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「それにしても・・・」
外に出て見ると、空を飛び回る人達や、変った形の家々が立ち並んでいた。
「なんかすげぇな。この世界って。」
「・・うん。」
「つーか、とりあえずどっちの方向行くか調べようぜ。」
ルーナが地図を開く。
そこにはまた、あの古代の文字が書き表されていた。
「目的地を唱えよ、だとさ。」
「だからなんでこんな変な記号みたいな文字が読めんのよ!!」
「知らねぇって!!んな事今は関係ねぇだろ!!」
「わかったわよ!!えっと・・『カウベル』っ!!」
と、また違った文字が出てくるだけで、映像は全く現れる気配はなかった。
「ばかっ!!『カウベル』じゃなくて『ハウベル』だろ!?貸せ!!俺がやるっ!」
カイがルーナの手にしていた地図を奪い取り、唱えた。
「ハウベル!」
その瞬間、地図に立体的な建物の映像が浮かび上がった。
「すごいすごい!!え〜と、この道を真っ直ぐ行って・・・」
「とりあえずわかるとこまで行ってまた地図見ればいいだろ?」
「そうだね。」
真っ直ぐ歩いて行くと、まわりにはたくさんの店が立ち並んでいた。どうやらここは商店街のようだ。
「ねぇねぇ!なんかすっごいおもしろそうだよっ!!ちょっと見ていこうよ!」
「あっ!おいちょっと待てよ!!」
カイの返事を聞く前に、ルーナは真横にあったお店の中に入っていった。カイが慌てて後を追いかける。
店の中に入ってみると、そこにはきれいに光るガラス玉みたいなものがたくさんビンに入って売られていた。
「きれー・・・」
「・・・おやお嬢さん。あんた異世界の子だね?」
店の人っぽいおじいさんが、椅子に腰掛けながら口を開いた。
「えっ?そうですけど。・・そんなに目立ちます?」
ルーナは自分の姿を見回した。回りに歩いていた人達と、たいして見た目は変らないと思ってたんだけど・・・
「いやいや。そうじゃない。若いもんには絶対に見分けはつかないと思うが、わしのように歳を重ねた者からすれば一目でわかるものじゃよ。」
そう言っておじいさんはにっこりと笑った。
「おいルーナっ!勝手に行動すんじゃねぇよ!!」
「あっ、ごめーんっ。」
怒った様子でカイが店の中に入って来た。
「つーかここ、何の店だ?」
「えっ?知らない。・・何のお店ですか?ここ」。
「まぁ言うなれば薬屋かのぉ。」
「『スモルー』。効能、子ねずみほど小さくなる・・・って、なんだこれ?」
カイが置いてあったビンの一つを見て言った。
「・・・それは小さくなる薬。ここはそういった変った効能のある薬を扱う場所なのじゃよ。」
「すごい!!ねぇカイっ!こっちのピンクのは??」
「めんどくせぇなー・・・『ラブリー』。効能、意中の相手に飲ませると、その相手は飲ませた相手のことを好きでたまらなくなる・・・って、これ惚れ薬ってやつか!?いいのかよこんな人の気持ち操るようなもん売ってて!!」
カイの話を聞いて、ルーナは目を輝かせた。
好きな人が自分の事好きになってくれるなんて・・・夢みたいっ!!
ルーナは大好きなアイドル歌手の顔を思い浮かべた。
「ふぉっふぉっ。それの効能は一時間だけじゃよ。少しの間でも自分を好きになってくれるならいいという女の子向けじゃ。」
ルーナは「ちっ」と舌打ちした。
「まぁいい。行くぞルーナ。」
カイがルーナの腕を引っ張った。
「えっ、ちょっ、何か買っていこうよ!!」
「はぁ?お前こんな得体の知れない店で買い物なんかしたら絶対ぼったくられるぞっ。」
「大丈夫だよ!マールおばさんにお金の安い高い教えてもらったもん!!」
こんな面白そうなとこで何も買わないで行くなんて、冗談じゃない。
「おじいさん!これっ!これください!!この青いきれいなのっ!」
「おいルーナっ!」
ルーナは適当に近くにあった青い飴玉を指さした。
「それは・・・真実を教えてくれる薬じゃ。何か本当のことを知りたくなった時に使いなされ。」
「いくらですか??」
隣でぎゃんぎゃん騒いでいるカイを無視して言った。
「・・・特別にー・・1ぺッドでよかろう。」
「いいんですかっ!!やったぁ♪♪」
この世界のお金は1ぺッドが一番安いのだ。
さっそくお金を払って、その飴玉を一つもらった。
「じゃああたし達これで!!」
文句を言い続けるカイを引きずって、ルーナはその店を後にした。
「またおいで・・・。」
二人がいなくなった後、薬屋の主人は一人呟いた。
「それにしてもあの男の子、どこかで・・・いや、まさかな・・・」
そう言ってまた、一人店番を続けた。