場所は、街はずれの小さな家だった。
「・・ごめんくださーい。」
ドアを数回叩くと、やさしそうなおばあさんが出て来た。
「・・・あらまぁ。こんな小さな子達がいったい私に何のようだぃ・・?」
「・・・あの、少し前にドゥーベルさんが接触した異世界の人達に着いてお話を伺いたいのですが・・・?」
「あぁその話・・・。まぁ立ち話もなんだから中にお入り。」
ドゥーベルさんの家に入ると、リビングらしきところにすごい数の本が置いてあった。
「・・私はねぇ。昔異世界について調べる仕事をしていたの。それでこれだけいろいろな本が置いてあるのよ。」
異世界について調べてたって・・・お母さん達と同じ考古学者みたいなのだったのかな?
「・・・異世界から来た二人に会ったのは・・確か2年ほど前だわ。誰かから私が昔異世界について調べていたのを聞いたみたいで、私に異世界に戻る方法を尋ねて来たの。」
「それで・・?」
「残念だけどわからないって言ったわ。そしたらそのままこの家を出て行ったの。確かその二人の名は・・・モーリとリゼナって言ったかしら?」
やっぱり・・!!
お母さん達だ!お母さん達もこの世界に来てたんだ!
「・・・でもねぇその後その二人・・・黒猫に捕まったらしいのよ・・」
「黒猫?」
二人は目を丸くした。
宿屋で魔女達が話していたあの話。あれがいったいなんの関係があるのかな・・・?
「・・・黒猫を知らないの?黒猫っていうのはねぇ・・ちょうどあなた達と同じ歳ぐらいの天才魔術師よ。多くの禁断の魔法書を盗み出していて、その黒い髪と、動きのすばやさから、人は彼を黒猫と呼んでいるの。そして・・その禁断の書に書いてある魔法を使うために、黒猫はその二人をどこかに閉じ込めたらしいのよ・・。」
「そんな・・・!」
許せない。
ルーナは唇を噛み締めた。
自分の事のために、あたしの両親を利用するなんて・・・!!
「あたし・・・どうすれば・・・」
あの宿屋で、魔女達は、『黒猫が消えた』と言っていた。
自分の両親の居所を知っているその人が消えたなら、どうやってお母さん達を見つければいいのだろう・・・?
「・・・どんな事情かわからないけど、黒猫のてがかりなら教えてあげられるわよ・・・」
そう言ってドゥーベルさんは懐から地図を取り出した。
「・・・この地図の使い方は知ってるわね?これで『ジェルク』と唱えてごらんなさい。黒猫が前に住んでいた家の名前よ。結界の力が強すぎて、今まで誰一人として入れなかったんだけど・・・もし本当に黒猫が消えたのなら、もしかしたら・・・入れるかもしれないわ・・・」
そこに行けば、もしかしたらお母さん達の手がかりがあるかもしれない・・・!
ドゥーベルさんにお礼を言って、あたし達はその家を後にした。