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「ここだ・・・!」
山道を登ってきて、やっと本に書いてあった洞窟の入り口に着いた。
ひんやりとした洞窟の中は、どこからか光が漏れているのか、薄っすらと明るかった。
「なぁ、この洞窟のどこからそのユートピアってーのに行けるんだ?」
「えーと、確か洞窟の一番奥に大きな扉があって、そこから行けるって書いてあるんだけど・・・」
しばらく進んで行くと、洞窟の最奥に着いた。
「で、こっからどうすんの?」
「・・・・知らない・・・・」
「おまっ!知らないってどうすんだよ!!」
「だって〜!」
とりあえず行き止まりの壁を触る。何か薄っすらと文字みたいなものが彫られているような手触りがあった。
「あっ!これ!!何か書いてある!!」
懐中電灯で文字を照らす。
「古代文字・・・かなぁ?」
「・・・我は血の契約を交わす者。我はこの地を制するもの。精霊よ、我を導きたまえ。」
突然カイがそう呟いた。
「えっ?何?急に??」
「・・いやっ・・、なんか急に頭に浮かんだっていうか・・・俺も良くわかんねぇ。」
その時、大きな音と共に目の前の壁が動いた。
「カイすごい!!」
「すごいのはいいけど・・・何か俺ら、引っ張られてね・・・?」
「えっ?」
その瞬間、壁が動いて出来たわずかな隙間に、ルーナとカイはすごい力で吸い込まれた。
「きゃあ〜!!」
「わぁー!!」
隙間に吸い込まれたと思ったら、出たところは空で、二人はどこまでも落ちていく。
「・・・おいっ!ここ、俺達の町じゃねぇぞ!?」
下に広がる景色を見てカイが叫ぶ。
「じゃあ!あたし達っ、来れたんだ!!ユートピアに・・・!!」
「来れたのはいいけどどうすんだよ・・・!?このままいったら俺達・・・!」
カイの声はそこで途切れた。恐怖で気を失ったようだ。
「ちょっ!カイ!?一人だけ気ぃ失わないでよー!!!」
あまりの怖さに、何故だか気を失えない。
「きゃあーーーーーーっ!!」
もうだめだ。そう思った瞬間、体がフワッと浮いた。
「お嬢ちゃん達、ホウキも持たないでどうしたの??」
隣に、ホウキにまたがったおばさんが浮いていた。
「あっ・・・えっと・・・」
「まぁっ。変った服ね・・・もしかして、あなた達っ、異世界から来たの??」
「あっ、はいっ・・。」
「まぁ大変っ!!まさか異世界の人に会えるなんてっ!!あたしの家この近くなの!!坊やが起きるまででもいいから寄って行って!!」
次の瞬間、まわりの景色が空から一気にどこかの部屋の中へと変った。
「えっ・・??」
「瞬間移動したのよ。100メートル以内なら誰だってできる魔法よ。」
「魔法・・・!」
やっぱり、来れたんだっ。ユートピアにっ。お母さん達がいるかもしれない、この世界へ!!
「ごめんなさいね〜汚くて。とりあえずそこのソファーにでも座っていて?今コーヒーを入れるから。」
カイを座ったまま寝かせて、ルーナはソファーに腰を下ろした。
部屋の中は元いた世界と全然変らず、どこにでもあるような普通の造りだった。
「私の名前はマール。あなた達の名前は?」
「ルーナですっ。こっちがカイっ!!」
「ルーナちゃんとカイ君ね?それにしても異世界の人と会えたなんて・・・!夢みたいっ!・・・私の母親はね、あなた達の住んでいた世界の人なのっ。昔からよくそっちの世界の話をしてくれてわぁ〜。だからずっと異世界にあこがれてたの!!」
マールさんはニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべた。
「ところで、なんで異世界の子達がこの世界に来たの?」
「あのっ、実はあたしの両親、この世界のことを調べていて、そのまま行方不明になっちゃったんです。それで、もしかしたらこの世界にいるんじゃないかと思って、探しに来たんですけど・・・。」
「あらそれは可愛そうに・・。」
「んっ・・」
その時、気絶していたカイがゆっくりと目を覚ました。
「あれ・・・?俺・・・。死んだのか・・・?」
「死んでないよ。落ちてたあたし達をマールさんが助けてくれたんだよ!」
ルーナはカイが寝ていた間の話を説明した。カイは頷いてはいたが、いまいち理解してない様子だった。
「そうだわっ!!」
何かを思い出したようにマールさんが叫んだ。
「2・3年前にね、異世界の人間が二人この世界に来たって話を聞いた事があるわ!」
思えがけない朗報に思わず耳を疑った。
やっぱりお母さん達はこの世界に来てたんだ・・・!!
「あのっ、その異世界の二人って今は・・・」
「・・・残念だけど今はどうしているか知らないわ。でもね、確か、西のハウベルって街のドゥーナって魔女がその二人と接触したって聞いたの。だからもしかしたら、その魔女なら何か知ってるかも・・・」
「じゃあお願いですっ!そのハウベルって街に行くにはどうすればいいんですか??」
両親と会えるかもしれない。その思いで、ルーナはいっぱいだった。
「地図をあげるわ。行きたい場所の名前を言うと、その場所までの詳しい行き方を映像で教えてくれるのっ。」
「わぁ〜魔法って本当にすごい!!」
しばらくして、
「ご親切にありがとうございましたっ。じゃああたし達これからその魔女に会って来ます!!」
「あっ、待って!その服のままじゃ何かと目立つでしょ?」
そう言ってまたおばさんは、パチンと指を鳴らした。
「わぁっ!服が!!」
二人の着ていた服が一瞬にして、動きやすい変った感じのものになった。
「ありがとうございます!!何から何まで!!」
「いいのいいのっ。それと少しばかりだけど2人のポケットの中にお金を入れておいたわ。私からの気持ちっ!」
おばさんが言った通り、ポケットの中に手をつっこんでみると5枚ほどのコインと、2枚ほどのお札が入っていた。
「いいんですか??お金までもらっちゃって・・・」
「いいのよ。さぁ、いってらっしゃい!!」
マールおばさんにお礼を言って、あたし達はその家を出た。