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薬屋からしばらく歩いて、二人は今、街を抜けて森の中を歩いていた。
「ねぇ、まだ『ハウベル』って街には着かないの??」
「こんな早く着くわけねぇだろ。後少し行ったとこに宿屋があるらしいから、今日はそこで休んでくぞ。」
10分ほど歩いて行くと、前方にアンバランスな、赤い屋根の建物が見えてきた。
「やった!宿屋だっ!!」
勢いよく走って行き扉を開けた瞬間、ルーナは固まってしまった。
「どうした?」
後から追いついたカイが不信に思いたずねて中を見ると、中は現実とかけ離れた光景だった。
大きな荷物を持って立っているフランケンシュタイン。数人の仲間と話している吸血鬼達。おまけに受け付けをする場所に座っているのは牙を剥き出しにした狼男。
「おっ、お化け屋敷・・?」
「・・・いや、魔女もいんだからこういうのもありなんじゃないか・・・?」
おそるおそる中に入って、受け付けの狼男に話し掛ける。
「・・あのー・・すいません・・。今晩ここに泊まりたいんですけど・・・」カイがそう言った瞬間、狼男の目がキラリと光った(気がした)。そして口の端を吊り上げ、にたりと微笑んだ。
やばいっ!!喰われる!!
「いらっしゃいませー!」
狼男は愛想良くそう告げた。
「二名様でよろしいですかー?」
「へ・・・?あっ、はいっ。」
「そうしますとただいまお一人様ずつのお部屋がご用意できませんので、お二人様同室になってしまいますがよろしいでしょうかー??」
「はぁ・・。」
「おそれいりますー!2名様入りまーす!!」
どこぞのファミレスの様な軽いノリで、二人は部屋へと通される。
「なっ、なんか・・・拍子抜けしちゃった・・・。」
「・・俺も。」
通された部屋は意外と広くて、ベランダまでついていた。
部屋に適当に荷物を置き、下の食堂へと降りていく。
適当な席に腰を下ろす。やはり回りは吸血鬼とかばかりだった。
「結構おいしいね!!」
ウェイター(狼男)が運んできた料理は、こんがり焼けたパンにトマトと大豆のスープ、味付けされた豚肉で、シンプルながらもなかなかの味だった。
「・・・ねぇ知ってるー?『黒猫』が消えたって噂っ!!」
隣にいた魔女達の話し声が聞えて来た。
「知ってるわよ!!でも正確には『消えた』じゃなくて『消された』らしいわよ??2年前どこかに追放されたって!!」
魔女達の興奮っぷりに首をかしげる。
「・・・ねぇカイ。黒猫ってこの世界じゃそんなに不吉なのかな・・・?」
「・・知らね。普通魔女っつったらペットに黒猫飼ってるイメージだけどな。」
食事を済ませて部屋に戻り、その日はすぐに眠りについた。