表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

心地がいい音

 生産職とは、採掘や伐採でアイテムを集め、加工をしてアイテムを作る職業の事を言う。作った物を露天で売る事で、経済が盛り上がり戦闘職の装備が充実する事により、戦いやすくなるのもディファレント・トライバルに生きている事で大事な事である。


 田舎から上京をして戦闘に戦い疲れた俺は、始まりの町近くで憂さ晴らしに低いLVのモンスターを狩っていた。すると横から、つるはしを背負った銀髪の女が岩に向かって思いっきり打撃を加えて砕いた岩?を鞄に入れていた。


 同じ動作で掘っている彼女を座りながら見ているとカーン、カーン、ガッキーン、カーンという心地のいい音がフィールドに響き渡る。なぜかはわからないが、その音に心惹かれて採掘士を目指してみようと思ったのか俺は生産職ギルドに行き緊張をしながらも門を叩いた。


 すると中に入ってみると別世界が目の前に舞い込んできた。永遠と続くモンスター狩りと違って木材を削ったり、金属を叩いて伸ばしたりを繰り返し一つのアイテムを作り上げていた。戦闘ばかりしかやってこなかった俺はものすごく心踊り周りを魅入っていると、受付の女性が気がついたみたいで俺に話しかけてくる。


 「生産職希望の方ですか?」


 俺は迷いながらも恐る恐る頷くと、受付の女性は笑顔になったみたいだった。最初に説明された事は色々な職業の事だった。沢山の職業を紹介して貰ったのだが何をしていいのかわからず銀髪の女を思い出し採掘士を指差す。


 「生産職リストからやりたい、ご職業を選んでくださいね」


 「じゃあ、これをお願いします」


 一人でいる事が多かった分、人と話をしなかった俺は緊張しながら小声でお願いをすると受付の女性は頷き、立ち上がり採掘士の教官のところに案内をしてくれた。


 「こちらが採掘士の先生になります。ハン先生お願いしますね」


 大柄の黒人男性が、こちらに気づき話しかけてくる。


 「初めましてハン・レイアと言います。ムム!?NPC人さんですか?」


 NPC人とはノンプレイヤーキャラクターの名称で、この世界に元々いた人達の事を指す言葉である。そう俺はそのNPC人なんだろうと思い、俺はコクリと頷くと、大柄な男は独り言の様にブツブツと呟く。


 「うーん新しいシステムなのかな、まあそれは置いとくとして説明をしますね。この服とツルハシは支給しますので始まりの町近くの鉱石を何個か採って来て私に見せてください」


 ハンはツルハシを俺に手渡すと鞄から初心者用の採掘防具を手渡してくる。黒く冷たいツルハシを握ると、なぜかわからないが戦闘を最初にした時のドキドキ感があり不思議な感じだった。すぐに出発しようとすると黒肌のハンがまだ話の続きがあるのか引き止める。


 「待ってください、貴方の名前を教えてください」


 うっかりしていた師匠になる人に自分の名前も言わないなんて顔が熱くなりながらも小さい声と喋る。

 「マイニングです。師匠これから宜しくお願いします」


 「マイニングさん、よろしくです。注意事項なんですが俺達みたいに死んでも蘇らないので注意をして掘ってきて下さいね」


 自己紹介をすると黒肌の男は手を差し出すので強く握手をしながら気遣うようにアドバイスをしてくる。そう俺達は一度死んだら教会では蘇らないのである。彼等は突然現れた冒険者と言う種族で戦闘で死んでも、採取をしてモンスターに襲われて死んでも、何度でも教会で蘇る事が可能なのである。


 採掘士の教室から出て北の洞窟あたりを目指すと、冒険者らしき人達がモンスターを狩っているところを目撃した。彼等はどうやら俺の事が見えない様で、ひたすらモンスターを屠っていた。モンスターに会う事も無く洞窟内に到着すると、キラキラ光っている壁があるところがある。


 触ってみると、どうやら他の壁よりは柔らかいみたいでヒビが入っていた。背負っているツルハシを両手に持ち替えて壁を、カキーンと叩くと壁の石と綺麗な青い石がパラパラと落ちてきたので、それを拾って鞄に詰め込むことにした。


 最初掘れる場所は決まっているみたいで、4箇所を掘り終えると新たな場所が復活をしていた。それを3回りしていると近くからカキーン、ガッ、ガッ、ガッキーンと叩く音が聞こえてくる。俺は好奇心で音の方向に近づいていると緑色の肌をした女性がツルハシを壁に向かって叩いていた。落ちてきた岩を鞄に詰め込めているみたいだった。


 よくよく見ると彼女は、どうやらゴブリン族の女性みたいだ。肌は人間とは違うが姿形は人間と大差変わりがない緑髪の美女が汗を流しながら採掘をしていた。


 ゴブリン族とは9割が男性しか居ない種族と言われ肌の色は紫色で骸骨みたいな醜い顔の種族である。女性の種族を初めて見たが、あそこまで美しいとは思っていなかった分、魅入ってしまっていた。するとさき程詰め込んでいた石が鞄から零れ落ちそうになったので、慌てて鞄に手を置こうとすると時は遅かったみたいで一つの石がコーンと鳴り響くと、恐怖の表情で俺を見つめてくるゴブリン族の女性がいた。


 「初めまして、いい音していますね」


 俺は採掘の掘っている音の事を褒めると、ゴブリン女は赤くなりながら指差してくる。


 「アンタ、誰よゴブ?」


 女性では可愛らしい高い声で俺を睨み付けながら、尋ねてくるので俺は自己紹介をする事にした。


 「俺の名前はマイニング採掘士を極める者です」


 大きな声で宣言をすると恥ずかしくなり耳が熱かった。だが彼女はまだ顔が赤いままでツルハシを振り回しながら俺に質問を投げてくる。


 「自己紹介なんていいのよゴブ、私は何でここにいるかって聞いているのゴブ」


 「綺麗な掘る音に魅入られてきました」


 さすがに凶暴と言われるゴブリン族相手に無茶な事を言うのでなく素直の一言を投げ返すと緑肌の美女は俺の頭の上をジーと見ると、ツルハシを床に置きペタンと下に座るだけだった。


 「あの、大丈夫ですか?」


 「大丈夫よゴブ、冒険者と思って冷や汗を掻いたわよゴブ」


 俺は心配しながらゴブリンの女に尋ねてみると、緑肌の美女はコクリと頷き汗を拭っていた。冒険者にトラウマがあるのか、嫌な事を思い出して女ゴブリンは震えていた。髪の色は綺麗な緑色で腰まで長さがあり顔も人間の女性と変わらない綺麗さに目が離せなかった。


 どうやら俺の視線に気づいたようで、緑肌の美女はまだ信じられないのか睨み付けながら自己紹介をしてくる。


 「そんなに見ないで欲しいわよゴブ、私の名前はクリスタルよゴブ、本当にびっくりしたんだから」


 「そんなにびっくりする事なんですか?採掘してたら仲間同士会うのは日常茶飯事だと思ったんですが」


 俺は不思議そうにクリスタルに尋ねると、彼女は首を横にフルフルと振り喋りだす。


 「同じ種族同士ならいいでしょうけど、私とアンタは違う種族でしょうゴブ?採掘場所が被るという事はありえないはずなのよゴブ」


 クリスタルは頭を抱えながら、青ざめた顔であたふたしていた。なぜそんなに慌ててるのか俺はわからず尋ねてみる事にした。


 「その前に何でそんなに慌てているんですか?」


 「私達は人に見つかると狩られてしまう種族なの冒険者でも、サンピオーシャ人でもねゴブ」


 冷や汗を掻きながらクリスタルが説明をしていると聞きなれない単語が聞こえてきた。サンピオーシャ人とは何だろうか東側のサンピオーシャタウンと何かしら関係がある名前に近かった。話が見えて来ない俺を見ながら何かを察知したように彼女は昔話をし始める。


 「昔、5種族が住んでいた綺麗な町があった。5種族は交流を持ちそれぞれ平和に暮らしていた。だが港から新しい種族が来て5種族の町を蹂躙してしまう事になった。新しい種族は港に大きな首都を築き上げ、名前をサンピオーシャタウンと名づける、それからは私達は貴方達をサンピオーシャ人と言う様になったのよゴブ」


 「そんな昔話があったなんて知らなかった。でも俺はもう狩はしないので大丈夫ですよ、まさか異種族と会えるとは俺も思ってなかった事ですし、よかったら情報交換をしませんか?」


 クリスタルが深刻な顔で説明すると俺はいい事を思い付き提案をしてみる事にした。彼女はその提案を目を丸くしながら尋ねてくる。


 「情報交換ゴブ!?」


 「そうですゴブリン族しからからない採掘場所があるかもしれないですし、情報交換が出来たら新しい採掘場所が増えるじゃないですか」


 説明不測だと気づき俺はわかりやすくクリスタルに説明をし出すと、それに頷き了承をしてくれる。


 「アンタがいれば人しか掘れない場所に行けるかもしれないわねゴブ、いいわこの石を受け取りなさいゴブ」


 クリスタルは鞄からピンク色の小石を取り出すと俺に投げつけてくる。俺は何だろうと思い聞いてみる事にした。


 「これって何の石ですか?」


 「Tellストーンよゴブ、離れていても会話が出来る不思議な石で、よく冒険者が離れていても話しているじゃない?あれの簡易版がこの石なのゴブ」


 初めて見る石と聞いた事にない説明に納得するしかなったが、彼女が石を握り締め目を瞑ると口を開いていないのにクリスタルの声が聞こえてきたのだ。


 『聞こえてるかしら?これが石の効果よゴブ、使い方は目を閉じながら強く念じる事で会話が出来る事よ最高4人しか使えないしあまり流通している物ではないけどあると便利でしょうゴブ?』


 あたふたしながらも俺は目を閉じて強く心で念じて返事をしてみる事にした。


 『わかりました』


 俺は不安に駆られながらも心で念じた事を確認してみる。


 「聞こえていましたか?」


 どうやら心に念じた事は聞こえたみたいで一安心をした。今日はもう暗いので掘るのは止めて世間話をし始めると会話が弾み明日の約束をして別れる事になった。


 「クリスタルさん、また明日よろしくです」


 「またね、あと名前は呼び捨てにして構わないわよゴブ」


 緑髪のゴブリン女はツルハシを背負うと、俺に手を振りながら帰っていった。俺も急いで採掘士教室に戻ったのだがハン師匠は帰ったみたいで会う事が出来なかった。仕方がないので今日は家に帰り、体を休め寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ